相棒22
(2023年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)(6)(8)(9)、権野元(3)(7)(10)
守下敏行(4)(5)、川崎龍太(11)
脚本:神森万里江(1)(2)、岩下悠子(3)(5)、森下直(4)
光益義幸(6)、瀧本智行(7)(8)、輿水泰弘(9)(10)
田村孝蔵(11)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、古革昌実、
土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
第11話 その頬に触れるな
【ストーリー】
■西小塚ハイツ
102号室に住む梶川史彦(38歳)は誰かを待っていた。
ドアのチャイムの音が鳴ると、ようやく追加の金が
用意できたのかとしてドアを開ける。すると眼の前
にはガスマイクをした人物が立っていた。
■警視庁
・捜査本部
出雲は捜査員にこれまで判明した事件の報告をする。
殺害されたのは化学メーカー・帝堂化学の研究員、
梶川史彦。死因はTXガスによる中毒死
・特命係
出雲は一人特命係に行って現在起きている事件の事
を語る。薫は殺害に使われたTXガスの事を聞こうと
すると、右京が詳細に説明する。
体内に吸収されると数分で死に至る猛毒の神経ガス。
特徴として強烈な刺激臭があること。
梶川はTXガスの原料である化学物質を会社に無断で
持ち出していた事が判明している。
彼はギャンブルで闇金に借金があるが、10日前に
100万円をまとめて返済している。報酬と引き替えに
TXガスを渡していたが、依頼主との間でトラブルに
なったのではないかとされているという。
右京は鑑識が提出した報告書を見る。
そこには口の中に綿状のポリプロピレン繊維が有った
というもの。極微量だった。
・捜査一課登場
出雲が話し終わったところで芹沢と伊丹がやって来て
彼女の発言を停める。薫はオレたちの手を借りたい
なんて余程捜査に行き詰まっているのかと語る。
芹沢によると現場アパート前で幾つかのゲソ痕が
見つかったのでそれを調べてほしいとしてシューズ
を購入した人物リストを手渡される。
■小学生・登校
ランドセルに“ほっぺ丸”という最近人気のキャラクター
のぬいぐるみをつけて歩く ふたば第2小学生・丹生湊
の姿が有る。
その直後、丹生初音の元に電話(1月24日9時)が鳴る。
「あなたの息子を誘拐した。警察に通報したら
息子の命は無い。郵便受けを確認しろ!」
・捜査中の特命係
薫は雑用を押し付けられたと憤る。
しかし右京は警察の仕事に雑用はないと一蹴する。
薫は道端に落ちていた“ほっぺ丸”のぬいぐるみを
見つける。キャラクターグランプリで大賞を取り
現在人気のものだった。ぬいぐるみに付いていた
チェーンが引きちぎられていた。更にぬいぐるみ
の裏には名前が書かれていた。
“ふたばだいにしょうがっこう にぶみなと”
何者かがぬいぐるみを強引に引張りチェーンが千切れ
たのか。子供の身になにかあったのかも知れない。
念のために安否確認をするという右京。
・郵便受け 104号室
初音は中に入っていた封筒からメガネとスマホ携帯
とsimカードを取り出しセットする。
・右京が丹生家を尋ねる
右京は先月マンションに引っ越してきたと軽く自己
紹介し、ぬいぐるみの件を語ると、息子が学校に行く
途中に落としたのでしょうと言われる。
何度か湊人くんとは話をしていること。
お母さんはほっぺ丸の生みの親だそうですねとし、
自分は大ファンなので握手して欲しいと頼む。
・右京は薫と情報を交換する
薫によると学校には母親からの連絡で風邪を引いて
休んでいると報告が有ったそうだという。しかし先程
は学校に行っていたことを話していた初音。
更に右京はメガネはカメラが内蔵されていて
耳にはワイヤレスイヤホンをしていたので、何者から
監視されているのではないかという。彼女は脅迫を
受けているのか。湊人が誘拐されたのかも知れない。
・薫は初音を尾行する
するとその薫の後ろには探していたゲソ痕・シューズ
と同じものを履いた人物が尾行してくる。
■トイキャッスル(株)
右京は社長の小園蓮太郎に会って話をする。
初音のことを尋ねると今日は午前中に大事な企画会議
が有ったが彼女は出席せず、今も連絡が付かないのだ
という。最近彼女に変わった様子は見られたかを
尋ねると同業者からのやっかみはあるだろうが
トラブルらしきものは無かったという。
デザイナーのRinについて何か知っているかを尋ねる
が知らないとのことだった。
■感想
殺人の動機が復讐に有りという感じで、シーズン22の
後半部はこの路線で行くのかな。
復讐するのにも相手への憎悪は多種多様に
存在するのだろうし、憎しみの原点には、どんなもの
が含まれるのかを掘り下げていくのは作り方次第では
面白いものだと思う。
そしてここ2連続で女性同士の復讐の構図というもの
が描かれる。女性が女性に対して抱く憎しみの連鎖。
同性だけならまだしも、この問題を大きく広げた
人物は異性であった。異性というよりも人間の欲が
関わってきた。
人を殺す行為というのは、勢いで殺してしまったり
する激情型のものは有るけれど、計画的に復讐する
のであれば、相手のことをもう少し調べても良かった
のではないか。
よく知りもせずに行った独りよがりの身勝手で陳腐
な復讐劇であり、人をそう簡単に殺せないような感じ
もするけどね。
母親は何処かの段階で娘と会う機会は有ったはずだ。
しかし名乗り出ない。
そもそも娘との生活が苦しい時に生活保護の流れ
も含めて福祉課に一度でも相談したという形跡が
無いのは、娘以上に自分可愛さなんかも有った
のではないかと思ってしまう。
人生の選択、方法論を間違って導いてしまったのは
母親じゃないか。
●犯罪者たちの共演
視聴者はどの人が一番悪人に見えるだろうか?
1) 子供を捨てて、それでも娘の成長は都合の良い
部分だけ切り取って見ていた母親の登紀子。
2) 是が非でも自分が母親の為に作ったキャラクター
を世で輝かせる為に審査員に不正な金を支払って
キャラクター大賞を得ようとした持永凛。
3) 彼女が自殺した後になって持永凛が
作ったキャラクターをこの世に自らの創造物と
して流通させた丹生初音。
4) ギャンブル依存で闇金に借金が有り、神経
ガスを会社から持ち出し、更に約束の金以上の金
を巻き上げようとした化学メーカーの梶川史彦。
5) キャラクター会社の社長で持永凛が作った
キャラクターを是が非でも大賞を取るように金を
貸し、罪悪感から賞レースから降りようとした
ものを強引にでも戻そうとした際に争ってテラス
から突き落としてしまい、更にその死の隠蔽する
為に数々の工作を仕掛けた玩具メーカーの社長。
ちょっと驚いたのは、人を殺したのに平気な顔を
しているところだ。
最初から湊人を殺す気が無かったとして携帯の
電源を入れたという母親も罪悪感というよりも
別のところで動いた流れのように思える。
●ハードルをあげすぎる復讐の方法論
娘の死をパワハラを受けて、娘の作ったであろう
キャラクターを奪ったと思い込んでしまう母親。
その相手への復讐の為に、神経ガスを用意して
相手の息子を誘拐して、そして監視カメラのような
メガネを使い操った末に娘が死亡した場所で
殺そうとする。
今どきのテクノロジーならある程度、遠隔地から
人を操れるものだと思うが、一人でやるには色々と
スキルが必要だし、監視の目にも限界がくる。
誘拐すればその足取りはつくし、神経毒で自分を
脅してきたものを殺す行為の中にも相当な目立つ
行動が見え隠れする。
ヌイグルミは3つある。
そして最後に隠し持っていたもう1つのヌイグルミ。
せめてこのシナリオでは娘の自殺/他殺の真相を
探る為に行動を起こしたような設定にすれば
それなりに納得する部分があるではないか。
神経ガスがどのように噴射されるか分からないけど
あっさりとそれを手にしているところは怖さが有った。
(早く安全なところに確保しなさいよと小一時間)
ぷにぷにしなくても押されたりしただけで意図
しないところで噴射されてしまうからね。
●偶然にも程がある2つの事件の流れの融合
殺人事件と誘拐事件、元々は同じ流れがあるものの
特命係が目にしてしまうというところは“いつもの事”
とはいえ、少々不自然な流れで融合していった。
捜査一課との共闘を考えてバランスに配慮したという
面ではよく役割分担は出来ている。
伊丹が捜査一課の二人とは別のことを調べていた
シーンなど興味深かった。
■鋭い観察眼
・右京は被害者の口の中の微量の綿状ポリプロピレン
繊維に目をつけた。
・最初の丹生家を訪れた際にはキャラクターの絵画
と共にサインされた文字Rinを見逃さなかった。
・最初の丹生家を訪れた際には、メガネにつけられて
いた監視カメラがついていることに気がついた。
・Rinの正体を探る為に玩具メーカーを訪れた際に
USB端子の入ったペンを見つけた
・丹生初音の画風の違いを見抜く
・持永凛の現場でテラスから自害したのではなく
銀製の傷があるのを見つける。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (“こてまり”見習い)
丹生初音 …… 映美くらら (トイキャッスル・デザイナー)
持永登紀子 …… 山下容莉枝 (帝堂化学)
小園蓮太郎 …… 山田太一 (トイキャッスル・社長)
辺見岳 …… 小野匠 (24歳、帝堂化学・開発部)
持永凛(Rin) …… 吉田凜音 (24歳、トイキャッスル・デザイン課)
八巻萌美 …… 沖なつ芽 (トイキャッスル・デザイン課)
梶川史彦 …… 小林峻 (38歳、帝堂化学・研究員)
丹生湊 …… 松本瑛貴 (小学生、誘拐される)
…… 彩羽
少女期の持永凛 …… 沢田優乃 (5歳の頃)
…… 山崎千聖
板倉諒 …… (イラストレーター、キャラクターグランプリ対象)
湯沢雄大 …… (喜代林国際絵画展・代表)