相棒22
(2023年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)(6)(8)(9)(15)(19)、権野元(3)(7)(10)(16)
守下敏行(4)(5)(17)、川崎龍太(11)、徳永富彦(12)、
片山耀(13)(14)
脚本:神森万里江(1)(2)(13)、岩下悠子(3)(5)(14)、
森下直(4)
光益義幸(6)、瀧本智行(7)(8)(17)、輿水泰弘(9)(10)(19)
田村孝蔵(11)(12)、川﨑龍太(15)、竹内清人(16)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
第19話 トレードオフ
【ストーリー】
■検察官室
苦虫を噛み潰したような顔をして飲んでいたコーヒー
カップを壁に叩きつける尾上欣悟。
・その裏で・・
記者らは法務大臣(法相)下川阿貴に詰め寄り何とか意見
を聞き出そうとする。
3月2日(土)、自生党幹事長・榊郁次郎の収賄容疑
に対して、法務大臣の下川が指揮権発動を宣言して
検察の強制捜査の終了を行ったのである。
■特命係
帝都新聞を見ていた薫は、指揮権発動の記事を見て
唸る中、右京が登庁してくる。
自生党幹事長・榊郁次郎は梅宿駅東口再開発に関して
建設会社2社とコンサルティング会社1社に便宜供与
していた。特にコンサルティング外社・ブライティン
グバンドの溝乃元社長から4千万を受け取り、その金
を千代田区で飲食業を経営していた榊幹事長の妻の店
に投資していた(2020年3月)。
「伝家の宝刀が出ましたね」
「抜くぞと見せかけて抜かないからこそ伝家の宝刀
なんですがね」
右京は薫が法学部・法律学科卒業なので指揮権発動
について教えてくれないかと言うが、右京もまた
東京大学の法学部を卒業していた。
二人の会話を聞いた角田がやってくる。
知りたければ教えてやるぞというが、右京は断る。
テレビニュースでも収賄容疑に関する強制捜査は
見送られる可能性について報道してていた。
榊幹事長は内閣官房長官・武智淑郎に大いに借りが
出来た事を告げる。この決断には下川法相も相当
腹をくくっていた事を告げ、お前は相当ヤバかった
ことを指摘する。
■テレビ局 / お昼のビッグワイド
政治学者で明東大学名誉教授である乙部泰治郎は
報道番組の中で、”官邸の支配”について熱弁する。
報復を恐れて誰も物を言えない状況。
週刊誌報道もネタが追求するネタが点きかけていた。
榊の疑惑については特捜が動く筈。これは長年の政治
学者としての“勘”だと告げる。昨年に特捜部長に
なった尾上さんは就任時の挨拶で立派な事を仰って
いた事を告げ、検察官としての気骨を感じたと
語る。
・関係機関との連携強化
・犯罪の大小に関わらない
・不正に一切今日を許さず、法の執行を行う
これらの言葉に嘘はないとし、地検特捜部が官邸に
ビビって汚職を見逃す筈はないとし、逆にそれが
有って良い訳がないことを告げる乙部。
■検察官室
尾上は忸怩たる思いでその番組を見ていた。
そんな彼は検事正である呉由起夫に呼び出され、
逮捕状の請求は無期限延期になるとし、贈賄側の
保釈までに榊幹事長の逮捕状は取れないことを語る。
そして捜査は暗礁に乗り上げる・・
任意の捜査では何も手足が出せない状況だが、幹事長
側は禁じ手に等しい指揮権の発動をしてきた。
これ以上難破する船を漕ぎ出すことは無理であり、
それを始めた尾上には責任を取ってもらうと語る。
・会見
その頃、下川阿貴も会見を行う。
「法務大臣を辞表を提出し、今朝の閣議で受理
された」
「”重要法案審議”が目白押しの国会中に世間を騒が
せた事をお詫びする」
とのことだった。
■家庭料理店”こてまり”
亀山夫妻、右京、小出で一連の事件について話を
する。
「榊を守るために犠牲になったあの大臣は出世する」
という小出。
美和子は榊の盟友である内閣官房長官・武智淑郎の
ことを口にする。
「武智は庶民的な雰囲気を撒き散らして割と国民にも
人気があるが、内閣を牛耳り、マスコミには睨みを
利かす人物」
であること。
前任者の鶴田は分かりやすい腹黒い香りがしていた。
右京から情け容赦無く成敗された。
芸者時代に小出は鶴田と昵懇だった。
小出によると“官房機密費”をしこたま貢いでくれた人
だという。
■乙部邸
乙部は帰宅すると家の前に男が居た。
多賀潮は高校を辞めて働いていること。久しぶりに
テレビで先生を見た事を告げ、やはり政権批判ばかり
していると干されるものなのかと問う。
「不躾だがそのとおりだ」
そんなやり取りをしている内に多賀潮は突然乙部
を殴りカッターを取り出して脅す。その様子は
動画として撮影されていた。
■感想
いよいよ相棒のシーズン22の最終話の前編。
ドラマ自体は一昨日見終わっていたのだけど、感想を
書くのが遅れてしまいました。昨日はサッカーがある
ということをすっかり忘れていて観戦しながら感想
を書いていたのだけど何がなんだか分からなくなって
しまい途中で諦め(^o^;
残念ながら後編の放送に間に合いませんでした。
毎年ラストの展開は、前編の流れとは少し違う方向
に転がっていく事が多いけど、今年のラストは果た
してどういう方向性を持ち、どんな背景が存在する
のか。
ドラマのベースは2009年の小沢一郎の資金管理団体
「陸山会」の頃に遡り、政治資金規正法違反と検察
の対決の再現という形で今なお続いている政治家と
金の問題を取り上げた格好なのかな。
政治も企業も体質・体制的には今も昔も変わりない。
上下関係は依然として存在し、上司の意見に逆らう
ことはご法度。政治家はどんなに不正に得た金でも
なんだかんだ言って時間を稼いでいる内に人々の
脳裏から消え去り、事件も風化していく。
メディアの役割は重要なものだが、
“政権からの圧力が有り、干されることがある”
との発言があるので、それが堂々といえる様に
なった事自体は良かったのかも。
検察の役割が機能しておらず、憲法第76条である司法
の独立は一体何処に消えたのか。
また世論を味方につける為の手段にSNS/ネットを
利用するのが今の世の中であるが、嘘の情報が
多く入り交じることで信憑性はどんどん低くなる
ばかりだ。
ファクトチェックするものなど誰一人として居ない。
それだけ動画で見せるインパクトやSNSで流れてくる
情報の多さがそれを妨げているのかも知れない。
その裏で起きていることなど分からないまま、見た
事、聞いた事がそのまんまの状態で国民が裁定を下す。
被害者側にしてみれば動画で流した効用が得られな
ければ、自らの手で裁きを下すしかない。
今現在の自分の事を改めて見つめた場合、果たして
初心を忘れず今に至るのか。それとも汚い人間社会に
揉まれている内に、それを忘れて流れに身を任せて
生きているのか。
少し前の時代と違い動画そのものが本物なのかどうか
分からなくなりつつある。そんな気難しい世の中では
あるが、人を操ることは意外と容易だ。
特殊詐欺が何年経っても止まらないことを見ても
より面倒な事になっている。
ドラマとしてはいくつかの事件が発生するのでそれが
どう繋がっていくのかは後編へのお楽しみとなった。
右京の動画が最後に流れたが、これが単独の考えで
行ったことなのか。それともある程度筋を通して
行動しているのか。(しかしこれも本人によるもの
なのかの確認は必要そうね。)
今回のドラマを見ていくと感じるのはこのシーズンの
集大成だなぁということ。
今まで細々と言及してきたこと、実際に事件として
起こったことが規模を大きくして描かれた感じだ。
乙部教授は反日教授の主張は全くしている訳では無いし、
みんな大袈裟なことで騒いで事実から遠ざかっている
感じがする。
●事件
○榊幹事長の贈収賄事件
・榊幹事長の調査を政治家特権で止めた下川外相
(榊と下川の間に内閣官房の武智の存在)
○多賀潮が政治学者乙部の傷害事件
○元東都TVの西村拓三が殺害される。
(西村は退社後にTakumi_N Intelligence Companyと
いう会社を設立)(第一発見者は美和子)
(ピストルクロスボウで正面から胸に打たれた)
■捜査
・乙部が襲われ、その管轄は港中央署だった。
・サイバー捜査班の土師が多賀潮のネットでの動きを
調べる。「愛国者同盟」というサイトでは影響力の
ある発言をしている。
「主権在民だの基本的人権だの言っているから
日本はこんな恥ずかしい国になったんだ」
・多賀潮の家の冷蔵庫のタッパーの中に2千万円
(通帳には1万円)。一体誰が金を捻出したのか。
・クロスボウは規制されているが法改正以前は自由
に購入できたので市場に出回っている。調べるのは
難しいのか。
・被害者・西村の携帯着信記録。
一昨日は美和子からの電話。昨日は下川阿貴法務大臣
からの電話。
(2019年女性国会議員たちが開いたハロウィン
パーティーの写真で西村との接点を確認。更に写真
の中にはクロスボウが映っている)
■不審な要素
・検事正・呉由起夫は尾上欣悟に責任を背負わす
・多賀潮が乙部を襲った際の動画は尻切れ
・多賀潮の亡くなった姉の旦那は極道
・姉の借金を多賀潮が背負わされた
・生前の姉は2千万を地元ヤクザから借りている。
・警察は民事不介入として当時無視された。
・テレビ局から敬遠されていた人物(乙部)を敢えて
起用した西村が殺された。
・西村の上司だった金子忠志は一時だけ番組から
外すも戻そうとしていた。
・被害者宅にピンヒールの跡。
■内閣情報官・社美彌子
内閣情報官が一連の事件に関与していない訳はない。
情報期間として政府の影となり働いている。
政権批判に目を光らせるのも役割の一つ。
国家転覆を目論む危険分子が居ないとも限らない為だ。
(ただし乙部はそのブラックリストに入っていない)
官邸の意向で動いている。
武智官房長官の意向だと薫たちは考えている。
●武智と衣笠
武智は警視庁の衣笠副総監と会う。
出世をチラつかせて衣笠を動かそうとする武智。
乙部によれば武智は「政治理念無き権力欲の塊」。
■その他
・第一発見者
「犯人は言い過ぎですが第一発見者を重要な参考人
と考えるのは警察の鉄則です」
・覗くくらい良いじゃないですか
「減るもんじゃないし。」
西村の遺体発見現場で右京が語った言葉
・尾上が勇気をもらったもの
「先輩もあの番組放送時に力をもらったと言って
いたでしょう。」
「政界疑獄の捜査に世論の後押しは不可欠だ。あの
番組はその世論を喚起してくれた」
・内村刑事部長
セリフが妙にかわいいシーンが有った。
捜査権がない右京らに対して
「捜査しても良いのか?いかんのだ。赤子でも
分かる理屈。お前らは赤子以下、ウー、よしよし、
ベロベロバー」
「警視庁の名探偵と呼ばれて調子に乗っているのか?」
「言う事を聞かんと拳固をくれてやるぞ」
・”切られ与三”みたいで案外しぶといかも
美和子が乙部に話を聞きに言った際に出たセリフ。
今回脚本を担当した輿水泰弘さんは歌舞伎が好きな
ようなので、「与話情浮名横櫛」の事を取り上げた
ようだ。
・捜一の三馬鹿!
伊丹が薫らに対して挨拶を交わす際に言うような
調子で今回は薫らが捜一に対してそんな言葉を
切り出した。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、特命係)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト)
土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ)
社美彌子 …… 仲間由紀恵 (内閣情報官)
石川大輔 …… 林泰文 (内閣情報官・秘書)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警視庁警務部首席監察官)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁長官官房付)
下川阿貴 …… 黒谷友香 (法務大臣)
尾上欣悟 …… 甲本雅裕 (東京地検特捜部部長・教養指導課に左遷)
乙部泰治郎 …… 佐戸井けん太 (明東大学名誉教授)
下川勇一 …… 森岡豊 (阿貴の夫)
井坂久司 …… 岩男海史 (港中央署少年課刑事)
多賀潮 …… 島田裕仁 (乙部を襲撃した少年)
金子忠志 …… 仁科貴 東都テレビ制作部長
西村拓三 …… 内藤裕志 (元東都テレビプロデューサー)
榊郁次郎 …… 永田耕一 (自生党幹事長)
呉由起夫 …… 神林茂典 (東京地検検事正)
多賀諄 …… 竹井洋介 (潮の叔父、漁師””勝石丸)
山本大輝 …… 七枝実 (情報屋??角田が待ち伏せ(夕暮れの街角で))
小笠原寛、竹内義貴、北原俊祐、市川大希
武智淑郎 …… 金田明夫 (内閣官房長官)
鶴田翁助 …… 相島一之 (回想:元内閣官房長官)