相棒20 第18話 詩集を売る女

相棒20
(2021年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋下一(1)(2)(3)(4)(6)(15)(16)、守下敏行(5)(7)(8)
蔵方政俊(9)(10)、権野元(11)(12)(13)(18)
脚本:輿水泰弘(1)(2)(3)、神森万里江(4)、
池上純哉(5)、森下直(6)、山本むつみ(7)(15)、
瀧本智行(8)(18)、川﨑龍太(9)(13)、根本ノンジ(10)、太田愛(11)、
斉藤陽子(12)、徳永富彦(16)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第18話 詩集を売る女

【ストーリー】

●朝見公園

フードを被る女性(マキ)と帽子にサングラスの女性
(KAZHO)。
二人はそこで向かい合い一触即発の状態になる。
冠城はそれに気が付いて急いで近づき、右京もまたやっ
てくるが・・先にマキがナイフを出してKAZHOを
襲おうとする。それを止めに入った冠城は胸を刺され
る。

■警視庁

・事件発生36時間前

「AI時代の捜査方針」に関する研修。

中園は研修で語る。
デジタル庁の発足から半年が経ち警視庁の改革も
急務であること。警察の勘など昭和の遺物で古臭い
こだわりは時代遅れ。今後はAIを駆使した情報分析
による事件の早期解決と未然に防ぐことに注力する
という。それを聞いていた芹沢も伊丹も愚痴る。

芹沢は「夢の働き方改革」だとし、伊丹は「デカは
靴底を減らしてナンボだろう」
ことを語る。

冠城と右京も研修に来ていた。
中園が唱えているAI時代の捜査方針は青木が原稿を
書いたものだった。

「ポイントが定まらずダラダラとして無駄に長い」

・赤羽中央街

・小料理店”喜楽路”

マキは”喜楽路”の二階で居候していた。
女将・大村澄江の店の手伝いの為に買い出しに行き
帰宅。そして料理の仕込みを手伝おうとするが、
女将はそんな彼女に自分の仕事をしなと語る。

彼女は詩人として詩集の制作をしていた。
ようやく出来たものの、一階で何か大きな物音が
聞こえる。行くとそこでは女将が倒れていた。

・線路沿い

冠城と右京はAIを取り入れた捜査について語り合う。

「事件を予測する日は来るのか」
「事件は合理性を無視した結果。理性を無くした人間
の動きは予測不能。そう簡単にはいかないだろう」

そんな会話をしていると線路を挟んだ向こう側に
マキが立っているのを目にする二人。電車が走ってく
る中、踏切をくぐって自殺しようとしているかの
ような動作を見せる。二人に止める術がなく電車が
通り過ぎるのを待つと、彼女は飛び込みすることは
なかった。

・路上
・事件発生28時間前

「私の詩を買ってください。あたし 千里一歩」

右京は彼女の前に現れると彼女が売っている詩集を
一冊手に取る。彼女によると、

「私が生きている証を誰かに知ってもらいたい」

その為に書いたものだという。

右京も詩とは本来そういうものだとして彼女の詩集
を買おうとするが、値段はついていなかった。
右京は一万円を差し出すと、

「あなたの生きた証を拝読させて頂きます」

と語る。マキにとって右京は最初の客だった。

ガリバン印刷とは今では懐かしいとし、手作り感
満載の詩集。今のところ彼女は落ち着いていること
を冠城に告げる。

そんな中、マキの元に近づく男・大倉則之の存在が
有った。冠城は男は堅気のものでは無さそうだと語る。
大倉の元に電話が鳴ると通話相手と会話する。

「シャバに出て来たが組が解散。しかし金づるを
見つけた」

右京はマキがあの男と繋がりがあるとは思えない事
を語る。警察は民事不介入ではないのかと冠城。

・コンビニ

マキは売れた一万円でファッション誌「Holy」を
購入する。
見ていたのは「ALISH」という店のファッション
デザイナーのKAZHO(カズホ)のページ。
彼女はKAZHOがデザイナーとして成功している姿を見て

「私は惨めな思いをしてきたのに・・」

とつぶやく。あの男に存在を教えられて知ったのか。
そしてその女性のことを恨んでいるのか・・

■事件

「事件を未然に防ぐ」。
デジタル庁発足から半年し警視庁でも捜査にAIの導入
を模索する中、特命係はそれについて話し合っている
と、目の前には今にも自殺しようとして思い詰めて
いる女性がいた。
まだ事件は発生していない状況の中、二人はしばらく
彼女の様子を見守ると、彼女が出会うはずもなさそう
な男性と会話しているのを目にする。

■感想

ドラマでは時系列をいじり、ドラマの冒頭で「現在」
を描き、事件発生36時間前に遡り「過去」から順を
追って現在起きている事実を追いかけることになる。
ドラマではよくある演出だ。

その現在の状況では冠城がナイフによって刺されて
倒れる光景を目にする。人は一度死に近い体験を
すると価値観がまるで変わることもある。意外と冠城
はこれで警察を辞めようとか考えたのではないのか。

「現在・過去・未来」。
今回はそんなタイトルが合っている。

人単位で見ると幼年期、少年期、青年期として二人の
人物に焦点を当て、二人を並列的に描く。
時代で見れば昭和、平成、令和の時代の価値観や
時代性を大きく取り込んで比較して描いた格好だった。

現代、そして未来を歩むためには過去の自分が必要
不可欠。それは経験とか存在だけでない。
「名は体を表す」というように自分の名前や戸籍は
必要不可欠だ。
欠けているピースがあるとそれだけで歯車が合わず
アイデンティティを見失ってしまうこともある。

詩集に書き留めた思いは自分が自分である為に彼女が
取った最良・最善の策でもあり、がけっぷちの彼女が
唯一自分を見失わずにいる為の御守であり自分史で
ある。

■インターネット

このシーズンでは、インターネット的要素を多く取り
入れている。ネットというよりもテクノロジーを利用
した捜査方法だ。過度に発展すれば監視社会と化して
しまうのだろうし、日本人は「マイナンバー制度」で
さえも嫌がっている。
AIによって人の殺意を察して未然に防ぐなんて、
海外ドラマ「PERSON of INTEREST」みたいだね。

インターネットは人種だけでなく色んなジェネレー
ションが集まる場所であるが、最近は相対的に回帰
する傾向にあり、昭和という時代がクローズアップ
されることもある。それ自体が回帰しているという
よりもエンターテイメント界が足踏みしている間に
過去の良いものを探す傾向にあるのか、なかなか
新しいものを求める人たちが過度に保守的な態度を
取っていることも有って、「マイナンバー制度」の
普及にも繋がらないのだろう。

今回事件に関与しているであろう二人の女性にも
同じことがいえる。
過去に何が有ったのか。現在の二人の位置はどうなっ
ているのか。そして未来はどうなるのか。

単純なシナリオではあるが計算高く作ってある。
多少雑に感じるところがあるのも事実であるが、
それもまた昭和的なものだと見ると意外と気にならな
い。

■今回のドラマの楽しい見方

上述したように今回は新しい文化・価値観が導入
されたり、古い価値観が今尚残っていて、そこに
良さを見出しては離れられないものもある。

それらの違いを一つずつ見比べているのが楽しいので
はないか。

更に二人の人物を見た時に、過去から現在に至るまで
にその人にとって「有るもの」と「無いもの」で
分ける要素があるので違いを見比べて楽しむ方法も
ある。

・刑事たち

「刑事の捜査とは」という題目で今回は中園参事官が
語る。「刑事の勘は昭和の遺物」

しかし伊丹はそれを否定し「靴をすり減らして捜査
する」ことへの必要性を唱える。

また今回は尾行の仕方が相当雑だったので、思わず
「太陽にほえろ!」を思い出す。二人での交互の尾行
では顔を覚えられてしまうからね。

■それぞれの時代

未来は今の自分が何をもって意識し活動しているか
によって変幻自在な方向性を持つ。

虐待は今も昔も存在していると思うが、二人は似た
ようなスタートラインに立ち、途中まで似たような
人生を歩んでいたように見える。

足踏みしてしまっているマキは今の自分の生きる証
を刻むことで精いっぱいだ。
一方でKAZHOは「すべての女性に輝く権利を」という
コンセプトの元で女性全体をよくする為にファッシ
ョン界での活躍を見せる。

昭和時代の功績は人との交流での障壁が低くて
温かみを感じるところがある。
しかし逆にその古臭い価値観は効率性を無視したもの
となり、付き合いから共倒れすることも有るし、
色々と不都合が出てくる。

平成時代の問題は何だろう。
個人のプライバシーの問題の名の元で人的交流が
かなりの壁となり憚っている。テクノロジーの進化に
よって効率化が図れるが、その進化についていけ
ない人との間にギャップを生じる。

ドラマ「息もできない夏」は無戸籍問題などを取り
上げたものであり、今まで考えもしなかったことが
現実にあるということを知った。

■二人をつなぐもの

本来会ってはいけない養子とか臓器移植の問題の
ように、戸籍を売買していた人同士は会えないはずだ。
しかしそこに欲望に満ちた男の存在を知ることになる。

皮肉にも二人はフルネームでの生活はしていない。
一人はマキで一人はKAZHOだ。

意図したことなのか、マキこと千里一歩の生年月日
は1988年
。昭和最後の年で翌年から平成時代に入る。

■事件解決

二人のまるで違うようで似ている女性。

「ゼルダの伝説」の如く最後は自分の分身と対決
しているかのようだ。右京さんはそれを「コインの裏
と表」
と表現していた。二人共ナイフを持ってきて
決着をつけようとしている。

しかし気になるのはマキの方は戸籍を売ったのは
自らが男に騙され闇金に手を出したことが要因では
ないのか。戸籍を買うだけで確かに犯罪だと思うが
売る方も売る方だ。まるで売春・買春に於ける
扱いの違い。TBSで放送していた「カルテット」
松たか子さん演じる真紀が10歳の時に母を亡くして
戸籍を買っていたことを思い出す。

「自分の名に戻り一から人生を始めてください」

母親の死は誰にとっても悲しいが、このドラマでは
そうとばかりは言えない親が出て来る。
更に血のつながらない母のような澄江の死は血縁以上
に悲しみを誘うものがあった。

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (警視庁組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (警視庁サイバーセキュリティー)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)

マキ …… 太田莉菜 (路上詩人・ペンネーム千里一歩)
KAZHO …… 篠原真衣 (ファッションデザイナー)
大倉則之 …… 日向丈 (元銀星会下部組織構成員)
大村澄江 …… 片桐夕子 (小料理屋”喜楽路”女将)
西山正人 …… 三田村賢二 (“喜楽路”、大家)
村川陽子 …… クノ真季子 ((株)「ALISH」代表取締役)
ショウジ ……

久保沙由季、三尾珠子、豊森ちはや、小澤葵

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