相棒22
(2023年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)
脚本:神森万里江(1)(2)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、古革昌実、
土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
第2話 無敵の人~特命係VS公安…巨悪への反撃
【ストーリー】
■前回の相棒
弁護士・上原阿佐子は恋人の牧村克実が
「微笑みの楽園」を調べていることを知る。
しかし調べていく内に彼の本名は牧村ではなく、
別の名前であらゆる場所に潜入捜査する警視庁
公安部の捜査官である事を知る。
そんな最中、公安と教団の関係を調べていた
内閣情報調査室の社美彌子が教団のものによって
撃たれる。
■警察病院
特命係の二人が訪れると美彌子の部屋は面会謝絶に
なっていた。
そこに警察庁長官官房付の甲斐峯秋がやってくる。
甲斐峯秋に美彌子の容態を聞くと、一命を取留めた
と聞いているという。
“男性の本名”を尋ねる。
右京たちは既にその男が「微笑みの楽園」に潜入
捜査している公安部の捜査員という確証を持って
いた。
“鶴見征一”。
彼は教団が名称を変更した後もまるで体質が変わっ
ていない事を危惧し自ら志願して教団に潜入した
のだという。それは3年前のことだという。
彼は昨年の爆破事件直前に懲戒免職になっていた。
捜査費の不正利用という事だが建前だろうという
甲斐。ミイラ採りがミイラになったのかと亀山は
呟く。
美彌子もその事を疑っていた。向こうに取り込まれ
てしまったであろうこと。公安もそれで教団に
対して及び腰であろう事を推察する。
教団に寝返ったことが分かれば公安部長・御法川
はただでは済まない。保身のための隠ぺい。
体質が変わらないのは何処も同じだ。
■亀山家
阿佐子はタブレットでネット記事を見ていた。
「内閣情報官、銃撃事件宗教団体の信者を逮捕。
一命をとりとめるが腹部を撃たれて重体」
心配する阿佐子を気遣う美和子。
何かあれば右京たちが教えてくれると語る。
■警視庁
御法川と警視庁副総監・衣笠藤治に対して記者
たちは事実関係についてコメントを求める。
これから記者会見をするのでそこで話すと語る。
一方亀山は右京と語る。
今回内調/美彌子が撃たれたのは隠ぺいしようと
した内容を掘り返そうとしたから・・それならば
公安が関わっているということ。
「これ以上首を突っ込むなという警告」
でも発砲したのは教団信者。
公安と教団は何処かで繋がっているのか。
甲斐は二人に公安を調べる気じゃないだろうねとし
事情を話したのは大人しくしていろという意味だ
と語る。
■感想
シーズン22の1話の後半部のエピソード。
このスタートの仕方を見ると意外にも原点に立って
警察組織の構図と現状を照らし出していく流れを
描いて行くのではないか。
もちろん亀山くんを特命係に戻したことも有って
そんな雰囲気を助長させているが、今回のドラマを
見ても分かるように、大義の為の犠牲を刑事自身が
行っても良いのかどうかの葛藤がある。
長い事、右京と警視庁の上層部/小野田公顕が争って
きたテーマでも有るが、「個人の命」と「国を守る
組織の立場」を天秤にかけることの中に正当性が
あるのか問われるものがある。
アメリカの映画やドラマを観ていれば、潜入捜査官
に課せられた非情な選択を強いられることが
必ず発生する。
潜入して仲良くなった仲間を保身の為に殺害しなけ
ればならないシーン。また同じ潜入捜査官に対しても
同様の事を突き付ける。
潜入した組織の仲間となる為に段々と病んでいき
ドラッグに手をかけたり上述するようなシーンを
求められ何が正義なのかが分からなくなっていく。
今回のドラマを観ていると、面白いくらいに同じよう
な事が行われていることに気が付く。
あらゆる社会階層・階級、全く違う別の組織の中で
も、「大義の為」が「神の意思」と同様にして
犠牲を強いられるものがある。
これは意図して脚本家がシンクロさせたものだろう
が、言うは易しで、そんなシナリオを作った事は
凄いとしか言いようがない。
人を欺き、誘導していく流れも至る所で存在し、
人間不信に陥りそうな社会が今回のドラマの中で
は見られた。
現実社会に於いてもSNSなどに見る「事実確認」を
行わずに見たものをそのまま受け止めてしまう
現状に問題があるのかも知れない。
ネットで拾ってきた出所不明の記事をそのまま
コピペして垂れ流している人は多い。
[事件]
・平井翔 (「神の国」信者)
10年前、都内三か所の警察署と新都心グランホテルで
薬物テロ。
自殺
・平井蓮
1年前にレストランを爆破
(店内には13人居た。3名死亡、5名が重軽傷)
自殺に見せかけた殺人。
●幾つかの考察
・クセモノ感のある上原阿佐子
最後まで信用できなかったのがこのキャラクター
だった。
内通者がいるとか信者がいるとか言われると、
ドラマでは身近にいるものではないかと考えて
しまうからだ。ある程度初期の段階から情報
を持っているので彼女の持つイニシアチブが
どの程度存在しているのか。
幾らでも後付け的流れでシナリオを別の形にも
描くことが出来るので絞りづらいものが有るが、
このキャラクターがドラマの中で一つ引っかかって
いたのは、彼に執着しすぎる部分の中に違和感
しか映らないこと。
上手く作ってあったのは、愛は愛でも阿佐子が愛した
のは牧村ではなかった。
「愛」と「憎しみ」は執着するだけのものが有る
様だ。
サプライズの為に後付け感が強かったが、上原阿佐子
と爆破された店のオーナーは、初期の段階から
牧村のことを知っていて、二人は共闘し工作して
いていたところは、特命係に隠す必要が有ったのか?
・クルーザーに乗って海外逃亡
70年代、80年代の刑事ものドラマには犯罪者は
こういう形での密航・国外逃亡の仕方が流行った。
海にさえ出てしまえば捕まえられなくなるみたいな
流れだ。
80年代も後半になれば飛行機で逃げようとして最後
に空港で捕まるかどうかという切迫感で盛り上げ
ようとする。
相棒の中でも何度となく空港で逃げようとする
被疑者を捕まえたことが有ったのではないか。
・内通者の存在は面白く出来ていた。
公安と宗教組織の繋がり。
公安から懲戒免職を受けたとされる鶴見(牧村)は
誰とどのようにして繋がっていたのか。
スパイ・諜報活動のドラマではこれが何なのかが
肝となるのは言うまでもない。
・「悪のレッテル」はいつまでも付きまとう
イメージを利用して、人は他人を欺き、嘘をつき、
隠蔽、捏造なんでもする。
宗教組織などが起こした過去の非道な行動は人の
心の中にいつまでも記憶として残る。集団化した
カルトだとすれば何をすれば分からないからだ。
特にマスコミは市民が描いて欲しいという事しか
記事にしないところがあるようにも思う。
「微笑みの楽園」は結局前身の組織から変わって
いない事しか描かないし、警察・政治など治安を
維持するものたちは、フィクサー的影の存在が
不都合なことをもみ消して、この世の中から
無かったことにしてしまう。だからこそ繰り返され
る。
・異常すぎる公安の牧村克実の行動
この人物は複数の人物を”神の名のもと”で殺害を
している。一人や二人ではない。
国家を守るという名目、組織を維持する為の行動
だとしても、これだけ人を容易に殺せれば、人を人
として見ておらず、サイコな人物としか映らない。
この人物によって一体何組の家庭が”運悪く”殺さ
れてしまったのか?
ただそこに居ただけで殺されるという不条理さ。
事件が起きてもいないのに妄想のようにして
事件を起こして本性をあぶり出そうとするも
何もなく、ただ人を殺しただけになってしまう。
ここで流れが止められれば良かったが、組織が
どうとかいうアホな思考によって、より被害者を
増やしてしまった。
・改革という名の大義名分
最後に社美彌子もまた現状を打開する為に組織改革
をする必要がある為に、事実関係や真実を知りながら
黙認しようとする。
かつて相棒の中で政治家は何度なくこのような行動
を取って来たのではないか。美彌子もだんだんと
元政治家だった片山雛子を思い出すようなキャラに
なりつつある。
しかし車椅子で動き回る様子は何処か迫力が有ったな。
・恨みと弱み
美彌子は取り合えず出世の為に衣笠藤治に貸しを
作る。
25年間務めた御法川誠太郎は衣笠に尻尾切りされた。
SP版で彼の恨みが事件化していくのだろうか。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁長官官房付 警察庁のキャリア官僚)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト、”こてまり”見習い)
社美彌子 …… 仲間由紀恵 (内閣情報調査室・内閣情報官)
土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティー対策本部)
青木年男 …… 浅利陽介 (内閣情報調査室)
上原阿佐子 …… 栗山千明 (弁護士)
牧村克実 …… 市川知宏 (警視庁公安部。鶴見征一)
御法川誠太郎 …… 田中美央 (警視庁公安部部長)
成増孝徳 …… 松田賢二 (警視庁公安部捜査員)
末次広平 …… 俊藤光利 (レストランオーナー)
坪内吉謙 …… 伊東孝明 (「微笑みの楽園」幹部)
太田 …… 栗原功平 (「微笑みの楽園」信者・社美彌子を銃撃)
江端 …… 安村のりひさ (「微笑みの楽園」信者)
村上巧 …… 釆澤靖起 (レストランの客・待ち人、当時37歳)
迫水 …… 池原丈暁 (暴力団員・拳銃密造グループの元締)
末次佳代 …… 佐野啓子 (末次の妻・平井のテロで死亡、当時46歳)
平井蓮 …… 永澤洋 (平井翔の兄)
平井翔 …… 桐矢一 (信者・爆破テロ、自殺)
風間義晴 …… 東龍美 (社会学者・平井のテロで死亡)
二宮蒼 …… 縣まいこ (教団本部前でリポーター)
…… 市毛達也
津阪雄一、住吉晃典、肥田野俊、田中瑛祐、林いえきち