(2017年10月期・TV朝日・水曜21時枠)
EXプロブューサー:桑田潔
チーププロデューサー:佐藤凉一
プロデューサー:高野渉、西平敦郎、土田真道
音楽:池頼広
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第18話 ロスト~真相喪失
脚本/池上純哉 監督/橋本一
【ストーリー】
5千万が一斉に引き出される事件が発生。使用されたカード
はカリブ海の小国ケセラ共和国の銀行から顧客データ
をスキミングして作られた偽造クレジットカード。
警視庁ではATMの防犯カメラの映像から”出し子”の特定を
している」。と報道される。
・特命係
冠城は犯罪のグローバル化であることを告げ、カリブで
情報が盗まれて引き出したのは日本だと。右京もまた情報は
国境を越える時代だという。
そんな会話中、角田が特命係へ。
「暇じゃないと思っていたがやっぱり暇か」と角田。
「変わらぬ月曜日の朝です」と冠城。
角田は手を貸して欲しいとし出し子の数がハンパないのだと
いう。
・取調室
右京と冠城が男を聴取する。
藤山賢太郎(H10/4/3)・・出し子のバイトは誰からの依頼なの
か?と冠城は問う。藤山は分かる訳が無いとし前に同じ現場で
働いていた中国人に誘われたのだという。
金髪にした中国人、王東明(昭和60/7/17)を取り調べるの
は角田ら組対5課だった。通訳の西村欣也が王に話す。
出し子を捕まえても情報が知らされておらず首謀者まで
たどり着かない。
オーバーステイのヤツもいるので入管に渡したとのこと。
・(株)濱口ライテック
通報を受けて辻巡査が巡回にやってくる。オフィスで男が
頭を殴られて死亡していた。芹沢によると被害者は社長の
濱口裕一郎(39歳)。伊丹は随分と若い社長だというと、元々
父の会社で5年前に病死して引き継いだとのこと。死因は
頭部を鈍器で殴打されたものによる脳挫傷。殺害される直前
に通報装置を押し110番通報システムが指令センターに
送られそこから連絡が入って辻が観に来たという。ここは警邏
対象だったこと。中国人従業員が多く給料の未払いで押し問答
が起きたことがあるという。
右京達がいるのを知って伊丹たちは露骨に嫌な顔をするが、
角田からの命令で出し子の一人が半年前まてこの会社で働いて
いたのだという。
壁に貼られている日本語と中国語の翻訳対応表を見て、中国
の人と上手くやろうとしていたようだと語る。
右京は鍵のかかった給湯室に何か違和感を覚えて冠城に開けて
もらう。するとそこには少女の李雨均(小李/シャオリー)が
一人で座っているのが発見される。
「あなたは見たのですか?」
李は中国語しか会話出来ない為に警務部通訳センターから
西村欣也が派遣される。伊丹は犯人の特徴を教えてくれ
とし思い出せる範囲で良いと語る。しかし何も答えない為に
西村は警戒しているのかも知れないと語る。西村は説得する
ので少し時間が欲しいと語る。
■感想
この年の2月21日に大杉漣さんが亡くなられ、放送の開始直後、
画面の中でその事実に触れられた。大杉さんといえば
相棒での役割としてはもちろんのこと、芸達者で幅広い演技
力で魅せてくれる俳優だっただけに、その死は日本のドラマ・
映画界にとっては計り知れない損失である。しかしその後、
このレビューを書いている時にはコロナウィルスが世界中に
蔓延し、日本の芸能界も相当な人物が亡くなってしまった。
今回のドラマでは、冒頭の右京&冠城の会話の通り、犯罪は
国境を越える【犯罪のグローバル化】である。スキミングは
カリブ島、現金の引き出しには日本、そして出し子の大半は
中国人が利用されている。
それ故に組対5課も捜査にかり出されて大がかりの組織犯罪と
対峙していくことかに思われた。
興味深いのはやはり不自然な言動を見せる森迫永依ちゃん
演じるシャオリーの存在。
冒頭から先制パンチとばかりに供述を翻す。
こういう内容の問題として共通するのは「コミュニケーシ
ョン」だ。単純に話が通じない事も有るのだけど、
話の内容や誠意が通じない相手とは信頼関係を築くのは難しい。
また故意に言葉の意味をねじ曲げて伝える人が居ないとも
限らない。
社長と彼女の会話のやりとりはメールで行われていた。
スマホが通訳の役割を果たすというのは今は珍しくない。
しかし携帯などを利用したメールでのやりとりは、刑事ドラマ
「アリバイ」として利用しようとするが、実際には証拠として
は成り立たない。追跡した所で本人がそこにいたという証拠
にはなり得ない事。
そしてメールも本人が自分で入力しているのかが分からない
からだ。
それだけにドラマではより細かい所からかみ砕いて真実の追求
をしていく。
以上のことから見てもドラマとしてのテーマは【信頼関係】
というところに繋がる。出生とか郷土がより信頼を築く上で
重要なものなのか。民族同士の繋がり、そして同じ職場の
同僚。
■捜査へ
シャオリーの母親は日本の企業に中国人労働者を斡旋する
人物。そして彼女自身は吉林省保南村の出身。
中国では親しみを込めて名前を呼ぶときには「小」という
文字を使うことがあるそうだ。中国人の掲示板からは逆の
意味をもって日本の前に「小」と言う文字を大量に書いて
居ますが・・・
目撃者で現場にいた彼女の名前は李雨欣(ユーシン)。
また「欣」の文字は【喜び】という意味。
会話中の中国語の中に「ワンタン麺」という言葉の響きが
記憶の何処から残っていた冠城のメガヒットな閃きと直感。
出し子の王東明。なんとワン・トンミン。組対5課が聴取
していた人物だ。
不自然に共通してくるのは通訳が同じ人物であること。
・証拠品
被害者の車から見つかった大量のスマホ。
海外で購入されたものだった。
スマホは先日の日曜日の午前中にだけ集中して使用されてい
た。
ATM引き出し事件で使用されていたものだった。
2億5000千万がまだ見付かっていない。
ヤミ金が犯人ならばシャオミーは確実に話をするハズだ。
・労働者問題
会社などに於ける労働問題も浮上してくる。
零細企業ゆえに安い労働力を求めるが、そこで日本人との
労働待遇の違いや賃金の問題が争いの原因になることは
よくある。
この会社は専務だった塹江悟が引き継いで経営していた。
しかし残念な事に拡大する事で投資したことが失敗して
会社を潰してしまう。
・捜査上、気になる人
この会社の経営者であり被害者・濱口が悪人のような
先入観を見せている。ただ彼は会社の中で中国人との関係に
配慮している事は社内の壁に有る「日常使う中国語」の
張り紙などでも明らか。
金が盗まれた事件である事もあり、借金やら金銭・労働問題
も全て金絡みであることを見れば、犯人の目的は「金」の
様にも思える。
ただし別の目的も否定は出来ない。
・シャオリー(小李)
この人物が被害者なのか、加害者なのか。
被害者を装っては居るが彼女の携帯が利用されている事や
被害者が亡くなった現場に居た事からも、彼女には犯人が
誰なのか分かっているのではないかに思われる。
・警視庁の西村欣也
彼の名前はシャオリーの本当の名前「欣」と同じなところが
気になる。
そして通訳故に色々と不都合な情報は会話の中で伝えない
可能性が有る。最初にシャオリーと対面し会話した時も
少し違和感を覚えるアクションを見せていた。
通訳センターでボランティアしている。
母親は日本につながりが有り帰国してから西村の前から
音信不通だという。
彼は捜査官となったわけだが、色々とその経緯に関しては
不明な点も多い。最初の勤務地は歌舞伎町の交番だったよう
だ。母親が帰国しなければならなくなったという理由が
また気になってくる。
・ヤミ金業者
ドラマの中盤で企業に金を貸して脅していた人物が捕まる。
濱口には出し子の手配と集金をさせていたとのこと。
「2億5千万」の在処は知らず・・
この人物は完全にダミー的人物だよね。
まぁ別件では有罪確定ですけど。
・ドラマでのキーワード
ロスト・イン・トランスレーション。
通訳者が内容を要約することで逆に真意はロストしてしまう。
右京にしては珍しく中国語に精通していない。
王東明から身の上話を聞く事になる。
その身の上とは誰のことなのか。
■クローズド
シャオミーが帰国前に改めて西村欣也を通訳に置いて話を
聞く。
社長はシャオミーを通して出し子を探すように頼まれていた。
聴取で嘘をついていたのは西村の方だった。
王から話を聞くと、なんとシャオリーの母親は再婚していた。
そして再婚した相手と出来た子がシャオリーだった。
案の定、名前はキーワードになった。
喜びを持って出会える運命にある二人が悲しみの出会いの
仕方をしている。気になるのは何処でシャオリーが欣也の
事を義兄だと知ったのか。
最後のオチは「金」の在処でした。
事件の直後のカメラに既に犯人の姿が映っていて、
ある意味では泳がしていた格好だったのかな。
意外なのは被害者の社長は悪い奴だったこと。
専務は悪い奴かと思わせあの職場に貼った中国語の文字は
専務によるものなのか?
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目”花の里”)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー対策本部特別捜査官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (鑑識課)
シャオリー(小李)/李雨欣(ユーシン) …… 森迫永依 (吉林省保南村出身)
西村欣也 …… 矢野浩二 (警視庁警務部教養課通訳センター)
塹江悟 …… 越村公一 (“濱口ライテック”専務)
濱口裕一郎 …… 伊原農 (39歳、”濱口ライテック”社長)
王東明 …… 辛島陽一 (出し子、吉林省保南村出身S60年7/17生)
美間幸美 …… 魏涼子 (中国語通訳)
濱口美鈴 …… 佐久間麻由 (社長の妻)
服部 …… 徳秀樹(闇金業者、ATM不正引き出しの首謀者)
藤山賢太郎 …… 藤井健人 (出し子、H10年4/3生)
辻 …… 高尾悠希 (第一発見者、警ら中の捜査官)
ニュースキャスター …… 木下彩 (関東一円のATMが不正引出し)
王暁東