相棒20 第10話 紅茶のおいしい喫茶店

相棒20
(2021年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋下一(1)(2)(3)(4)(6)、守下敏行(5)(7)(8)
蔵方政俊(9)(10)
脚本:輿水泰弘(1)(2)(3)、神森万里江(4)、池上純哉(5)、
森下直(6)、山本むつみ(7)、瀧本智行(8)、川﨑龍太(9)
根本ノンジ(10)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第10話 紅茶のおいしい喫茶店

【ストーリー】

●紅茶喫茶「TeaTeaTea」

右京と冠城は店員として働く。この店の常連客の大杉瑞枝は
右京の入れた紅茶を飲む。冠城は眼鏡の男にブレンドを入れ
て運ぶ。

●特命係

角田から特命係の二人に張り込みの応援要請が入る。
どうせヒマだろとし、手を貸してくれという。
右京はどんな事案なのかを尋ねる。

角田課長の居る組対五課と二課か詐欺グループを追っている
もので、事件は『ロマンス詐欺』と呼ばれていた。仮想通貨
を利用し、恋愛関係になった振りをして金をだまし取る
古典的な手法。しかし最近はマッチングアプリを使うのだと
いう。

事件の概要はこうだと角田から以下の説明がある。
『今回は多田野という妻子持ちの男がアプリを使い、さやかと
いう女性と知り合った。二人の共通するのはワイン。
試飲会でシュヴァリエ・モンウィシュを飲んで一目惚れ
したというさやかに徐々に彼の心を掴んでいき、90年ものの
ロマネコンティをゲットしたという。これは仮想通貨で
利益が出たので飼ったとし、1万円から出来るのでゲーム
感覚で行えるのだと。
頃合いを見て仮想通貨の儲け話を持ちかけたこと。彼は
嫌われたくない一心で仮想通貨を1万円だけ購入。すると3日後
に10万、1週間後に100万になったこと。しかしそこは詐欺グル
ープが作った架空の仮想通貨の運営サイトだった。多田野は
貯金を全額投資したが、その直後にさやかはドロン』

彼女によって被害に有ったのは総額2億円。
右京は糸口は掴めたのか?と問うと、多田野が送られてきた
ワインの画像からシリアルナンバーと背景の内装からレスト
ランを特定してさやかという人物を追い込みコンタクトが
取れ、指定された喫茶店に行くと現れたのは”さやかの夫”と
名乗る男で、逆に妻と不倫したことを家族や会社にバラすと
脅されたという。泣き寝入りも考えたが納得出来ずに警察に
駆け込んだという経緯だった。

しかし右京は二課の仕事では無いのかと問う。
すると角田は先週五課が捕まえた平田という半グレが一時期
この詐欺グループに加担していたとうたいはじめたという。
それで協力することになったと。平田によるとグループには
50人のメンバーが居て似せサイトを作るIT担当やら騙した
相手との交渉担当やら役割が細かく分かれているという。
組織的だと冠城は語る。
厄介なことにリーダーの顔を見た人物が居ないこと。
全てはメールのやりとりで行われ平田は運転手を担当して
いたという。決められた8ヶ所をぐるぐる回っていたとのこと。
運んでいたのは恐らく金だろうと。

1)豊島区 2)足立区 3)江東区 4)台東区 5)新宿区 6)世田谷区
7)目黒区 8)大田区。

二人には2番目の場所に張り込んで欲しいという。
今のところ手がかりは場所と証言から得た似顔絵とストロー
一本であり男のDNAを採取するが、これと合致するのが交渉
担当だという。どうやってその男を見つけるのかと問う冠城
に倉庫の出入り口を張り込み確認して欲しいとのこと。

●足立区の現場周辺

二人は詐欺グループが使用していたとされる倉庫周辺を見に
いく。
道を挟んだ向かいには紅茶喫茶「Tea Tea Tea」という場所が
ある。
中に入ると店長の真鍋弘明という人物がいて、本日は休みだ
という。そこで右京達はこの店を張り込みしたいので貸して
欲しいと交渉する。

■事件

仮想通貨を使ったロマンス詐欺が発生し、被害額も2億円を
越えるが、末端のものたちを捕まえてもネットでやりとり
しているだけ有ってリーダーにたどり着くことが出来なかった。
そこで被害者の多田野と、かつてこのグループの仕事をしていた
半グレの平田の証言からポイントを8ヶ所に絞って張り込み
捜査をすることになる。

・事件に於けるポイント

初夏に摘んだとされる茶葉のセカンドフラッシュ
今年の味は果たして美味しいものなのか。
紅茶喫茶の常連客である女性・大杉瑞枝は大の紅茶ファン。
右京とも気が合う。右京は店には置かれていないゴールデン
チップス
を持ってきて彼女に試飲させる。ロンドンのホテルで
飲めば一杯2万円もすると言われる紅茶は果たして美味しい
ものなのか。

■感想

サブタイトルの「紅茶のおいしい喫茶店」を見て柏原芳恵
さんを思いだし、そして現在の天皇陛下を思い出す人は
確実に昭和時代の人である。

そしてちょっと嫌なことを想像させるが「さやか」という
人物が詐欺師として登場するが、先日訃報が報じられた
神田沙也加さんを思い出すところがある。

相棒の前半戦(2021年)がこのエピソードで終了したが、
このシーズンはネットを利用した犯罪が非常に多く、色んな
形で活用されている事が分かる。
そして過去の事件との関係・関連性がこの数話の中では特に印象深く
利用されており、その事件に関わり解決する一連の流れは
捜一との棲み分け・差別化としても上手く作ってある。
もちろん導入部だけで、真犯人が分かった時には捜一の出番
である。

今回は犯人が分かり易すぎる事もありその辺が残念だった。
紅茶のやりとりを聞いていて犯人が速攻で分かるという・・
右京が詮索のために敢えてそれを明確化させるような質問を
ぶつけている所を見てすぐにピンと来る。
更には人通りが少ない所に建っている喫茶店には客が殆ど
来ないし、そのような場所の店内に防犯カメラの設置して
あると聞いて怪しさだけが増すような作りとなっている。

この流れと似たようなシナリオは前にもワインを使ったネタ
で見た事がある
もっともワインの場合、原子吸光分析装置により微元素特定
が可能なので産地特定が絞り込めたり、また放射能測定により
年代測定も可能なのでヴィンテージワイン偽造に使用される
事が有る・・とドラマではよく言われる(笑)

今回のエピソードのキーワードはなんと言っても「夢」
と「現実」
だろう。
夢は人それぞれに持つものであり、現実的に手が届くものから
それに近づくために努力する日々の糧のような役割を果たす。
夢は野望や欲望の先に有り、それを手にする現実的方法は
金である場合が多いと思われる。まるで手に届かないような
夢を実現するには相当なリスクがあることも覚悟しなければ
ならない。金を全投資/オールインするには余程の心眼が必要
だと思われ、容易に手を出すものではない。
しかし投資しなければ結局のところ手に入らないものも有る。
その人たちにとって手が届きそうにあるところに有る夢こそ
が人の心を惑わす罪なものである。

今回のエピソードを見ても先の人生を見越してお金を貯めて
いるであろう人物から老後の人生を奪い、食い物にしている
詐欺師の流れを現代的な詐欺師たちの連絡方法を用いて
上手く人間を誘導していくというものであった。

長年の詐欺師故に疑われてもまるで動じない。
これは詐欺師として度胸が備わったとかそんなものでは
なく寧ろ人格障害であり、他人の痛みをまるで感じない人物に
よって引き起こされたものだと思う。
また現在ネット社会に於ける感情を排除するようなやりとり
の中で行われる故に、騙される方の感情とは無縁の所で行わ
れてしまう事も有って相手のこととか気にしないで行われて
しまうものなのだろう。

それ故に被害者と加害者の感情の度合いや執念はまるで違う。
更に金という価値観が仮想通貨とか電子マネーのようなもの
によって軽微なものになっているところも人間性やら
社会規範を失わせることに繋がっている。

今回のエピソードはまるで右京へのボーナスエピソードの
ようなもので有った。
右京にはなかなか女性の影を感じない所があるし、彼の
好きなイギリス/紅茶好きの一面から彼が定年になり
仕事をするとすれば紅茶専門の喫茶店だろう事を想像させ、
その「夢」の一つを叶えたようなものである。
ある意味では視聴者も見たいと思わせる右京の将来像では
なかっただろうか。
犯罪者との会話はもちろんのこと、冠城とのやりとりも
笑えるものがあり、地獄耳の冠城は自分がアルバイト扱い
されたことによって右京との上下関係を明瞭化するマウン
ティングのようなもので、今回の詐欺師のリーダーと末端の
詐欺師との関係を強調したようにも見える。

■詐欺の交渉担当からリーダーまで

今の時代、張り込みは必要なのか。
監視カメラがこれだけ張り巡らされたところによって、一人
の人間の一日の行動をトレースすることが意外にも容易で
ある。
昭和の詐欺師が陥りやすいのは、見付かりにくいとされる
匿名性を過信したところがあったり、デジタル社会の奥深さ
というのを何処まで理解しているのか。

また最後に詐欺師を騙すような流れを通して面白い形で
相手に操られることへの無念さを晴らすところもある。

1980年代に多発したとされる「原野商法特殊詐欺事件」
よくマネーロンダリングで組み込まれるスキームで使われる
様なもので、地方の価値の無い原生林にレジャー施設が出来る
と嘘をついて高く売りつけるという事件が背景には有った。
再びそのような事件が現在増えているという。

30年前の事件、そして再び同じ人物が騙されてしまうという
のは余程罪悪感を抱いていたのだろうね。

■発生する事件

・ロマンス詐欺
・原野商法特殊詐欺事件
・しおかぜビル5階非常階段転落事件
・品川埠頭女性殺害事件

■不可解なこと

興味深いのは大杉瑞枝の存在だった。
この人物は明らかに喫茶店にいる時には倉庫に視線を向けて
いる。
被害者なのか加害者なのか。冒頭で50人くらいの人物が関与
しているとされた案件なので、それが脳裏に残っていると
彼女が犯人のような感じにも思える。

ただグループ詐欺は構成数が少ない方が特定されづらいこと
は明かだ。
ロマンス詐欺にしても発覚したのは安易に写真を送りつけた
ことによって判明してしまったこと。更に彼女の夫だと
名乗る人物が現れるが、被害者の多田野はさやかなる
人物との間に性的関係に有ったのかが謎である。

余程メールで酷いやりとりが無い限り、会社や妻子に知られ
ても問題はなく、警察に知らせるのが一番ではないのか。
専門家でもない人物が担当気取りで追跡した結果ここでも
ミスが生まれてしまった。

■第二・第三の事件

・しおかぜビル5階非常階段転落事件

ここでは交渉人の鷲尾琢磨が殺害された。
犯人は一見すると階段から突き飛ばしたとされる大杉瑞枝
だが、転落した時点であまり血が出ていないことも有り、
それでいて落下時に防御反応のようなものがなく、頭蓋骨
が陥没している。
生活反応がないことが裏付けられ、更には体内からは
フグの毒であるテトロドトキシンがスクリーニング検査で
検出された。

・品川埠頭女性殺害事件

ここではロマンス詐欺をしていたであろう赤堀絵里が殺害
され発見される。溺死ではなくここでも生活反応がないので
胃の中には水が入っていない。彼女は冒頭でのさやかとは
別人のようでこういう男性に色仕掛けで近づく詐欺師が
多いのだろう。

この時点で残るのは捜査を妨害しようとした客のメガネ男と
店長の真鍋弘明だけである。

■Q.E.D

二度騙された瑞枝の夫・大杉隆也は自殺した。
しかし偶然に引き寄せた事象が存在していた。
妻の瑞枝は、有る時町中で弁護士を装い近づいて来た鷲尾琢磨
の姿を見かけたことだった。
それ以降彼女は鷲尾琢磨がアジトにしているであろう倉庫
の見張りをしていた。彼女は鷲尾を突き落としたことによって
一時期容疑者とされるが、既に殺された状態で突き落として
いたことが判明。

真鍋は店で片付けをしていた際に右京たちが仕掛ける。
記録用のボイスレコーダーを隠していたこと。
ただそのことを臭わせて夜中にでも真鍋本人に探させている
ところを現れて欲しかった。
冠城が隠して置いた場所を忘れたというのはマヌケ過ぎて
シナリオの穴にもなりかねない。

しかし味覚のこと、そして右京が彼に渡したゴールデンチッ
プスの紅茶の成分が赤堀絵里の胃袋の中から検出されたこと
によって理詰めで攻めていく。

そして最後に筆跡鑑定が挙げられるが、彼の筆跡を見ると
見極めが難しいような「神戸連続殺傷事件」での韜晦された
ような文字・筆跡で書かれていましたね。

私は茶葉のビンの中にボイスレコーダーが隠されているのか
と思って見ていましたが・・

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (警視庁組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (警視庁サイバーセキュリティー)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁長官官房付)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警視庁警務部首席監察官)

小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)

大杉瑞枝 …… 麻丘めぐみ (70歳、被害者)
真鍋弘明 …… 酒井敏也 (紅茶喫茶「TeaTeaTea」マスター)
鷲尾琢磨 …… 松田航輝 (32歳、詐欺グループ、交渉人)
赤堀絵里 …… 水田萌木 (30歳、詐欺グループ、色仕掛け)
多田野 …… 相川裕滋 (ロマンス詐欺の被害者)
大杉隆也 …… 原田文明 (瑞枝の夫・2年前に自殺)
さやか …… 榎本奈里子 (詐欺グループの一員)
メガネの客 …… 古賀清 (詐欺グループの一員)
角田の部下 …… 河合寛之 (組対五課の刑事)
刑事 …… 高久慶太郎

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