相棒22 第6話 名探偵と眠り姫

相棒22
(2023年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋本一(1)(2)(6)、権野元(3)、守下敏行(4)(5)
脚本:神森万里江(1)(2)、岩下悠子(3)(5)、森下直(4)
光益義幸(6)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、古革昌実、
土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第6話 名探偵と眠り姫

【ストーリー】

■ホテル

清掃員の男がシーツを回収してカートの中に入れ、
従業員用のエレベーターを使って降りてくる。
カートの中にはなんと女性が入っていた。
男は矢木明。女性は蔵本里紗だった。

これから歩くことになるので運動靴などを用意していた
矢木。

「用意が良いですね」
「常に先の先を読むのが名探偵というものです」

■警視庁

●特命係

角田がやってくる・・が二人とも暇ではなく忙し
そうだった。何をしているのか尋ねる。

警視庁の情報提供フォームに届いたメッセージの
ことを語る。

「『眠り姫事件』の犯人は殺された。至急真相を
解明されたし」

・『眠り姫事件』とは。

17年前の蔵本屋社長の孫娘が誘拐された事件。

文面からすると挑戦状かイタズラか分からなかった。
何故特命係にその事件案件が回されてきたのか?
という問いかけに、件名を見てくれという薫。

「警視庁特命係、杉下右京殿へ」

名指しだった。やはり挑戦状なのか。
右京はご指名であれば挑戦は受けることを語る。

●一流ホテル

蔵本屋の事件を調べる為に関係者がいるホテルへ。

ホテルのホールを貸し切っての内々のパーティー。
創業135年・老舗百貨店故に豪快なものだった。

長年低迷していた業績だが最近は好調だった。

社長の蔵本幸次郎は家政婦の瀬戸路子から興奮しない
ように宥められる。幸次郎は事を大きくしないため
にも警察などは呼ぶなと語る。

「もしもまた誘拐だったら・・」

その会話をしていたのを耳にした特命係の二人は
声をかけ、路子から話を聞く。

・蔵本家と黒崎家の婚約披露宴

抱え室にいた新婦・里紗の父・蔵本慎吾は私から
関係者にはお詫びするとして兄の蔵本啓介に語る。

そこに特命係がやってくる。
警察が一体何のようなのかとするが、里紗さんが
行方不明になっていると耳にしたことを語る。
啓介は自分が呼んだ訳では無いことを語る。
特命係の面々は通報ではなく別件でたまたま来て
いたところだと語る。

17年前当時5歳の里紗さんが誘拐された『眠り姫事件』
の件で話を聞きにきたところで里紗さんが行方不明だ
という事を耳にしただけだと告げる。

とりあえず状況を教えてほしいという薫。
慎吾は大袈裟だとし、本人からはいなくなる2時間前
に連絡が有ったという。

「急に居なくなってごめんなさい。私は大丈夫。
心配しないで・・」

今日は里紗との婚約発表の予定で、相手は黒崎堂の
ご子息の黒崎潤也。あの老舗和菓子”黒崎堂”屋。
里紗さんが潤也に愛想を尽かしたのではないか。
父の黒崎弘はしっかりしろと語る。慎吾は事情を考慮
して婚約発表は後日改めてしようと語る。
潤也は彼女がそんなに悩んでいたとは気が付かなかっ
たと語る。

ドレス姿の女性が一人突然居なくなったのであれば
協力者がいるはずだ。
近くに有るカートには変装したであろう服装が有り
出入り口には監視カメラが設置してあることに気が
つく。

●特命係

監視カメラの映像を見る限りは無理やりでも脅迫された
でもなく男と一緒に出て行っていた。
男性の映像は後ろ姿しか見えていないが、このシルエッ
ト(トレンチコートと帽子姿)に見覚えがあるという薫。

「自称名探偵の”マーロウ矢木”だ」

■チャンドラー探偵社

二人はマーロウ矢木こと矢木明が探偵業をしている
事務所へとやってくる。
矢木は二人を見て一言、

「優秀な探偵と優秀な刑事は惹かれ合う運命に有る」
と語り、ご無沙汰だとして挨拶を交わす。

早速本題に入る。

「今日の午後1時にあなたは何処に居たのか」

矢木はこの事務所で働いていたものの仕事は無かった
と語る。
薫はカメラ映像を突きつけると、とある女性の失踪と
関係した男がここに写っていて、それが矢木と似て
いる事を告げる。確かにこのハットは私を象徴する
大事なものだがこれだけで私だと疑うのか?と問う。

右京が語る。
ここに来るまででは半信半疑だっだが、右京はこの
事務所のデスクに置かれたホテルの館内図があること
を示す。何故里紗を連れ出したのか?
しかし矢木はそれでも認めず、以前にそのホテルには
浮気調査に行った時に使ったものだと語る。
逆に二人は何故ホテルに行ったのかと聞かれた為には
情報提供があり、とある事件を調べていることを語る。

■感想

漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場する
キャラクターで、オリンピックイヤーにだけ登場する
警察官の日暮熟睡男を彷彿とさせるマーロウ矢木
だけど、この相棒にはシーズンに1度だけ登場する
ようなキャラクターは意外と多い。刑事であることを
考えると陣川くんの方にそれに近いのかな。

久しぶりの登場であることは間違いない。
公式ページによると最後に出たのはシーズン10
の頃のことなのでそんなの覚えているか!って感じ
だけど覚えていれば少し幸せになるだけなので忘れて
いても問題無い。

因みにマーロウ矢木が登場したエピソードは、

・シーズン5 10話「名探偵登場」(2006年12月)
https://itawind.web.fc2.com/2006/aibo510.htm

・シーズン10 11話「名探偵再登場」(2012年1月)

https://itawind.web.fc2.com/2011/aibo1011.htm
そして今回
・シーズン22 6話「名探偵と眠り姫」(2023年12月)

12年ぶりの登場となる。

マーロウ関連で気になったのは、相棒のどの時系列で
矢木が関わっているかを忘れているので、薫の時代に
登場させても大丈夫なのか多少心配になったが、
その辺は脚本家も当然調査していただろうから問題
はなさそうだ。
シーズン5の時に一度関わっているので一応マーロウ
の役回りは知っていたことになる。

マーロウは12年前の登場だが、事件は17年前に発生
したもの。誘拐事件が17年前の2006年に起きたもの
だとすると事件列的にはシーズン5の6話から7話の間に
発生している。

最近海外ドラマ「DOC」を見ているとこのドラマと
類似している点が有る。回想シーンの使い方、
記憶の問題などが発生すれば医療ドラマも刑事ドラマ
も似てくる部分もある。

今回のエピソードで慎吾が藤本家で働くことになる
過程で、まだ事情に精通していない頃に里紗の生活
リズムを容易に話して危険に晒してしまうところが
有り罪悪感を抱えて生きている。
事件前から矢木と慎吾が知り合っていたことが分かる
ところなどは意外とDOCっぽさを感じるところが有る。

・シナリオの中の点と点

刑事ドラマに於いて何らかの事象が有った際に
必ずいくつかのポイントがある。

例えば単独犯ではなく協力者が関わっていたとする。
その時2つの点を繋ぐものを見つけるのがドラマの
面白い部分だ。
後付のように分かっていく流れにも見えるが、
最初から全てが分かるはずもない。そしてその関係が
判明していくごとに事件捜査は核心に一歩近づく。

それらは必ずしも人と人だけでない。時に人と物で
有ったり、物と場所などいろんなケースがある。

今回のドラマの核心的な所は17年前の事件と今回
の里紗の奇行の流れにどんな因果関係が含まれて
いるのか。

マーロウと花嫁の接点でも17年前には関わり合い
が有ったのかどうかを想像することは難しい。
色々とそんな点と点を一つずつ繋げていかねば
ならない。

・シナリオの違和感

重箱の隅をほじくることは簡単なことだ。
「細かいことが気になるのが悪い癖」とは右京さん
のセリフだが、色々と目につくことはある。

一つは花嫁がずっと同じ衣装を着て隠し部屋のような
書斎の裏にいたこと。何故着替えさせないのか。
着替えさせる為にカートの中には服が用意されて
いたのではないか。隠し部屋にいる時にはトイレ
などはどうしたのか色々と気になってくる。

17年が経過したが当時から蔵本家で働くスタッフは
その歳月を感じさせないのも違和感が有る。

まるで外出しなかった程のメンタル的トラウマを持つ
事情を演者から感じることがまるで無かった。
そして彼女は行動派の如く積極的にドラマを動かそう
としている。

・いろんな可能性

殺人の容疑者としても多いのがセレブな家系で起きる
金を巡る争いだ。

・遺産絡み (父親は高齢)
・金持ち故の身代金誘拐事件
・家政婦、運転手などスタッフの身上
・老舗同士の契約トラブル

・[事件]

17年前の『眠り姫事件』

被害者 : 水田仁
発見現場 : 港区駿田見
死因 : 転落死
死亡推定時刻 : 平成18年11月12日

●何もないところにフラッグは立たない

記憶は信用出来ないが、火のない所に煙は立たない
わけで、その記憶がどの程度信用できるのかという
よりも、覚えていたことがどのように現在と関わり
があるのか。

引きこもっていたという事実を考慮すると身内の争い
に巻き込まれた感じもするし、身内の中に17年前の
関与の証拠を見つけたのではないかというのが
可能性としては高い。
17年間の記憶が凍結されたままで刷新されずにいた
ことが功を奏したのだろうか。

水田ともう一人の声が記憶の中に残っている。

●過去の捜査での見逃し

17年前の脅迫状に付着したシミの正体を調べて
いない。

水田は当時倉庫係をしていて作業中の怪我で腕が
肩よりもあがらない状態だった事への追求が行われて
いない。

●矢木が襲われる

港区湖浦2丁目の倉庫内で後ろから襲われて
殺されそうになる。令和5年12月4日(月)、午後7時58分
のこと。

尾行していた薫によると彼は紙を見ながら歩いて
いたという。

襲われるということは事件捜査が核心に近づいて
いることだ。

一気に物語は結末へと向かう。

●鋭い観察眼

・慎吾の食器棚に有ったグラスの中に趣味の異なる
ものが有った。常連客への店からの記念品。

・スマホ宛に届いた脅迫メール。矢木はガラケー

・里紗の記憶が蘇ったきっかけを振り下げる。
厨房を覗いた時に気分が悪くなった。
「よもぎ」などの匂いによって記憶が蘇った。

「嗅覚は人間の五感の中で記憶に結びつきやすい」
「特定の匂いを嗅いだ時、それに紐づきやすい感情
を呼び起こす現象 “プルースト効果”」

■結末

一昔前のドラマを見ているかのようだ。
全員を部屋の一室に集めて話をする。

「この中に犯人がいる」

その後の一人ずつBGMと共に顔のアップ画が差し込ま
れる辺りは、「グルメチキンレース・ゴチになります!」
などでもくどいほど使用される演出だが、昔から
刑事ドラマの中でも使われている。

殺された水田は元黒崎堂の営業。
脅迫状によもぎの成分が付着。
水田が転落死した際に聞こえた音と声。

右京に追求された犯人は徐々に興奮して言い返す
ことも出来なかった。

200年続いた老舗を自分の代で潰すことへの恐怖。
そこにはやはり決断があるのだろう。
現在の日本でも老舗の店は世界的な不況とインフレ
で経営が成り立たなくなっているところも多い。
特に百貨店は難しそうだね。

17年前に契約を打ち切った百貨店と老舗和菓子店
が現在になって立場が逆転していたりするとまた
一興だったりしたのだろうけどね。

■その他

・「プレイバック」

「タフじゃなければ生きていけない。優しくなければ
生きている資格がない」

小説レイモンド・チャンドラーの「プレイバック」より。

・「眠れる森の美女」

チャイコフスキーの三代バレエ曲の一つ。

「とある国の王女・オーロラ姫は悪の陽性から呪いを
かけられ100年の眠りについてしまう。その眠り姫の
噂を聞いた近くの国の王子が王女を目覚めさせる話」

・「ロング・グッドバイ」

「開店したばかりのバーが好きだ。しんとしたバーで
味わう最初の静かなカクテルは何物にも変えがたい」

(フィリップ・マーロウが友人と酒を酌み交わして
交友を深めるシーン)

映画「ロング・グッドバイ」(The Long Goodbye/1973)
より。

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (“こてまり”見習い)

矢木明 …… 高橋克実 (チャンドラー探偵社、探偵)

蔵本慎吾 …… 佐伯新 (里紗の父親・「蔵本屋」常務)
蔵本里紗 …… 潤花 (「蔵本屋」の令嬢)
黒崎弘 …… 諏訪太朗 (「黒崎堂」社長)
瀬戸路子 …… 和泉ちぬ (蔵本家の家政婦)
蔵本啓介 …… 石田登星 (里紗の叔父)
蔵本幸次郎 …… 花王おさむ (「蔵本屋」社長)
黒崎潤也 …… 三浦大和 (里紗の婚約者)
水田仁 …… 多田昌史 (17年前の里紗の誘拐犯)
…… 吉川勝雄 (刑事)
…… 菅野久夫 (「蔵本屋」重役)
…… 織田光 (ホテル従業員)
…… 佐藤太三夫 (バー「Verma」マスター)

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