相棒22
(2023年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)(6)(8)(9)、権野元(3)(7)(10)
守下敏行(4)(5)、川崎龍太(11)、徳永富彦(12)
脚本:神森万里江(1)(2)、岩下悠子(3)(5)、森下直(4)
光益義幸(6)、瀧本智行(7)(8)、輿水泰弘(9)(10)
田村孝蔵(11)(12)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、古革昌実、
土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
第12話 惡の種
【ストーリー】
■階段下 / 池袋の裏路地
ゴミが散乱しネズミも見られる不潔な場所。
特命係と少しラグを置いて捜一の三人がやってくる。
特命係がいることに不快さを覚える伊丹だが、
薫は参事官直々の任務の帰りにこの騒ぎに出くわした
のだという。
「いけふくろう」が落書きされたのでその掃除の
手伝いをしてきたという右京。
伊丹はそれを聞いて安心すると共にお前らを辞めさ
せたいから惨めな仕事を振っているんだと語る。
右京は遺体を見る。
後頭部に外傷がある・・階段から落ちた時のものか。
益子は着衣にも誰が有り近くに胸元のボタンが
千切れて落ちていたことを語る。もみ合いになり階段
から落ちて頭を打ったのか。
右京は被害者のサイフを勝手に調べていく。
「24弁当、日暮里店店長 吉口秋夫」(荒川区)の名刺
1万9千円の所持金と全てがピカピカの硬貨。
しかし一見新品に見えるが硬貨を見ると昭和49年や
昭和53年などに製造されたもの。
「洗ったものなのか」
手帳も入っていて何かが書かれていた。
・12月5日の日程を見てみると、
9:00 佐藤さん宅
11:00 町内会長来店
「スニーカーで打ち合わせに行った。誕生日のお祝いに
妻が飼ってくれたものだと話すと笑いながらわざと踏みつけて来た」
・12月23日のところを見ると、
「歩道橋の上で大声でどなれ付けられ謝らないと契約
を切ると脅された」「突き飛ばされてもう少しで
階段から落ちるところだった」
右京は内容からして相手はフランチャイズ本部の方
なのかと告げる。
今どき信じられないパワハラだという出雲だが捜一
は別の事件の捜査に行ってしまう。
持ち物の中には「ワイアット」と書かれたものが
入っていた。この字だけは他の字と微妙に筆跡が
違うものだった。
■24弁当 市ヶ谷本社(新宿区)
捜一の三人は本社に来ていた。
24弁当(日暮里店)を担当していた内田隆一から吉口
のことを聞く。吉口が亡くなった事実を知り驚く彼。
昨夜11時から1時までのアリバイを尋ねる。
しかし彼は自らを担当だと言ってもアシスタントで
有り、チーフの河野が実質的に担当していたとの事。
ホワイトボードの名前の中にも確かに河野は吉口に
会っていることが書かれていた。内田は昨日は休み
だったとし、ホワイトボードを消すのは自分の役割
だったが、今朝は消してあったという。
「河野はどこに居るのか?」
「東大泉店(練馬区)の店長と遭っているのではないか」
と言われる。
捜一が社屋に出た後、特命係がやってきて内田に
質問する。
「ワイアット」に心当たりはないか?
■24弁当 東大泉店(練馬区)
捜一は河野を追って店に来る。
吉口夫婦が働いていた弁当店へ。
河野について尋ねる。今までパワハラを受けたことは
ないか?
男はそれを否定する。
■24弁当 日暮里店(荒川区)
特命係が話を聞きに行く。
吉口則子によると、被害者の夫・秋夫は9年間一日も
休まずに店に立っていたという。ウチの弁当を
あてにしている人も居る。バイトが来ない時にも
一人で仕事をしていたこと。
「本部の人から嫌がらせを受けたことはないか?」
会話していると緒方という常連客がやってくる。
475円のお釣りだがレジには入っていなかった。
則子は奥から小銭を持ってきて渡す。
右京は下駄箱に入ったスニーカーが誰かに踏まれて
ゲソ痕がついているのを目にする。
小銭について尋ねると音が昔から貯めていたもので
どれも新品の様に綺麗なものだと語る。
■感想
町中の階段口で人が倒れて亡くなって発見される。
後頭部に外傷が有り、着衣に乱れがあることから
見て、階段の上でもみ合いになった末に転落死した
事件ではないかとして捜査が開始される。
被害者は弁当チェーン店の店長・吉口。
彼はスケジュール帳に細かくその日の事が記載して
あり、その流れから犯人捜しをしていくが、
調べていく内に、謎の文字が残されて居たり、他にも
関連性がありそうな事件に遭遇していく事になる。
被害者が小銭を沢山持っていたことやホームレスの
流れが絡んで来ていたので、私は小銭は何処かの
神社にお参りに来た人たちからの金を盗んだもので
有り、ホームレスによってそれを見られていて
脅されていたので殺したのかなと思って観ていました
が、まるで違うものでした(+_+;
彼が所持していた硬貨が新しいとしていたけれど、
全然綺麗に見えなかった。それを洗ったものかどうか
をよく見極めたなという印象だった。
テーマはパワハラというよりも食物連鎖なのか、
それともカルマなのか、それとも誘導・コントロールなのか。
加害者だったものは被害者になっていく不思議な構図。
人間は自分より強いものには低姿勢であり、弱いもの
には、圧倒する優越感から追い詰めては。他人が苦しむ
ことを見て楽しんだり、自分の力を確認するようにして
それを誇示して、自己欲求を満たそうとする。
権力や組織に立ち向かおうとする者もいるが、
それはあくまで人対権力であり、人対人となると話は
別だ。
会話やシナリオの流れからすると、ドラマはフランス
作家・アルベール・カミュの「ペスト」の中で起きて
いる「不条理」の様な状況設定に有り、現代社会に
当てはめて描いたような内容だった。
一見するとマジメで周りからの評価は高く、本人は
善行のつもりで行動するものもあるが、その思考は
何処かねじ曲がっている。裏で行っている悪態・悪行
の数々。
自分よりも下だと思っているものをゴミの様な視線で
眺めてそれを排除していこうとするような行動を
みせる。
興味深いのはみんな”メガネ”をしていたことだ。
どの人物も気難しい人物の様にしてメガネをかけて
いる。先日のエピソードでもメガネが人を誘導する
為の道具のようにして使われたが、今回のエピソード
はそのメガネの人物を操る人物が裏に居ると思わせる
ものだった。
新型コロナウィルスのような流行病はコントロール
することが難しい。しかし人の心というのは意外と
コントロールしやすいものがあるのではないか。
twitterやyoutubeなどを見ても事の真相は分からない
がどれだけ真実味があるように書くかで赤の他人を
コントロール出来る。そこには収益なども関わって
くるから厄介だ。
そんな感じで最後は皮肉にも操られている人たち
が起こした事件で、ドラマは覚えているかどうかも
分からない過去の「逆五芒星事件」を匂わせる結果
となった。
私は寧ろ途中までは法律的に裁けない人物を自己
判断で裁いて似非ヒーローと化していった甲斐享の
事件を思い出した。その前段階として笛吹悦子を
先日登場させたのかと・・
40分後くらいに内田がパワハラを受けて落ち込んで
いると接触する人物がいる。意図的だと思うが
そのメガネのレンズに薄っすら映っている。
ダイナブックのPCの上で「植物連鎖」という漢字を
内田に見えるように書いている。
最後はバスに乗せて彼が原宿の公園に行くように誘導
する。そして犯罪を相殺させるかのようにして事件を
終わらせてしまった。
ラストに出て来た車椅子の人物ともう一人その傍にいた
人物は果たして!?
■新・逆五芒星事件?
●24弁当 日暮里店・店長 (荒川区)
☆吉口良雄、吉口則子
・良雄が殺されたのは池袋(豊島区)の階段
・令和5年1月28日 日暮里でホームレス殺人
・被害者(ゴンちゃん)は後頭部を鈍器で殴られていた
・凶器は袋状のものに何かを詰めたものと推定
・ゴンちゃんは難しい本を読んでいた
「楽観主義者のキャッシュフローゲーム」
(書籍の中に「非凡人」と書かれた付箋)
・ホームレスが町を汚すものだとして彼は思い込み
が激しくなっていった。
●24弁当 市ヶ谷本社 (新宿区)
☆内田隆一(アシスタント)、河野(チーフ)
河野が内田の資料政策に難癖をつけていた。
資料の裏に「食物連鎖」の付箋。
河野・・退職届を出してから連絡が付かなくなる。
スマホのGPSで居場所を調べる。
ホワイトボードを消した内田は左利き。しかも
消し方は中途半端。
今朝のホワイトボードは河野が消したとあるが、
明らかに内田が消している。
吉口を殺したのは河野のように思われたが、実際に
は警察の捜査をかく乱していた内田。
河野にはアリバイがある。
更に河野が退職したのは内田が逆にパワハラを
受けていることを人事に話して追い出していた。
●24弁当 東大泉店 (練馬区)
●クロガネモチが生えている豪邸 (品川区)
・表札が出ていない。資産家。株で当てた。
近所づきあいがない。気難しい年配の女性(山崎博子)。
山崎と名乗る息子さんがいた。
しかしこの家の所有者は「やまさき」だが偽の息子は
「ヤマザキ」だと語っていた。
・家の中に有るアタッシュケースの中身
パンフレットが入っていた。
「(株)ホルムズエステート・営業部 高木良雄」
会社はフルコミッション制の不動産会社・完全歩合制
高木は上昇志向が強い人物だった。
(高木=ホームレスのゴンちゃん)
(高木はホームレスになる前に山崎博子を殺して
資産を奪い彼女の家で生活。警察に発覚したと思い
ホームレスとして身を隠す)
●原宿公園無差別殺人 (渋谷区)
岩上という人物がナイフを振り回していた。
その人物によって多くの人が刺されて亡くなる。
その中でも逃走中の内田がやってきていきなり
刺されたことは偶然にしては出来過ぎている。
●幾つかのアイテム
・ビジネス本の中から葉 (クロガネモチ)
木には「苦労がなく金持ちになれる」と言う意味が
有り、縁起の良いものだとされる。
・「ワイアット」「非凡人」「食物連鎖」の筆跡
・吉口の新品のスニーカーに付着する靴跡。
・小銭
・ホワイトボードの消し方(左利き)
■その他
・逆五芒星事件
南井十(つなし)が登場したエピソード。
S16 E7 「倫敦からの客人」
S17 E17「倫敦からの刺客」
S18 E14 「善悪の彼岸~ピエタ」
S18 E15「善悪の彼岸~深淵」
相棒はこの時、冠城亘だった。
・監獄実験
被験者を二つのグループに分け、それぞれ刑務官
と受刑者の役割を演じさせる。刑務官役は次第に
エスカレートして残酷な刑罰を与えるようになる。
*役割だと思うと罪悪感が無くなる
*町の事を思う善良な市民という役割が快感に・・
・謎の文字
・食物連鎖
上司に逆らえない内田は自分より立場の弱い者を
見つけ捕食する。まるで内田の犯罪を後押しする
ような言葉。
・ワイアット
アメリカの西部開拓時代・ワイアット・アープと
いう人物が居た。射殺事件を起こして殺人罪に問わ
れるが町を守る為だったということで無罪になり
やがて英雄視されていく。街の為にという考えに
陶酔していた。自分たちが善良な市民でホームレスは
ただ町を汚す存在だと疑わず過剰な暴行を振った。
こういう心理を「ワイアット・アープ症候群」と呼ぶ
「ワイアット・アープ」 (Wyatt Earp 1994年)に
ケビン・コスナー主演で映画化されている。
当時レンタル屋でビデオテープを借りたけど2本組
でした。
・非凡人
ドストエフスキーの「罪と罰」という小説に
「非凡人は特にその非凡人なるが為にあらゆる犯罪
を行い如何なる法律をも踏み越す権利を持っている」
という一説がある。
「その話はある男が高利貸しの女性を殺し財産を奪う
という話」
・階段口のネズミの死骸つまづく
カミュの「ペスト」の出だしの一文。
・残るは有楽町です
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (“こてまり”見習い)
土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ)
内田隆一 …… 前原滉 (「24弁当」本社・商品開発部)
高木良雄(ゴンちゃん) …… 宮本大誠 (元「ホルムズエステート」営業部員)
吉口秋夫 …… 古賀清 (「24弁当」日暮里店店長)
西川 …… ホリベン (ホームレス)
河野 …… 西口泰央 (「24弁当」商品開発部チーフ)
緒方 …… 三島ゆたか (日暮里三丁目町内会会長)
吉口則子 …… 杉山薫 (吉口の妻)
山崎博子 …… 兎本有紀 (資産家)
岩上 …… 小島ことり (通り魔)
澤純子、園田裕樹、新虎幸明、諸星敦、鈴木紀進
黒川昌信、綾野靖司
(回想)
冠城亘 …… 反町隆史
南井一 …… 伊武雅刀
立入宗 …… 池内万作
西田真人 …… 深澤嵐