相棒21 第7話 砂の記憶

相棒21
(2022年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋本一(1)(2)(3)(4)(7)、権野元(5)(6)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、川﨑龍太(3)、光益義幸(4)、岩下悠子(5)
瀧本智行(6)、山本むつみ(7)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第7話 砂の記憶

【ストーリー】

・20年前

富永沙織(15歳)と一ノ瀬弘美(15歳)は学習塾からの帰り道に
フードを被った男によって襲われる。襲われたのは車道側に
いた沙織の方で、頭を鈍器で殴られ手に持っていた弘美とお揃
いの旅行のお土産店で買った砂時計を持ち去られる。

■警視庁

・特命係

特命係に保健師の吉沢弘美がやってくる。
亀山に対して健康診断受診のメールを何度も送ったにも関わらず
返事が無いとのクレーム。健康の保持・増進に努めるのは
管理規定にもあるとし警視庁職員としての義務であることを
告げる。
角田はその二人のやりとりを見て、

「流石にカメも”鋼の保健師”の前では形無しだ」

と語る。

「体力の過信はいけないこと。若い頃とは違う」
としして右京も語る。

しかし吉沢は右京や角田にもそれぞれに指摘する。

「杉下さんには保健師面談を受けて下さいとお願いしている」
「薬物・銃器対策課には栄養指導が必要な方が複数居る」

そんな中、右京は私物の砂時計が3分間経過したことを告げ、
この茶葉にはちょうど良い時間であることを語る。

・管理官室

中園は内村に対して、ようやく購入できたという希少な”黒羊羹”
を持ってくる。
しかし内村は甘い物は控えるよう保健師からアドバイスを
受けたので要らないという。折角手に入れた中園は愚痴をこぼす
が、内村は相談があるなら健康管理本部に相談するよう告げ
メンタルケアは喫緊の課題であることを指摘する。

・特命係

亀山は健康診断をして部屋に戻ると亀山に封書が届いている
として右京から手渡される。差出人は鈴木礼。
中には一枚の紙に以下の言葉が書かれていた。

「20年前の連続通り魔事件の犯人がすぐそこに居る。近いうち
にまた動き出す」

警告文の様だとし、未解決事件の犯人が再び動くことを示唆して
いるのだろう。

あて先は“特命係御中”と書かれていた。
我々ならば動いてくれると思われたものなのか。
しかしまるで具体的なことは書かれていなかった。
これは悪戯なのか。
しかし右京は“20年前の事件”の事が気になるという。
亀山は“時効が迫っているんだ”と語る。

・伊丹がやってくる

亀山から特命係に呼び出されて不機嫌な伊丹。
ホワイトボードには過去の事件の被害者情報が書かれており、
特に気になる事件について右京がピックアップしたものだった。
伊丹はこの時捜査本部に居たので情報を聞き出そうとする。

20年前若い女性が夜道で背後から殴られ所持品を奪われる事件
が都内各地で発生したこと。被害者は7人。7番目の被害者である
富永沙織(15歳、中学3年生)は脳挫傷で亡くなっていた。
当時メディアでは相当激しく取り上げられたことを右京はよく
覚えていた。
伊丹によると被疑者の特定の物証が何一つ見つからず、発生現場
は人通りの少ない夜の住宅街で、目撃証言も無かったこと。
当時は防犯カメラも多くは無かった。

被害者は10代から20代。髪の毛は長く、スレンダーな女性ばかり
が狙われている。これは犯人のタイプ。
何れも奇妙なものが奪われておりアクセサリーや買い物した紙袋
そして沙織の場合は砂時計が奪われ、高価なものは何一つ奪われ
ていなかった。
金目当ての犯行じゃない。これは狩り/ハンティングだ。
犯人が取っていったのは狩りの戦利品のつもり。
唯一の目撃証言によると、

・中肉中背の若い男性。
・黒いパーカを着てフードを目深に被っていた

その程度しか目撃者も覚えていない。
しかしどうして最後だけ2人連れだったのか・・

■感想

実にオーソドックスな流れで、シナリオは殺人事件の捜査もの
としては基本中の基本。

展開としては大まかに幾つかの場面に分けられるけど、
どの段階でもシンプルな構図そのもので、この手のドラマが好き
ならばおおよその先の展開は想像できるものだろう。

ドラマはこのシーズンが始まった1話・2話のエピソードと若干
似ている。
脅迫メールが送られて来た6人の中に犯人が居るという内容だ
ったのだけど、今回は20年前の事件7人に絞られており、右京
さんが選んだその7人という初期段階からすべてが限られた流れ
となっていることだ。

そして冒頭に出て来た保健師の先生の名札には吉沢弘美と書かれ
ていることから見ても手紙を特命係に届けた人物の特定は
面倒な流れを経由しなくとも明確な現実を照らし出している。

恐らく犯人捜しそのものに比重を置いたものではなく、
20年の間に変わった警察機構そのものや社会情勢に対する
好奇の目、第三者の目にどれだけの変化が訪れているのかを
描いた感じだ。変わったものも有れば変わらないものも有る。
形を変えただけで本質が変わっていないというものも有り
そういう違いを見て楽しむのが本質なのだろう。

海外ドラマ「CSI」シリーズを見ると同様の過去の事件に於ける
捜査に於いてはテクノロジーの進化が挙げられることが多い。
例えば当時は発見できないものの、検査方法の進化により
新しい物証を検出できるようになる事などだ。

●テーマ

今回のテーマを考えた場合、どちらが本命なのか
迷った。「人を操る事」「人を守る事」のどちらなのか。

「人を守る事」に関しては皮肉そのもので対照的だ。

被害者の仕事
「みんなが元気に暮らせるように手助けする仕事に就きたい」
加害者の仕事
「都民からの苦情や要望の受付窓口。」

「人を操る事」

もちろんそこには成功した例、失敗した例が有り、
失敗したけど成功したものというものも存在している

目撃者は再捜査させようとして特命係を操ろうとした。
操ることには失敗したけれど捜査させることに意義が有り、
その面では成功している。
また事件を知らせる詳細はマスコミ・メディアなど紙媒体の
ものだったものが、ネットを使用する社会になったことにより
変わってきている。

当時を知るものが声をあげない限り事実が曲解され歪曲され
る恐れがある。当時のメディアも興味本位で被害者のことを
取り上げたようなことが言われていたが、今はネットによって
同様のことが起きている。メディアで金を稼ぐ人は、ネット
で金を稼ぐようになったこと。

事件そのものよりも人物に焦点が当たるようになり、気難しい
時代になってきている。

因みに失敗した例としては「羊羹」の流れだ。
いつものように中園は内村にゴマをすろうとしたが、意外にも
失敗してしまった。

しかし最後に語る言葉は良かったですね。

「一粒の砂にも実は多くの情報が詰まっている」
「夢まで背負っているものの重さ」

●時代の変遷

ドラマで好感度が持てるところは、砂時計、封書などを使った
アナログ的な流れを利用したことか。

時間の流れは人々を成長させたり出世・昇任配置という形で
現れることも有れば、そのまま時が止まっている人も居る。

小沼は杉並北署から総務部広報課広聴係に異動してきた。

一之瀬は両親の離婚を経験し、そして親友が目指していた
保健師の仕事の夢を引き継いでいる。
本当の彼女の夢は何だったのだろうか。
富永の父親は2年前に他界して、今回の犯人逮捕を知ることは
無かった。

また20年も経てば殺人現場も変わっている。
当時は無かったフットサルコートが今は出来ている。
ただあの辺にトラックが止まっていたならば工事関係者など
居なかったのかな。

●連続した事件には必ずボロが出る

繰り返し殺人を行うと、海外ドラマ「クリミナル・マインド
FBI行動分析課 Criminal Minds」などでは、犯罪の手口に慣れて
より精巧になり、猟奇性が高まっていくが、計画とはそもそも
上手くいく試しはない。
沙織の死や二人連れだった事は予想外だろうし、二通目の手紙
によっていろいろと確定させることにもつながる。

「20年前の通り魔犯が12月の夜、再び罪を犯す」

犯人とされている人物が手紙の主に動かされていた事実。
上述した人を操る事にも繋がるか。

■捜査

事件発生:令和4年9月26日の夜
事件現場:東京都品川区
被害者:富永沙織(15歳)
第一発見者:一之瀬弘美

目撃証言:中肉中背の若い男性。黒いパーカを着てフードを
目深に被っていた

特筆すべきもの:犯人は被害者から物を盗む。
最後の事件だけが2人連れだった。
殺人事件も時効が存在した時代。

弘美が盗まれたのは土産の砂時計だった。

● 7人の被害者

・大松優美 (19歳) 大学生
・伊藤愛華 (24歳) 会社員
・川崎桜子 (25歳) 会社員
・岩崎奈々子 (18歳) 高校3年生
・福山春香 (22歳) 銀行員
・本田咲希 (20歳) 専門学生
・富永沙織 (15歳) 中学3年生

富永沙織だけが脳挫傷で死亡した。

● 捜査上の仕掛け

かなり苦しい流れでは有った。

特命係に送られて来た手紙の主は鈴木礼。
そして送られた元の住所は品川区大崎となっていた。

そして今回の事件で品川中央署の警察幹部の不肖の息子が
バックのひったくり事件で逮捕された。
過去にも権力をちらつかせて事件のもみ消しを図っている。

また今回小沼にも脅迫状の様な手紙を送っている。

「20年前に何をしたか知っている。今夜あの場所で待つ」

そうして犯人を誘導しようとしたが、計画とはやはり意外な
ところで予定外のことが起きる。

おとり捜査のリスクは今の時代も変わっていない様だ。

■その他

●職人芸となっている面白いシーン

・やはりシーズン21を引っ張っているのは内村部長の性格が
変わったことだろうか。伊丹と亀山の関係も面白い。
美和子さんの薫に対する突っ込みはいつも冴えている。
今回は特命係の角田も含めた(笑)三名が保健師にそれぞれ
言い負かされている。

・時代の変化

公訴時効制度の改正・・殺人罪の時効撤廃。(2010年)
被害者を守る基本法の成立。(2004年)

・砂時計

中世ヨーロッパでは教会の説教壇の上に砂時計が置かれていた。
退屈な説教がいつ終わるか分かるように・・

砂時計が死のシンボルだとされる宗教画。
流れ落ちる砂には限りがある。命を表している。

現代は不吉なイメージはなく、寧ろキッチンのエッグタイマー。

・人工芝 珪砂

産地や製造方法は多くの種類がある。今回のはオーストラリア産。

人工芝のめくれを防ぐ為。
摩擦から守るため。

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
**益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
**衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
**甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長・警視監 警察庁のキャリア官僚)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト、”こてまり”見習い)
**土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ対策本部特別捜査官)

吉崎弘美 …… 桜木梨奈 警視庁健康管理本部保健師
富永瑞恵 …… 根岸季衣 (沙織の母)
小沼裕一 …… 鳥谷宏之 (警視庁総務部広報課広聴係)
一ノ瀬弘美 …… 桜樹なつ (沙織の同級生)
富永沙織 …… 佐藤ひなた (20年前の通り魔事件の被害者)
…… 湯村直史 (広聴係職員)
榎本彩子 …… 本庄由佳 (37歳、通り魔事件の被害者)
…… 尾崎舞 (瑞恵の隣人の女性)
…… 白鳥壱暉 (品川中央署署長の息子)
一ノ瀬 …… 上原健太 (弘美の父)
一ノ瀬 …… 木ノ下あや香 (弘美の母)

…… 榎本彩子 (37歳、被害者)

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