相棒19 第4話 怨憎会苦と慚愧の念

相棒19
(2020年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋下一(1)(2)、権野元(3)、杉山泰一(4)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、神森万里江(3)、児玉頼子(4)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第4話 藪の外

【ストーリー】

●赤坂の料亭

小出茉梨(小手鞠)の招待で冠城と右京は後輩の芸者の叶笑
(かのえみ)の芸を見に行く。小出は愛想がない彼女に変わ
って謝罪するが、彼女はこの界隈で一、二を争う芸者とのこと。
叶笑は芸の後に二人の元にやってくると、名詞を渡して
いく。
するとそこに芸者である琴梅が入ってくる。
右京たちのことを気にしつつ、吉岡荘介さんが小出に挨拶
したいとしてやってきているという。
小出は引退されても人気があるとして驚く。吉岡は近いウチ
に店の方にも寄らせて頂くと語るとその場を立ち去る。

右京たちは小出にお願い事は彼女のことなのかと尋ねる。
右京は叶笑の右足を引きずっているような不自然な姿
に気がつく。
すると小出は「怨憎会苦(おんぞうえく)」からお救い下さい
と語る。

・事件が起きたのは15年前(2005年11月22日)の大田区北上町。
当時17歳で芸者見習い中の棚橋智美は稽古事の帰宅途中に男
に襲われる。暴行目的による犯行で被疑者である久我山大樹
(27歳)は南大田署の石丸によって逮捕された。

小出によると15年前に彼女を襲った久我山が出所し周りを
彷徨いているのだという。しかしその「目的」が分からないと
いうものだった。

●特命係
当時の事件関係の捜査ファイルを調べる。
久我山は元高校教師で、暴行罪で2005年11月22日(火)に
捕まった。当時27歳。東京都大田区の廃工場で叶笑を襲って
いる最中に捕まっていた。

そこに角田がやってくる。
怨憎会苦の事を口にした右京にその意味を尋ねる。
仏教用語で、意味は「恨み憎む相手にも会わねばならない
苦しみのこと」

角田は連続婦女暴行事件かと気がつく。
被害者は4人で1人は未遂だったもの。角田によると同期の
警察官で所轄時代の後輩だという。取調中に過去の3件の
余罪が判明したもの。

そこに冠城がやってくる。
久我山が一昨日の深夜にあの料亭近くの七坂神社裏で殺された
とのことだった。

●赤坂の七坂神社
死亡推定時刻は一昨日の午前24時から2時までの間。
早朝に神主が発見したという。身元は社員証が遺留品の中に
含まれていたという。(株)エアアースの社長。
死因は失血死で凶器は鋭利なキリ状のもの。
ここで犯人は殺されたのだろうが携帯電話は見つかっていな
いという。冠城はそれにしてはタイミングが良すぎでは
ないか?と。小手が我々を呼んだのは久我山が死んだのを
知ったからだろうと。
現場には簪(かんざし)が落ちていた。

■感想

小手鞠からの依頼から始まる捜査案件。
シナリオを見渡すと刑事ドラマには見かけるタイプの流れ
がある。シーズンテーマにもなっているのか様に初回の
流れとも似ていた部分はある。

今回はコロナを考慮してのことなのか鑑識作業などは一切
省かれていたし、先行する特命係にNEWトリオ・ザ・捜一の
面々が追いかけていく流れがある。

捜一の二人が警部殿との絡みをすれば、麗音は青木への
突っ込み係として上手いこと棲み分けがなされていた。
今後もこのパターンで行くのかな。麗音は気難しいかと思っ
ていた相棒の世界観に自然に染まった印象も受ける。

特命に頼んだということは、殺人事件が発生する前であり
小手鞠との繋がりから来たのかに思わせたが、流れを見て
いくウチに、死亡事件が発生した事を知り、後輩であり笑顔
を失った叶笑の真相を探る為の小手鞠からの依頼であること
が判明する。それ故に一時は小手鞠が怪しいのかとさえ
思わせる所もある。

やはりこのドラマに出てくる女将さんは右京さんに負けない
程のキャラクターとして位置づけている。
まだまだこのキャラクターは謎の所が多く、シーズン当初の
話では彼女は商売の為にここに居るのでは無いような事を
口にしていることからも、派閥争いに於けるスパイ的な役割
か何かが関与しているのかな。

■今回の事件のポイント

今回は15年前に事件が発生し、その15年後の事件関係者の
再会的エピソードである。

15年前の事件に起きた詳細的真相を探ることで叶笑の名前
の由来なり、彼女の感情を失った経緯なり、今回の事件の
真相やその中で起きている愛憎劇も知ることになる。

事件調書だけでは分からないもの。
色々と当時の事件関係者から話を聞くウチに新たなことが
分かっていく段取りは面白く出来ている。

・人生を分けるものは?

今回のドラマを見ていくと、15年前には3人の人物が犯罪を
犯している。
その中でも更生した人物と再犯に走る人物に分けられる
が、それを分けたのは何だろうか。日本は更生が難しいと
言われているが、犯罪の性格にもよるが再犯率が高いのは
性犯罪とか薬物関係の犯罪だ。

僅かな年齢差によって世間にさらされたものとそうでない
ものの差というものも多く、一人は未成年者であった。

・繋がりを見いだす

初回にも有るテーマだったが、その繋がりが見つかれば
事件解決に於ける大きく新展開が進展する中、それを見いだ
していくはサイバーセキュリティー係の青木の役割だ。

ドラマとしては吉岡と今回殺された久我山には一見繋がり
はない。その繋がりとは何なのか。

当時の吉岡は19歳だった。
吉岡は15年前の主犯格で当時20歳の田崎と共に犯罪を犯した。
ただし未成年なので名前は世間に公表されていない。

そしてこの15年前の事件を別の角度から眺めると、あの場面
に於いては一つの偶然という名の必然的なつながりがある
ことが判明する。
彼らが襲ったリサイクルショップは彼らが仕事をしていた
バイト先だった。

そしてその日にもう一つの事件が近くの廃工場で起きていた。
久我山が叶笑を暴行未遂している所だったが、店に強盗に
入ったことで巡回していた警察官がそれに気がついた。

結果的に久我山は田崎を脅して吉岡の名前を探り出す。
ただ吉岡が成功した人物なのかどうかはこの時点で分かる
ものだろうか?

■これを人情と言うものなのか

よく考えると今回の吉岡は起業して立派なオフィスを持って
いる程に頭が切れるようで、実はそんなオフィスを構えら
れたのは15年前の事件で金を手に入れた為のものかと思って
いた。上述したように久我山が彼を捜していたからだ。

久我山は希代の悪であり、性根が腐っている。
そもそも彼は過去にも3件の強姦事件を起こしているのだ
から・・
その彼が強盗に入った男との間に何か有るのか。

とても都合の良い話なのだが、当時被害に遭った叶笑も
17歳の未成年者。
未成年者同士が当時の事件現場の夜に一瞬にして相手の
ことを見つけている。

また吉岡はこれだけのオフィスを構えられる程の人物である
が、未成年当時は相当ショボい犯罪に手を染めている。
そして当時叶笑さんを助ける為に一度は切ったはずの防犯装置
の電源を入れて作動させたという程に頭が切れる人ならば
そんなショボい犯罪をするのか謎である。

最後の最後まで吉岡は叶笑のことをかばう行動を見せた。

「恋心、言葉にせねば藪の中」(冠城談)

「当時見捨ててしまったことに慚愧の念を感じている」(右京談)

そして

「怨憎会苦からお救い下さい」(小出談)

・嫉妬心のオンパレード

・琴梅は叶笑のことにライバル心以上の嫉妬心を抱く。
・吉岡の秘書・小坂奈都子は叶笑に特別な感情を抱く彼女
のせいで捨てられたと考えて嫉妬する。
・久我山は田崎や吉岡が成功している人生に嫉妬心を抱く。

・その他

事件解決のアイテムとなった現場に落ちていた簪。
まるで昔の「必殺シリーズ」の主人公がとどめを刺すときに
使うようなアイテムだよね。テレ朝の時代劇だったし

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)

小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課に異動)

叶笑/棚橋智美 …… 高梨臨 (32歳、小手鞠の後輩芸者)
吉岡壮介 …… 窪塚俊介 (34歳、エアアース・社長、元窃盗犯)
田崎元哉 …… 越村友一 (35歳、千賀運送・社員、元窃盗犯・主犯)
琴梅 …… 小林麻子 (叶笑の同僚芸者)
久我山大樹 …… 進藤健太郎 (27歳、エアアース・社員、元暴行犯)
小坂奈都子 …… 深谷美歩 (吉岡の秘書)
石丸 …… もろいくや (南大田警察署・刑事)
天田潤 …… (リサイクル天田ショップ店長)

所博昭

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