相棒21 第15話 薔薇と髭と菫たち

相棒21
(2022年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋本一(1)(2)(3)(4)(7)(10)、権野元(5)(6)(8)(9)(11)
内片輝(12)(13)(15)、守下敏行(14)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、川﨑龍太(3)(14)、光益義幸(4)
岩下悠子(5)(13)(15)、瀧本智行(6)(10)(11)、山本むつみ(7)
森下直(8)、根本ノンジ(9)、櫻井智也(12)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第15話 薔薇と髭と菫たち

【ストーリー】

■警視庁

・特命係

薫は右京に対して奇妙なメールが届いたことを告げる。

『本日午後3時、新宿東公園「こもれびの森」で恐ろ
しい事が起きる』(送信主 MAROHIMAKO@pmail.com)

今から30分を切っている・・二人は急いで現地に行く。

■新宿東公園「こもれびの森」

指定された場所に行くと誰かが倒れていた。
二人が確認しようと近づくと突然立ち上がる。
なんとBAR”薔薇と髭と…。”のママのヒロコ、そして
隠れて撮影していたクミちゃんとミキちゃんが出て来る。

「ドッキリテレビ大成功」

薫は不満を述べるも寧ろ帰国してから一度も顔を見せな
かった薫が悪いと責められる。ママは首を長くして
待っていたのだとクミ&ミキは語る。

右京はある程度想定していたとし、計画を邪魔するのが
無粋なことだと思い様子を見守っていた。
そもそもメールの送信主を見ればヒロコママからのもの
であることは想定できるものだった。

店で帰国祝いをしましょう。
そういって歩き始めるが、雑木林にはまた別に倒れてい
る人が居た。薫はもう騙されないとするが、今度は本当
の遺体だった。

・捜査一課・鑑識課が現場へ

出雲たちはヒロコたちを問い詰める。
口に血のようなものが付着していること。
伊丹がやってくる。
亀山の姿を見ていつものように皮肉を述べる。

薫は第一発見者である事を告げ協力することを語る。

右京は被害者は鬼塚一誠さんだという。
社会問題に鋭く切り込む事で有名なルポライター。

益子によると傷は前頭部に一か所有っただけだという。
倒れた弾みで石に打ち付けたのか、それとも打ち付けら
れたのか。
財布、スマホが見当たらないこと。
そしてこんな物を握りしめていたという。
小説『日なたの花』(ノエル美智子 著)

出雲によるとそれはパステル文庫。
10代の女性をターゲットにした少女小説レーベルで
昔私も呼んでいたという。

鬼塚はそのノエル美智子の奥様だという。
奥さんが書いた小説を持っていたい・・ダイイング
メッセージなのか。小説にはサインも書かれていた。

「すみれさんへ」

■BAR「薔薇と髭と…。」

ヒロコたちと被害者について語り合う。
彼は店の常連客であり、昨年の夏に店の近くで偶然
見かけたこと。声をかけて店まで引っ張って来たと
いう。彼の本名は大塚誠一。新宿の街を
テーマにした著作を多数書いていた。
ヒロコは鬼塚は恩人だと思っていたという。
この界隈は再開発計画が有ったが立ち消えにされた事
がある。

『新宿ダークストリート』
この本の中で先生が裏の利権問題を暴いたことで立ち退き
にならずに済んだこと。
ヒロコはサインをもらった(2022年8月11日)とし、そこには
「愛するヒロコへ」と書いてもらっていた。

それからも月に2、3度奥さんを連れて来てくれるように
なったという。
クミは美智子の『ラベンダー学園』シリーズを全て読み
乙女心がビンビンだったという。鬼塚に新刊のことを
尋ねたら取材が順調ならば来春だと言っていた。
奥さんは夫のことを「この人は取材相手を怖がらせて
しまう」と言っていたことを語る。
また年明けには美智子から、鬼塚が心臓に持病が有り
入院したとの連絡が有ったことを語る。

カフェ

美和子は鬼塚が狭心症を患っていた話は聞いた事がある
という。鬼塚のルポの切り込みの鋭さは有名だった。
最近のネタは何だったと思うかという薫に対して、
事件現場が新宿東公園だとするとNPO絡みかも知れない
という。フードバンク系NPO”ハートテーブル”がよく
炊き出しをしている。

「貧困とか食品ロスとか現代社会の問題」

だと語る。

■感想

新宿東公園で血を流して倒れて亡くなっている男性が
発見される。前頭部を岩に打ち付けて亡くなったと
されるが、それが故意に打ち付けられたのか、転んで
自ら頭をぶつけたのか分からない。亡くなっていたのは
鋭い切り口で社会問題を取り上げるルポライターの
鬼塚一誠であることが分かる。
彼の妻は少女小説家のノエル美智子。
鬼塚の持ち物は盗まれていたが、手に持っていたのは
妻の著書の文庫本でサイン入りだった。

現代の社会問題を盛り込んだシナリオ。
最近の日本で起きているニュースがそのまんまネタと
して取り込まれた内容に思える。まさにタイムリーだ
ね。

弱者を食い物にする貧困ビジネスの問題は、解決する
為には社会構造を変える必要が有り、市民の意識自体も
大きく変える必要がある。
今の日本ではなかなかそれを変えるのは難しく、恐らく
私が生きている間に変革が起きる可能性は無いように
思う。

ドラマがよくできていると思うのは、「社会的弱者の
影に隠れて存在を隠すもの」「社会の闇を暴こうとする
もの」に分かれているが、犯罪を犯す側も闇を暴こうと
している側も共に弱者を隠れ蓑にしている流れがあり
更には闇を暴こうとしているものたち自身が実際には
世間を欺いている重大な事実が存在しているということ
である。

●「嘘をつく」「人を騙す」

他人を騙す事にはいくつかの種類がある。

他人を騙して相手を喜ばしたり、びっくりさせては微笑
ませる軽いものから、時には犯罪を暴くために嘘をつく
と言ったような「潜入捜査」型の大がかりのものがある。

本来ルポライターであれ小説家であれ、筆者は作品とは
逆にあまり表に出るような職種ではない。
元々サイン会などが有ったとしてもそれを嫌がる作者は
多いように思う。
古い時代のアニメ声優とか映画俳優が吹き替えたキャラ
クターのイメージや演じた役から来るイメージを損なわ
ないようにして人前/メディアに出なかった時代もあるが、
今どきの声優さんは若年化やアイドル化が進み、メディア
を利用して自らも同時に売り込む。

またV-TUBERなどの存在は如何にも現代的なものだ。
デジタル社会に於いてフィルター越しに相手に自分の
存在を伝えることは知らぬ内に印象操作に繋がってしま
うが、そもそもこのメタバースな世界に於いては本名で
活動しない人が大勢である。

このドラマではそれを利用した「騙し」が存在していた。
作者が入れ替わっている衝撃の事実。
世間を欺いている人が他人に夢を語る事への是非は
あるが、人の作品をどう受け取るかということに於いて
はその人本人のイメージは文字や文章から構築していけ
ば良いものではないかという事もある。

●良いものは自然と伝わっていく

もう一つ興味深いのは、偶然か必然か分からないが
母親が読んでいた小説に娘もハマっていたという事実が
ある。
良いものは時を経過しても色褪せるものではないことを
証明している。
現在レトロブームが存在するが、流れをみれば周期的な
ものが有り、一度流行ったものが時を経て再びブレイク
する例は多いのだろう。

しかし連鎖的流れは下手をすれば貧困層の潮流にも言える
ことで、娘もその流れに巻き込まれているのかも知れない。
金持ちはより金持ちになる時代である。
とにかく貧困層の人は賢くなるしかない。
未だに残る学歴社会でも方法論を駆使して、社会にしがみ
付いていけば決して確変が起こらないものではない。

●イメージ、印象と言えば・・・

今回色んな濃いキャラクターを投入してきた。
社会には色んな人たちがいて、見た目では分からない
ことが多い。

ヒロコママに見るやかましさとは逆に人を楽しくさせ
る性格を持ち角度を変えれば気さくで親しみやすい。
彼らの顔の広さと情報網はある意味、捜査官にとっては
貴重なものではないか。

最近改心したかのようにして部長・内村と中園の
特命係への協力姿勢も驚くべきものがある。

捜一の伊丹刑事、そして今回は被害者にもなってしまっ
たルポライター(実は少女向け小説家)の鬼塚一誠は、
共に厳つい顔をしていて、先入観からすればとても近づき
難い存在とオーラを放っている。今回のドラマでも鬼塚に
対する印象操作を意図して行っていたことは改めて感じる。

しかしその性格は見た目とは正反対の人である。

社会派の記事を書いて居れば怖い人に狙われることだっ
て多いハズなのに、彼と入れ替わりの存在である妻・大塚
美智子の方がルポライターとして凶悪なものと戦っている
現実がある。

匿名的な存在は人から見聞きしたものから勝手に作られて
しまう。

半グレグループから既に脱して社会生活をしている
伴坂もまた未だにその過去に属していた陰から抜け出せず
に居る。

●宝探しゲーム

今回は至るところにメッセージ性が含まれており
まるで言葉探し・宝探しのようなものだった。

ルポライターや小説家が絡んでくることからも
「文字」「言葉」「ワード」などが敏感な捜査の要素
として絡んでくることは想像に難くはない。

冒頭から既に入門編とばかりにヒロコからのメッセー
ジが届く。

そしてそれらの最たるものは遺体が手にしていた
文庫小説「日なたの花」(平成5年刊行の初版版)だ。
人が最後に手にしていたものは死因そのものではない
にしても、生前の人間の関係性と大きく関連してくる
ことは多いだろう。その中にはメッセージには
「サイン」が刻まれている。

・「すみれさんへ」

これは少女小説家のノエル美智子が書いたとされるもの
では有った。

すみれさんとは誰なのか。

花のスミレは漢字で書くと「菫」である。
意外と驚くのは「菫」という感じを使うのは、
「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」が花言葉のスミレ
だけでなく、昭和の頃から事件で使用された
毒草である「トリカブト」も同じ表記である。

サインと言えばヒロコママも鬼塚からもらっている。

至る所に散在している文字や名称には理由がある。
固有名詞を付けるにしても全く無関係なものをつける
筈もないのは当然だ。

サインと言えば繋がりを示す「タトゥー」の存在が
浮上する。

また「ホクロ」の存在も見逃せない要素となった。

右京のように鋭い視線を持ち合わせていなければ
今回の件でも難儀を極めていたかも知れない。

●相棒の存在

このドラマのタイトルは「相棒」である。
夫婦もまた相棒と言えなくはない。
対等な関係、互いに協力し合って成り立つ存在。

徒党を組んで悪事に身を投じるのは半グレグループの
スコルピオ。
役割分担をして犯罪を犯し金を儲ける。
普段はホストとして金を儲けている幹部補佐の江本
雅史。かつてスコルピオに属して人を騙し続けて来た
伴坂健吾。

意外と犯罪グループは恐怖に縛られているものの、
捕まると芋づる式で関わって来た人物が浮かび上がる。

悲しいのはやはり「すみれ」が半グレを利用しなければ
生きられない現実が有ったことだ。

■その他

・カメも歩けば遺体に当たる

・この世界は美しく、人生は喜びに満ちている

・死因は心筋梗塞。持病の発作

・すみり役の智順さん。
なんて読むのか分からずに検索してみると、なんと
旧名ちすんさんだった。

・「日なたの花」「ラベンダー学園」シリーズ
・「新宿ダークストリート」
・「オーセンティック」「角筈」(内村の常連)

・半グレグループ “スコルピオ”

富樫正人(28歳)、三池豊一(27歳)、飯田正幸(29歳)
江木雅史(29歳)、宮城隆一(28歳)、伴坂健吾(引退)

・文字

ハートフルの”ル”の筆跡 -> サインのルとは別人
愛するヒロコへの”す”の筆跡 -> サインのすとは別人

・雇用機会均等法

・上野中央署に半グレ情報をタレコミしたのは美智子

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
**衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
**甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長・警視監 警察庁のキャリア官僚)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト、”こてまり”見習い)
**土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ対策本部特別捜査官)

ノエル美智子/大塚美智子 …… 大島さと子 (少女小説家)
古川すみれ …… 智順 (36歳、スーパー「KEIHIN」パート)
鬼塚一誠 / 大塚誠一 …… 工藤俊作 (56歳、ルポライター)
江本雅史 …… 小野塚雅人 (29歳、ホスト・半グレ「スコルピオ」メンバー)
古川葵 …… 窪寺百合愛 (13歳、すみれの娘)
伴坂健吾 …… 高橋里央 (NPO法人「ハートテーブル」職員)
クミ …… 鈴木とーる (「薔薇と髭と…。)
ミキ …… 平川裕成 (「薔薇と髭と…。」)

24歳の大塚美智子 …… 朝倉ふゆな (記事を編集に持ち込む)
少女期の古川すみれ …… 山本乙葉 (ノエルのファン)
青年期の誠一 …… 松村光陽 (記事を編集に持ち込む)

NPO法人「ハートテーブル」職員 …… 風見梨佳、 原田隼人
編集長 …… 上杉陽一 (視点は斬新、分析は的確だが・・)
鬼塚の取材相手の女性 …… 松浦衣里
江本に声を掛けられた青年 …… 前田成壱

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