相棒17
(2018年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
プロデューサー:伊東仁、西平敦郎、土田真道
音楽:池頼広
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第19話 漂流少年 ~月本幸子の決断
脚本/太田愛 監督/橋本一
【ストーリー】
●里の花
右京は幸子に彬の事を聞くが、彼はやっていないと語る彼女。
それは彬があなたに言ったのか?と問うと、それを否定しつつ
「彼が一番信じてもらいたい人・・お母(河野友子)さんです」
・幸子は彬に頼まれて母親の様子を見に行ったとのことを語る。
その時に母親から幸子は色々と聞いていた。
「彬はあんな悪い事をするような子供ではない」
「彬の父は彬がいなくなった事を知っているのか?」
「知らないと思う。彬が6歳の時に離婚してから一度も会って
いないこと。しかしあの子の事を気に掛けている」
「養育費をずっと払って居なかったが高校に入って暫くして
振込をしてくれるようになった。」
「誰も信じてくれないがあの子は詐欺などやっていない」
右京はそうならば逃げるべきではないと語る。
しかし幸子は事情があるハズだとし、彬が言っていたこと。
「自分が捕まったら困る人が居る」。
しかし右京はそれでも尚、どんな事情があれ今は少年審判
でも「何も知らなかった」では通らないこと。それが通用
すれば言い逃れをする者が次々と現れ彼らを利用する。
大人が唆して子供達を犯罪に引き込むのを許すことになる。
しかし彼らを利用した大人は捕まらない。捕まるのは利用さ
れる子供たちだけ。大人は罪を犯しても捕まらずに逃げ延びる。
それなのに彬は無実で会っても罰を受けなければならないのか
と問う幸子に、右京も言葉にならなかった。
彬は危険なものを持って逃げているのだとし、次裸連絡があれ
ば知らせて欲しいことを語る。しかし幸子は「約束は出来ない」
として語る。
●繁華街
冠城は坂口淳と会う。
「何度聞かれても俺は彬にやれと言われたからやっただけ」
だという。アイツがトンズラして俺だけが鑑別所に行って
保護観察中であり、俺が被害者だと語る。
そんな彼に冠城は言う。
「お前はがっとそうやって生きていくのか。次は保護観察では
済まされない。自分のことを考えろ。」
淳もまた反論する形で、
「今は何をやっても正直者がバカをみる世の中だ」
と語る。
●こもれび公園/バスケットコート
バスケットをする青少年たち。
そんな彼らを指導するコーチの山口孝平を尋ねる。彬と淳
がこちらのチーム「北東ジュニアシティボムズ」に所属して
いると聞いたとして特命係の二人が語る。
チラシを持っているのを見た山口は学校に置かせてもらって
いるチラシである事を告げる。
彬と淳は何故高校の部活には行かずにこちらのチームに所属
していたのか。
山口によるとここは心配せずに楽しむだけの場所だという。
ユニフォーム代、シューズ代、合宿の費用も気にする事が
なく金がかからないからだろうこと。ここは経済的に問題を
抱えた家の子供たちが殆どで彬と淳は母子家庭だったこと。
母親は睡眠時間を削り、昼夜、ダブルワークをこなしていても
生きていくだけで精一杯。子供はわがままを言うことも出来
ないこと。山口自身も似たようにして育ったとし、こんな場所
を作ってやりたいと思ってボランティアをし始めたという。
ダディさんという足長おじさん的篤志家がチームの口座に
費用を振り込んでくれる。それが始まったのは2年くらい前
からで、ボールもチラシの費用もその金を使ったこと。
クリスマスの時にはチキンが差し入れで届いたとし、その時は
みんな大喜びだったという。ダディさんも似たような環境で
苦労し、有る時一発当てた人では無いかという。
●特命係
角田は言う。会ったこともないダディさんか・・
子供たちにとっては父親みたいな感じであろうこと。実の父親
のくせに養育費を払っても居ないヤツが多すぎる。
日本では受け取れる母親は4人に1人。踏み倒されても外国みた
いに国や役所が代わりに取り立ててもくれないのだと。
■感想
ストーリーが続きものの上にこのエピソードを見たのが
少し前のことなので、感想を書く上で少しダイジェスト的に
見直してみた。
2022年現在になっても相棒は20シーズン目として描かれている
のだけど、特殊詐欺が未だに幅を効かせているし、相棒でも
取り上げられている現状がある。
何よりもこのエピソードで癒やしキャラであった月本幸子が
出演最後だというのが中年男性の相棒ファンの心に影を落と
している。
確か18話の時には元宮というリフォーム店の社長が他人の
家に入れることを利用して、名簿屋の仕事を引き受けていた。
そしてその名簿が無くなり、見張り役だった彬の行方も居なく
なりそれを捜すことになる。
更に未だに分かっていないのは特殊犯罪に於ける元締めの存在
だ。
彬と関係あるものに話を聞いていき、彼の消息を探ると共に
犯罪の真相を暴いていく。
■一体何が起きたのか
18話の感想を見ると、この手の犯罪には
元締め、手配師、見張り、受け子、名簿屋が居る。
見張りや受け子は末端の人物で大抵は元締めまで知ることは
ない。名簿屋は既に分かっているので、残すところ元締めと
手配師の捜索である。
手配師は多くの人が予想していたのではないか。
変化球を求めるなら山口、王道的展開ならば合田。
人を集める為に必要なこと、人の心を操るのが上手い人。
ドラマに小ずるさというスパイスを与える為に、今回の
元締めにしても手配師にしてもどちらも大人という枠だけに
留まらず、比較的裕福に育った人物たちが駒として社会的
弱者を犯罪に加担させ、そして老人達から金を搾取している。
・特殊詐欺は捕まえるのが難しい
日本ではおとり捜査は基本的に認められていない。
この手の犯罪はおとり捜査は効果的だと思う。ただ捕まえた
ところでラスボスに到達するまでは難しいところもある。
マネーロンダリングのような事が人間関係の中で行われて
いて組織化されているからだ。
・不可解な出来事
・彬は何故突然あのカバンに興味を持ったのか。
・彬がいなくなった日、初めて見る客がリサイクル店を
訪れている。
・犯人が元宮の遺体を自殺に偽装した時間帯に事務所付近を
往復した青いセダン車
・彬の父が突然支払い始めた養育費
・駐車場で幸子は犯罪者たちと目が合ったが捕まえられる
ことがなかった。この時点では犯罪者と思われているとも
思って居なかったので騨手川は見逃したのか。
・幸子と彬
同じ境遇の人物ならば信頼関係が結びやすい。
そう思って見ていると今回のドラマは裏切られる。
幸子には彬の心を掴むだけの過去の経歴が存在していて、
彬は幸子を頼ってくる。不思議な事だが幸子は犯罪者・殺人
の過去が有り、それでも信用を得るだけの何かがある。
彬と淳の間にも色々と共通することが多く幼なじみとして
仲良く育って来た訳だが、それでも仲違いしてしまっている。
同じ立ち位置に居るもの同士は一人が上手く立ち回ってしまう
ことによってある種の嫉妬心が生まれてしまう。
彬が所轄に逮捕されまいとする警視庁の面々の姿を見れば
それも分からないでも無いが、彬はこれまで陰で母親や弟の
事をアルバイトして助けていた経緯を見ると、それだけカルマ
の様な徳を積んでいたのではないかと感じてしまう。
・元締めとの取引
幸子がGPS追跡アプリ付きのスマホを彬に渡してそれで監視
していた。彬は名簿があるとして元締めに連絡を取ってもら
う。手配師はシナトラなのか。しかし店に来た客の中に
チラシに写る人物がいた。山口が手配師。ダディと呼ばれる
元締めに100万円を用意させて会う事になる。
幸子の無謀な行動が緊迫感を際立たせる。
まるで日本ファルコムのRPG「イース」の中で主人公のアドル
に危険な場所まで付いて来るリリア状態。
■投了
角田からの連絡により詐欺グループが網にかかる。
合田の仲間が新たにアジトにした場所にやってきた為に
捜一が踏み込んで逮捕する。
右京は青木に頼んで青いセダン車の持ち主を調べてもらう。
騨手川幹夫という前科もない資産家の息子で不動産屋の
オーナーだった。リフォーム業者の元宮と接触したのも
その流れなのか。
逮捕後に彬と淳を仲直りさせる為に本音を語らせた。
「運が良すぎるから」という理由で罪を着せられた彬。
そして何よりも一連の流れで幸子にはある使命感が生まれて
しまった様子。椎名智宏からの感謝の手紙が来た際に
冠城に言われた言葉によって目覚めたのか。
「励ましは苦しい時の支えになる」
本格的に資格を取って恵まれない子たちのソバに寄り添う
様な仕事に従事するみたいだ。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目”花の里”)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部*)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー対策本部特別捜査官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (鑑識)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二(警察庁・長官官房付)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視副総監)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警務部 首席監察官・警視正)
河野彬 …… 浦上晟周 (17歳、淳の幼なじみ、仲良しだった)
品田直人 …… 長谷川ティティ (虎彦の孫)
坂口淳 …… 福崎那由 (17歳、オレオレ詐欺の受け子)
明石治 …… 吉見幸洋 (警視庁浅川警察署 刑事)
合田茂樹 …… 小林一英 (合田金融 社長)
元宮康宏 …… 羽田真 (61歳、元宮リフォーム 社長)
品田虎彦 …… 鶴田忍 (スーパーリサイクル「しなだ」店主、”シナトラ”)
篠塚道子 …… かとうずんこ (中華料理「太陽」のおかみ)
村瀬史郎 …… 鈴木将一朗 (警視庁北東京警察署 刑事)
椎名智弘 …… 小原唯和(回想、ハッカー、S16の10話より)
騨手川幹夫 …… 本田大輔 (45歳、騨手川不動産 オーナー)
山口孝平 …… 細山田隆人 (「北東ジュニアシティボムズ」のボランティアコーチ)
河野友子 …… 円地晶子 (彬の母)
秋山久志 …… 岡安泰樹 (彬の父・友子の元夫)
山口宗明 …… (59歳、父親)
山口道子 …… (58歳、母親)
新藤麻梨絵 …… (ホステス)
河野真 …… (彬の弟)
西海健二郎(回想)、羽田真、桑畑智伺、五島龍之介、林田直樹
福本晟也、八尾宗徳、縄田雄哉、赤池高行、岡本正仁
塚越靖誠、浜田大介、宇田卓也、潮野佑斗
回想シーン
亀山薫 …… 寺脇康文
神部尊 …… 及川光博
甲斐亨 …… 成宮寛貴
笛吹悦子 …… 真飛聖
吉井春麗 …… MEGUMI