相棒15 第17話 ラストワーク

相棒15
(2017年10月期・TV朝日・水曜21時枠)

プロデューサー:伊東仁、西平敦郎、土田真道
音楽:池頼広

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第17話 ラストワーク

脚本/森下直 監督/内片輝

【ストーリー】

スガチーこと中鴨昌行は公園で動画を自画撮りしていた。
“ラストワーク”というテーマで、彼はラップを歌い出す。
“みんなの”良いね”で生きて居る。再生回数1億回。”

青木は特命の依頼で動画を調べる。
動画は箱を被ったものが老人に銃を突きつけて食事を無理矢理の
ように食べさせるというものだった。
動画の投稿は2日前の午後2時38分。投稿者は動画クリエーターの
スガチー1888という人物。音楽は入って無く、撮影後に乗
せたであろうこと。照明はおざなり、背景は暗いし単独でも撮影
は可能だという。ラストワークとつけられた動画。
虐待と恐怖をテーマにしたフィクションなのか、リアルな犯罪動画
なのか。後者なら緊急を要するもの。監視リストにも入っている
という青木。特命は捜査ではなく現在は調査だという。
放置していたら警視庁の責任問題、かと言ってこの段階で捜査を
初めてフィクションだと分かれば表現の自由の侵害だと警視庁が
責められる。それで警察のアリバイ作りの為に特命が珍しく
捜査に乗り出すのですねと納得する。男の顔は単なるお芝居に
見えないという。サイバーセキュリティ本部では特に情報はない
という。二人が立ち去ろうとする際に青木はでも個人的に警察に
入る前から自分はスガチー1888のフォローをしていたという。
男の名前は中鴨昌行(23歳)。名も住所も割れているのか・・
元は引きこもりの不登校少年だったが、親の干渉でカウンセリング
に行かせた際に偶然遭遇した鉄道事故を撮影し、それをふざけた
音楽と加工をさせて動画サイトに初登校した。それが18歳の時だ
という。不謹慎だがネットではもの凄い反応と再生数で、以降
は犯罪現場に行き不謹慎動画を連発しているという。
この動画に写る男性(老人)は今までに一度も出た事がないという。

右京は投稿動画は見ないという。冠城はそこで彼に説明する。
自分で動画を撮影し編集してサイトに投稿。映像のプロでなくて
も投稿出来て再生数があがれば広告がつくこと。100万回再生で
10万円の収入。年収1億円のクリエーターも居るという。スガチー
もその一人だということ。

彼の住むタワーレジデンスに話を聞きに行くが、コンシェルジュ
の女性は家賃滞納で彼は二ヶ月前に引っ越したという。再生回数
が減れば一気に収入はゼロになる。
女性によると後日管理会社から中鴨に部屋の清掃の件で連絡したが
転居先はデタラメだったとのこと。

動画クリエーター専門スタジオに行く。
川田という職員によると以前中鴨も利用していたという。ラスト
ワークもここで撮影されたのか。中鴨は企画から仕上げまで全部
一人でやり共同作業することがないという。再生数が落ちて悩んで
いたみたいだという。
そんな中冠城に電話が鳴る。第二弾の投稿が有ったとのこと。
しかしたかが1千万の為に人を殺せるか。

クロロホルムで体の自由を奪い銃で脅した最初動画の背後には
制服から学校が特定出来るとしそこから公園が見つかるかも知れ
ないという。冠城はその場所を調べてくれとし、右京は老人の
足取りを追うという。

飲み処・浮雲。ヤスという人物は確かにここで撮影していたとの
ことだった。年配の男を見たことはあるかと問うと、この辺を
ヤサにしていた日雇いの人物で仕事をサボリ、最期は食い逃げば
かりしていたという。ここには居られなくなったのだろうと。
半年前から見なくなったとのこと。名前はスガワラブンタロウだ
という。昔はトラック野郎をしていたと言っていたという。
そこに伊丹たちもやってくる。ラストワークの捜査で来たのか
と問うと捜査ではなく興味だという。例の動画の背景に知っている
店が有って個人的興味ですという。右京に対して何故来ているの
か。情報を何処まで掴んでいるのかと問うが、校務員には守秘義務
があるとして出て行ってしまう。

花の里で冠城と右京は飲みながら捜査報告する。
彼はスガワラと名乗っていたこと。無銭飲食で居られなくなっり
その後あの公園で野宿していたという。
そこに青木がやってくると、女将のこともリサーチ済みだという
青木。青木は15分前にラストワークの第三弾が投稿されたのだと
いう。里中運輸のトラックが写る中、スガワラが山林に連れて行
かれて湖のボートに乗せられている映像だった。

■感想

ネットに投稿された動画がフィクションかノンフィクションか。
その動画を検証しながら事実関係を調べていく中で、その人と
なりの人生を知ることになり、それが娘へのメッセージとして
伝わるというもの。
父親としては直接的に娘に会える立場ではないけれど、それでも
娘に対する愛情は存在し、そして自分が生きてきた足跡という
ものを知らせたい意図が有ったのだろう。
そんな影のテーマが存在しているところも上手く出来ているのだ
けど、それを解き明かす人が居なければ正直娘にもその意図は
伝わらなかったのかも知れない。まぁ金が届けば嫌でも調べる
ことにはなったかも知れないけど・・。

男が夢を追いかけて夢破れた物語がその中には存在している。
そしてせめて最期には娘に対して愛情があったことを示し、そして
未来ある孫の為に自分には得られなかった必要な金を残したい
思いが有ったのだろう。

時代を先取るニューパワー(c)とんねるず である動画クリエーター
で投稿マニアの男と融合して金を稼いだ。
身一つ、アイデア一つあれば今の時代は金を稼ぐことが出来る
ことも示されて夢のある物語でもあるけれど、この動画クリエー
ター自身にも男の生き様はある意味伝わるところがあったのでは
ないか。

冒頭では何が起きているのか分からなかった。
そもそも事件性がある動画なのか?としか思えないものがあり、
本格的に事件かなと思い始めるのは第三弾での箱人間によって
森の中に連れて行かれる動画だった。

ただこんな箱人間が居れば相当目立つ訳だしね。

時系列を巧みに利用し、組み替えることでそのトリック性に気が
つかせるところも面白いし、捜査している側にとっては迷惑
極まりないところだけど、ある意味では宝探し的視点に立つことが
出来ればこういう動画を活用して何かイベントが出来そうだね。

素人らしく、つなぎの部分でミスが出た。
本来プロの記録係が前後の整合性を合わせるために、色々と
気を使って居るのだろうけど、ステーキの染みが袖についている
か居ないかが時系列に於けるトリック性を見破られるハメになる。
それに気がついた右京の鋭い視線には脱帽もの。

また撮影の協力者である中鴨が冤罪にされない為にアリバイ
動画を撮影させておくというアフターケアも忘れていない。

しかし最期には自分の撮りたかったものが撮れてそれで「イイネ」
の形で伝わったというのも皮肉なのかな。時代を先走りすぎる
と伝わるものも伝わらない。文化ではよくあることで死去した
後に改めて評価されるなんてこともあるからね。

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目”花の里”)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー対策本部特別捜査官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (鑑識)

大屋嗣治 …… 渡辺哲 (ホームレス)
中鴨昌行 …… 尾上寛之 (スガチー1888、)
川地祥子 …… 西山繭子 (大屋の娘)
川地雄介 …… 池田宜大 (祥子の夫)
川地雲母 …… 高松咲希 (祥子の娘)
寺内早苗 …… 田岡美也子 (撮影スタジオ、昔の自主製作)
島田 …… 原田文明 (“里中運輸”の元同僚、30年前乗務してた)
ヤス …… 長野克弘 (呑み処”浮雲”、大屋がこの界隈にいたと)
川田 …… 吉成浩一 (撮影スタジオ)
コンシェルジュ …… 白井珠希 (タワーレジデンス)

花王おさむ、橋本拓也

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