相棒21
(2022年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)(3)(4)(7)、権野元(5)(6)(8)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、川﨑龍太(3)、光益義幸(4)、岩下悠子(5)
瀧本智行(6)、山本むつみ(7)、森下直(8)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第8話 コイノイタミ
【ストーリー】
■警視庁
・取調室
大河内は事情聴取する。
「夫も子供もある女性に横恋慕し、刑事の身分を利用して
彼女の部屋に押し入った。釈明はあるのか?・・伊丹巡査部長」
伊丹は意固地なまでに沈黙を守る。
・殺人事件現場 / 被害者自宅(東京都世田谷区野賀)
伊丹捜査官・聴取よりも前のこと
芹沢と出雲は事件発生現場で伊丹に今回の殺人事件のことを
語る。
発端は不動産投資会社勤務のファイナンシャルプランナーの
大久保雅也(39歳)さんが自宅マンションで殺害された事件。
室内は荒らされておらず動機は恐らく怨恨だろうと。
凶器は現場の床に砕け落ちていて大半は犯人が持ち去ったと
思われる。そしてその凶器の復元は不可能だった。
カーペットに「えつ」と読める血文字が書かれていた。
・殺害現場
伊丹捜査官・聴取よりも後のこと
特命係の二人はカーペットに書かれた血文字を見ながら事件
について語り合う。
これはダイイングメッセージなのか。
出雲と芹沢は特命の二人に現在まで分かっている捜査状況に
ついて語る。
血液鑑定の結果、文字を書いたのは被害者の大久保のもの。
右手人差し指にも血がついていた。そこで容疑者として浮上
したのが篠塚悦雄(45歳)。
・捜査本部 / 過去
ホワイトボードに今回の事件の詳細と関係図などが書き出さ
れていた。
死因は頭蓋骨骨折に伴う脳挫傷。
現場には陶器の一部が落ちていたこと。
事件は令和4年10月19日(水) 午後9時に発生し、通報された
のは20日(木)。発見・通報したのは被害者と同僚の沼田利一
(39歳)だった。
篠塚悦雄は窃盗・恐喝・詐欺の前歴がある。
令和2年8月12日の午後2時30分に路上で引ったくりを起こして
大久保が取り押さえたこと。
篠塚には前科6犯で、刑務所を出たり入ったりしていた。
「えつ」は篠塚悦雄のえつなのか。
篠塚は本件発生の4日前に出所していた。
動機は”お礼参り”ではないか。
事件前後の足取りは掴めているのか尋ねるが鋭意捜査中だと
いう。出雲は篠塚が行きそうな場所をピックアップしたとして
資料を配る。伊丹はそれを見て何かに気が付く?
・張り込み
捜一の三人は篠塚家の張り込みをする。
すると篠塚の子供・祐と、妻の由香子(39歳)が手をつないで
帰宅する。彼女の姿が見えると伊丹は手帳を見せて、強引に
部屋に押し入るのだった。
・
由香子は弁当屋に勤めていて伊丹先輩はそこの常連だったこと
を語る。二人はかなり良い感じ。由香子もまた伊丹を庇う様
な発言をしている。
しかし本人は一切聴取に応じることはなく完全黙秘している
ことを語る。
■感想
不動産投資会社勤務の男性が殺害される。
自宅マンション内で陶器の様なもので殴られたことによる頭蓋骨
骨折に伴う脳挫傷によって死亡していた。床には自らの血で
描いた文字が記されていた。果たしてそれはダイイングメッセージ
なのか。
ストーリー上、複数の事件と容疑者を浮かび上がらせた感じで
そのロジックが何処の誰に繋がるのかを少し工夫するように
して描いたもの。
見てすぐに分かるのは加害者が投資詐欺師であろう事と、
伊丹刑事が犯人ではないこと。
伊丹刑事の沈黙的な行動が逆に多くのことを物語ると言った
感じで背中で物を言う男伊丹の性格的なことを前面に出した
面白い内容だった。
現場に書かれたダイイングメッセージに関しては、それを前提と
して捜査していた感じだけど、そもそもそれに意味が有るのか、
そして誰が書いたものなのかは正直分からない。
犯人が色々と工作している形で有り、自宅マンションで起きた
ものであるならば、知り合いや関係者が殺害したであろうことも
容易に想像が出来る。
ダイイングメッセージは分かる人には分かるような形で犯人に
繋がるヒントを記したものだ。犯人だと直接描いてしまえば
消されてしまう可能性も有る。しかしその謎が解けた時、一気に
これまでの苦労が報われるような形であり、容疑者像を絞って
捜査をすることが出来る。
一方で上述したように事情聴取に於ける伊丹刑事の行動は
ダイイングメッセージとは逆に言葉で説明できる状況にも
関らず、沈黙を貫き通すという逆の形で存在感を発揮したとも
言える。
伊丹刑事含めた捜一と特命係の関係性が最近再び面白く描かれて
おり、義理・人情を貫く伊丹刑事の良さというものが伝わって
くる。
最近の刑事部長といい今回の伊丹刑事といいホント捜査一課の
刑事も優しさで溢れているな。
●他人との関係
他人との関係に於いて繋がりがあれば何らかの分類に分けられる
のではないか。
このドラマは誰が見ても「相棒」ではあるのだけど、
「友人・親友」「ライバル」「上司と部下」
「同期・同僚・同級生」「同郷」「仲間」「顧客と社員」
これら無数に表現する言葉は有るかと思うが今回のドラマに
於いては大体その言葉に当てはまり、その関係の中で感情が
乱高下していく。
利害関係によってその辺の綱引きが絶妙に描かれたからこその
内容であり、人を誘導・誘惑していく感じが、事件の中でも
事件の外でも起きているのだから複雑だ。
警視庁での関係性もそうだし、今回関わってくる企業内での
関係、そしてそれ以外の人間関係でもそれらが上手く表れていた。
形を変えたものだけど、結局は現代の犯罪の構図でもある
金持ちの高齢者を狙う役割分担型の詐欺と弱者を襲う暴力犯罪
の二本立てだった。
●容疑者と成り得る事象と感情の問題
今回の件ではいくつかの犯罪が相乗的に行われて複雑さを
感じさせる流れとなっている。
興味深い流れとして描かれているのはどの流れにも人間的な
「感情」というものが深く関わってくる。
篠塚という人物の元々持つ窃盗・恐喝・詐欺犯罪。
大久保による投資という名の副業的な仲介・運搬詐欺。
弱者に向けられる暴力と一見社会的には強者である高所得者を
狙う計画的投資犯罪。
盗まれたものだと知りながらも自らの物欲によって手を出す
故買人。
競争社会が生み出すライバル関係に於ける溢れる感情。
人は騙されれば誰だって怒る。殴られて限界に達すれば
窮鼠猫を噛むである。自分がされて嫌なことは他人にしない
とは日本人の持つ価値観ではないか。
●ご都合主義
やや不自然に映るのは破片が陶器だとして、誰の作品
なのかを素人に近い人物が当ててしまうことではないか。
現場に落ちているものはそもそもダイイングメッセージみたい
なものではあるし、役割分担として誰かがそれに気が付かなければ
先には進まないのは確かだけど
フェルメールの壺とも称される櫂象仙の壺。
安土桃山時代の陶工で、明治後期に発見された対を成す
「男壺」と「女壺」。
伊丹刑事の心情を現れしているのか。
そして何よりも遺体を一人で運んだとする彼女の行動力にもある
のではないか。倒れている人を一人で運ぶというのは相当
難しいと思われる。
■その他
・「堅気じゃないです。得意分野です」
由香子が夫に暴力を振われているであろう事を知った伊丹刑事
が解決に乗り出そうとして彼女に言った言葉。
・弁当
男だ女だと言っている時代はとっくに過ぎた事かも知れないけど
やはり女性の作った料理に惹かれる構図というのは今後も続き
そうだ。
・「査問委員会にかけられる崖っぷちの伊丹～」
結果減給はされたけど不問に付された。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
**益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
**衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
**甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長・警視監 警察庁のキャリア官僚)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト、”こてまり”見習い)
**土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ対策本部特別捜査官)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警視庁警務部首席監察官)
篠塚由香子 …… 霧島れいか (39歳”BENTOボックス”店員・篠塚の妻)
衣川誠 …… 樋渡真司 (55歳、リゾートホテル会社社長)
水城はつ …… 東山明美 (83歳、大久保の上顧客)
篠塚悦雄 …… 檜尾健太 (45歳、前科6犯のチンピラ)
大久保雅也 …… イワゴウサトシ (39歳、不動産投資会社 “GJS・investment”社員)
沼田利一 …… 大下源一郎 (39歳、大久保の同僚)
篠塚祐 …… 佐藤遙灯 (由香子の息子)
磯部昭夫 …… 真山章志 (慶明大学・日本史学教授)
落合ひとみ