相棒16 第3話 銀婚式

相棒16
(2017年10月期・TV朝日・水曜21時枠)

脚本／太田愛 監督／内片輝

【ストーリー】

片岡美加は貴城商事の専務・瀬川巧の秘書。
帰りの車の中で明日のスケジュールの相談をする。資料を用意
して置いてくれと語る中、片岡に対して午前中休んでいたみたい
だねと尋ねる。両親が知人の結婚式の為に上京しているので
迎えに行ったとのこと。運転手は専務も楓奥様と来月銀婚式です
ねと語る。25年は長いようであっという間だという巧。

楓は今日中に届けると約束したのに荷物が来ないとイライラ。
セツは大丈夫だとし最終の宅配はまだ回っているハズだという。
するとタイミングよくチャイムがなると宅配便だった。
楓は車イスだったが、自分で取りに行くとしてインターホンで
宅配業者を中に入れる。
ちょうど帰宅した巧はセツと共に銀婚式の招待状を見てよく
出来ていることを語る。さすがオーダーメイドだとするが、楓は
思ったものと違ったとして不機嫌そうにする。

後日、玄関扉前に灯油がまかれたとして冠城は右京と共に捜査に
いく。相手は総合商社・貴城商事の専務の家で単なるイタズラ
だと思うがそこの妻は車イスだという。エスカレートする前に
諭してもらえないかと峯秋に命じられたとのこと。ご近所トラブル
でしょうというが・・

現場近くに人だかりが有り、警察も来ていた。
瀬川巧は警察官に事情を話しているところだった。
右京たちも彼に近づくと事情を聞く。
すると巧は妻と散歩している最中に三田東不動坂の途中でタバコ
を切らしたことを忘れて自販機で購入している際、車イスの
駐車ブレーキをかけるのを忘れていたという。そのまま車イスは
坂を走っていき妻はやってきた車にぶつかり止まったとのこと。

楓と話を聞く。
すると介護士の牧野が彼女を連れて来る。
医者の話だと骨にも脳波にも異常はなかったとのこと。
これに懲りてタバコは止めてと言ったという。右京は随分と
ヘビーウォーカーみたいだとして、机にタバコの焼け跡が幾つも
残っているのを目にする。
自分たちは玄関先に灯油がまかれた件で来たこと。
その件で私たちは警察には届けていないというと、セツが
辰臣に相談し、それを経由して来たという。貴城商事代表取締役
の辰臣さんは楓さんの兄さんですよねと。私たちは早くに母を
亡くしたのでセツが2人の母代わりだという。きちんと警察に
調べてもらった方が良いと思ったというセツ。
先週の木曜日(11/19)の午後の皆さんは何処に居たのかと問う。
巧は辰臣義兄さんと千葉で釣りに行き、セツはスーパーに買い物。
牧野はお休みを取っていたとし、奥様は家に一人でいたこと。
エントランスはオートロックなので外部のものは簡単には入れ
ないという。しかしセツはあの日は引っ越しが有りオートロック
は解除されていたという。右京は坂道から落ちた際の車椅子の
操作の対応について尋ねる。楓の車椅子は簡易型電動車椅子で
あり、手動から電動に変えることが出来るもの。ブレーキレバー
よりも電動に変えれば良かったのではないかという右京。そうし
ようとしたが気が動転していて上手く行かなかったという。
車イス生活を始めたのは21歳の時で、落馬してケガをしたという。

右京はそんな彼女の会話を聞いて自分が死にかけたという実感
を感じないという。一方冠城は介護士の左手に何かの跡がある
ことに気がつく。

■感想

ようやく普通スタイルの相棒に戻った様だ。

銀婚式とは25年目に行うもの。仕事のキャリアにしても
家庭としても安定し充実し、それが一巡した頃に罠が待っていた
という内容だった。

人が人を愛する要素は何があるのか。
その一番が愛する異性そのものなのか、それとも相手の持つ
自分にはない地位や金なのか。

25年も経てば、過去に問題を起こしたものは反省して更生して
いるだろうし、一見すると何の黒い歴史を持たないものが
色々と自分の人生設計に対して画策して手にしているところも
現れてくる。
介護士の牧野が如何にも犯罪に手を貸しているみたいなミスリード
を誘う役割で、別荘地に偶然のように存在していた医師の
家族の堺は、牧野と共謀してアリバイ作りの為に居るのかと
思っていた。しかしそれらは全く別のものだった。

25年前の結婚に際してその出発点が実は仕組まれたものだった
としたならば、その間の人生は全て作りもののように見える
ことだろう。相手のことを何処まで信じて良いのか、この年
になってそんな疑問が生まれること自体が不幸だね。

明らかに言えるのはこの二人の間に愛は存在していなかった。
一緒になる為とは言え、落馬させて下半身不随になどさせる
ハズも無い。

・別荘地での事件

思い出の別荘地で撮影をすることになる。
写真はその瞬間を残すものだけど、ビデオだとその流れは
克明に記録される。
時計の音が鳴る所がまた、色んな意味合いに取れて絶妙なもの
を感じる。過去の事実を知って人生の新たな時間が周り始めた
のか。それとも過去の時間に引き戻して、その恨みを晴らす警鐘
としての役割が有るのか。

今回の瀬川家の事情は、同じ日に見ているNTVのドラマ
「奥様は、取り扱い注意」の大原家の事情と似ているところが
有るな。大原家でも結婚する為に妊娠させるという既成事実を作り
自分のものにするという年上の夫の姿が有る。
そしてこの相棒に於ける大原家は、25年前の出会いに遡ることに
なる。

ドラマでは妻と夫の間で静かなる戦闘状態に入ってしまった。

・よく分からなかった

時系列が詳細に語られた。
気持ちの変化が急速に変わったことを意味する所も有るので
これは興味深い掲示の仕方だった。。
8月から銀婚式の準備をしていたこと。
13日に招待状を積まれ、17日には弁護士事務所を訪ねていた。
19日には灯油が蒔かれることになり、27日には車イスに細工が
為された。

夫はかねてから浮気をしているが、それでも妻側が今の結婚生活
に満足していると感じたのは、宅配業者が来る時のことでは
ないのか?招待状が出来上がってくるのを楽しみにしていた妻の
光景が映し出されて居る。

そこで初めて夫の裏切りには気がついたのではないかということ。
それにも関わらず顧問弁護士の事務所にそれ以前に尋ねている
形跡が有る。
当初別荘を売ろうと言っていたのでそのやりとりの為に訪れていた
のかと思ったんだけど・・

・25年の人生で相手の知るとこ、知らないところ

夫も妻も25年間で培った互いに生活習慣を利用した殺害計画。
互いに知っているからこそ緻密な殺害方法が選べてしまうという
のも皮肉だね。

そして夫が妻殺しに失敗した車イスでの坂道の転落事件。
妻が夫殺しに成功した階段からの転落事件。
という対象的な事件。
一連の人生の主導権は完全に夫側が掌握していたが最後になって
妻に逆転された。

右京さんが鑑識のような役目まで果たしてしまうところには少々
違和感が有るし、最後のタバコ周辺の流れは少々トリックとして
は雑だった。

人生の転落を意味するように夫婦が互いに突き落としまく
っているのだから周りにいるものは大変だ。

この二人としての人生のスタートラインが結婚式にあるとすれば
それ以前に薬で眠らせ落馬させたことによる作られた生活が
有るのだろう。

・記憶とは・・

時計の音とタバコの臭い。
人の記憶を無意識に呼び起こすアイテムとなったけれど、
何となくその要素を考えると「時をかける少女」をホラー風味
に踏襲してみたいで何とも言えないところがあるな。

タバコの臭いがしなければ医者も気がつかなかった。
また睡眠薬のようなものを混入させていなければ妻は夫の殺意
に気がついていないのかも知れない。

まぁ灯油はまかれたことや妊娠3ヶ月ということを考えれば、
ちょうど銀婚式の計画を立てていた頃なので、妻にとっては屈辱的
なことが重なったね。

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目”花の里”)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー対策本部特別捜査官)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二(警察庁・長官官房付)

瀬川楓 …… 菊池桃子 (妻、結婚25周年・車イス・落馬)
瀬川巧 …… 川野太郎 (大手商社(貴城商事)の専務)
牧野準 …… 玉置玲央 (介護士)
セツ …… 大方斐紗子 (瀬川楓の母代わり)
片岡美加 …… 常石梨乃 (貴城商事の専務の秘書)
貴城辰臣 …… 多田木亮佑 (貴城商事の代表取締役)
広崎玲奈 …… 舟木幸 (瀬川家の友人)
堺敏夫 …… 鈴木信二 (ハイキングに来た家族、医者)
デザイン事務所 …… 近藤佑子 (takayuki design works)
宅配業者 …… 齋藤聡 (Bee急便)

松上政臣、鎌田みさき