相棒21
(2022年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)(3)(4)、権野元(5)(6)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、川﨑龍太(3)、光益義幸(4)、岩下悠子(5)
瀧本智行(6)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第6話 笑う死体
【ストーリー】
・江戸川区
ホームレスの男性がキャリーケースを引いて歩く。
通りから少し入った所で壁に横たわる男に軽く声を掛けるが返事が無い
為にスーツの内ポケットから財布を抜き取ると中身を確認。
喜んでいた所に後ろから特命係の二人から声を掛けられる。
取調室で警察官が事情を聞く。
ホームレスの男は3日間何も食べていないとし、盗みは初めてであること
を語る。亀山は手慣れた感じだったと指摘する。
右京はこの男の持ち物の中から財布が他にも入っていることを見つける。
自分のものだとするが、書かれていた名前は伊藤真琴(51歳)。写真は
どう見ても別人のものだった。
(住所;江戸川区葛西中央/ 生年月日:昭和46年5月2日)
この財布について尋ねると、一ヶ月前に千葉と東京の境目である江戸川の
河川敷で発見したという。その人は頭から血を流して死んでいて
財布を取るのは悪いと思ったが死体だからとして語る。顎の下に
ほくろが2つ有った人とのこと。
右京は確かに先月他殺体が見付かっていることを語ると共に財布の中から
名刺を見つける。
彼は南葛西にある「スイートドリーマー」という会社の営業部の人物だった。
■警視庁
・特命係
マヌケな置き引き犯のお陰で殺しの被害者の身元判明に繋がるとは・・
角田も呆れかえる。
しかし右京は盗んだ財布を手元に置いておくのは妙な窃盗犯であると
語る。戦利品みたいにしているヤツもいるという角田。千葉県警が事情
聴取に来ているのでそろそろ終わるだろうとのこと。
千葉県警の捜査一課の青田(メガネの方)と堀川が特命係にやってくる。
話によると被害者の身元は一ヶ月前から掴めず捜査も行き詰まっていた
とのこと。今まで被害者の事を「笑うセールスマン」と呼んでいた
という。底がすり減った靴、くびれたスーツは如何にも冴えないセールス
マンのなりだった。更に遺体が発見された際に笑ってニヤっとなって
いた事。初めてあのような仏さんを見たが薄気味悪かった。
目撃情報だけが頼りだった。
その中でも不審な動きのする金髪の青年が目撃され、今回逮捕された
コソ泥もあの現場付近でホームレスを見たと言っている。
「遺体が笑っていた」と。
●スイートドリーマー
室内から怒号が飛び交い、何かが倒れた音がする。
社長の岡山(ヒゲ)は、飯村という社員の営業成績があまりに悪いために
激怒する。
そんな状況の中、特命係が室内にやってくる。
最初は凄んできた社長も二人が刑事だと知ると手のひらを返してくる。
伊藤真琴がここで働いて居たか確認すると、一ヶ月前に辞めるまでは
働いて居たという。先月千葉の河川敷で殺された事を話す。
会話している最中に千葉県警の刑事の2人がやってくる。
千葉県警は先ほどまでの態度とは裏腹に特命係に何をしているのか問い
詰める。窃盗事件の裏付け捜査だとすると、青田はウチの事件に土足で
入ってくるとはどういうつもりだと語る。
右京はこの会社は少々問題が有りそうですよというと、亀山と共に
会社を出て行く。亀山はあの怒鳴られていた男性・飯村は何か言いたそう
だったと語る。
■感想
置き引き犯が所持していた証拠を元に一ヶ月前に発生した事件の被害者
の身元特定から事件解決に至るまで特命係が東京と千葉を行き来して
捜査を行っていく。そこには越境捜査の壁が存在する。
お笑い界の華やかさとは裏腹に一度は才能が認められかけた(新人コン
クールで準優勝)ものの「マコサヤ」として結成した1995年から2005年
の10年間のその殆どが苦労の連続で、お笑い芸人が決して生やさしい
ものではないことが描かれる。
芸人たちの私生活の部分をリアルにクローズアップしたシナリオだ。
芸人を辞めたのがいつの事か分からない(マコサヤのコンビ解消は17年前
と言っていた)が、関係者は昭和46年生の51歳。
団塊ジュニア、第二次ベビーブーム世代と呼ばれる頃の人で、
多くの同世代の人たちが溢れて就職する為に100や200社の面接を受け、
それでも決まらずに社会からあぶれ、脇道・裏道を歩まざるを得ない人も
多いのだろう。
メディアでよく見かける50-80問題もこの世代の人たちでもある。
この人たちは夢を追いかけ、それに破れて辛い人生を送る。
職業の進路変更でさえも並大抵なものではないはずだ。
苦労した過去の中でも何の足跡すら残らないみたいな感じになるのかと
思ってみていた。
そもそも遺体の人物の特定さえも出来ていない状況から始まっている。
気が付くと被害者には大切なものが残っていて、一筋の希望の光を最期に
なって知る事になっていたし、他人に与えた影響はそれ程多くは
無いにしても、一緒に育つことのなかった子供が父と同じ道を歩もう
としていたり、その芸風を覚えていて才能を評価していた人も居たこと
により救われるといった内容だった。
会社名が如何にもな付け方をしていて、スイートドリーマーですよ。
●相棒の存在
かつての被害者の相棒、昭和の夫婦漫才だとされたマコサヤのサヤこと
和田紗矢は地元千葉でスナックを経営している。
(因みに被害者のマコトは埼玉の東松山ならぬ西松山出身)
以上の設定からすると、亀山夫婦と対比してみるのが面白いのかも
知れない。
カメちゃんは昭和41年生まれで被害者とは5年の差こそあるが、
相棒と言えばその存在は欠かせないもの。
彼の奥さんの美和子さんも”こてまり”の見習い的立場であり、何処か似た
所がある。
美和子さんの方は逆に過去のシナリオの中でも触れていたが、赤ちゃん
が出来ない身体の為に自らこの恋愛から身を引いたことがある。
そして今回の被害者の相棒も自分から身を引いた上で妊娠した体で
一人息子を育てている。
「あの人の芸には惚れていたけど男女の関係の方がね」
第三者の発言では有ったし、サヤの方もマコトの甲斐性の無さ故に
解消してしまったという事だったけど、現実的には違うものだった。
人生を完璧なものとして歩む人はどれほどいるのかを考えさせられる。
■捜査
事件発生:令和4年9月26日の夜
事件現場:千葉県市川市中高谷
第一発見者:佐藤敏治(80歳)
主に被害者の生前での行動を追いかけていく。
それによって彼の人生、人物像などを知る事になるが、注意すべき
はそれを額面通りに受け取ることにより脚本家の意図した先入観を植え
付けられて誘導されてしまう。
特に彼の人物像に関しては色々と情報を耳にする。
・突っ込みのマコトとボケのサヤ
・あごの下に二つのホクロ
・マコトの芸人の腕は確かなものでもなかなか売れない
・解散後、別の相方と組んだがさっぱりでいつの間にか消えた。
・ネクラの映像か・・マコトのあだ名だ
・四六時中仏頂面でネタを考え、声をかけても愛想笑い一つ返さない
・皮肉屋と憎まれ口ばかりたたくから他の芸人からも毛嫌いされた
・時々つまらない事を思いつくとノートにメモしながらニヤニヤしていた
・芸人の死にざまは野垂れ死に
因みに亀山自身は被害者の人物像について・・
「誰かさんにソックリ・・・伊丹ですよ」
● 第三者
この第三者の使い方はオーソドックスだが面白い使われ方をしている。
マコサヤを解散した後、どのような人生を送ってきたのか。
・借金をマコトに踏み倒されたコンビの相方の「トシ坊」
・マコトが殺害された時の目撃者「金髪の青年」
・「スピリッツ」という名のコンビ名
・勤務していた会社から金を盗まれご立腹な社長。
● 捜査上のいくつかの謎
・被害者が最期に見た光景とは!?
・何故遺体は笑っていたのか。 (ヨ”ネクラシス”テム)
かつて放送されたドラマでも殺された現場で同じように亡くなった人
と同じ体制を取って最期に何を見たのか、何をしたかったのかの
感情移入なり違う角度から見て捜査状況の進捗停滞から改めて脱する
作品が有った。
・彼の身の回りで300万円が無くなっている。その金の行方は如何に!?
・盗んだ財布を手元に残して置いた理由は?
トシ坊がどれだけ芸人としての才能が有ったのかは分からない。
彼が現役の芸人時代にパトロンが居たというのは少々強引な設定
には感じる。これがバブル時代ならば有りそうだけど。
彼にとってはマコトの財布を手にしていたのは残悪感なのか、それとも
栄華な時を過ごした時の名残なのか。単純に金を貸したことへの
没シュート(c)ひとし君 だったのか。
■その他
・被害者が最期に見た光景とは!? (ヨ”ネクラシス”テム)
(必ずてっぺんを取ると言っていたが、まさに最初の文字と最後の文字が
見えなかった)
・河川敷は売れない芸人たちの稽古場だった
・警視庁と千葉県警の捜査権の争い (伊丹と青田の因縁の関係)
・最近人生観、刑事としての意識が変わった内村刑事部長の鶴の一声
・今回右京さんがテレビ業界用語(お笑い用語?)として「出落ち」という
言葉を使っていた。
今回の芸人さんは長いスパンで考えると、出落ち的なお笑い人生を送った
であろう寂しさを覚えると共に、最後に再び花が咲いたという
スイートドリーマーだ(意味不明)
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長・警視監 警察庁のキャリア官僚)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト、”こてまり”見習い)
土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ対策本部特別捜査官)
伊藤真琴 …… 阿南健治(寝具販売会社「スイートドリーマー」営業部)
和田紗矢 …… 池谷のぶえ(スナック「紗矢」のママ・元相方で内縁の妻)
大谷敏夫(トシ坊) …… 有薗芳記(ホームレス、”スピリッツ”)
和田颯太 …… 萩原護(紗矢の息子)
青田 …… 鼓太郎(千葉県警・捜査一課刑事)
堀川 …… 吉成浩一(千葉県警・捜査一課刑事)
水沢 …… おぼん(お笑いコンビ)
今野 …… こぼん(お笑いコンビ)
増本 …… 岡田正(「浅草東洋亭」支配人)
岡山 …… 白石直也(「スイートドリーマー」社長)
飯村 …… 木津誠之(「スイートドリーマー」営業部長)
稽古をするコンビ芸人 …… 瀬戸ルイス・ 大田路
若手芸人コンビ …… ストレッチーズ
警察官 …… 菅沼岳
酔客 …… 古川がん
サトシ …… (スナック紗矢の常連客)
伊東 …… (スナック紗矢の常連客)
戸田晃平 …… (真琴の高校時代のコンビ)
吉田 …… (「スイートドリーマー」営業)
川北 …… (「スイートドリーマー」営業・トップ成績)
入江 …… (「スイートドリーマー」営業)