相棒19
(2020年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋下一(1)(2)、権野元(3)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、神森万里江(3)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第3話 目利き
【ストーリー】
●練馬のビルの屋上
女性の一人がビルの屋上から飛び降り自殺を図ろうとしていた。
女性の名前は三好由紀子。警察官の説得にもなかなか応じよう
とはしなかったが、そこに右京がひょっこり現れる。
右京は、こんな素敵なマンションで飛び降りたら事故物件になり
価値が下がってしまい近所に迷惑がかかるという。そんな話を
している好きに冠城は彼女の手を掴み、警察官が一斉に彼女の
飛び降りを阻止する。
●東練馬警察署・練山中央交番
右京らは自殺しようとしたいきさつを聞く。
彼女は夫との離婚で手にした慰謝料の500万円全てを奪われたと
いうもの。勧誘の電話が鳴り、資産運用の必要性も感じていた
ので今ある金を有効に増やそうと思ったこと。最初は上手く
いったかと思ったが利回りの良い投資話を持ちかけられて、
その直後に消費者センターからの連絡があったので、調査を
依頼したこと。その結果2度の投資(200万*2円)、調査依頼(100万)
の全てを失ったこと。警察には当然相談したが金は元に戻らない
であろうことを聞いたという。
●警視庁・捜査二課
塚本刑事と吉井刑事から話を聞く右京たち。
彼らも飛び降り騒ぎがあった事件だということは承知していた。
ここ数ヶ月の詐欺被害に遭った人の自殺が目立っている。
調べると同じ手口で、同じ人が2度3度と騙されているのだと
いう。二課はその詐欺グループの特定はしているのか。
するとそこに二課の係長・尾崎徹(50歳)がやってくる。
部下たちに無駄話をするなと留める。
右京はその尾崎に話を聞く。冠城に至っては対応が遅くないか
と語る。しかし尾崎は一網打尽にすべく動いているので心配
無用であると語る。
●江東区西亀戸
・翌日
人が亡くなって発見される。なんとその人物は尾崎刑事だった。
第一発見者は木村菜摘。
捜査一課と鑑識の益子は現場に直行し、遺体を調べる。
益子は頸動脈を損傷しての失血死であること。これは別の場所
で殺されてここに捨てられたであろうこと。
伊丹はスーツの胸ポケットにある「万年筆」が眼に入る。
何故筆が焦げているのか。録音装置付きだったのだろうことを
告げる。
そこに捜査二課の塚本と吉井がやってくる。
二人によると尾崎係長が追っていた詐欺グループによる仕業だ
という。特殊詐欺犯がよく使う手で復元できないようにデータ
を焼いて壊すのだと。尾崎は何か決定的証拠を掴みそれで
殺されたというのか?
右京たちもやってくると、それならば筆は捨てれば良いはず
なのに何故焼いたペンを元に戻したのかと語る。
伊丹たちは特命係を煙たがる中、冠城は出雲について尋ねると
芹沢は下積みからさせているという。
右京たちは遺留品を見る。
財布の中には今時珍しいテレフォンカードが大量に入っていた。
レシートを見ると
「TALKAS 10/30(金) 20:16 アメイジング・ウォッシュ2980円」
と書かれていた。
●複合型商業施設 TALKAS
実演販売員の酒井直樹(39歳)がアメイジング・ウォッシュに
ついて宣伝発売していた。どんな汚れも一気に落ちるという。
そしてそこにやってきた冠城の背広に油性ペンで汚れた振りを
して見事客の目を引いて販売を伸ばすのだった。
■感想
ドラマは毎度シーズンの開始時・正月時・終了時にあるような
スペシャル版的内容では無くレギュラーサイズに戻っての
初エピソード。
一番気になるのは、スペシャル版に出てきた麗音の使い方だけ
ど、今回は無難にポイントごとに関わらせたのかなという
印象だ。
最近の詐欺事件を扱うものだが、犯罪者の心理、被害者の
心理、そしてそれを追いかける者達をクローズアップさせた。
この全体的な流れはまるで今回の捜査組織の構図と
似ていて興味深い所もある。
金融詐欺による捜査二課の案件、そして殺人が発生して
捜査一課と特命係が関わり暴力団の関与によって捜査五課
の案件となる。
プライバシーの問題で最近個人情報は出回りにくい。
とはいえ、人は何処か知らない所で情報が集積されて
おり、それが犯罪に利用されることがあるのも確かだ。
容易に集めることが出来る情報は「電話帳」でもある。
昔は無条件に電話帳に住所氏名電話番号が掲載されていたの
も事実だが最近はどうなのかな。
■今回の事件のポイント
今回の事件は3年前の詐欺事件との繋がりもあり、どのよう
にして詐欺を狙うターゲットを見つけるのかという所がまず
最初のポイントとして浮かび上がる。
犯罪の手口との類似性。
タイトルは「目利き」だった。
特定の才能に秀でているスキルの一つで、人の才能・性格を
見抜く能力に長けているもの。人にはそれぞれに他人よりも
秀でているものが一つはあるのでは無かろうか。
ネットでの金融犯罪は後を絶たないが、相談という名目で
被害者の方から連絡させるという所がまた犯罪の性質として
は悪質で有る。
・人は弱い生き物だ
犯罪には心の隙間を狙われてしまう。
人間だから感情を持つのは仕方が無い。
その感情をより敏感に読み解くことが出来る人が目利きと
言うことになる。実演販売のプロはそれを見抜く能力に
長けているし、犯罪のターゲットを見つけるものたちは
僅かな情報によって狙いやすい相手であることを見抜く。
自責の念を持つもの、そして感情的になるものは色々と
極端な行動に出るけれど、感情を持つことにより人を操る
ことが出来て、他人にも操られやすいものだ。
尾崎は犯罪捜査の協力者として酒井を選んだ。
3年前に亡くなった宮原はその尾崎の協力者だった。
そして酒井もまた自分が起こした詐欺事件によって人を
死なせている。そこに優しい言葉をかけてきた尾崎の
協力者となった。
■違和感に気がつくものたち
1) 被害者の遺留品
二課の言動は何処か不自然なものを感じたけれど、まさか
一番怪しいと思うものが最初の被害者になる。
二課の係長の尾崎徹。
この人の感じでは冒頭の登場シーンからして特命係への対応
は不自然さが有った。
・スーツに入っていた盗聴器用の万年筆
焦げていてデータが消えていた。盗聴ではなく盗撮かも
知れないが、まぁ最近のスパイ道具は映画並に小型化して
いて驚くべき性能を誇っている。
・テレホンカード
最近は携帯電話の普及で公衆電話が無くなっている。
2000年には73万台あったそうだが2020年現在15万台だ。
2) 殺害現場
殺害現場は違っていたが遺体が発見された場所は過去の事件
に関連性がありそうだった。
3年前に尾崎の捜査協力者で有ったタクシー運転手の
宮原隆史(46歳)が亡くなった場所。そして尾崎は当時も同じ
詐欺グループを追っていた。
右京は尾崎の家を見て違和感を覚える。
室内には塵一つ無くまるで家主の指紋さえない為のもの。
誰かが綺麗に掃除したとしか思えない。
ちょうど良く今回の登場人物にはアメイジングウォッシュ
という名のクリーニング液を売る者が・・
■容疑者・事件関係者
・酒井直樹
39歳で実演販売を職業としている。
・尾崎徹
捜査二課の刑事。詐欺事件の傾向・手口から犯人は蠍龍会
幹部の兵頭武史ではないかとされているが、決定的な証拠が
ない。
誰もが尾崎と兵頭のつながりを疑ったことだと思う。
実は細かい設定だが、この二人は同じ年齢であり、長年捜査
をしていると時々ミイラ採りはミイラになることがあるもの
だ。
・有島
ネットで離婚調停の相談に無料でのる「駆け込み寺ドット
コム」の運営者。それで大体の資産が分かる。
■クローズド
意外と最後まで誰が誰を殺したのか究明するのが難しい
ところは有った。詰めの段階で毎度見逃すハメになったと
いうのもまるで分からないでもない。そして酒井が尾崎を
疑う理由もまた分かる。
その酒井が独自に捜査を初めてその中で信頼しているハズ
の尾崎が実は犯罪者を見逃しているのではないかと疑いを
持っていた。命の恩人であると同時に疑うべき相手となる。
尾崎がなかなか尻尾を捕まえられずに居る相手から金を
受け取ったこと。その事で遺書も残されていてそれを酒井
は隠そうとした。
汚職警官の名をさらしたくなかったこと。
刑事の死により捜査が動くと思っての偽装工作だった。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課に異動)
酒井直樹 / 村田健吾 …… 山本浩司 (39歳、実演販売士、3年前詐欺)
尾崎徹 …… 及川いぞう (50歳、警視庁捜査二課 係長)
三好由紀子 …… 川俣しのぶ (自殺を図った詐欺被害者)
塚本 …… 井川哲也 (警視庁捜査二課 刑事)
吉井 …… 鶴町憲 (警視庁捜査二課 刑事)
有島 …… 若林久弥 (「駆け込み寺ドットコム」運営者)
兵頭武史 …… キンタカオ (50歳、蠍龍会幹部)
中井 …… 谷口一 (詐欺グループの一員)
宮原隆史 …… 西沢智治 (当時46歳、タクシー運転手、元捜査協力者)
近藤節子 …… 長尾しのぶ (3年前、酒井が自殺に追い込んだ詐欺被害者)
木村菜摘 …… (第一発見者)
山崎秀樹、松嶋健太、荒川浩平、緖川さとみ