相棒21 第4話 最後の晩餐

相棒21
(2022年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋本一(1)(2)(3)(4)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、川﨑龍太(3)、光益義幸(4)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第4話 最後の晩餐

【ストーリー】

遺書に封をして机に置く堂島志郎はロープで首つりしようとする。
しかし用意していた際に腹が鳴った為に、家から出て近くの
SHOTBAR “City Lights”に入る。
カウンター席に座ると店員のミツルから何時もので良いのかを堂島に
尋ねる。彼は酒は良いのでカレーをもらないかと頼む。

そこに右京が入って来ると堂島の隣に座る。

堂島はカウンター越し店員のミツルにカレーを作ってくれるよう求める。
金ならば出すとするが、ミツルは材料もなく別のお客様もいるからと
して何度も断る。すると右京は堂島に加勢するようにして、自分もカレー
には“目がない”とし、是非食べてみたいという。材料がないと言われるが
堂島は買ってくるという事で店長と話が付く。

●”こてまり” -> “CLUB GENESICA”

亀山は捜査中に美和子から電話が鳴る。
「急な仕事でいけそうにない」
美和子は”こてまり”で料理を担当させてもらえることになり
創作料理をつくって待っていた。

亀山が居たのは“CLUB GENESICA”での聞き込みだった。
クラブママの永沢輝子とスタッフの美咲に堂島の画像を見せてこの
人物を知らないかどうかを尋ねる。
永沢はよく来るお客さんであること。美咲は堂島が何かしたのでは
ないかと疑う。

●スーパー

食材を買いに来た堂島と右京。
堂島は期待させてしまっているが味は普通のカレーであることを語る。
ただ不意に食べたくなる味だというと、右京は誰でもそんな一品が
あるものだと語る。
「もし最後の晩餐に一皿だけ選ぶとしたらそういう料理なのかも」

■一時間前

亀山の携帯/LINEにメッセージが届く。
「早く来い、もうすぐ出来るぞ」
そのメッセージを知った右京は美和子さんの独創的センスは健在なのか
と尋ねる。長い異国暮らしによって磨きがかかっているという。
食欲はわかないが好奇心はそそられるという。

・タクシーを捕まえる

急いで”こてまり”に行こうとしていた二人。
タクシーに乗ると後部座席には客の忘れ物があることに気がつく。
運転手にそれを渡そうとすると、先ほど乗った客のものであることを
告げる。しかし右京は服に血液が付着していることを指摘する。
しかも結構な量だった。
直前に乗ったとされる客について尋ねる。
青山辺りで乗車し、麻布の住宅街まで乗せたこと。
身なりは良さそうな男の人。
途中でロープを買うというので“OUTDOOR SHOP L&Q”に立ち寄ったこと。

亀山はある仮説を立てる。
誰かを殺した男がロープを使って自殺しようとしていたのではないか
ということ。右京はその可能性は無いとは言えないとし、降ろした場所
まで行ってもらう。

・捜査本部 / 捜査一課

亀山は伊丹に電話する。青山の近辺で本日何か事件の報告はなかったか。
傷害、殺しなど、血の流れる事件。捜一は先月から追っていた強盗事件
を追っている最中で、被疑者の居場所が分かったそうだが、伊丹の亀山
への態度を見ると彼らの捜査は空振りだったのだろうと亀山は笑う。

・血の付いた服の持ち主のアパート

アパート近くに到着するとその持ち主の男が家から出てきた為に右京は
彼を尾行し、亀山には聞き込みに行ってもらう。

右京の視線の先に居る男・堂島に声を掛ける水商売の女性・美咲は
「久しぶり」と声を掛ける。
「最近ずっと来ないのでママも寂しがっている」とのこと。
彼女は彼に挨拶すると”CLUB GENESICA”という店に入っていく。

・亀山から右京に電話

住民の名前は堂島志郎。かつて資産家のご夫婦が住んでいたが今は
亡くなりその息子の志郎が長いこと一人で住んでいること。ずっと
独身で仕事もしていない。
“悠々自適の独身貴族”
彼の周りで最近何か変化が有ったのかも知れないという右京。
約一ヶ月前から20代の若い女性が頻繁に家に出入りしている姿が目撃
されている。ガレージ前に家具を入れ替えたような形跡が有った事。
モダンなインタリアの有名メーカーだったこと。

「何か生活を一新するような変化が有ったのでは無いか」

■感想

「相棒」でも時々ある映画ネタをシナリオの中に加味して描いていく
もの。映画の方はVHS時代に見た事がある。

この中で取り上げられた映画内容を知っていればより面白くなるとは
思うが、勿論知らなくても十分に面白い作りだ。寧ろ知らない人の方
が多数だろうのでそれを前提に描かれているのだろう。

取り上げられた映画とは、1931年に公開されたCharles Chaplinの映画
「街の灯(City Lights)」。このドラマの中ではこの映画を好きな
店主がショットバーに付けた名称だ(正確には彼の母が好きだった)。
この時代の映画はサイレント/トーキー映画の転換期を終える頃であり、
また世界は未曾有の大不況まっただ中で情勢的に不安定だったことも有り、
映画内容に求められるものもまた変わってきている中での製作となった。

因みに1931年の全米興行成績のランキングを見ると、

1.突貫勘太 Palmy Days
2.チャンプ The Champ
3.街の灯 City Lights
4.足ながおじさん Daddy Long Legs
5.再生の港 The Man Who Came Back
6.人類の戦士 Arrowsmith
7.愉快な武士道 A Conneticut Yankee
8.春を讃へる MERELY MARY ANN
9.バッド・ガール Bad Girl
10.スキピイ Skippy

シナリオでは誰が心理的・精神的にイニシアチブ持って行動を起こして
いるのか探るのは難しい。

映画の中でも勘違いから始まり、男は盲目の女の期待に裏切らないような
人物像として常に偽り、自分を大きく見せて相手に近づく。
一度ホームレスとして彼女を見守るシーンがあるが、その時の彼女は
水をぶっかけて近づくのを防ぐ行動を起こしているが為にラストでの
事実の公表には緊張感をもって見守る事になる。僅か数秒の流れが
永遠のように感じ、顔の表情一つに観客全員が集中し釘づけになる。

さて話を相棒に戻そう。

相棒では事件の発端は現実の世界でも稀に有りそうな詐欺の手法が使わ
れている。
親子関係に於ける大事な個人情報を何処かで知った犯罪者が「変わり身」
「成り済まし」となって金を奪い取ろうとする。

本人は当時の恋人との間に子供が居たことは知らない。

ドラマの主人公は数奇な人生を歩んでいて、生まれながらにして自分も
養子の身であり、何処かでアイデンティティみたいなものの喪失感がある。
その後も操り人形のようにして他人に振り回されて生きている現実。
例え幾つかの場面に於いて自らの意思・決断で生きる機会を得ても、
結局は元の位置に戻り、社会に根付いた生活をおくる事が出来ずに居る。

抜け殻のような生活を送る主人公。
金があることによって彼自身が贅沢な人生なのか、それとも不幸な人生なの
か分からない。少なくとも5千万円をあっさりと出せるだけの遺産を
受け取り、悠々自適のような生活が出来るというだけで普通に暮らして
居る人には羨ましい限りだ。

心を閉ざした彼の孤独感は計り知れないが、その壁を打ち破る程の
恋愛を知っていることにより、それと同等かそれ以上のものが有れば
その壁を破れる。人間の警戒心は意外と脆いものだ。

興味深い流れはやはり、映画と同じくして、嘘の人物像だろうが少しの
事実を加味すれば全ての事が事実に見えてしまう所があるのだろう。
特に世間知らずとして生きていたなら尚更のこと。
金持ちには大抵それを目当てに群がる輩は多いので、生まれながらにして
金を持っていればこのケースに於いても警戒してDNA検査くらいはしても
良いような気がする。

■興味深い流れ

殆ど映画「街の灯」の話になってしまったので、相棒に戻ると・・

上述したことも興味深いが、このドラマに於いては捜査一課との関係も
無視できない要素となっている。
その為に特命係はどのようにして捜査一課を活用していくのかという
問題が出てくる。

また特命係にどのように事件捜査に関わらせるのかは、毎度のことなが
らもスタッフも頭を悩ませている要因だろう。

事件発生の知らせを引き寄せる流れの中に、どのような偶然という名の
必然性を持たせられるのかにもかかっており、捜査の主導権を握る為には
捜査一課よりも早い段階で事件を嗅ぎ分けていく必要がある。
今回の場合、捜査一課は別件の捜査が起きており、そちらに集中していた
ことも有って特命係が主導することが出来た。

・顔の見えない相手との意思の疎通

これは上述したところにも繋がるが、近年のドラマに於ける自分が自分で
あることの証明。アイデンティティの問題であったり、またリモート化
したりAI化していく現代社会に於いて至る所で自分ではない自分がそこに
居る可能性が有る。

Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場面)の全てがその人本人と
本当に合致するのか。その裏付け作業は確実に必要になる。

・大事な人が目の前に居る。

恋は盲目という言葉はあるが、彼は娘に盲目になり、本当の息子である
ミツルの存在には気がつかない。また彼の恋を愛している永沢輝子の
存在もまた気づかずに過ごしてきた。
運命という事で片付けるのは簡単だがあまりにも出来すぎた感じがして
くる。それだけ周りがよく見えていない人だったということなのだろう。

その彼が隠し味という味覚に於ける鋭さの一端を見せることで現実に
呼び戻された感じに見せたのかも知れない!?

そして美和子スペシャルという非現実さを知るはめになる。
世の中はバランスで出来ている(<-ホントか)

「空腹は何よりのスパイス」(現実)
「これはカメラのせいですか」(現実逃避)

・やり直すチャンスがある人、無い人

人生は何時でもやり直せるという歯が浮くような台詞があるが、現実的
なことを考えればやはり年相応に金が有り、居場所を持ち、それなりに
最低条件がクリアしている人にだけやり直すチャンスが出てくるのだろう。
やり直す為のインフラなり道筋を用意してくれているのであれば、
それは幸せなことだ。
しかしやり直すと言っても過去に自分が将来に求めていたものを完璧に
なぞることは無理である。

ドラマの中の台詞で、映画のラストのシーンに言及された。
映画はハッピーエンドだったのか、それともアンハッピーエンドだった
のか。目が見えただけでも十分に幸せなのに、人の欲には際限がない。

・いまいち分かりづらい

この一連の詐欺は二人が共謀したもので、本来は得た金は二人で山分け
して逃げようとしていたらしい。
女性はこの男が殺人犯だと知って一緒に居たのだろうか。
一緒にいても何の得もない。
男は金を持って一人で逃げようとしているのを仕込んでいたGPSアプリで
尾行していた女性によって見つかってしまった。
見つかる度に人を殺していく犯人の殺人っぷりが凄い訳だけど、彼女はその
まま男は見逃しても、主人公と一緒に暮らしていけばその程度の金は
気がつけば手に入れられて、それなりに安定した暮らしが出来たのでは
ないか?
ナイフを持っているくらいだから女性も相当性根が腐っていそうだけど・・

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
**内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
**中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
**益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
**甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長・警視監 警察庁のキャリア官僚)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト)

堂島志郎 …… 矢柴俊博 (独身の遊び人)
久保ミツル(充) …… 長村航希 (30歳、”CITY LIGHTS”店員)
永沢輝子 …… 大家由祐子 (「CLUB GENESICA」のママ)
菊池和哉 …… 守谷周徒 (由季の交際相手)
美咲 …… 滝沢花野 (六本木「CLUB GENESICA」のホステス)
西村由季 …… 豊泉志織 (堂島の娘)
…… 天蝶二 (タクシーの運転手)
…… 祐村要 (「ORIENTAL GRACE Coffee」店員)
久保早苗 …… 藤山由依 (堂島の元妻)
…… 金田誠一郎 (由季のアパートの大家)
…… 所博昭 (マンションの管理人)

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