君が心をくれたから
(2024年1月期・フジ・月曜21時枠)
脚本: 宇山佳佑
プロデューサー:草ヶ谷大輔
演出:松山博昭、相沢秀幸(5)(6)
音楽:松谷卓
主題歌 – 宇多田ヒカル「何色でもない花」
https://www.fujitv.co.jp/kimikoko/index.html
第6話 声の手ざわり
【ストーリー】
◆◆2024年2月2日
■逢原家
太陽と雨は半同棲を始める。
雨はその事に慣れずに居た。
「もう3日も暮らしている」「まだ3日だ」
太陽が先に起きて朝食を作って用意していた。
雨は高校時代にもらう筈だった指輪を先日受け取り
それを指にハメて嬉しそうにする。
居間に寝泊まりしている太陽に無理しなくても良い
というが、少しでも雨ちゃんと居たいという彼の
思い。その彼から一つのお願いがあるという。
「”アメ”って呼びたい」
雨は恋愛の展開の速さに脳が停止しているとし、少し
考えさせて欲しいと語る。私も「太陽」くんみたいな
素敵な名前ならば胸をはって居られるのに・・
味噌汁が少ししょっぱ過ぎることに太陽は気がつく。
しかし雨は味覚が無いので大丈夫だと語る。
「五感を無くすって具体的には何て病気なのか?」
しかし答えを聞く前に太陽の仕事の時間になりいかな
ければならなくなる。
雨はふと時計に目を向けると「15日14時間47分」と
表示されていた。彼女が次に奪われるのは「触覚」だ
った。日下によれば
『「触覚」は誰かとの繋がりを実感する感覚』
太陽が出社する中、雨は部屋を掃除していると
ボイスレコーダーを見つける。
・2009年より前 (雨が小学生時代)
雨の祖母の雪乃が福引でもらったボイスレコーダー。
雨は試して自分の声を録音・再生してみる。
感激した雨に対して、雪乃は彼女に交換日記をして
みようと語る。仕事前にメッセージを入れておくと
いう雪乃。
それは温かい声・・抱きしめられている様だった。
このボイスレコーダーは雨にとっての小さな宝物。
・現在
ボイスレコーダーの思い出に浸っていると突然電話
が鳴る。長崎平和記念病院からの電話で、祖母の
容体が急変したというものだった。
■長崎平和記念病院
病室に行く雨。
祖母の雪乃は「帰りたい」ことを口にする。
太陽はランチを食べた後に病室で合流する。
雨は太陽に祖母が家に帰りたがっていることを相談
する。
■朝野家
弁当を食べる職人たち。
みんな太陽が食べる弁当に注目していた。
雨ちゃんが作ってくれたものなのかとして羨ましい
と語る。
それに敏感に反応したのは妹の春陽だった。
「弁当でマウントを取るのは最低」
しかし太陽は自分で作ったのだとしてそれを否定する。
更に春陽は、
「彼女が出来た途端に三連泊とか最低」
だと語る。太陽は雨の祖母が入院しているので心細い
だろうと語る。
そして太陽は父・陽平に一つ聞きたいことがあるとし
「俺の名前は父さんが付けたのか?」
と問う。
すると父は明日香が付けたとし、その名前の由来は、
「お前が明日香の太陽だからだ」
産まれたばかりのお前を見て言っていたこと。
「暖かくて優しくて太陽みたいなかけがえのない存在」
だと言っていたことを語る。
妹の春陽も名前の由来を尋ねると、お前の名前は父さん
がつけたもので、春のポカボカ陽気の日に閃いたの
だと語る。
■感想
リアルタイムに放送していた時期からは外れてしま
いましたが、地味に視聴して感想を書いていこうかと
思います。この6話が放送したのは2月12日。
そしてこれを見ているのが3月24日。
先週(3/18)最終回を迎えたので情報を目に耳に入れ
ないようにしています。(この内容のドラマなだけに
実に皮肉だ)
今回はタイトルからも分かるように「声の手ざわり」
からして、「触覚」に対する言及が行われるもの
だった。
触覚は触れて感じるものだけど、それ以外にもあると
いう事を示唆する流れ。
冒頭でボイスレコーダーが提示された際に、
「温かい声」「抱きしめられている様」としていた
ので、直接的ではなく間接的な感覚を持って触覚の
妙味を味わわせた形だった。
■物には命が宿る
物には(持ち主の)命が宿るとされるのは日本の
価値観の一つとして存在している。
日本人が他人のものを盗らない理由も
大いに関係しているのではないかと思われ、
元来は人形には持ち主の魂が宿るとされていたが
その解釈が拡大されていったのかも知れない。
もちろん日本の市民の監視網からしても盗みを働く
ことのリスクは、その後に続く人生の長さからすれば
馬鹿らしい利益だと考える筈だ。
今回は「ボイスレコーダー」と「指輪」など物質的な
ものが生活の価値を高めるものとして利用されたが、
それ以上に寧ろ間接的・抽象的なものの中に有る、
それを上回るだけの価値があることを示唆している。
親から授かる名前の意味。
自分が知らなかったことへのパズルのピースをあわせ
るようにしてこれから起こり得る大変な事態への
強力な武器として備えもった格好だった。
●人が願うもの
人々が願うものは、大切な人の健康や安全だろう。
もちろん大きな事なら世界平和を願うことも有る。
特に長崎なら平和は一つのキーワードだ。
アイデンティティの確立の為にも避けられない過去の
自分に焦点が宛てられる。
ネガティヴな感情しか無かった記憶の断片。
それがその人自身に影を落とす。
ドラマの中では不和で離れて暮らす雨と霞美は
それぞれにネガティヴさが蝕み、自身の心を鎖で
縛り付けられている。
今回は祖母が生前最後の役割として、二人の仲を
取り持つことを活力にして動き回る。
その中には太陽の尽力も決して無視できない。
●人の価値観を変える
人の価値観はなかなか凝り固まっているので全面的
に変えるのは難しいとしても断片的なところでは
変えることは出来るのだろう。
そのタイミングは言葉に込められた意味を知った時で
あったり、自分の中には無かった価値観を知るときに
なって初めて分かることだ。
雨ちゃんは雨が嫌いだ。
名前もそうだし、雨が降ると過去にはからかわれて
生きてきた。
しかし祖母は雨にも色々と有って好きだという。
更に後に話を聞くことになるが雨が降って嬉しそう
にしていたのは誰でもない雨ちゃん自信であったこと。
また今回もちょっとばかり雨の心に響く言葉を
投げかける日下の姿が有る。
「人は死んだらどうなるのか」
「人は死んだらほんの僅かな時間だけ雨を降らせる
ことが出来る」
「心を込めて大切な人に思いを届ける」
「死にゆくものは言葉を直接残し、見送るものは
精一杯尽くしてあげる。お互い後悔を残さぬように」
伝えたくても伝えられないのは既にこの世に居ない
人への言葉や気持ちだ。
それに該当する太陽からのアシストもあった。
■少しの違和感・少しの感動
違和感 1)
愛する人から「雨」って下の名前で呼ばれるのって抵抗
有りですかね。寧ろ自然の流れから有無を言う暇なく
「雨」って呼んだ方が良かった。
違和感 2)
海辺のゲーム。
このゲームは命の炎を意味していたのだろうか?
棒を指してジャンケンで勝ったら質問をする。
負けてもあまり意味は無いが質問が多く自分から
出来るというものだった。
違和感 3)
雪乃さんは最後に夫がプロポーズしてくれたと
される場所に行ったがかなり新しくて綺麗な場所
だった。当時とは形が違うものだとしても、やはり
もう少し古い場所を選んだ方が良かったのかも。
感動 1)
祖母が残した言葉をボイスレコーダーで聞いている
際に雨が降る。祖母の言葉も良かった。
「あなたのばぁちゃんになれて良かった。幸せだっ
たなぁ~」
■その他
・現在「味覚」と「嗅覚」がない。
味覚が無いので味噌汁の味は分からなかった。
・どうして雨という名前を付けたのか
「あんたを産んだ時、凄く不安だった。産まれて
すぐのあなたを抱っこしても泣かれて嫌がられて
自信もなくなった。そんな時に雨が降った。そした
らあなたは嬉しそうに笑ってくれた気がした。
その顔を見て思った。雨がこの子をあやしてくれた
のかもと・・だから「雨」にした」
・祖母から母への遺言
帰りのフェリーの中で雪乃が霞美に伝えたことだ。
「自分のことを愛しなさい。人生で一番難しいこと。
でもあなたはこの世界でたった一つ。変わりなんて
いんい。だからちゃんと愛してあげて」
・病気の件
五感を失う病気は無い。
病気ではなく別の何かかも・・とのこと。
■出演者
逢原雨 …… 永野芽郁 (26歳・パティシエを目指す)
幼少期の雨 …… 佐藤恋和 (虐待されていた)
小学生時の雨 …… 横須賀京香 (ザー子と呼ばれる)
朝野太陽 …… 山田裕貴 (28歳、朝野煙火工業)
望田司 …… 白洲迅 (33歳、長崎市役所の地域振興課)
朝野春陽 …… 出口夏希 (24歳、太陽の妹)
朝野陽平 …… 遠藤憲一 (59歳、老舗煙火店「朝野煙火工業」)
逢原霞美 …… 真飛聖 (46歳、雨の母親)
逢原雪乃 …… 余貴美子 (67歳、雨の祖母)
日下 …… 斎藤工 (奇跡の案内人)
千秋 …… 松本若菜 (奇跡の案内人)
柳田達夫 …… 螢雪次朗 (朝野煙火工業)
花村竜一 …… 佐藤貴史 (朝野煙火工業)
菊野純 …… 谷恭輔 (朝野煙火工業)
飛岡雄星 …… 萩原護 (朝野煙火工業)
看護師 …… 森麻里百
児童 …… 柳下晃河、志村瑛多、山口暖人
母親 …… 内海香織