相棒21
(2022年10月期・テレ朝・水曜21時枠)
監督:橋本一(1)(2)(3)
脚本:輿水泰弘(1)(2)、川﨑龍太(3)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広
https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
第3話 逃亡者 亀山薫
【ストーリー】
■輸入雑貨「リオネーレ」 / 豊島区浪引
・11月15日(火)
亀山は血の付いたナイフを手にする。床にはそのナイフで刺されて
亡くなったと思われる男性が横たわる。
ホエール宅配便の配達員・大田悠はその光景を見て悲鳴をあげる。
亀山は急いで裏口から逃走する。そして彼は途中で血の付いた
ジャケットを投げ捨てる。
・捜査一課、鑑識が事件現場へ。
芹沢によると被害者は須賀都志也(42歳)。
輸入雑貨店”リオネーレ”店長をしている。
益子によると死因は腹部を鋭利な刃物で刺された事による
失血死。死亡推定時刻は午前9時から11時。
店の売上金は手つかずなので強盗の線は薄い。
目撃者は荷物を届けに来て店内に入ると死体の前に男が立っていて
店の裏口から逃げたと証言している。逃げた男の特徴は?
■警視庁
・特命係
角田が右京の元に来る。「ヒマか?」
角田はコーヒーが作っていないことに不満を示す。
亀山が暫く休暇を取りたいと申し出が有ったという。
復帰したばかりなのに南国気分が抜けていないのか。
右京は角田に何か有ったのか尋ねると、亀山に殺人容疑がかかって
いるという。輸入雑貨店・店長が殺害され現場近くの路地裏で
血痕が付着したフライトジャケットが見付かる。ポケットから
凶器と思われるナイフも見付かり、目撃者に写真を見せたところ
亀山に似た男が現場から逃走しているとのこと。
角田は亀山が何で休暇を取っているのか尋ねる。
「野暮用が有る」とだけ語ったとのこと。
伊丹たちが特命にやってきて、亀山の所在などを聞きに来た所、
タイミングよく右京の携帯が鳴る。
亀山からの電話だった。
右京はみんなに聞こえるようにスピーカーにして、彼から情報を
引き出そうかる。
「今何処にいるのか」
伊丹も激怒しながらその会話に加わり、
「須賀を殺したのはお前なのか?」
「どうして現場から逃げたのか?」
「いつまで休暇を取るのか?」
を問う。肝心の亀山は電話越しに、
「こうするのが一番なんです。」
そして右京に後のことを任せる。
会話していると亀山は二人の警察官に見付かり追いかけられる。
■池袋中央署 / 捜査本部
殺害された現場から池袋中央署に捜査本部が設置される。
捜査一課は現状判明していることを集まった刑事たちに説明する。
凶器のナイフから亀山の指紋が検出されたこと。
現在鑑定中ではあるがジャケットも亀山のもので間違いない。
被害者の須賀は覚醒剤売買容疑の前歴があり、今回も捜索で
かなりの量の覚醒剤が押収されていること。
池袋中央署の署長の前島正造は、被疑者を緊急手配して公開捜査
にした方が良いのでは無いかと語る。
しかし今の段階で事を公にする訳にはいかない。
亀山の携帯電話の電源は切られていて場所の特定には至らず。
事件の発生後に右京に電話していること。
「殺したのは自分ではない。こうする事が一番だ」
と言っていたことを報告する。
犯人の常套句だろうと中園。同期だから庇っているのか?と伊丹に
問い詰めるが、それを否定する。
マスコミに嗅ぎつけられる前に亀山を確保しろと命じる。
■感想
相棒のS20の9話と13話を担当した川﨑龍太さんが脚本を担当。
シナリオは事件・事故、二つの流れが有り、
「現在発生した店主殺害事件」と運転免許試験場時代に亀山が
お世話になり、4年前に亡くなるまで池袋中央署・会計課で働いて
居た「警察官・塩見耕太郎の転落事故」。
その関連性を探っていくもの。
亀山自身が義理堅い人物でなければ、この事件は未解決のままで
時間の経過と共に塩見家の息子だけがモヤっとする事になり、
塩見家の未亡人は金を脅され続けてイラっとしていく所だった。
テーマは“身内”による隠蔽体質を抓るところが有りつつ、
人生の選択/人としての命に関わる選択だったことも有り、非常に
重たいものだったけど、シナリオの流れはあまり複雑化して
いなかった事も有り、結論は早い段階から想像が付く。
このまま羽柴が犯人だったらこれは何なのかと思わず突っ込まずには
居られなかったけれど、それ以外のところに目を向ければドラマ
は興味深くなる。
至るところで身内や私情の壁にぶつかる。
先日のエピソードでは捜査権がないとされた右京や亀山だったけど、
今回は伊丹が亀山の同期で有ったこともあり、私情を挟む可能性が
あるという事で捜査から除外される。
伊丹にとっては、“警部殿に捜査権はありません”と常々語っている
言葉の重みを知る事になったのか。
亀山の方が右京よりも常に一歩先回りしている状況であることも
面白い。終盤までは右京が後塵を拝し、捜一は右京の後塵を拝する。
右京が亀山に追いつく時に事件は解決するという段取りだ。
●警察官の家族・身内
家族は結局妻も故意では無いにしろ殺人を犯すことになり、警察官
を目指す息子は、父親が横領して計画的な自殺、母親は殺人という
ことで助かった命では有るが、警察官に進む上では、家族に足を
引っ張られることにはならないか?
家族に犯罪者がいると警察官にはなれないという都市伝説がある
にはあるが、過去にそれに関しては否定するような事を聞いた
ことがある。
●難儀なアクション
追いかけるといえば、かつてClint Eastwood (1930年生)がアクシ
ョン俳優のイメージから求められる内容の映画が最低限、走る
演技を必要とし、一体何歳までそのような演技を見せられるのか
と言うことが注目されたけど、右京役の水谷豊さんもそれに負けず
1952年生まれだ。走らせるにはちょっと酷な年齢では有るけれど、
年を感じさせないところもあるし、身体は鍛えていることだと思う。
また捜査を見ていると、昭和の捜査方法をそのまんま踏襲する様な
レトロ感が満載で、「太陽にほえろ」を見ている感覚さえ有った。
●身内に甘い
警察官が立場を利用して自分の子供や身内を助ける為に犯罪を
犯してそれを無かったことにするかの是非について問われていく。
誰かが助かれば誰かが亡くなる世の中である。
臓器移植に関しては国際間でも日本人が金の力で海外に渡り
手術を行うケースが多いこともかつて問題になったことが有るし、
臓器売買の為に子供を誘拐する一部中国の犯罪事情なども
有ったりして何とも複雑な心境だ。
●あなたならどうする~ by いしだあゆみさん
同じ様な境遇に陥った時に、「亀山ならばどうするのか」
「右京ならばどうするのか」など、それぞれの人に問いかける流れ
があり、それは即ち視聴者にも問いかける流れになっている。
シナリオは初期の段階から概算が取れそうな程に犯人は絞られて
いて、亀山が犯人だと思う視聴者は0%に限りなく近いだろうし、
鋭い眼光で捜査本部でオーラを発しまくっている波岡一喜さん
の姿を見れば、「君犯人じゃないよね?」と思わず誰もが突っ込み
を入れたであろう。まぁ犯人でなくても事件に関わっている人物
で有るか、真相を知る人物であることは想像に固くない。
そんなありきたりの流れを最後まで続けていくのか気になって
見ていたが、流石にそこまでストレートなものではなかった。
■事件
● 「輸入雑貨店主殺害事件」
被害者 : 須賀都志也 (42歳)
場所 : 豊島区浪引にある輸入雑貨店”リオネーレ”
死因 : ナイフで腹部を刺されたことによる失血死
死亡推定時刻 : 午前9時から11時
事件発生 : 令和4年11月15日(火)
目撃者 : 配達員の大田悠
備考 : 覚醒剤売買の前科
早い段階から犯人が亀山である事は明らかになる。
凶器のナイフに付着する指紋、捨てられたフライトジャケット。
右京は現場を見渡し何か違和感には気がついていた。
それは偽装工作したであろうことを証明することで、遺体に付着
する指紋が利き手とは違う方の指紋が付着していたこと。
被害者は左利きだった。店の工具痕、ギターのレフティモデル。
●「警察官・塩見耕太郎の転落事故」
4年前に亡くなるまで池袋中央署・会計課で働いて居た警察官の
塩見耕太郎。
転落事故との事だが、場所はなんと池袋中央署の非常階段の6階の
踊り場からの転落。目撃者である羽柴によると、携帯スマホを
落として取ろうとするところを身を乗り出して墜落。
大抵は落下した後の音で気がつくものだが、一部始終自殺する流れ
を見ていたことに違和感を生じる。
・事故に違和感を覚えるものたち
息子の優馬と当時の塩見の部下だった千石佐織。
最初に事故では無いと語ったのは佐織で、転落と同時期に池袋
中央署から覚醒剤が無くなる紛失事件が有り、その紛失事件は
まるで表沙汰にはならなかったこと。
・羽柴の家庭
6年前に小学生の息子は悪性腫瘍で命を落とし、妻とは離婚している。
彼は組織犯罪斑でも有ったので、麻薬の密売ルートに詳しく、
一般人では難しいであろう覚醒剤の売人などのことはよく知って
いる。
● 投了
現場に落ちていたネックレスの一部は、塩見家の写真に写っていた
物と同じ。それが妻のネックレスだった。
4年前に優馬の肺高血圧症の為に肺の移植手術費用を捻出する為に
押収した覚醒剤を売りさばいて金を作ったこと。
予想外なのは売人の須賀が全ての事実を知っていた為に、恭子を
脅して金をむしり取ろうとしていた事から事件は発覚していった。
■出演者
杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (1と5代目相棒、特命係)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
*内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
*衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
*甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長・警視監 警察庁のキャリア官僚)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽 (フリージャーナリスト)
*土師太 …… 松嶋亮太 (サイバーセキュリティ対策本部特別捜査官)
羽柴亮平 …… 波岡一喜 (警視庁池袋中央署・組織犯罪対策課の刑事)
塩見耕太郎 …… 長谷川公彦 (元池袋中央署会計課課長・薫の運転免許試験場時代の上司)
塩見恭子 …… 広岡由里子 (塩見の妻)
塩見優馬 …… 小宮璃央 (塩見の息子)
前島正造 …… 宇納佑 (警視庁池袋中央署署長)
千石佐織 …… 福田温子 (元池袋中央署会計課、現在鶴邑清掃サービス)
須賀都志也 …… ニクまろ (42歳、輸入雑貨店”リオネーレ”店長)
大田悠 …… 荻野栞 (「ホエール宅配」配達員)
冨樫昌孝 …… 井俣太良 (覚醒剤売人の元締)
香取琉志