相棒15
(2017年1月期・TV朝日・水曜21時枠)
プロデューサー:伊東仁、西平敦郎、土田真道
音楽:池頼広
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第11話 アンタッチャブル
脚本/山本むつみ 監督/橋本一
【ストーリー】
自転車で通りかかる男性は道端に座った様にして倒れている
人物を見て酔っ払いかと思い声をかけると、その人物は死ん
でいることが分かる。
内村と中園は特命係の二人を呼び出すと、例の一件には首を
突っ込むなと釘を刺す。お前らがコツコツ嗅ぎ回っているのは
知っているという中園。音羽台で発生した会社員刺殺事件の
事かという冠城。遺留品もなく捜査が難航している事件だった。
ようやく有力な目撃者が現れたがその人物は警察の関係者
家族。しかし目撃者本人は事情聴取に応じず目撃者と接するな
と本部に通達が有ったという話だった。中園は証言は文章で
入手済みだという。
「事件当夜夜7時過ぎ、被害者男が30歳前後の黒いパーカー
を着た中肉中背の男で、被害者と怒鳴り有っているのを見た」
というもの。怖くなって目撃者はすぐにその場から離れたのだ
という中園。やはり本人から聞くべきではないかというが、
目撃者はまだ中学生で我が子を事件に巻き込みたくない親心だ
という。しかし冠城は目撃者が警察関係者ならもっと強く協力
要請しても良いのではないかという。上の方の人なのかと問う。
部長は上の顔色を伺い捜査方針を決定することはないという
が・・・
内村は特命が動くのは別に構わんとしホシをあげてくれるなら
好都合だという。しかし目撃者には近づけるなと中園に語る。
中園は内村はお土産の最中をプレゼントするが彼は虫歯だと
して中園の好意を無にする。しかも情報漏れしたらお前の責任
だと非情なことをいう。
青木は特命係にやってくるが二人が居ないことに気づく。
角田はサイバーセキュリティ対策室って暇だなという。
右京たちは現場に言ったという。
右京と冠城は現場にいく。
人が全く通らず数えていただけでも15分の間に自転車が3台
通行人が1人。被害者の矢口紀之(37歳)が刺殺されたのが帰宅
途中の午後7時過ぎ。今よりも更に人通りは少なかったハズだ
という。目撃証言が集まらないのも無理がないとし、しかも
たった独りの有力な証言者が伝言ゲームでは・・と。
「妙だ」という右京。上からの横やり、理不尽な指示が出る
のは訳が有るだという冠城。しかし右京はその事ではなく
被疑者を目撃したという中学生はこんな寂しい通りを何のた
めに、何で歩いていたのか。通学路などではない場所。
中学生が行くなら学習塾、コンビニ、ファストフードだろうが
この辺にはないという。自宅がこの辺なのか・・友達の家が
この辺に有るのか。表札の出ていない家が有ることに気がつく。
空き屋なのか?犬連れの主婦に話を聞くと、近頃この辺は物騒
だという。空き屋が多くなりおかしな人とか子供が勝手に
入り込んでいること。タバコでも吸って火事でも出さないか
心配だという。そんな目の前で中学生たちが次々と家に入って
いく姿を目撃する。
■感想
何気に名作だった今回のエピソード。
内容はシンプル且つ実は意外と深い内容である。
目撃証言者のことを取り上げた話だけど、証言者本人のこと
と同時に証言に於ける記憶の問題なども面白く取り入れられ、
伝聞で聞く話だけでは通じないことがあるということを
端的に示したものだった。
目撃証言の信憑性とは思っている以上にいい加減なもので
人の記憶の曖昧さというのはドラマでもよく取り上げられる。
しかし記憶の中でも顔・形はハッキリ覚えていなくとも
色などの抽象的なものの方が意外と記憶に残るもので、今回は
赤いカッターナイフとか緑色フォントの店の袋、迷彩色の靴な
どの記憶が蘇り、かなり容疑者像に近づけるものが有った。
ここから凄いのは被害者が左指を傷ついていたとか、突き止めて
行くわけだけど、まぁその辺はちょっとできすぎかな。
更にドラマでは、家庭と仕事の問題が取り上げられる。
社会人として家族を大事にするか出世を第一に考えるかを
通して社会人としての一個人の問題、家庭との関係、そして社会
や組織の問題へと深く言及していくもの。
親は子供のことに目を向けずに組織と出世のことばかり。
上司は自分の保身と名誉や手柄のことばかり。
ただ癖のあるのは出世を求めるのは家族の為だったりもする
し、更にはかつて脅迫されていることから家族を守る為に
目撃証言を阻んでいるという現実も後に発覚していく。
「私はここにいる」と娘は主張したいところだけど、色んな
要因が重なって、それが主張できず、息苦しい生活を強いら
れている。
犯人の男もまた、幸せそうなヤツだったから刺してしまった。
その日は客からのクレームがしつこく参っていた。
この世の中のストレスフルな現状を反映しているし、ストレス
の連鎖が結果として殺人という犯罪の形として現れ、その対象
として目撃者が現れた。
先日の正月スペシャルの際に衣笠藤治は副総監として甲斐峯秋
に弱みを握られたところが有り、出世レースから脱落したかに
思われたけど、それでも特命という組織を巡って、今後一癖
も二癖も有りそうだ。
先日見た「太陽にほえろ!」の149話「七曲藤堂一家」の中で
石原裕次郎さん役のボスが出世に関してそのチャンスに恵まれ
後身の為に七曲署の係長のイスを山村に譲るかどうかの選択
が訪れるシーンが有る。ボスに家庭でもあれば今のままに
安住しても良いのではないかとしていたけれど、ボスは独身
なので出世を第一に考えても良いのではないかというものだった。
中園も警視庁の役職としては立場が弱い。
更に家庭では妻子からはぞんざいに扱われる典型的な家庭から
虐げられ疎まれる存在の父親の姿であり、その中園は所轄時代・
井の頭署で一緒だった稲葉との再会で、改めて彼の中に自覚
させる何かが有ったことは言うまでもない。
組織を守る為にも前列に則り規律を守る必要が有るのは当然
のこと。「古轍」なんて言葉が引用され、組織の何たるかに
ついては内村ではなく中園が全て美味しいところを持って行っ
た。
青木が何らかの野心を持っているのに対して、中園の中でも
内村に対する敵意に近い野心が生まれたことで面白くなった
けど、
「結局イエスマンに戻った」
しかし右京は寧ろあの二人の関係はスリリングだとしているよう
に、何処か見透かしているところが有って流石だったね。
伊丹さんもまたご苦労さんとばかりに最後の最後にだけ出て
きて「やっぱりね」みたいな感じで、一言で状況を説明出来て
しまうところが笑えるな。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目”花の里”)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長->官房長付。警視監)
日下部彌彦 …… 榎木孝明 (法務省事務次官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー対策本部特別捜査官)
大河内春樹 …… 神保悟志 (監察官)
衣笠藤治 …… 大杉漣 (副総監)
市原里奈 …… 桜田ひより (西應学園中学校3年生)
矢口紀之 …… 関直人 (37歳、被害者、刺殺)
稲葉康勝 …… 草川祐馬 (井の頭警察署)
並木久志 …… 崔哲浩 (ホームセンターDYランド店員)
五頭岳夫、松山尚子、小島久人、高橋政裕
戸部達樹、乾涼貴、平野慎、大田愛翔、梅澤晴代、秋山洋子
彩羽