MIU404
(2020年7月期・TBS・金22時枠)
脚本 – 野木亜紀子
音楽 – 得田真裕
主題歌 – 米津玄師「感電」
プロデュース – 新井順子
演出 – 塚原あゆ子(1)(2)(3)(6)(9)、竹村謙太郎(4)(5)(8)、
加藤尚樹(7)
編成 – 橋本孝、渡瀬暁彦
https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/
第9話 或る一人の死
(衝撃の急展開!! ついにあの男が動き出す)
【ストーリー】
伊吹の師匠の刑事のガマは自分を捨ててでも妻を殺した
犯罪者を許せずに私的制裁・復讐を果たす。伊吹は何処で
止められたのかと問う。志摩はガマに対して全警察官や
伊吹のためにも復讐殺人をしてはいけなかったことを語る。
警察車両が落書きされる。
陣馬は警察をも恐れる行為に呆れるが、九重は元々落書きした
人物は警察車両だとは思って居ないのだろうとのこと。
二人共伊吹の心配をしていた。伊吹が間に合わなかった本人
が一番理解していること。警察をやっていればこういうことも
受け止めて次の事件を解決していかねばならないと陣馬。
そこにゆづるがやってくる。
盗聴器の件で進展があったこと。修理業者に金を積んで
盗聴器を仕掛けるよう依頼した人物が居て車の色だけ
覚えているという。辰井組の事務所に出入りしていること。
エトリの仕業なのか。
「ダンベだな」・・「あのタニマチ」。
その言葉をつぶやく陣馬に対して九重は意味が分からない。
ようするにスポンサーのことだとし、貧困ヤクザだった辰井
組はある時から急に金回りがよくなったこと。エトリからの
資金援助があったのだろうと。辰井組と関係作を組対四課
が出入りチェックをしていたところ気になる写真が出てくる。
虚偽通報のバシリカ高校の陸上部・・成川岳。
西武蔵野署に確認したら行方不明のままあれ以降家にも帰らず
連絡もないとのこと。親も捜す気はないようだと。
九重は自分が逃がしてしまったと責任を感じていた。
他の生徒は罪を償い家に帰ったのにあの時俺が成川に当たった
のが自分じゃ無ければ・・と語る。それを聞いた陣馬は
「毎度反省し過ぎたら身が持たない」
「出来ないことを考えるのでは無く出来たことを考える」
しかし志摩は九重の公私混同的な行動に好感を覚える。
・成川はRECに会う
ナイトクローラーのチャンネルが現在51位であること。
情報のお陰だとすると、成川はこの人を捜してもらえないか
と頼む。名前は羽野麦という女詐欺師でエトリを騙していた
のだという。先に見つけて賞金を山分けしようと語る。
■感想
今回は前向きな話が続いた形で、嵐の前の静けさならぬ
嵐の前に一度は前向きな話を持ち込んで状況を整理してから
最終的に突き落とすという作者の意図を感じさせるものだ
った。
刑事ドラマなのでドラマに出てくる色んな人が人生の選択肢
のスイッチを押し間違えてしまっているが、それは誰に
でも起きうること。
そのスイッチをまた正しい方向に向けて押してくれる人が居る
のかどうかが人生の鍵となる。
どん底の気分を味わっている人物は、
現在の所、伊吹と九重、麦とゆづる、そして成川である。
全ての人物が解決した訳では無いが、少なくとも前向きに
なれた人物が三人は居る。
今回は陣馬さんが所々で良い発言をしていた。
正義感が強い人だと止められない犯罪に対するネガ
ティヴな思考は後を引いてしまう。
「出来ない事を数えるのではなく、出来たことを数える」
ベテラン刑事としてのメンタルやモチベーションの保ち
方を熟知しているであろう人物からの教え。
また今回は伊吹が先日のガマの件で落ち込んでいるであろう
流れの中、現在の相棒である志摩は色々と彼をポジティヴな
方向に持ち込む為の素直な気持ちを言葉にしている。
「機捜は良い。誰かが最悪の事態になる前に止められると
お前(伊吹)が言ったんだ。それに俺は感動した」
刑事が落ち込んでいる時にはやはり事件の捜査・解決が
元気の素になる。落ち込んでばかりはいられない程に犯罪は
世にはびこり、緊張を強いられる時があり、気を抜けば
自らの命が危ない時だってあるのだ。
しかし彼らの所属は機捜である為に何処まで刑事と一緒に
捜査させて違和感が生じないか・・これは脚本家の知恵次第
だ。
■事件発生です
今回は二つの事件が発生し、それがやがて一つの流れになって
いくであろうことを描いたものだった。
その分だけドラマは常に緊迫感に溢れていて見応えのある
流れがあり、それが止めどなく続く。
興味深く作ってあるのは、「写真」とか「落書き」が幾つか
の場面で共通して存在していて視聴者は目にする。
写真については成川の写真、そして麦の写真が何人かの目に
触れて散見されていくウチにそれが怖いくらいに繋がると
いう写実的表現が有り、落書きにはノイズとか怒りなんかの
抽象的表現が含まれて別の意味での怖さがある。
・SNSを利用する善意という名の悪意
これは現代社会に於ける問題を提示した形だろう。
犯罪の抑止にも繋がるのがSNSなどの良さだが、問題なのは
書き込みした人物の素性や、その書き込み自体が信用にたる
ものなのかという精査無くして話が広がるというもの。
誰が書いたのかも分からないのに人は目に見えることを安易に
受け入れようとする。いわゆる無責任・無法地帯な状況に
彼らをさらしてしまった。
人の監視の目と防犯カメラ映像の目という
RECが情報を集める方法は分かったものの捕まえるまでには
至らなかった。この手の人は確実に捜査妨害をしている部分
があるので任意で聴取しても良かったのだけどね。
その場面でカメラ映像を見ていたらどうなったのか。
・麦の取り調べ
上述したSNSの拡散は人を知らずして書き込みしたものを
追いかけるというものだった。そして麦の供述については
これまで一緒に過ごしてきた時間しか本当の彼女のことは
知らないものである。
これまで池袋の裏カジノの情報提供者程度しか描かれなかっ
たが、彼女がエトリを裏切ることになるまでのことが描かれた。
ただ麦本人はエトリに何処まで傷つけられたのかは不明だ。
確かに彼女は「どのように女性を自由に扱うか」とか、
「逆らうと寒くて暗くて狭い所に連れて行かれる」
などの話はしているが、かなり表現としては曖昧だ。
最終的には彼女の発言が役に立ったが、裏の裏をついて行く
というドラマの定石からすると一瞬も気が抜けない。
・久住・・そしてエトリ
エトリがメインの人物かと思えば実際には久住の方が立場
的には上を行く人物だったのか。
組織対策課は一斉捜索/ガサ入れを行うことになる。
A.組長宅
B.大城一家本部事務所
C.辰井組の事務所 (辰井龍一郎(58歳))
D.上窪ビル3階のヤミ金事務所
・結果
エトリは麦を捜していて、澤部や成川がRECを使って捜した。
成川が子犬のようになって麦に近づいて住所を入手。
そしてようやく麦と接触する時が来るが、成川は麦が体験
してきた恐怖を自分も味わっている事からも少々ためらいを
見せる。
結果として事情聴取をした際に女性が連れて行かれる場所
ということでそれを精査すると、使われていない古井戸だと
いう強引な結論を用意した。
時間的な切迫感を演出した為のものだろうけど、少しヒント
が足りなすぎる。
麦の凄いところは警察官と共に住んでいたからなのか、
刑事がやるべき犯罪者の痕跡であるナンバープレートを
覚えていたところだよね。ただ気になるのは本当にこれは
誘導されたものではないのか?ということだ。ドラマのインパ
クト性からすると麦は怪しいところに居る。
内部情報が漏れ出しすぎていることがあったからね。
腐っている人物はとことん腐っているところがある。
また可能性としては我孫子の部下かな。
■出演者
伊吹藍 …… 綾野剛 (第4機動捜査隊)
志摩一未 …… 星野源 (第4機動捜査隊)
九重世人 …… 岡田健史 (第4機動捜査隊・キャリア)
陣馬耕平 …… 橋本じゅん (第4機動捜査隊)
特派員REC(児島弓快) …… 渡邊圭祐 (WEB動画チャンネルの運営者)
糸巻貴志 …… 金井勇太 (第1機動捜査隊・解析班)
我孫子豆治 …… 生瀬勝久 (警視庁刑事部のトップ)
桔梗ゆづる …… 麻生久美子 (機動捜査隊隊長)
羽野麦 …… 黒川智花 (ハムちゃん、情報提供者)
桔梗ゆたか …… 番場天嵩 (息子)
久住 …… 菅田将暉 (ドーナツEPの売人?)
成川岳 …… 鈴鹿央士 (私立バシリカ高等学校3年2組)
谷山 …… 坂田聡 (1機捜本部)
刈谷 …… 酒向芳 (捜査一課)
田島 …… 永岡卓也 (捜査一課)
エトリ …… 水橋研二 (裏社会に影響を持つ資産家)
井ノ原 …… 永岡佑 (組織犯罪対策部第四課の刑事)
澤部 …… 福山翔大 (辰井組構成員)
毛利忠治 …… 大倉孝二 (西武蔵野署の刑事)
向島進 …… 吉田ウーロン太 (西武蔵野署の刑事)
山崎部長 …… ヨシダ朝 (捜査官)
成川美智子 …… 根本江理 (母、息子の大学受験を心配)
前園 …… 竹本和正 (エトリの部下)
大川ヒロキ、石井紀行、一條恭輔