特捜9 S7
(2024年4月期・テレ朝・水曜21時枠)
製作総指揮 : 大川武宏
プロデューサー : 川島誠史、森田大児、土井健生
監督 : 豊島圭介(1)(2)、濱龍也(3)
脚本 : 徳永富彦(1)、瀧川晃代(2)、たかひろや(3)
音楽 : 吉川清之
主題歌 – 20th Century「旅立ちの鐘」
第3話 新たな地へ
【ストーリー】
・イントロ
4月14日(日)
国木田は墓参りに行く。
・American Club
この日、浅輪直樹が有給で倫子と旅行。
その為、新人である新藤、高尾。三ツ矢は集まる。
先輩の抜けた穴は大きいが、これは若手の成長を
見せるチャンスであること。
しかし三ツ矢は自分は特捜班ではない事を告げる。
そんな状況の中、店の外にパトカーが通る。
上で何か有ったのか。
三ツ矢に対して新藤は現場を見ていた方が良いと
して一緒に連れて行く。
■千代田区レンタルスペース
現場刑事は駆けつけた新藤らに状況を報告する。
室内の床では人が背中から血を流して倒れていた。
・窓は施錠されていた
・血のついた凶器の包丁は近くに落ちている
・レンタルスペースは基本利用者以外が中に入る
ことは出来ない。
刑事によると漫画の企画書が落ちていたという。
仮タイトルに異世界BOND(絆)と書かれていた企画書。
被害者は(株)新保出版「ヤングスピード」という
青年誌の編集者の門倉裕一(40歳)。
昔からある青年誌だとして新藤は興奮する。
「奏(かなで)の月」の作者・源丸を知らないのか?
と三ツ矢に尋ねる。
新人賞で20年ぶりに大賞を取った新生。
連載デビューの前なのに天才だと呼ばれていた人物。
新藤は“防犯カメラ”に気が付き管理会社に問い合わせ
るよう告げる。
○高尾は第一発見者から話を聞く
発見・通報したのは同じ出版社の星川敏志(35歳)。
午後6時から小松翔吾(53歳)の送別会が有り、自分が
幹事だったので先に来たという。小松はこの前ウチ
から異動し、今は配信向けの兄妹誌、電子コミック
誌「コミックベータ」の副編集長になったとのこと。
この場所は午後2時から借りていた。
午後6時から送別会なのに少し早いのではないかと
尋ねる高尾。最初は4時からにしていたが編集長
の門倉が急に指示してきたのだという。
先に来た編集長がドアを開けていた筈なのにおかしい
と思った。電子ロックを解除して入ったら門倉は
倒れていたという。
「早く来た理由は?」
編集長は一方的に指示する人で理由は教えてくれない
という星川。
●有給中の浅輪家の人々
二人で千葉勝浦の海辺で食事をしていた所、
自転車に乗った二人を追いかけ落とした物を渡す。
時計にばかり目を向ける直樹に倫子も気がついていた。
「旅行の間くらい仕事のことを忘れたら? 新藤くん
も気遣ってくれているのだろう」
「そんなに気になるならば電話すれば良い」
しかし直樹は大丈夫だとして食事に戻る。
■監察ラボ
「千代田区レンタルスペース内マンガ編集長刺殺事件」
監察医の真澄から遺体を調べて分かったことを聞く。
死亡推定時刻は午後2時から3時、
死因は背中を刺されたことによる失血死。
現場にあったナイフと傷の形状は一致。
ナイフはレンタルスペース内の備品で指紋は拭き
取られている。
■特捜9のオフィス
今回の初動捜査は事件発見当時に現場の近くに居た
若手チームらしいという矢沢。志保は直樹が
居ないのにウチでこの事件を受けても大丈夫なのか
と問う。若手がやる気になっているので好きにやらせ
ようという青柳。
・班長・国木田がくる
志保は事件を受けるならば尚気に戻ってきてもらう
ことを語る。しかし国木田は有給中なので駄目だと
いう。現場に有った門倉の企画書から本人以外の指紋
が検出されている。そしてドアノブの指紋がその
指紋と一致していること。ノートパソコンの電源部分
だけがコンセントに挿さったままだったことから
犯人が本体を持ち去ったのではないかと推察する。
防犯カメラについてはどうだったのか。
三ツ矢によると先週から故障しているという。
しかし入口の施錠・解錠の記録は残っていること。
今日最初に開いたのは午後2時。その30分後に一度
施錠されている。その後は4時までは鍵が開いて
いなかった。
鍵をあける時には暗証番号が必要だが、閉める時は
施錠ボタンを置いだけで良い仕様だった。
暗証番号を知っていたのは第一発見者の星川と
被害者・門倉だけ。先に門倉がここを訪れている
との証言が有り誰かと会う目的があった。
その人物と何らかのトラブルになったのか。
■感想
今回は浅輪直樹が有給で休んでいたので捜査を指揮
せず、若手の捜査官、新藤と高尾、そして三ツ矢が
捜査を主導し、ベテラン組は彼らの捜査をカバー
していく。指揮者の無い状況の中、若手捜査官たち
は浅輪が居なくても暴走せずにきちんと捜査を行う
事ができるのか。
人間の上下関係によって仕事が立ち行かなく
なっていることはこの世の中には数多いことだろう
年功序列の日本の社会に有って、新人に才能が有った
としても積み重ねてきた経験を優先する形で
若手に全権を委ねることに難儀を示す。
逆にこの世の中には潔い人も居て、若手の成長を
感じ、後継として申し分が無いことを感じたら、
後進に道を譲る人も居るかも知れない。
上司が部下に対して怒る中にも、その時々で色んな
事情が存在する。
自分にとっては完璧な仕事をしたと感じても
経験者からすればそれには遠く及ばない。
その様な場合、上司として部下に対してどう対処する
のか。そして上司に否定された部下側はどう感じる
ものなのか。
当然気分が良い筈はない。
プライドが高いほどに上司の意見を聞き入れることは
難しそうだ。
今回複数のそのようなケースが提示され、人となりの
対処や対応、そして受け取り方というのを見せられる。
現代社会に於いては大抵そんな誤解を取り除くケース
の為のコミュニケーションは不足している。
怒られた方としては、自分に非があるわけではないと
考えて、上司の方が悪いと決めつける。
上司が独断でなんでも決めるようなワンマンぶりを
日頃から見ていればその思いは強くなるはずだ。
その不満が積み重なっていくことで、自分に自信を
無くしてフェイドアウトするか、相手の方に怒りの
ベクトルを向けて、相手を排除すべく危害を加えて
いくか。
・国木田が捜査に関わるメンバーを見る視線
・浅輪が感じる新人たちへの期待と不安
・事件関係者(出版社)の上司と部下の関係
(小松と門倉、門倉と星川、出版社と漫画家、
漫画家と漫画家など・・)
今回は心に秘めていた相手への不満の気持ちが爆発
した形で殺人事件として発展してしまったケースで
あった。
中にはかつての上司と部下の立場が逆になった際に、
仕返しされたと思って誤解していた者が居る。
しかし捜査して行くウチに、それはむしろ尊敬の意味
を込めてライバル視していたことが分かる所は、
このドラマの特徴てあり、それが色濃く現れた。
警察サイドの事情と出版社関係の事情の中には
共通する流れが有るが、その違いとは何かを見て
いくところが今回のドラマの興味深い点だ。
■強引さが確かにある
殺された編集長も強引な性格をしていたみたいだし
かつての元編集長にも強引さが有った。
部下と言えど真面目に仕事に取り組んでいることを
否定されたら気分は良くないし、ちょっとした高圧的
な態度も問題である。結論を早く出したいものに
とっては自分の思い通りにいかない流れに怒りを
感じたことであろう。
展開上のサプライズとして存在しているものが有る
が、この流れは相当強引なものに思えた。
浅輪が何故休暇を取ってこの土地に来たのかという
理由付けが一つでも有れば筋の通る一本の流れとして
面白くつながったのだろうけどね。
まぁ「相棒」でも特命係が事件関係者と近い位置に
居て偶然と言うなの必然的な流れになることはある
のでその辺は大目に見る他無い
■現場百遍
実際に足で稼いで関係者から話を聞いて回る必要性は
感じるところ。
もう少し効率よくリモートで話を聞いても良いのでは
ないかと思うところもあるけれど、人と向き合って
話を聞くのは捜査上ではとても重要な要素である。
今回はアリバイが事件解決するのに重要な要素と
なった。
裏取りの為に関係者の全てのアリバイを聞いて回る。
何処に居たのか、誰と一緒に居たのか。
そして本当に証言通りの時間にそこに居たのか。
その嘘に気がついたのは青柳さんだったね。
現場の防犯カメラが壊れているというのはお約束
だったけどね。
肝心のカメラは壊れていたが最後にパソコンが盗ま
れた際に源丸こと花鈴は犯人を見ている。
「男の手だった。そしてペンダコが有り左利き」
■国木田の事実上の一線からの撤退
事件当時者は送別会を行おうとしていた。
そして捜査官の中でも今回は直樹の上司である
国木田は別の道に進むことを決めていて、
フレームに出てくる度に彼は部下たちに声をかける。
それは彼らが持つ長所を述べて回ることだ。
・新藤へ
成長した姿に感心した。このまま自信を持って浅輪
くんに負けないように。
・青柳へ
あなたのスピード感のある発想が大好きなんですよ。
喧嘩しても良い。それが特捜班の活力になっている。
これからも自由な刑事でいて欲しい。
・矢沢へ
あなたの機転や対応力が有ってこそのコンビネーシ
ョンですからこれからも勤勉な刑事で居て下さい。
・志保
あなたのそういった行動で救われている人は沢山居る。
これからも痛みに寄り添う刑事で居て下さい。
・高尾
あなたの成長ぶりをここで最初から見ることが出来て
良かった。これからも真っ直ぐで情熱を持った刑事
で居て下さい。
■その他
●ネーム
漫画家の使うネームとは漫画の設計図みたいなもの。
・殺しを決意させた言葉
「自分の作品を大事に出来ないあなたが漫画家に
向いていると思いません。今すぐ辞めたほうが良い」
実は殺された門倉も新入社員だった15年前に小
松から似たような言葉を言われたことがある。
企画が通らずその企画書を叩きつけた時に言われた
言葉だ。
・浅輪夫婦が行った旅行
千葉勝浦
■出演者
浅輪直樹 …… 井ノ原快彦 (特捜9・主任)
小宮山志保 …… 羽田美智子 (特捜9・警部補)
青柳靖 …… 吹越満 (特捜9・警部補)
矢沢英明 …… 田口浩正 (特捜9・巡査部長)
早瀬川真澄 …… 原沙知絵 (監察医)
新藤亮 …… 山田裕貴 (特捜9・巡査)
高尾由真 …… 深川麻衣 (特捜9・巡査部長)
三ツ矢翔平 …… 向井康二 (捜査支援分析センター)
国木田誠二 …… 中村梅雀 (警視庁・警部)
浅輪倫子 …… 中越典子 (直樹の妻)
小松翔吾 …… 小松和重 (53歳、「コミックベータ」副編集長)
門倉裕一 …… 天野浩成 (40歳、「ヤングスピード」編集長)
平花鈴 …… 平澤宏々路 (浅輪が旅先で知り合った絵の上手い女性)
大田原信子 …… 宍戸美和公 (ベテラン人気漫画家)
星川敏志 …… 大津尋葵 (35歳、「ヤングスピード」編集部員)
菅谷光誠 …… 山本圭将 (大田原のアシスタント)
三川俊介 …… 久保田武人 (ヤングスピード」編集部員)
和合 …… 宮崎隼人 (連載を打ち切られた漫画家)
…… お宮の松 (漁協職員(平花鈴の近隣住民))
…… 畦田ひとみ (喫茶店 店員)
…… 三島依 (新保出版 受付嬢)
堀内浩人 …… (「ヤングスピード」編集部)
中園哲 …… (42歳、「ヤングスピード」編集部)
川野菜乃花 …… (22歳、「ヤングスピード」編集部)
坂本隆斗 …… (53歳、「ヤングスピード」編集部)
佐々木夏穂 …… (「ヤングスピード」編集部)
北島知佳 …… (「ヤングスピード」編集部)
志賀晴彦 …… (「ヤングスピード」編集部)
加瀬信行、狩野絹成、出井景梧
漫画の協力
かたてわざ、YuNA、りんご村、みさと