(2017年10月期・TV朝日・水曜21時枠)
EXプロブューサー:桑田潔
チーププロデューサー:佐藤凉一
プロデューサー:高野渉、西平敦郎、土田真道
音楽:池頼広
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第19話 少年A
脚本/徳永富彦 監督/橋本一
【ストーリー】
規制線が張られる中、野次馬の一人に“奥羽りんご”のダン
ボール箱を持つ少年が居た。
捜一の伊丹、芹沢も現場へ。
【被害者】は高田みずき(36歳)、独身。
【死因】は鈍器で頭を殴られたことによる外傷性ショック死。
【凶器】はまだ見付かっていなかった。
【死亡推定時刻】は昨日のPM8時から10時。
【第一発見者】は被害者の隣に住む中村隆。
中村によると夜勤明けに帰宅した際、ドアが半開きになって
おり被害者のハイヒールが挟んであり、そのドアの隙間から
中が見えて奥で倒れていたと。
・被害者の部屋
そこには既に特命係や鑑識が捜査していた。
右京が室内にある食べかけの林檎を手にしていた頃に捜一
が入ってくる。
「犯人は遺体発見の直前までここに居た」
食べかけのりんごの色が変わっていない事から割り出したもの。
犯人は12時間もここにいたであろうこと。
色々と書き込まれたカレンダーを目にする。
被害者はホステスゆえに男性関係の激しさがあった。
携帯アプリの登録者数と共にトラブルに有っている人物も
浮上する。
財布から金が抜き取られている事も指摘する。
・野次馬たち
リンゴの箱を持つ高田創の携帯が鳴る。
そこでコインを落としてしまう。そして彼は捜査官の一人・
右京の鋭い視線を目にする。
冠城と共に彼に声を掛けようとするが群衆に紛れて逃げて
しまう。しかし現場に落ちていたコインに気がついた右京。
創は箱をロッカーに入れる。
そして何度もかかってきている電話に出る。
相手は平田章という闇金業者。
一方ゲームセンターのメダルコーナーで遊んでいる高田敦
という青年に声を掛ける右京たち。
彼は敦に対して
「人を探している」
とし、その特徴として
「年齢は17から18歳。身長160cm、痩せ型、服は星模様の
ついたパーカーとブルーのデニム、グレーのトレーナーと
ハイカットのスニーカー」
である事を告げる。
●半グレの隠れ家/ヤミ金
創は平田に有り金を全て渡すが足りないとして恫喝される。
金が無いならウチの仕事をしろとしお前にしか出来ない
仕事を与えるという。100万円の仕事。
松野聖に後ろから蹴られると、腹をくくって仕事をする事
に決める。
■感想
本放送日は2018年3月7日。
2021年10月現在、たまたま今回のドラマとその前のエピソー
ド(18話)をほぼレギュラー放送同様に1週間で見る機会に
恵まれたのだけど、前回同様にここでも金銭的問題などの
社会的背景が共通していることに気がつく。
更にはかつての人気子役が主役に据えられていること。
そしてその子役が大人に足を踏み入れようとしているが
決して大人とも行かない年端であることも設定としては
似ている。
社会的な問題点として、この年を前後して確か無戸籍者を
主人公に据えた物語が何本かテーマとして描かれたのを
記憶している。
無戸籍者とは出産した後に役場に届け出を出さずにいること。
現実的には虐待から逃れる為に届け出を出さなかったなどの
ケースは有ったと思うが、不法滞在者の子など要因は幾つか
に分かれる。
ドラマの面白い所は幾つかの場面で感じることが出来る。
最大の皮肉は少年Aは普通未成年の犯罪者を通して名前を
明かすことが出来ないマスコミが使う仮称ではあるが、
この子たちの場合は名乗りたくても名乗れない現実がある事。
主人公が次々とウソをつき狼少年のように振る舞う背景に
ある日本社会としての問題点。
育児放棄/ネグレストな母親のせいで年端もいかぬ少年が
生きる為に必要なことをしているだけなのに大人からは見え
ない存在として良いように利用してされている。
またそんな隠れて暮らす高田創の事を監視しているかの
ように常に右京たちが声を掛けていく点も面白い。
後ろを追いかけているというよりも既にその青年たちの
言動を把握した上で敢えて泳がしている印象さえもある。
大人の酷さと凄さというものを感じる事が出来る。
また上述した様に同じアパートの一室に二人の人物が隠れる
ようにして生活している状況にあり、その二人は兄弟という
設定からなのか雰囲気はどちらもよく似ていて、どちらの
人物が関わっているのか一瞬分かりづらい。
今時の時代性・社会性を反映したものなのか。
バブル以降景気が一向に上向かない割りにコロナが流行る
直前まではインバンド効果も有って労働者不足の状況だった
ことを勘案すると仕事はある程度選べる状況はあるのでは
ないかと思うけど、身元の特定が出来ない状況では働くのも
容易ではないのかも知れない。
人生を考えた場合、確固とした信念のような向上意識が
ないと、人は流されるままに楽な方向に進み、それが悪い
方向へと足を向けてしまう。その事に何処かで気がつけば
良いが、気がついた時には自分が今どの地点にあるのか。
現実のその底が何処なのか分からないところにまで落ちる
危険性はある。
「何故彼は他人に嘘をつかねばならないのか。」
大人や視聴者や社会全体に投げかけるものがある。
冠城たちと対面する際に名前を尋ねて回る。
名前は松野聖。電話番号を書いて、アリバイは歌舞伎町の
STRYPESでバイトしていたという。
■監視
この人物は右京たちからも、ヤミ金からも監視されている。
・初の取り調べ
二人のウチの一人は山田学/高田創という予備校生(18歳)。
帝進ゼミナール・町田校に通っているとの事で調べにいく。
在籍していたが前期のみで退学。
福岡から上京していた。
当日のアリバイを聞くと一昨日は予備校。昨日は買い物。
・幾つかのキーワード
現場に落ちていた食べかけの「りんご」。
野次馬の創が持っていた「奥羽りんごの箱」
その箱を埋めていた。
「胡蝶蘭」が予備校に飾られている。福岡の名産。
右京は福岡の水晶島が胡蝶蘭で有名である事を告げるが
実際には糸島がそれにあたる。
「山田学」という予備校生。
■捜査
・少年A(高田創)の事を調べる
まだ本名が分からない状況の中で身元を調べようとする。
本人に聞くと最初は山田学。そして次は松野聖だった。
電話番号を書いたメモ。そして彼が飲んだストローによる
DNA検査。
青木に調べてもらうと田中という人物の家。
しかしすぐに彼から見せられたダイレクトメールが田中と
言う人物・・つまり松野本人である事を見抜く。
口裏合わせ。
また少年は名前を偽っていた事が分かり少年Aと呼ばれる。
現場に残されていたリンゴが少年Aのものと一致する。
・平田章
松野探しに奔走している中BARを経営していた男。
右京が簡潔な質問をしていたが、営業実績が無いような
ことは既に分かっていたのだろう。
組対5課の角田に経営者について調べてもらうと半グレ集団
である事が分かる。
・最重要参考人
少年A(創)は何かを知っていて、暴力団とも精通している。
彼が撮影していたのは暴力団・土生田剛とクラブのママの
写真。
■尾行
少年Aも半グレによって尾行されていた。
大阪に逃げることがバレて弟の身が危なくなる。
少年Aは例の監視していた家に侵入する。
しかし振り向けば右京たちの姿がある。
・最後の取り調べ
誰もがドラマを見ていて本筋が何か忘れている頃だと思う。
今回の事件の本筋は実は「高田みづき殺害事件」の犯人捜し
である。
数字の書き方。みづきの家に残されていた囓りかけのリンゴ
とDNAは一致する。
出生届が出されていない無戸籍者。
日本には1万人前後居る。
子供たちは放ったらし。ネグレクト。
えりという妹が居たが亡くなった事への罪悪感。
りんご箱にはえりの遺体・遺骨が入っていた。
「これからは明日を見て生きていかないか」
「今後こそ教えてくれますね。君の名前は?」
「創(はじめ)、高田創」
名前自体が今回のドラマを象徴していて「未来」ある若者
へのメッセージ性は含んでいる感じ。
現場に居続けた創は何を思って死んでいる母親のことを
見ていたのだろうか。
殺した犯人は第一発見者だった。
目的は金ではなく性的なもの。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目”花の里”)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー対策本部特別捜査官)
高田創 …… 加藤清史郎 (素性不明の少年)
高田敦 …… 山田瑛瑠 (創の異父弟)
高田みずき …… 藤村知可 (36歳、ホステス・殺人被害者)
平田章 …… 兼松若人 (半グレ集団のリーダー・闇金経営者)
松野聖 …… 伊島空 (平田の舎弟)
土生田剛 …… 神農直隆 (暴力団員)
クラブのママ …… 水瀬彩 (土生田と一緒)
中村隆 …… 堀靖明 (第一発見者・みずきの隣人)
創の隣人 …… 西村秀人 (管理人みたいな人)
高田えり …… 創の妹。赤ちゃんの時に亡くなる。
丸本育寿、佐藤まり、小森郁子、勝俣杏南