ミステリと言う勿れ
(2022年1月期・フジテレビ・月曜9時枠)
原作:田村由美
プロデューサー:草ヶ谷大輔、熊谷理恵
演出:松山博昭(1)(2)(3)(5)、品田俊介(4)、松山博昭(6)(7)、相沢秀幸(8)(9)
音楽:Ken Arai
主題歌:King Gnu「カメレオン」
https://www.fujitv.co.jp/radiationhouse2/index.html
第9話 ミステリーナイト真相編! 恩人を殺したのは誰だ
【ストーリー】
●蔦薫平所有の別荘・アイビーハウス
ミステリー会と称して天達春生の同級生の三名が
集まり、更に蔦薫平がSNSで知り合った二人の男性
と、天達春生に呼ばれて久能と風呂光が別荘に行く。
ミステリー会は自分たちが持ち寄った話の謎を解く
ゲームのようなもの。しかし今回蔦が取り上げたのは
美吉喜和が5年前に別荘で亡くなった時のことだった。
・2日目。
外は雪が積もっていた為に雪かきをする。
久能は過去に函館に住んでいたことも有って手慣れて
いた。
すると天達が口を開く。
実は喜和が亡くなった日もここでは
・同じくらいの雪が積もっていた。
・犯人の足跡が裏口まで続いていた。
・鍵が壊されていたのでそこから侵入。
不思議なことは、
・玄関の入り口だけ雪かきされていて犯人の足跡
の一部を消した形になっていた。
・雪かきは犯人が来た後に行われていたことを意味
する。
・犯人ならば足跡は全て消すはずだから喜和が
雪かきを行った。
もしも犯人が居たならば彼女は気が付かずに足跡
を消したのか。
久能は天達に対して第三者の勘よを考えているかを
尋ねる。
・手袋をしてスコップを使用するので指紋は付かない。
・犯人以外の足跡がない。
・別荘に居たのは喜和一人なので他の人がやった
とは考えられない。
それを聞いた久能は再び天達に尋ねる。
先生は「嘘をつく人がいるのを見ていてくれ」
と言ったが、その人は“何のために嘘をつくのか?”。
そしてその人を見つけたらどうするのか?
それは分からないが先入観のない人に見ていて欲しい
のだという天達。
雪かきをしていた勝に対して、デラとパンは話しか
ける。最近山登りはしているのか?
しかし彼は同居している親の認知症が進んでいるので
いけない事を告げ、そしていずれは仕事も辞めざるを
得ないことを語る。妻は居ない独り身なので身軽では
あるというが・・
風呂光はその会話に聞き耳を立てつつ、木の葉の雪が
一部落ちていることに気が付く。よく見るとキョウチ
クトウの葉が折られていることが分かる。
・雪の片づけ終了
道具をガレージに戻す風呂光と久能。
すると突然停電が発生する。ガレージのドアが室内
からでしか開かない仕様で、しかもシャッターも
電動式の為に開かなかった。
仕方なく勝が泊まっていたテントの中を探りランタン
を借りることにする。するとそこには山梨県の古地図
があることが分かる。
二人は電気が付くのを会話しながら待っていた。
このようなシチュエーションを見たことが有るという
風呂光。「停電で身動きが取れなくなった山荘で殺人が
起きて探偵が真犯人を見つける」というストーリー。
久能は探偵がいるなら殺す前に止めてほしいとし、
嘘をついている人はまだ見つかっていないこと。
まだゲームが続行しているのではないかという事。
みんなで芝居していて、この停電もその演出なのでは
ないかと疑う。
■感想
ドラマはとても上手くできていますね。
かつて日本のドラマがネットの掲示板で話題を共有
しながら盛り上がっていた時代にあって「Mの悲劇」
というドラマが制作されたけど、あの時の役柄の様
に豹変する佐々木さんの姿を彷彿とさせるものが
ありました。
ドラマとしては出題されたシナリオに対してどういう
アプローチを見せるのか。そもそも何をどうやって
問題を解決に導いていけば良いのか。
1時間の枠があるわけで解き明かされていない謎と
いうのがそんなに有るのかなと思ってみていました。
今回の冒頭のやりとりを見ていると、始まりは
【足跡】に於ける違和感でした。
犯人の痕跡が残りやすいのは、雪などの自然現象
そのものの中に刻まれるもの。
これと似たものがあるか分かりませんがドラマ撮影に
於いて難しいのは、雪が降る舞台がロケーションで、
足跡がついてしまう為に容易にスタッフがそこら辺を
動き回れず、ミスが許されない状況での演技が求めら
れるところ。
私が小学生の時に読んだ完全犯罪トリックの中にも
書かれていましたが、成立させるためには来た時に
踏んだ足跡を帰る時にも踏んでいくというものだと
記憶が有る(笑)
また【キョウチクトウの葉が折られていた】ところも
有りました。
仮に喜和の事件に別の犯人が居るとすれば私的には
後付けにはなりますが、佐々木さんが演じた橘高勝
という人物が犯行に関与したという可能性は十分に
感じていました。
学生時代には文武両道で完璧な人物でありプライドも
かなり高くなっているであろうこと。
その人物の社会人になってからの周りの視線や扱い
のギャップによって厳しいストレス下にあること。
そして職業がコンプライアンスで縛られ続けている
公務員であること。本人は潔癖症。
山登りのサバイバル経験が有り、植物などにも精通
しているであろうこと。
これだけあれば人が犯行を犯す可能性もあるんだ
ろうなと想像は出来る。
しかし問題なのはその後の流れであり、彼が人を
動かして殺人誘導をしていたことに魅了されてしま
ったようですが、そもそも人を殺してストレスの
解消になるのでしょうか。人を誘導(操る)という
ところににカタルシスを感じるものではないのか。
・ゲームという名で事件を語る
ゲームとはいえ実際に起きた事件が元で出来ている
とした場合、仮定の話がどこまで成り立つもの
なのか。そしてそれが現実のどの部分に当てはまるのか
を探るのは今回の醍醐味である。
当然何処までが本当の事なのかの見極めは必要だが、
それがすべて本当のものだと仮定した場合、一番の
興味のメインは犯人の「動機」にあるのだろう。
これは久能自らが語っていたことだが、
「二つの事が進行中」
であり、その進行具合によってはこれから実際に
起きようとしているもので、なかなかの不安感を
煽る。
そしてもう一つ、
「透明人間が犯人である」
とは勝が語ったものだが、過去に起きた出来事では
なく現在・未来に起きようとしていることと、それを
実行する手段を称して透明人間の話をしたようです。
「ピノキオ効果」のような心理学的分析は、
今回のドラマの中では安っぽいように感じます。
しかし嘘をついた時の仕草よりも、誰もが芝居を
しているはずの用意されたシナリオの中にも怒りの
感情をぶちまけてしまったその人となりの行動心理
にこそ興味深さがありましたね。
・透明人間とは
私はワインの中に毒が盛られているであろうことを
想定して前回の感想の中で取り上げてはいたけれど、
デラとパンの存在は想像以上に効果的だったように
思う。
誰が怪しい人物かと考えた際に、明らかにこの二人は
それに該当するし作者もミスディレクションの如く
視聴者の謎解きへの重要人物の設定を惑わす為の
役割を果たした。
透明人間は本当に存在した。
目に見えるものがすべてではないことを改めて実感
させられる。
透明人間は人物でもあり、手段でもあり、人間の
欲望が詰まったものであることに改めて気づかされる。
指紋や髪の毛、その他自分が居たとする存在感を
打ち消す為に起こしていた数々の事。
そこには絶対に見つからないとする彼の自信があるの
だろうが、彼が潔癖症であり皿を使わないとかベッド
数など、どの段階で彼なりの透明人間ストーリーを
考えていたのか気になる。更に交通カメラまで意識
してここに来る際には車の後部座席で寝ていて見られ
ない行動をしている。
そして全滅させるような予行演習をしていたという
のだから、かなり前から殺意は有ったのだろう。
人を操ることで感じていたカタルシスは自ら行動を
起こすことによって尻尾を掴まれてしまったのであれ
ば、策士策に溺れてしまったようだ。
・言葉尻を捕らえる。帳尻合わせ。
尻のオンパレード(意味不明)
会話劇の中で、過度に言葉尻を捕らえられ過ぎると
逆に興味は半減する。
「そんなこと誰が分かるか」と。
ここに集まっている人物の殆どは犯人捜しの為
に全身全霊を他人の言動に気を配っていたのであろう。
既に犯人を想定して話を聞いて居なければ何事もなく
スルーしていたかもしれない。
「タイムマシンであの日の朝に時間が巻き戻せたら
な・・」
実行犯のようで実行犯ではない彼にとっては相当
立場的には中途半端のようにも感じる。
・どれだけ犯行を証明できるのか
意外と感心したのはアリバイ作りの為の電話の流れ
を作ったことか。しかしドラマでは電話に始まり
電話に終わっている。
寝たきりの父親からの電話に対して自宅に
意図して置いてきて自宅に居たように証言しようと
している。基地局を調べられることも想定しての
行動。
彼女の三回忌の為に集まろうと初めに言いだしたのは
誰だったのかな。
地元の警察はそれを確かめるべくして蔦に協力を求め
ていたし、勝はみんなを殺そうとそのタイミングを
見計らっていた。集まるべくして集まろうとしていた
のか。そもそも本来このミステリー会というのは
定期的に開催していたのだろうか。
「この場所で会をやろうなんて怖かったでしょう。
先生がすべてを知っていたら復讐されるかも知れ
ない。同じ部屋でなんて眠れない」
・肩透かし
・花言葉は単純な過去に起きた事象でのメッセージに
過ぎなかったこと。寧ろ暖炉にキョウチクトウを
くべて殺害したという話の流れの方が重要だった。
・蔦薫平の妻の話は本当だったのかよく分からない。
・犯人と警察にしか知りえない情報を彼が語ってしま
っていた。
・停電という突発的事態に対応出来なかった。
煙突には煙が充満するような仕掛けがしてあったの
か? 雪が降っていたので常に暖炉には火がついて
いたようにも思えるが・・。
・喜和が殺された日に誰と会おうとしていたのか?
・喜和の件では意図していないことなので殺人では
ないのかも知れないが、その後の彼の行動は十分に
殺意のあるもので、被害者ではなく加害者である。
・認知症を患う親への殺意や憤りは無かったのか。
ストレスがあるならまずそこに意識が向けられそう
だ。
■その他
・殺す選択肢のある人間には殺される選択肢も生まれ
てしまう
・帰りは古地図に記載される暗渠から帰ろうとして
いた。
・三つのストラップは公衆電話の近くにあるお土産屋
で購入したもの
■出演者
久能整 …… 菅田将暉 (東英大学教育学部の学生)
風呂光聖子 …… 伊藤沙莉 (大隣署・新人刑事、”フロミツ”)
池本優人 …… 尾上松也 (大隣署・巡査)
青砥成昭 …… 筒井道隆 (大隣署・警部、冤罪事件)
ライカ(千夜子) …… 門脇麦 (大隣総合病院の入院患者)
天達春生 …… 鈴木浩介 (東英大学教育学部の准教授)
美吉喜和 …… 水川あさみ (心理カウンセラー)
橘高勝 …… 佐々木蔵之介 (西東京中央市役所・市民課市民係勤務の公務員)
蔦薫平 …… 池内万作 (物書き)
デラ(奥寺) …… 田口浩正 (西東京署 刑事二課)
パン(小麦) …… 渋谷謙人 (西東京署 刑事一課)
ストーカー …… 藤村直樹 (喜和を殺した?)
久能整の幼少期 …… 柊木陽太
今村有希、山口のりとも、内山知子