相棒19
(2020年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋下一(1)(2)、権野元(3)(5)(6)、杉山泰一(4)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、神森万里江(3)、児玉頼子(4)
斉藤陽子(5)、瀧本智行(6)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第6話 三文芝居
【ストーリー】
●フローリア小泉・目黒区北洗足
・10月21(水)
雨が降る中、足立ナンバーの車が路駐していた為に、
警邏中の警察官・石川は職務質問をする。車に乗っていた
のは松野優太(52歳)。何をしているのか尋ねられると、
今女の子が仕事中だという。それを聞いて出張風俗かと
石川。免許証と店”スイートパイパイ”の名刺の提示を求める。
女に仕事をさせて自分は車の中で待っているなんて結構な
商売だなという警察官に対して、松野も口は負けておらず
そっちは真夜中の雨に濡れて大変だなと語る。
松野はタクシーで帰宅するメガネの男を見かけると車から
飛び出しマンションの前で接触する。
●現場・フローリア小泉
捜一が事件現場にやってくる。
そこには昨夜の男が倒れて死んでいた。
鑑識の益子によると死因は脳挫傷。この角に後頭部をぶつけ
たであろうこと。110番通報して来た男がホトケと別の男が
もみ合うのを見ているという。芹沢は麗音に対して連れてくる
様命じる。
被害者の入構証から、最大手電子部品メーカーの日栄電算
の社員の西島亨(32歳)。財布の中には1万円札20枚は入って
いるという芹沢。しかしカバンが無かった。
特命係の二人が現場に来る。
捜一の伊丹は苦い顔をする中、二人は散歩していたらたま
たまサイレンの音を耳にしてやって来たという。
財布には目もくれずにカバンだけ盗まれたと聞いて、何が
入っていたのか気になると共に犯人に取っては財布よりも
大事なものだったのだろうと語る。
そこに通報者で目撃者でもある派遣型風俗のドライバーの
松野がやってくる。
刑事たちの質問に対して、松野は・・
「車の中から見ていた」
「スーツの男がタクシーから出て来たがフラフラしていた
ので酔っていたようだ」
「そこの影から金髪の男が現れて蹴り飛ばしてカバンを奪っ
て逃げた。」
「派手な柄シャツにガリマッチョ。30歳そこそこ。首筋に
ドクロのタトゥーが有った」
「エスコート嬢はどうしたのか?」と尋ねる刑事に松野は、
「傍の駅まで送りタクシーに乗せた。そして戻ってきた」
「客は何号室なのか?」と尋ねると、松野は
「こちらにも守秘義務はある」
と語る。そういえば今思い出したが・・
「鈴木さん勘弁してくれ」と確か叫んでいたと語る。
●特命係
事件発生は10月21日の午前3時35分。
角田は西島は派遣会社のSEだという。新規システムの開発
の為に一ヶ月前に派遣されたという。それで社員証では
なく入構証だったのかと。角田は右京が気にしていたカバン
の中身だが、被害者の部屋を捜索してもPCは見当たらなかっ
たそうだという。自宅に無いということはノートパソコン
を持ち歩いていたのだろうと。犯人はパソコンの中の情報
を求めていた産業スパイ・・一課はそう睨んでいるとのこと。
鈴木については犯罪対策五課にも問い合わせがあるが、
何分鈴木という名字は多いから・めと語る。
●日栄電気(株)
対応に出た山田みなみは特命係の二人に警察の方か?と尋ね
る。今も他の警察/捜一の方が村田や大山と会話している
ことを語る。伊丹たちはここで働いていた西島について
尋ねるが、村田は彼はここの社員ではないと語る。
大山によると一週間前に鈴木真治が会社の前にまで押しかけ
て西島に借りた金を返すよう脅していたとのことだった。
■感想
芝居に情熱を注いでいる天性の俳優バカな男は警察からの
追求にもかかわらず、口の旨さでのらりくらりと質問をすり
抜けてしまう。そんな態度の松野に伊丹らも堪忍袋の緒が
切れて、益々相手の術中にハマっていくが・・
嘘ばかりついている男の物語なので、一見すると最後になっ
て本当のことを語った所で信用してもらえない
「オオカミ少年」のような展開になるのでは無いかと思って
いたけど、その辺は右京さんが的確に当ててしまうので
特に問題となるようなことはなかった。
人情があるのか無いのか実に分かりづらいところもまた
この人物の本音・本当の姿が分からないところにあり、
まさに「この世は舞台、人は皆役者だ」とするシェイクスピア
の「お気に召すまま」を引用する彼の為の場外演劇兼一人
舞台と化した。
今回のドラマでも動機に於いて最もしっくりと来るであろう
加害者と被害者の接点探しに重点が置かれた。
そして最終的には実行者と協力者の関係の方が描かれる格好
だったが、これはまさに3年前の再現とも言える松野にとっ
ての慚愧や後悔の念を取り返すために行ったことであること
も分かる。
最近の相棒はこのパターンが多い。
捜索には当然青木くんの出番だが、何でもコンピュータや
監視カメラの世界であり電子的足跡の痕跡探しが今日の
刑事ドラマでは楽しさになっている。
過去の通話記録に捜査記録、そして監視カメラ映像まで
出てくればゴールはもう目の前だ。
その中で今日の日本の世情を表すようにして、社畜と化して
いる電子部品メーカーの派遣の社員の実情が描かれて、
誰も逆らうことができずに口を閉ざしているところに不気味
さを覚える。競争社会とはまた別の他人に無関心な社会を
生産している今の社会の一旦を目にすることになる。
■今回の事件のポイント
同郷のものは方言ですぐに打ち解け合える。
地元に居れば食い潰し有っていたりするのに、いざ別の舞台
に立てば、同郷は信用するのに手っ取り早い身分証のような
ものだ。
今回は3年前の事件がベースに有り、そこで松野は地面師
グループに雇われて詐欺事件の痔主の息子役を演じていた
ことが判明する。そこで出会ったものの中には松野にとって
は重要な人物が含まれていること。
また松野と被害者の西島の繋がり。
西島と鈴木の繋がりをどのようにして知ったのか。
半グレあがり鈴木とか風俗店店長の方が寧ろ本当のことを
語っているという皮肉。
・今回もまた共通するのは上司だ
3年前の地面師グループによって有浜不動産は30億円以上
を騙されていた。担当者が損失を負って社内で責任を押しつけ
られて自殺したが、それだけの巨額の金を一人の人間が
動かせる訳もない。上層部が保身のためにスケープゴート
にしていた。
そして今回鈴木という人物を犯人像に仕立て上げて罪を
なすりつけようとした。
・オタクは怖い物知らずか?
風俗店なんてという私はバックに怖い人たちがついていて
女性を脅したりすれば確実にボコボコにされると思う
けどね。このオタクはなんでこんなに自信があるのか
訳がワカラン。
・金より大事なもの
本来なら金より大事なのは人の命とか人情と行きたかった
ところなんだろうけどね。あのバッグの中に入っていたのは
欲望の詰まったパソコンだった。
・気になること
結局今回の案件で分かってしまうことかも知れないけど
山田みなみは松野の3年前のことを知った際にどういう
リアクションを取るのだろうか?
そもそも今回の事件は山田みなみが正直に警察に通報して
いれば、殺人事件としての扱いは相当情状に値するもの
が有ったのかも知れない。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課に異動)
松野優太 …… 橋本じゅん (52歳、”派遣型風俗”スイートパイパイ”運転手)
山田みなみ …… 柳ゆり菜 (日栄電算・契約社員、”レイナ”)
庄司光則 …… 加藤満 (劇団「やぐら座」演出家)
西島亨 …… 岡部尚 (32歳、派遣社員・日栄電算SE)
店長 …… クロダルーク (“スイートパイパイ”店長)
鈴木真治 …… 新井敬太 (半グレ上がり、髑髏のタトゥーの男)
大山 …… 青木鉄仁 (日栄電算社員)
石川 …… 瀬戸寛 (松野に職務質問した巡査)
村田 …… 山賀教弘 (日栄電算社員)
マヤ …… しじみ (“スイートパイパイ”キャスト)
ミキ …… 木本花音 (“スイートパイパイ”キャスト)
山田俊彦 …… 市川源 (享年46歳、有浜不動産・営業社員)
ナナミ …… (“スイートパイパイ”キャスト)
ミサキ …… (“スイートパイパイ”キャスト)
カオリ …… (“スイートパイパイ”キャスト)
ユカ …… (“スイートパイパイ”キャスト)
リナ …… (“スイートパイパイ”キャスト)
サーヤ …… 江里口彩子 (金髪のキャスト)
レナ …… (レイナに発音が似ていた日栄電算社員)
武田知久、畑中咲菜、松浦慎太郎、中村エリカ
熊倉和哉、村上佳、横溝り子