相棒22 第16話 子ほめ

第16話 子ほめ

【ストーリー】

■感想

過去に罪を犯した落語家・橘亭春楽の落語会が
開かれる夜、突然本人が楽屋から居なくなり、更に
別のバーでは出所したばかりのバーのマスターで
ある目黒徹が殺害されて発見される。
目黒が受刑者の頃に、橘亭春楽は社会復帰と更生
の為に民間ボランティアとして落語を教わっていた
事か有り二人の間に接点が有ることが分かる。

※個人的なことで申し訳ないのですが、現在私生活上
の問題で、ドラマの視聴が今まで以上にスローペース
で進んでいるので感想の更新が遅れます。ご了承
ください。

古典落語「子ほめ」の内容を現代風にアレンジした
感じがしないでもないというシナリオ。
「オレオレ詐欺」的心理を巧みに利用して、気の
良い男を利用している印象と、人を助ける行動を
取る印象が混在している。

義理と人情がデーマだ。

落語の中で出てくる主人公は欲しいものを手に
入れる為におべっかを使おうとするが、要領の
悪さ故に願い叶わず、結局オチで締めくくられる。

このドラマでもこの落語のような洒落た落ちが
待っているのか。

シナリオでは人の出会いと人間関係も含めて、
すべての展開が皮肉さを含んでいるし、その人に
降りかかるものは、崩壊と共に再生していることを
示して絶えず繰り返している。

しかし再生するものも居れば尽きるものもいる。

すべてを解くためには過去の事件を掘り下げて
当時の事件からの流れを精査していく必要がある。

●シナリオをよく見て見よう。

根津幸作は息子を失ったが、息子に似た瀬尾福一
が彼の前に現れ、彼を息子の変わりのようにして
面倒を見る。新たな生きがいみたいなものだ。
その執着にも似た子供への愛情は瀬尾が
犯した殺人さえも自らが犯した罪のようにして被る。
これはもちろん自分の過失で息子を失ったことへの
罪悪感は作用している。

再び根津が心を閉ざして感情も表さなくなるが、そこ
で彼の心に息を吹き込んだのは橘亭春楽だ。
橘亭春楽自身も服役する際に弟子は取らないとして
いたにも関わらずに受刑者相手に落語を教え、中でも
根津には特段の興味を示す。

落語を含めたお笑いの世界は罪の種類に関わらず
服役すれば二度と他人を笑わせることは難しいだ
ろう。
一般人にも言えるが社会からの監視の視線は
再び彼らの社会復帰を難しくする程だ。

案の定、橘亭春楽自身も復帰は難しい。
そこで登場したのが瀬尾福一だ。
刑務所の中で父親のようにして親しくしていた根津
を助けてくれた人物の為に彼が落語会に出るのを
後押しする。

しかしその橘亭春楽もまた瀬尾に脅迫を受ける。

●さぁゲームの始まりです

先週も使った項目だな。
tagをコピペしたらこのフレーズが出てきたので
つかってみる。

ドラマを見ていると純粋に他人に対する信頼を
寄せるというのは何処まであるのだろうか。
受刑者ならばその難易度を更に高くなる。

全ては23年前の事件に繋がっている。
働いていた工場の社長は、出所した受刑者の保護司
をしていた。その人物を瀬尾が”脱税している”
と称して殺害している。

瀬尾は目黒とのつながりがある。
目黒が意図して吹聴していたかも知れないが、
瀬尾は根津に罪を被したことを自慢していたという。

目黒の出所後に瀬尾に連絡がついたという事から
もその辺は裏付けされている。

瀬尾は根津のことを父親のように慕っていた所も
ある。刑務所に差し入れしている行動を取っている
ことからも一応義理を通そうとしているようにも
見える。

皮肉にも半グレ同士の繋がりは相手を陥れようと
する流れが有る。
不思議なことに根津、目黒、瀬尾は23年前に同じ
工場で働いていた。その時の事件も知っている。

まだ凶器が見つかっていないことからしても
目黒は根津がそれを持っていると考え、その根津
から橘亭春楽に渡ったのではないかという考えも
また存在している。

●主要な登場人物

ドラマでは登場する人物の多くは過去に何らかの
罪を犯している。

根津幸作、目黒徹、瀬尾福一、橘亭春楽。

今の御時世なかなか更生するにも世間が許さず
一筋縄ではいかない。
それでも更生できるものと出来ないものの違いは
何なのか。

s1の3話に登場したキャラを出演させても、キャラ
そのものは覚えているかも知れないが、内容までは
なかなか思い出させるものではない。

当時の背景を知らなくてもこのドラマに入り込む
ことは十分に出来るが、過去の事件を絡ませるに
辺り、主要人物がそれに該当する場合、やはり
薫が相棒だった頃の人物である必要性はありそうだ。
その為にシーズン7までの中の事件に限られてしまう
ことも有って、振り返るには厳しい。

知っていれば橘亭春楽の人物像や彼が持っている
大切なものが何かが分かって来るだろうし、犯人像
からは除外できると断定できる。

4人の犯罪者は過去に何の罪を犯したのか。
犯罪の性向によっては繰り返す可能性は限りなく高い
筈だ。

■犯歴有る人物紹介

犯罪を犯すと言っても種類はいくつもある。
ただ計画的に犯行を犯そうとするものと、偶発的に
人の命を奪ってしまったものとの違いは相当大きな
違いに該当するはずである。

1) 橘亭春楽

相棒がレギュラー化して3話目「秘密の元アイドル妻」
に登場する。当時は脱サラして落語家になり真打ち
になるという設定だった。そしてそこで行われた
演目は「手紙無筆」。この演目で登場する「手紙」
を当初は「手拭い」で表現していたが、途中から
「扇子」に変更したことで右京の着眼点となり
疑われる素地を与えた。

https://itawind.web.fc2.com/2002/aibo03.htm

今回、目黒殺害の現場に「手拭い」が有ったり、
楽屋に居る時には右京が「扇子」を広げてみる光景が
ある
これらのアイテムを使った辺りは当時のシナリオを
覚えている人へのプレゼントみたいなものだろう。

彼の罪は過去に元アイドルだった人物を助けようと
して彼女に近づく人物を階段から誤って突き飛ばして
死なせてしまうというものだった。

今回は失踪してしまったこと。
寄せの仕事が殆どないとしていた事からも金銭目的
は考えられるが、そんな人物がボランティアで
刑務所の受刑者に落語を教えるだろうか?

因みにクラブの防犯カメラには彼が出ていく様子は
なく彼を襲う侵入者というのも映っていない。
ただし裏口はいつでも開いている。

彼の失踪トリックは実際にはクラブの楽屋に居る
状態だったことだ。

また妻の話では弟子は二度と取らないと語っていた。

2) 目黒徹 (42歳)

バーのマスター。
落語会の裏で発生する殺人事件の被害者。
速水の話によると橘亭春楽は彼と何か言い争っていた
らしいこと。

目黒は何かと根津に引っ付いていたという刑務官の
今戸良輔の証言がある。

角田の情報では目黒は元半グレの幹部。
ゆすりたかりの専門だった。

3) 根津幸作 (68歳)

根津は口数が少なく、また表情にも乏しい受刑者。
ただし落語に関しては相当熱心に取り組んでいたと
いう。
根津に橘亭春楽と目黒の関係を尋ねると、春楽が
殺しをする訳がないことを口にする。

彼は過去に強盗殺人で無期懲役を喰らっている人物。
(2000年10月3日に勤務先の社長殺害)
実際には殺害には及んでいない。

根津幸作は過去に結婚している。
高尾和子がそれに該当する。
二人の間には長男が居たが、目を離した隙に水難
事故死で息子を失わせてしまった。

盗んだ800万円のウチ、200万円を元妻に送っていた。

「残りの600万円が何処にあるのか」

次第に彼は末期の膵臓がんであることがわかり、
医療刑務所に移転する。

4) 瀬尾福一(42歳)

当時は18歳。
板橋区大富に住んでいた。
生きていれば根津の息子である福太郎と同じ年頃。
根津は亡くなった息子の姿を重ねていたので
守ろうとした。

彼は実際には服役していない。
別件では事件を起こしているが、未成年故の事件で
保護司の工場で働いていた。

●橘亭春楽は何かを調べていた

妻の許可の元で春楽の部屋を見せてもらう。
そこに有るのは根津が犯した当時の記事のスクラップ。

根津は当時板橋区の郊外に住んでいて、勤務していた
のは豊島区・巣鴨にある百川鉄工所だ。
そこの社長の百川賀津夫(63歳)が2000年10月3日から
4日にかけて殺害されているが現場に残った証拠から
根津が犯人だとされた。(後に調書を見ると死亡時刻は
23時となっている。)

刑務所で使用するボランティアノートには
「子ほめ」「猫の皿」「手紙無筆」「つる」
などが有った。

2000年と言えば今から23年前。平成で言えば12年。
担当したのは巣鴨中央警察署。

鉄工所の金庫から800万円が盗まれて、現場には
名前入の帽子が落ちていたことが決定的な証拠と
なる。しかしこの事件はあまりにも犯人が自分が
犯人であるということを主張しすぎている。

凶器が発見されていない。
本人は三善川に捨てたと供述するも疑わしい。
水深は僅か30cmの川だ。

●新宿区西新宿

「200万円は亡くなったふくの墓を立ててほしい」
として元妻に送ったものだった。

元妻の家の壁には福太郎が書いた絵が飾られている。

根津に定期的に雑誌や日用品を送っていたものが居る。

「根津福太郎」

当然住所を尋ねるがそこに人は居ない。
23年前の事件の共犯者説を唱えていたが、刑務所に
差し入れしていた人物が共犯者だと思われる。

根津と何処で出会ったのか。

百川鉄工所の当時の社員リストを見る。
この会社の社長は保護司も行っている。
瀬尾福一という人物がリストにある。

その瀬尾が現在の速水だった。

福太郎と同じ年(当時18歳)で根津幸作が気にかけて
いた人物。

●争奪戦

犯罪者たちが探していたのは鉄工所の社長を殺害
した凶器だった。

ふくちゃんは亡くなったが当時の父親・根津幸作
との間に秘密があり、「ふくちゃんのいえに隠した」
(お稲荷さんの祠)

皆が求めていたのは、「23年前当時の殺人事件の凶器」。
特に目黒がその動きに気がついていたので、強請って
金を得ようとしていた。

音楽は根津のことを調べていく内に、共犯者の存在
に気がついていた。共犯とは名ばかりで、実際に
殺害を犯したのは瀬尾。

「瀬尾の母親の心臓の手術を受けさせなければなら
ないが、その為には現金が必要」
「社長は脱税の金を相当溜め込んでいる。見張って
いてくれるだけで良い」

そう言われた根津は嘘だと知らずに失った子の為だ
と洗脳されるようにして彼を守って事件の証拠が
すべて自分に向くように工作した。

●最後の選択

末期の膵臓がんで刑務所からは出ることなく亡くなる
であろう根津。

最後の選択として根津に突きつけられたのは病気の
ことではなく、

「今、あなたが守るべきは誰なのか?」

あなたの愛する息子の名を語り犯した罪を償うこと
無く逃げている男。

vs

あなたの身を案じて身の危険を顧みること無く懸命に
なっている男。

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト)
*土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ)

橘亭春楽(倉本雄一) …… 小宮孝泰 (落語家)
倉本美奈子 …… 大西結花 (家族料理「美奈子」の女将)
根津幸作 …… 菅田俊 (南多摩刑務所受刑者)
瀬尾福一 …… 瀧川鯉斗 (元「百川鉄工所」社員・偽名「速水」)
…… 金田将浩 (18歳時の福一）
目黒徹 …… 大賀太郎 (42歳、バーのマスター・元受刑者)
今戸良輔 …… 西本竜樹 (南多摩刑務所刑務官)
高尾紺子 …… 小野沢智子 (根津の元妻)
百川賀津夫 …… 石井浩 (「百川鉄工所」社長・23年前殺害される)
根津福太郎 …… 二ノ宮陸登 (根津の息子・川で水死)
…… 齊藤裕亮 (元「百川鉄工所」社員)