相棒22
(2023年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)(6)(8)(9)(15)(19)(20)
権野元(3)(7)(10)(16)
守下敏行(4)(5)(17)、川崎龍太(11)、徳永富彦(12)、
片山耀(13)(14)
脚本:神森万里江(1)(2)(13)、岩下悠子(3)(5)(14)、
森下直(4)
光益義幸(6)、瀧本智行(7)(8)(17)、
輿水泰弘(9)(10)(19)(20)
田村孝蔵(11)(12)、川﨑龍太(15)、竹内清人(16)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
第20話 トレードオフ ~ AI右京の完全推理
【ストーリー】
■動画投稿サイト
『ごきげんよう、私は警視庁の名探偵と呼ばれている
杉下右京です。世間を騒がせた乙部教授襲撃事件、
そして元東都TVプロデューサー西村拓三殺害事件、
この二つの事件の黒幕は内閣官房長官・武智淑郎
で間違い有りません』
●特命係
右京がやってくる。
薫は動画に対して一体どういうつもりなのかと問う。
右京は『身に覚えがないことです』と語る。
●警視庁・幹部たち
衣笠に呼び出された右京は幹部らの前で動画に件で
質疑応答が行われる。
○衣笠は右京を問い詰める。
「『身に覚えがない』の一言でひの騒ぎが収まると
思っているのか?」
右京はそれは別問題であり、あの動画はどういう
つもりで掲載・投稿したのかを問われたから答えた
ことであり、僕がしたことではない事を語っただけ
だという。
○内村はそれなら誰がしたのかと問われると、
「恐らく生成AIによって作られた動画」
「ディーブフェイクに警鐘が鳴らされたころから
AI技術は目覚ましい飛躍を遂げている」
「いずれにしても着せられた濡れ衣、きっちり晴らし
ます」
右京語る。
○大河内は、
「真相究明の捜査、真偽の判断は然るべき者が担当
する」「右京は当分謹慎だ」
○衣笠から、
「お前はそう言われても聞き流すだろうが、お前の
勝手な行動はボスの身体に大いに関わるので肝に
銘じろ」
と言われる。
●特命係
特命係に戻るとそこには直属のボス”甲斐峯秋”も
来ていた。右京は薫たちから色々と聞かれる。
右京は改めて動画は僕ではないことを告げると、
○峯秋は、
「それは最初から分かっていること。」
「誰が何の為にくだらない真似をしたのか?」
それを突き止めないといけない事を告げる。
しかし右京は謹慎処分なのでさっさと帰宅してしまう。
・帰宅途中の公園
子供が右京の元にやってくると彼女は
「おじさんはコナンの友達なのか?」
と問う。母親たちがおじさんの事をそう言っている
という。それを否定する右京。
そんな中右京の携帯電話に薫から電話が鳴る。
「これは陰謀です。もうアチコチで・・」
右京は何のことを言っているのか理解できない。
警視庁ではあの動画を本物と認めて武智に謝罪する
そうだと語る。
■記者会見
大河内首席監察官が会見の場に立つ。
「当該刑事に謹慎を申し付け現在懲戒処分の
検討をしている」
武智も会見の場で、
「警視庁より正式に謝罪をいただきました。この件は
以上は問わない。警視庁幹部の責任については
当該刑事直属の上司くらいで十分でしょう」
・衣笠は峯秋の元へ
衣笠はあなたも謹慎していただけないかとし、
調子に乗って出過ぎた真似をすればあちこちから
反感を買うだろうと語る。
■港中央署
角田は所轄の少年課の伊坂久司と会う。
角田は部下だと称して変装している右京を連れて
来ていた。
「服装は個人の自由、基本人権の尊重だ」
・多賀が収監されている留置所
井坂は留置所に入る角田の部下を見て初めてそれが
右京であることを知る。
「人は扮装に目を奪われると、着ている人物には注意
を払わなくなる」
角田は多賀に対して山本大輝を知っているだろうと
して携帯の画像を見せる。チンピラで有り、未成年の
君から金を脅し取っていた人物だという。しかしもう
安心して欲しいとしこの動画を見てくれと語る。
多賀からこれまで脅し取って来ていた母親代わりの
借金について肩代わりさせるような無茶をしたこと
を謝罪。元々未成年の彼は借金は出来ない。
借用書も無効だとして目の前で破る。今まで脅し取っ
た分については警察に預けたので受け取ってくだ
さい。
とのことだった。
角田は話はついたので肩の荷を下ろすよう告げる。
右京はそこで例の2000万円を手に入れたいきさつを
話してもらえないかとし、話せばその金は没収だが
そもそも君は金儲けの為に傷害事件を起こしたので
なく、理不尽な借金への返済目的だったこと。
このタイミングで罪を償い人生をやり直さないか
と告げる。
■感想
いよいよ相棒22の最終話。
19話・20話の二話続きで放送していたドラマの後編
です。見たのが休日(春分の日)前になってしまい
ましたが、私は休日ではないので時間を作って
書いていこうかと思います。
シーズン22は一言で安定シーズンだったな。
サイバーセキュリティ班である土師くんの役割を
上手く活用している事と、鑑識の益子の地道な作業、
角田が持ち合わせている組織犯罪/半グレなどの情報が
合わさり、上手く捜一と特命係たちの現場での捜査
を円滑なものにしている。
相棒というのは大きな枠で捉えると、実は捜一と
特命係の事なのではないかと思う程だ。
これも篠原さん演じる捜一の出雲麗音の役割が大きい。
この人は何気にバランサーとなって互いのチーム
の良さを引き出しては活用している。
最終話で用意されたものは生成AIなどの
「テクノロジー」による未来への期待と不安、
「SNSを利用した情報の伝達と拡散」。それを
公開したことに対する利点と欠点を浮かび上がらせた。
残念ながらネットに挙げられた情報はなかなか
払拭するのが難しいことだ。
冒頭で右京が悪者のような扱いを受けた後に、
公園で子供が近づいてきたシーンは、正直普通の
親御さんならば彼に近づけるような真似はしない。
それを受けて右京さんが熱くなるシーンを見てみた
かった。
これらはシーズン初回の頃から警鐘を鳴らしていた
部分がある。ドラマの中では「ディープフェイク」
を引き合いに出していたけど、その頃から見ると
一気に進化したところも有るし、情報の流れの
抑制難しく、情報の真偽を探るまでの間は人を操る
ことも可能だ。そしてそれ以降情報の刷新が行われ
ない人には右京は余程の特異な人物として永遠に
思い込むのであろう。
今後より動画生成の精密度・完成度が高くなり、
情報の拡散によって人々が惑わされていく時代に
なっていく事は想像に固くない。これはドラマで
はなく現実世界のことも指している。
●事件
ドラマで起きている事件は明らかにパワハラが絡み
であり、結果的には政治家がそれを利用すると
無限のエネルギーを発するものだなと思わせた。
更にその中には男尊女卑の要素も取り入れて、女性が
犠牲になり男性が出世するという構図が有るのかと
思っていた。
美彌子は石川によって危険にさらされ、下川家は
夫婦の間で出世と退任という構図が有る。
普通に見ていればそう取れる。
あまり風呂敷を広げすぎると難しいことになるので
内密に処理するという選択肢も有ったのかなと思う。
何処かでイントラネットを構築して必要な相手に
だけ情報を流すのでも良い訳だからね。
●時代は下剋上
・内閣情報官での謀反。
美彌子は石川から「右京の動画を作ったのは内調の
仕業」だと官房長官に嘘を吹き込む。
・榊幹事長を救うために下川が指揮権発動し辞任。
・どさくさまぎれに峯秋を辞めさせようとする衣笠。
●右京を怒らせたが故の因果応報
生成AIで作られた右京さん。毎回同じフレーズから
始まるメッセージを、国民にそして事件に関わった
人物に向けて発信される。
同じフレーズで登場し背景だけが変わる。
まるで「Doctor Who?」とか「LOST」の様でインパクト
が有って笑える。
右京さんは元々淡々として捜査しているし、何を
考えているのか分からないところもあるからね。
動画が流れるシーンを見ると・・
・国民に向けて乙部襲撃事件、西村殺害事件の黒幕
は内閣官房長官・武智で間違いない。
・西村殺害の犯人が浮上した後、右京は捜一に向けて
動画を送る。
「アリバイを打ち砕いてご覧に入れましょう。正義の
名にかけて」
・内調の美彌子に向けて発する。内調が流布した
フェイク動画だったが、黒幕が武智であることに
間違いないというフレーズを気に入り、ずばり核心
をついたものだとしていた。全てが明らかにされた
ときになってこの最初の動画が効果を発揮すると
いうものがあるのだろう。
・武智本人に動画が渡る。西村のオフィスが豪華
過ぎること。その金は一体どこから来たのか。
途中で話を途切れさせて上手いこと相手の焦りを
引き出してイニシアチブを奪っていくところは
凄いかも知れない。
・マスコミに向けて右京は昨夜武智を殺害したこと
を動画で流す。
「狡猾な黒幕に対する最終手段です。正義の名に
かけて」
●新たな殺害事件
実は武智が死ぬことも無かったのではないかなと
思わざるところがある。彼は元々鶴田翁助イズムを
受け継いだ人物だからだ。
この人物と同じ様にして一生牢獄に入れるという
のも悪くはない。
●嘘が真実に変わる時
右京の動画は明らかにフェイクだったにもかかわらず
衣笠や大河内は本物と認定して謝罪した為に、
誰かがドラマの中で語ったように因果応報の展開と
なった。
内調が動画を制作したことを認めさせると共に
これは美彌子の意図ではなく石川の仕業である事
を語る。しかし石川は認めようとしない。
更に誰かが何処かで語ったことだが、果たしてどちら
が泥舟だったのかということ。
●今回のテーマは変装だ
情報操作をし続けてきた武智、衣笠、石川。
そして下川もまたアリバイがあるとしていたが、
防犯カメラに写る女性は実際には尾上の妻だった。
・冒頭で発生した乙部襲撃は内調(石川)が多賀に大金
を渡したものだった。
・西村は武智と金の関係で結ばれていた。
・ドラマで死亡した二人はそれぞれ尾上と下川が
実質的に殺害したものだった。交換殺人のような
形になるのかなと思っていたけど、それはなかった。
尾上は正義感がちょっとしたことで狂ってしまった。
最初の事件を犯した多賀もそうだしね。
その軌道を修正するのが刑事の仕事だったのか。
色々と変装したいたシーンも多い。
右京は名探偵風の装いをしていたし、多くの人物が
金の前、権力の前では「羊の皮を被った狼」だった。
それにしても相変わらず衣笠はまるでお咎めなし。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、特命係)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト)
土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ)
社美彌子 …… 仲間由紀恵 (内閣情報官)
石川大輔 …… 林泰文 (内閣情報官・秘書)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警視庁警務部首席監察官)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁長官官房付)
下川阿貴 …… 黒谷友香 (法務大臣)
尾上欣悟 …… 甲本雅裕 (東京地検特捜部部長・教養指導課に左遷)
下川勇一 …… 森岡豊 (阿貴の夫)
井坂久司 …… 岩男海史 (港中央署少年課刑事)
多賀潮 …… 島田裕仁 (乙部を襲撃した少年)
西村拓三 …… 内藤裕志 (元東都テレビプロデューサー)
山本大輝 …… 七枝実 (チンピラ、借金の取り立て)
尾上 …… ヤマグチ尊子 (尾上の妻)
船山拓也、白河葵、鈴木豊、福岡幸穂、村田みゆ
武智淑郎 …… 金田明夫 (内閣官房長官)
鶴田翁助 …… 相島一之 (回想:元内閣官房長官)
カジヤ …… (中目黒のバー”リアージュ”の給仕)