アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋
(2020年7月期・フジTV・木22時枠)
原作 – 荒井ママレ
脚本 – 黒岩勉
主題歌 – DREAMS COME TRUE 「YES AND NO」
音楽 – 信澤宣明
プロデュース – 野田悠介
演出 – 田中亮、相沢秀幸
第4話 薬剤師が患者を救う事だってできる
【ストーリー】
摂食障害で苦しむ辰川樹里、ステージ4の胃がんで入院して
いる辰川太一、外傷性頸部症候群の羽倉龍一。
彼らには日常生活がありそれを守るのが薬剤師の仕事。
●娘娘亭
樹里はフラフラしながら帰宅。
そこでは葵と小野塚が食事をしていたが、彼女がよろけると
葵が支える。父の秀三は挨拶をするように告げるが元気なく
過ぎ去ろうとする。葵は彼女の顔色が悪いことを気に掛ける
が・・
●萬津総合病院
翌日くるみに昨日の娘娘亭でのことを語る。
くるみは小野塚と食事した葵のことを羨むが、それよりも
あの店の娘の樹里のことが気になる事を告げる。
そんな二人の前に簑島心春が現れると新しい服を買ったと
して披露する。しかしすぐに診察の時間だとして看護師に
呼ばれる。
階段の所で羽倉龍一が倒れていた。
すぐに葵は声を掛けるが彼は自分は医者であり、君よりも
よっぽど自分の体の事は分かっていると語る。病室は601号室
だとするが全く違うところに行こうとしていた。また彼は
靴下が左右違うのを葵は見逃さなかった。そこに妻の志帆
が様子を見に来る。
●萬津総合病院・調剤室
販田は葵たちが戻ってくると一人の患者に時間をかけ過ぎだ
と語る。
羽倉は電話で疑義照会をかけていた。
まだ患者は12歳で体重換算でもアジスロマイシンは300mgでは
ないのかという。しかし小児科医で患者・青山花音の担当医
の池松亮平は処方通りの500mgで良いと語る。
葵は話を聞いていて今のは疑義照会ではないのかと問う。
薬剤師第24条だという。過量投与の可能性を示唆し、その場合
耳鳴りや下痢になったりすることが有るという。池松の話では
何十年もその処方で問題はなく許容範囲であり、医師として
の彼の経験を信用出来ないというのかと言われ、医療現場では
医者の言うことが絶対だと語る。
そんな中、志帆は薬剤師の龍之介を探しに来る。
話を聞くといつも息子がお世話になっていますとのこと。
つまり入院していた龍一は龍之介の父親であり志帆は母親
だった。母は夫・龍一の入院はウチの病院が嫌だと言うから
私がここに決めたのだという。こうでもしないと互いに
会ってくれないだろうとのこと。601号室だから来てあげてと
し、そしたら喜ぶという。しかし龍之介のそんなことはない
として会わない事を告げる。
●萬津総合病院・診察
葵とくるみは龍一の様子を確認に来る。
車の事故で外傷性頸部症候群・・つまりむち打ちで入院。
葵はどういった事故だったのかと尋ねる。くるみは自損事故
という記録を目にする。
・持病や何か飲まれている薬はあるのか?
・血圧が高いが何か治療は?
と尋ねると、龍一はこの病院では薬剤師が診察するのかと
憤怒する。そんな中瀬野は救急に来てくれと葵にメッセージ
を贈る。
●萬津総合病院・救命室
樹里が担架に乗せられ運ばれてくる。
意識を失ったが回復し、現在は検査中だという。小野塚が
同行してやってくる。
■感想
今回は過去に登場した心春を除くと3人の患者が登場した。
辰川家の患者だけで2人。
ステージ4の胃がんのお爺ちゃんと、摂食障害の孫娘の樹里。
そして外傷性頸部症候群で、この病院の薬剤師の龍之介の
父・龍一。昔の人は自分の名前の一部を子供につける人は
居たけど、今時それを行う人はそれだけで性格が分かると
言うことは耳にする。
しかしこのドラマと「MIU404」は何処か連動しているような
印象があるな。ジュリってMIU404でも出てきたし、親子関係
を問うような流れがどの流れに於いても存在する。
言いたいことを言えずに結果的には損をしてしまうという
流れやシナリオの構成も似ていると言えば似ているしね。
結局子供のためを思って薬剤師の道を歩ませた辺りは
厳密に言えば少々違うけど、それでもMIU404の九重親子の
エピソードは羽倉家の事情と通じるところがある。
医者と警察の職業の違いはあるけどね。
色々と患者が出てきたので全てを捌ききれなかった印象も
有る。恐らく次週も太一さんと樹里のエピソードは続くの
だろうけど、末期がんの患者とか摂食障害の患者というのは
それだけで扱いが難しいし、薬剤師の域は遙かに超えた
役割を求められるよな。寧ろ心療内科の領域にも入る
気がするんだけど・・
ただ医師が絶対の世界に於いて風穴を開けようとしている
ところは好感が持てる。石原さとみさん演じるキャラクター
はでしゃばり説が多いけど、私は自分の役割以上に食い込んで
くるところに人間性を感じて労力さえあるならそういう所は
喜んで受け入れても良い部分なのでは無いのか。
過去の経験だけが全てでは無い。
失敗している医者の殆どが当時の教えに忠実で、新しい事実
には目を向けようとしていない。
今回も新しい意見が必要だったのに医者だというプライド
から結果的に自分の中でミスを生んだ。それを全て薬剤師の
責任にするのが医者という善と悪の構図となるも、何処に
でも不条理は存在する。
■患者
・青山花音
12歳の少女で小児科に通っている。
アジスロマイシンの処方量を巡って、龍之介が小児科医の
池松亮平に疑義照会をかけるが、長年の経験を盾に相手に
してくれない。
後に彼女がまた病院にやってきたので心配するが、彼女の
母親によると少し副作用のことが気になって来ただけだった。
しかし処方の判子を押したのは最終的には龍之介なので
医者の責任ではなく彼の責任となる。決定権は無いのに
不条理ではあるが・・
・辰川樹里
摂食障害に苦しんでいる娘。
原因は勿論おばあちゃんががんで亡くなり、そしてお爺ちゃん
も現在ステージ4のガン。
元々登場当初からフラフラしていたけど、小野塚のドラッグ
ストアに来た時に倒れた。睡眠改善薬を買っていたという。
咽頭部の腫れから日常的に嘔吐していたという。
その原因は何なのか。
ある意味では摂食障害とパニック障害は似ているところが
あるか。
・セルトラリンの処方。
私は飲んだことがないのですが、基本的にSSRIに分類される
抗不安薬で私の様なパニック障害の人にも処方されることは
ある。セロトニンが減るのを防ぐ為のものだけど、基本的に
パニック障害でも薬は補助的なもので根本的な不安的要素は
現実的な流れの中で取り除くしかないというのがこの手の
病気の根源だ。
この子の場合は、家族が病気になり、しかもお爺ちゃん子の
彼女は病名を話せないことに罪悪感を覚えている。
・ヴィーンD輸液の投与。
・辰川太一
末期の胃癌で入院中の患者で現在77歳。
家族からは「未告知」。ただこういうのって本人が一番
理解しているというパターンなんだろうね。
「自分の体のことは医者である自分が一番分かっている」
とは龍一の言葉なんだけど、末期がんの患者ならまず太一は
分かっているだろうね。
七尾は患者を診て新薬の臨床試験参加をさせようとしていた。
S-1とシスプラチンの併用療法。
ただ末期ならばそういう選択をしても良いと思うけど本人に
告知していないからな。
・羽倉龍一
外傷性頸部症候群で入院中。
茨城にある羽倉病院の院長。代々医者で地元の名士。
そして何よりも関東薬事連盟の監事。それは理事選の投票権を
持っているということで販田は特に注目。
ただし息子は父親のことを
「薬剤師は医者のドレイと平気で言う人」
そんな龍一は後々倒れることになる。
元々体調を崩して高血圧や頭痛を持っていて、それ以来
物忘れも増えたという。事故の件でもアクセルとブレーキ
を間違っていた。
「軽い認知症」なのか。
葵は初めて彼と会った際に病室が分からず、更に靴下を
左右違う履き物をしていたのを目にしている。
ただ龍一は脳神経の第一線でやってきた人物。
MRIを受けるべきだが自分の診断は怖いもの。
色々と母親から話を聞くと母・志帆はお薬手帳を付けていた。
・アムロジピン錠
・フェキソフェナジン塩酸塩錠
・プランルカストカプセル
・ドンペリドン錠
・トリアゾラム錠
・エタゾラム錠
・ニトラゼパム錠
・ワルファリン
これだけ飲めば当然競合してしまう薬が出てきてしまう。
今回はMRIを受けた結果、脳の病的萎縮もなく水頭症も無い。
梗塞巣などの判定でもそれらが無いことを確認した。
多剤服用(ポリファーマシー)という薬の飲み過ぎが原因。
2014年でカナダで複数のベンゾジアゼピン系の薬を飲んで
物忘れの酷い患者が居たが、それと同じだった。
私は抗不安薬はかなり飲んだけど、記憶がなくなるまで
飲んだことはない。ただ不安を無くすような薬というのは
もの凄く眠くなって脳の伝達が相当鈍くなるので、忘れ物
をしてしまう事には医師から注意が必要だと言われる。
ベンゾジアゼピン系の薬を飲むと気分が良くなるんですよ。
で、その気分が良くなる状態が通常のようになりたくて
どんどん服用するようになっていくウチに耐性が
ついて、もの凄い量が増えてしまう。こうして依存症になり
医学界ではベンゾジアゼピン系の薬の処方の是非がよく問わ
れる。
■それぞれの努力
いつものように販田は努力するが、結果的に龍一の医学界
での役員効力は1年間のみ。
いつものように販田の悲しいオチ。
今回の葵は羽倉の親子関係を取り戻す為の役割を果たした。
その為に羽倉を自分の行うお節介な流れに巻き込んだ。
如何に薬を出す人物が最後のチェックポイントとなっている
のか。医者だって間違いがあったりするのでそういう時には
薬剤師の力は絶対に必要。それでこそダブルチェックが完成
する。だから本来ならば判子は薬剤師だけでなく医師にも
適用すべきだよね。
■出演者
萬津総合病院薬剤部
葵みどり …… 石原さとみ (薬剤部)
相原くるみ …… 西野七瀬 (薬剤部・新人)
刈谷奈緒子 …… 桜井ユキ (薬剤部・主任)
羽倉龍之介 …… 井之脇海 (薬剤部・メガネ)
工藤虹子 …… 金澤美穂 (薬剤部・メガネ)
販田聡子 …… 真矢ミキ (薬剤部・)
七尾拓 …… 池田鉄洋 (薬剤部・副部長・治験担当)
荒神寛治 …… でんでん (薬剤部・魔術師、DI室)
瀬野章吾 …… 田中圭 (薬剤部・副部長)
小野塚綾 …… 成田凌 (ナカノドラッグ薬剤師)
豊中瑠衣 …… 臼田あさ美 (救急センター医師)
久保山竜也 …… 六角慎司 (小児科医)
金城圭 …… 遠藤史崇 (薬剤部SPD:医薬品管理者)
外来患者
辰川秀三 …… 迫田孝也 (中華料理”娘娘亭”、イライラ型)
簑島心春 …… 穂志もえか (服薬を勝手に辞めたりしている)
桐山浩一、市原茉莉、不破りこ、長谷川恒、中村文也
松井貴香、山口真央、加賀美茂樹、大河原紗礼
辰川太一 …… 伊武雅刀 (末期の胃癌)
辰川樹里 …… 久保田紗友 (秀三の娘。摂食障害)
羽倉秀一 …… 菅原大吉 (外傷性頸部症候群)
羽倉志帆 …… 宮田早苗 (羽倉龍之介の母)
青山花音 …… 下澤実礼 (12歳、通院患者)
池松亮平 …… 中脇樹人 (小児科医師)
医者 …… 中野順一朗
少年期の龍之介 …… 岩田琉生
薬剤部 …… 小財真樹
古川 ……
久下恵美、関口満紀枝、石川啓大
佐々木ちあき、佐藤侑梨、市原文太郎、峯石桃花
加賀美茂樹、郡司芹香