相棒22
(2023年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)、権野元(3)、守下敏行(4)(5)
脚本:神森万里江(1)(2)、岩下悠子(3)(5)、森下直(4)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、古革昌実、
土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
第5話 冷血
【ストーリー】
■警視庁
ロッカールームで道着に着替える男・桐生貴明は
すでに道場内で竹刀を振る男に頼み事をする。
「一戦手合わせ願えませんか?」
その男とは大河内監察官だった。
桐生は10月24日付けで目黒南署から組織犯罪対策部・
薬物重機対策課に異動。所轄では特殊詐欺の拠点を
2度にわたり突き止め署長賞を受賞した人物だった。
三本勝負をする。
・ランチへ
右京は薫のお勧めだとする店に食事にいく。
その店のお勧めは酢豚。しかし酢豚の中のパイナップ
ルを食べられない右京は、薫がそれを引き受けてくれた
ことに感謝する。
そんな折、通りかかったアパートの一室が気になり
出す右京。郵便受けには山田と書かれているが、
室内を覗くと人が住んでいる気配はない。
しかし郵便受けには中に何かが入っていた。
はちどり国際宅配便からの不在連絡票だった。
●特命係
この件に関して組対課の角田に相談する。
差出人欄がHK・・香港国名コードなのが気になると
いう。空き家が密売グループに利用されるケースは
増えていること。住んでいない部屋に居住者が居る
様に装い違法薬物の配達先に指定し、不在票の宛名
に闇バイトの名前でも使って本人の身分証で荷物を
受け取れば上のヤツの身元が割れずに住むのだと
いう。
薫は住居前で見張り、男が不在票を回収したので
尾行する。営業社で荷物を受け取り民家に入って
いく。彼は右京や角田にその事実を知らせる。
登記情報を調べるという角田。張り込みに行ける
部下を探すと、桐生が自らやると主張する。
右京は彼の積極さを買ってとてもいい人材が来た
ことを告げる。
あの鬼の監察官相手に剣道で7戦7敗だという角田。
●渋谷区橘町の民家
民家には三人の若者がいた。
山田、向原、そして和光。
そんな彼らのもとに組対課が踏み込む。
桐生には二階を調べるよう求める。
特命係の二人は逮捕される三人に対して、現場の
状況を調べる。
床に何かしなびたものが落ちていた。
匂いを嗅ぐと良い香りがする。
ミントはハーブティやカクテル、肉料理の香り付けなど
に使われるもの。
右京は検挙された和光に話を聞く。
ここにいたであろう指示役の男は部屋でお茶か食事を
していなかったのか。するとどら焼きのようなものを
食べていたと答える。
■警視庁
・取調室
組対五課の角田は向原から話を聞く。
すると組織のものから身分証明出来るものを送って
欲しいと言われ免許証の画像を送信したら急に態度
が変わり言う通りにしないと家族を殺すとか実家は
分かっていると言われたという。
箱の中身が違法薬物とは思わなかったのかと問うと
怖くて聞けなかったのだという。
彼らは全員通信サイトで呼び出され、荷受けなどで
こき使われていた。大手求人サイトからの募集なの
で疑わなかったのも無理はないと同情する。
彼らは釈放され在宅捜査となるという。
アジトには密売グループの指示役が出入りしていた
と右京は語る。何人か交代で顔を出していたみたい
だが、昨夜を境に指示役は姿を見せなくなったとのこと。
まるで摘発を知っていたかのようだった。
桐生は今から空港に行く事を告げる。
彼は”コントロールドデリバリー捜査”に重点を置く
のだという。
“コントロールドデリバリー捜査”とは、
『税関で発見された薬物をその場では押収せずに
追跡する・・つまり泳がせ捜査』のことだった。
■感想
右京の目に留まったとあるアパートの郵便箱。
人が住んでいない空き部屋にもかかわらず表札のように
して名前だけが書かれている。
密売・特殊詐欺などで使用される手口だとして、
その手口を利用しているものを追い詰めていくが、
その中で何故か何度もアジトに出入りしていた指示役
の男はガサ入れの際に現場に来ることはなかった。
警察側の情報が漏れているのか。
大河内監察官は、特命係に対して新しく転属されて
きた桐生について素行調査を依頼する。
そうしている内に限りなく黒に近い容疑者の男が
殺されて見つかる。
日本の都市部は新しい文化と古い文化が混ざり合い
異世界を形成していると言われる。
主に建築の分野とか伝統芸能の類のものだが、
裏社会の現場に於いてもそれは同様のようだ。
昔気質の義理・人情のヤクザ。
ヤクザと半グレ。
認知出来ない子供の存在。
ちょっぴり安っぽい尾行劇。
ドラマで一番興味深いネタとして描かれたのは、
「警察官を志すものと身内にある反社会活動家の
関係」が現実問題として浮かび上がる、
その条件を以てしても警察官になれるのか否かという
ことだった。
「前科を持つ人が身内にいれば警察官にはなれない」
とは耳にしたことがあると思う、
しかし警視庁のサイトなどではその事実は否定されて
いる。
会社員として働く際に身上調査があり、反社の人、
学生運動やデモに参加した人は就職しづらいという
事を何度も耳にして来たことだ。
だから今回その辺の事情にも一部迫る流れが有る
ところは興味深いものだと言えよう。
シナリオとしては、シーズン22が始まりわずか5話で
あるが、すでに同じような要素の組み合わせで構成
されていて、設定を少し変えただけの流れが
あるところは気になる。ただその分だけ細かい違いを
比べてみると面白く映るところがあるのも確かだ。
[事件]
基本的には組対の違法薬物の摘発事件。
捜査をしている内に一人の容疑者が何者かによって
殺害される。
被害者 : 黒沢秀一 (40歳、昭和58年5月29日)
発見現場 : 江東区南亀戸 トータルライフレジデンス南亀戸302号
死因 : 背中からナイフで二度刺された
死亡推定時刻 :
職業 : 半グレ”スコルピオ”の幹部、 “指示役”
備考 : 過去に恐喝罪の前科がある
●現代的な犯罪、社会の構図
少し前にマスコミやネットを中心として賑わせた
「親ガチャ」という言葉があるが、今回はそれを一部
要素として取り込んだネタでもある。
父親は反社の人物。
しかも一人斜陽産業のヤクザとして未だにそれを
貫き通しているのは何故なのか正直よくわからない。
「闇サイト」「特殊犯罪」「空き家問題」「受け子と
指示役」「半グレとヤクザ」「名義貸し」
「飛ばし携帯」
今どきの犯罪に使われている用語は数限りなく使わ
れている。
●人間関係の希薄化
犯罪の役割の分担から、一人逮捕してもなかなか
全体像が見えづらく、尻尾斬りのようにして
その流れを把握していないものたぢだけが捕まる
構図となっているのが現代の犯罪だ。
ブライバシー遵守という名目の元で、人間関係は
どんどん希薄化していて、同じ犯罪に手を染めていた
としてもネットで集められたり、名義貸しのような
形で気がつくと犯罪に手を染めているということも
あるのだろう。
一番恐ろしいのは人生を諦めた若者のような存在
だと思う。働かなくなったとか、働いても意味がない
と考えて労働することを放棄する。泥臭い仕事など
はいくらでもあるがそういうところで働いても最低限
の生活しか出来ないと考える。
ネット社会に見る他人の生活が華やかに見えること
によって労働意欲を削ぐことに繋がっているのかも
しれない。
●組織と個人の関係
犯罪にも実態があるように無いような形ではある
が組織があるように、犯罪を追求していく側にも
組織が有る。
警察の組織が犯罪を犯すことは法治国家に於いては
絶対に許されないこと。それ故に身内で犯罪が起きた
としても内内で処理されがちなものだ。
大河内監察官は部下の素行に気を配っている。
警察の中でも独立していて同じ仲間からも嫌われて
こその部署だと思う。
ヤクザの世界でも現在の人間関係は希薄なものだ。
単に上納金を払うばかりの存在。
それでも容易に抜け出すことは出来ない縛りがある。
●鋭い観察眼
右京さんの空き部屋の違和感の流れから始まり、
尾行した先にあるアジトからはミントの葉が見つか
る。
空き部屋は多数あるものだけど、都会にポツンと
存在している一つの部屋の郵便受けを見て
犯罪性があると考えるところは鋭さを超えて
少々シナリオとしては強引な導入部だ。
薫の調査でミントを使った和菓子(季節のフルーツ
入り生クリーム”フルドラ”)が川越にある
独鈷庵で製造されているのを見つける。
渋谷・楠町のアジトからは電車で一時間以上の距離
がある場所。
またしても埼玉が出てきた(笑)
郵便受けに気がついたことと同様に黒沢という
男の観察眼は少々鋭すぎる。
そして今回もまた通話中に通話先に起きていた音が
ドラマでも最終的に犯人確定までの筋道をつけた。
記憶はいい加減なもののように思うが、黒沢が
殺害された時に電話で通話しており、その相手が
桐生であり、電話中に気になったのは「軋むような
音」だという。先日のアジトでの摘発の際に
右京さんはその音に気がついていた。
インソール内の摩擦・・靴なめの音がしていた。
その靴を履いていたのは和光だった。
裏付けとしてタクシーのドライブレコーダーの映像
が証拠として現場にいたことを証明する。
●今回の脚本家の岩下悠子さん
「レシート」の流れから捜査が展開が発展していく
ことは3話の中でも描かれた。
に重要な物事が詰まっている。
「都民ジャーナル」
2021年(2年前)11月3日(水)に発行されたものでネット
配布されているバックナンバーからプリントされたもの。
折り方から見て常に所持していたであろうことが
分かる。
意外なところから足がつく。
銀龍会の直系組織、成浦興行の現役組長の花井
与志郎。和菓子屋をしていて、そこでも職人気質の
人物だが裏の顔がある。
●過去は常について来る
都民ジャーナルに掲載されていた組対課の桐生の
功績。
その記事を花井が大事そうに所持していたことで
繋がりが何かを探る。
結果として「文字・筆跡」から人物の特定に至る。
1994年に花井は府中共生病院に入院している。
そこには桐生の母親・真弓が看護部長として働いて
いて翌年出産しているが父親は死亡との届け出が
ある。
■その他
「国家公務員法及び地方公務員は親族の社会的
身分を欠格商工とはしていない。警察職員の
信用は本人の能力や適性を公正かつ厳格に判断
して行っている」
しかし現実的は反社会的勢力の身内が司法警察員
として適格である訳がないと考える人は多い。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (“こてまり”見習い)
大河内春樹 …… 神保悟志 (監察官)
桐生貴明 …… 小林亮太 (組織犯罪対策部薬物銃器対策課刑事)
花井与志郎 …… 殺陣剛太 (57歳、成浦興業組長・通名「小林」)
和光 …… 小日向春平 (闇バイトの若者)
黒沢秀一 …… 高木勝也 (40歳、半グレグループ「スコルピオ」幹部)
桐生真弓 …… 菅原あき (54歳、府中共生病院看護部長・桐生の母親)
緑川あや …… 伊藤麗 (「独鈷庵」アルバイト店員)
鈴木とし子 …… 酒井麻吏 (桐生に詐欺被害を防いでもらった女性)
山田 …… 森橋諄哉 (闇バイトの若者)
向原 …… 佐藤元輝 (闇バイトの若者)
…… 仲城煎時 (麻薬密売グループの男)