君が心をくれたから
(2024年1月期・フジ・月曜21時枠)
脚本: 宇山佳佑
プロデューサー:草ヶ谷大輔
演出:松山博昭
音楽:松谷卓
主題歌 – 宇多田ヒカル「何色でもない花」
第4話 青い春の香り
【ストーリー】
◆◆2016年2月
■逢原家
雨の卒業式が近づく。
雨は来週から東京で一人暮らしする為に買い物
に行こうとしていた。
「卒業式の当日には太陽くんが来るの?」
という雪乃。
しかし太陽は既に卒業していることも有り、「制服の
第二ボタン」を貰えないのは残念だと雪乃は語る。
何故第二ボタンなのか?という問いかけに、心臓に
一番近い位置にあるから好きな人の心をもらうという
習わしがあるという雪乃。しかし雨は既に太陽から
心をもらっているかとして、雨をからかう。
■買い物に出かける
買い物には太陽も同行してくれていた。
ショッピング街から見える「観覧車」。
雨はこれに乗らずに過ごしてきたことに後悔を示す。
しかし太陽は言う。
「退屈ではないか? ぐるぐる回っているだけで
楽しくない。恋人たちのものという感じだしおれ
には関係ない・・」
「それもそうだ。私達には無関係だね」
セレクトショップに1万円の指輪。
しかし高い・・それ以上に大切なものを買わなければ
ならないとして雨はスマホを購入する。
太陽が着ていたジャケットを落とすと、雨は時間が
停まったような素振りを見せる。
臭かったのかと太陽は尋ねると、雨は”花火の匂い”が
したという。
引っ越しは何時なのか? 卒業式の次の日。
太陽は見送りにいくとするがその日は平日だった。
しかし一緒に入られるのもあと一週間でも有った。
その言葉を聞いた雨は、
「今、実感した。私の青春時代はもうすぐ終わる」
卒業記念に欲しいものはないかと問う太陽に対して
雨は花を選ぶ。
マーガレットの花。花占いにも使われる。
普通マーガレットはあまり匂いがしないものだが、
この花は品種改良されているので匂いがして素敵匂い
だという。太陽は思い出がないと言っていたが、
「この香りを俺たちの思い出の香りにしないか」と
語る。
10年後の約束を叶えるまでは終わらない。
春が来る度にこの香りを嗅いで今の気持ちを思い出
そうと語る。
“青い春の香り”
◆◆2024年
■朝野家
職場のスタッフを含めてみんなが太陽の帰りを
待っていた。帰宅した途端に祝福される太陽。
「今日の告白はどうだったのか?」という妹・春陽
に対して「振られた」と語る。
一同解散する。
■感想
今回は初めて面白いと言えるエピソードだった。
何が面白いのかを書いて、是非とも視聴者を増やした
いところ。
皆さん韓国ドラマを見たことが有るでしょう。
韓国ドラマの恋愛ドラマっていうのは序章は正直
言ってあまり面白くない事が少なくない。
何処かの場面から一気に面白くなり始めるってケース
を見た事が無いでしょうか。もちろん最後まで
面白くはないというケースもあるのだけど、その多く
は世界観への慣れ始めた頃がポイントだと思う。
脚本家は宇山佳佑さんで、恋愛ものが得意な方。
このドラマもオリジナルと言われているのだけど
ご自身が描いた「この恋は世界でいちばん美しい雨」
のアレンジ化した感じのシナリオだ。
私と同世代や私よりも若い人が最近ドラマを制作
に関わることも有り恋愛の価値観とか変わって来て
いるのだろうかとも思うが、基本的には今も昔も・・
って感じだ。
シナリオは計算高いといえば計算高いとも
思えるけど、今回のシナリオを見ると面白く作って
ある。
今回のドラマの象徴的なアイテムは「観覧車」
「マリーゴールド」「火薬の匂いのするジャケット」
「第二ボタン」だ。
では何が面白いのか。
●匂いの感覚
今回雨ちゃんから奪われるのは五感のウチの嗅覚で
ある。
それ故に必然として「匂い」にまつわるエピソード
が物語の中心に置かれる事は想像にかたくない。
相手との共有には2つの匂いが用意された。
「花火(火薬)の匂い」「マリーゴールドの匂い」。
春が来る度にこの“青い春の香り”として彼らの記憶
には残るが、春が来てそれに触れても直接匂う事は
残念ながら無い。記憶の中に残る匂いはあるのだろ
うが、しかし恐らく匂いの感覚も視覚化されて
連動されて発するものの筈だから、それらも奪われる
ことになる。なんとも非情な話だ。
彼のジャケットを偶然二度手にすることになる。
過去と現在でだ。
実に何気ないシーンだが、改めて彼の服に染み込んだ
匂いを通して彼女の決心を後押ししてしまったのかも
しれない。
●言葉の重み
相手に対して向けられた言葉というのは発した人物
は覚えていないかもしれないが、発せられた相手と
いうのは案外覚えているもので、ここで覚えている
ことの多くは悲しみである。
過去に放った言葉(セリフ)が現在の世界に於いては
自らに跳ね返ってくるとしたらどうだろう。
このドラマではそれが起きる。
「観覧車」を見る光景・視線。
高校時代と大人になった時の2つの視線が交錯する。
高校時代には男性側が搭乗することを拒否した。
そして大人になった現在、今度は女性側がそれを
拒否する。
男性が嘘をついたのは、若さ故とも言えるもの。
高所恐怖症だという事実を言うことが恥ずかしいが
為に誤魔化した格好だった。
女性が嘘をついたのは、大人故の対応だった。
前回も書いたが、今後を考えれば五感が奪われていく
状況に自らがその人に取って荷物になりたくない心理
と同時に、自分が密接した空間に居ることで
感情を抑えられないという複雑な思いが交錯して
いるのだ。事実彼女は恐怖を名目に相手に目を
つぶらせ、その間に涙する。そして彼の方もまた
涙で頬を濡らすのだ。
●自分に責任がある論
太陽の妹・春陽には一つの後悔すべき過去の言動が
存在している。
妹の立場で有りながら兄と仲良くしている雨に対して
恋愛を阻止する流れを作っている。
春陽と違ってあまりに幼すぎた彼女の中の記憶には
母親に対するものが殆ど残っていない、
渇望する気持ちが兄が母親から託されるようにした
夢と相まって、それを守ろうとして彼女の存在を牽制
する流れになる。
・雨の自己責任論
五感が失われる前にも実際には雨は自分のために
迷惑をかけたくないとして嘘をつくシーンが有る。
それは上述した妹の言動にも問題があるが、
東京に上京する2016年3月2日に二人の間には約束が
有った。朝の10時に飛行機は離陸するのに夜の9時
だと嘘をついて、自分の気持ちを押し殺した。
●日常にある奇跡
日常に有る小さな奇跡を演出する。
これはある意味本来持つ流れに軌道修正を図るような
役割を持つ。
マリーゴールドの花びらは殆どの場合は奇数で
しかない。他の植物の中には当然偶数であるものも
有る。
花びらで運命を決める花となっているのだけど
実質的には奇数枚なので、最初に言った事がそのまま
結果として現れる。安っぽい手品のようなトリック。
しかし伏線的にこのマリーゴールドは品種改良され
たものとして人の力が介在したものとなっている。
観覧車には一緒に乗らないと言ったら、それはルー
レットのようなランダム性はなく、ほぼ確実に乗ら
ないという結果になる。
しかしそれが絶対的なものではない事からも、
「運命」が決められたものではない事を示唆している。
●THE 観覧車
山手線のようにして巡回しているのが観覧車だ。
出発した地点に必ず戻ってくる。
その中では本音とは裏腹に雨は嘘をつく。
雨は太陽から質問を受ける。
「あと1つ聞いても良いか?」(<-相棒の右京さんか)
彼の何処が好きなのか。
その問いかけに彼女は司を思って吐き出すものでは
なく、その思いの全ては太陽のことを思いながら
気持ちを語っていることは言うまでもない。
それが分かる分だけ涙が出る。
●運命とは?
辞書によれば運命とは、
「人間の意志をこえて、人間に幸福や不幸を与える
力のこと。あるいは、そうした力によってやってくる
幸福や不幸、それの巡り合わせのこと」
とある。
しかしこのドラマの中で起きていることは人の意思が
介在されているので今のところコントロール出来るものが
殆どだ。
本当の意味での運命が二人の絆を求めているのであれ
ば、それに抗う人間の意思とは関係なく結ばれていく
ものではないか。
このドラマはそもそもの出発点が人間の意志を超えた
ところから始まっているのでなんとも言えないが・・
■出演者
逢原雨 …… 永野芽郁 (26歳・パティシエを目指す)
幼少期の雨 …… 佐藤恋和
朝野太陽 …… 山田裕貴 (28歳、朝野煙火工業)
望田司 …… 白洲迅 (33歳、長崎市役所の地域振興課)
朝野春陽 …… 出口夏希 (24歳、太陽の妹)
朝野陽平 …… 遠藤憲一 (59歳、老舗煙火店「朝野煙火工業」)
逢原霞美 …… 真飛聖 (46歳、雨の母親)
逢原雪乃 …… 余貴美子 (67歳、雨の祖母)
日下 …… 斎藤工 (奇跡の案内人)
千秋 …… 松本若菜 (奇跡の案内人)
柳田達夫 …… 螢雪次朗 (朝野煙火工業)
花村竜一 …… 佐藤貴史 (朝野煙火工業)
菊野純 …… 谷恭輔 (朝野煙火工業)
飛岡雄星 …… 萩原護 (朝野煙火工業)
安井絵里、岡部凌和、大嶋七海