相棒20 第11話 二人

相棒20
(2021年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋下一(1)(2)(3)(4)(6)、守下敏行(5)(7)(8)
蔵方政俊(9)(10)、権野元(11)
脚本:輿水泰弘(1)(2)(3)、神森万里江(4)、池上純哉(5)、
森下直(6)、山本むつみ(7)、瀧本智行(8)、川﨑龍太(9)
根本ノンジ(10)、太田愛(11)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第11話 二人

【ストーリー】

●フレンチレストラン

年末の28日。
右京と冠城は甲斐峯秋が会員のフレンチレストランに食事に
いく。仕事納めだからと言っても”こてまり”である必要は無く
良質の店は沢山有るという。実は右京は”こてまり”に予約を
取ったものの少し予約が遅れて取れなかった。商売繁盛は
喜ばしい事だという甲斐だが、内心で常連の自分たちが
予約が取れなかったことに苛立っていた。

右京の元に小出から電話が鳴る。
その為右京は少し席を外して電話していると、奥にはVIP席
が用意され、経友連事務総長・藤原信宏が与党政調会長の
袴田茂昭のことをおもてなししていた。

右京は席に戻ると峯秋や冠城にもそのことを語る。
袴田と言えば超党派で「子供の貧困をなくす会」で立ち上げた
人物。
右京は室内にはサービスプレートが3枚有ったのでもう一人
来るのだろう事を告げる。

●内閣情報調査室

美彌子はテーブルの上で5つの駒をいじっていた。
最初から人数は5人なので3人を抑えれば決まれば決まり。
しかし秘書の石川大輔は、官邸からはこの件に触れるなと
圧力がかかったことを語る。
そんな彼に美彌子は語る。

「起こっている出来事を知らないでいる人間」
「知っていて黙っている人間」

どちらが価値があると思うか?

■こがらし公園

●メガネ男・結城宏と白髪男・若槻正隆

夜道に車から降りて公園を歩いて行く若槻正隆を何とか引き
留め様とする結城宏。若槻は「そんな話は聞いていない」
として結城の制止を振り切ろうとする。しかし結城も先生
からの命令で何とか若槻を連れて行く必要があり、上着を
取って引き留めようとする。押し問答になると、若槻は手が
滑って後方に倒れ、そしてアタマをぶつけて意識を失う。
アタマから血が出ていた。彼は若槻を丁寧にベンチに横たわ
らせると、先生の元に電話する。

その頃、二人の少年の早瀬新と峰岸聡は帰り道に陸橋を歩き
会話する。新はスマホを落としてしまったとすると、昼間に
遊んだこがらし公園では無いかという聡。端末操作アプリ
が入れてあるので新のスマホもそこを指す。

すると二人はベンチ前で二人の男が言い争いをしている光景を
目にする。聡はその会話を携帯電話で録画していると、
男に気がつかれる。その為に公園に隠れる。何とかその場は
見付からずに済むが新が落としたスマホはメガネの男・結城
によって持ち去られる。その携帯からは電話が鳴る。
結城は静かに電話の内容を聞く。新の祖母・君枝からの電話
で来る時には買い物してきて欲しいとのことだった。

●アパート・遠藤家

新は仲の良い青年・遠藤(通称:マメ)佑人に相談する。
聡が撮影した映像を見せるとマメは穏やかでは無さそうだと
語る。新にとっては大事な写真が沢山入っているスマホだけ
に男から取り返したい。中身は長いパスワードと指紋認証が
あるので見られる事は無いだろうが・・。
遠藤はIT企業に勤めている為、携帯で撮影した映像を調べる
が顔は無理だとし、それでも音声は使えるかも知れない事を
語る。遠藤は新にやれるだけやって男を特定することを約束
するが、実は彼は音声から何かに気がついていた。

■特命係

年末年始の当番の二人。角田や青木も同様だった。
何か事件の連絡が入るまで彼らはトランプをする。
青木によると中園と内村もまた特番で登庁していることを
告げる。
そんな中、冠城の携帯には何度も電話が鳴るが、その都度
無視する。しかし特命係に備え付けの電話に鳴った為に
出ると女性の声がする。青木は親しそうに話しているとし
フィアンセの可能性を指摘。冠城は電話が終わると右京に
対して折り入って紹介したい人が居る事を告げる。

■聖マティス教会

右京は冠城に連れられて教会に行く。
そこでは冠城の姉・由梨が働いて居た。
その由梨からお願いがあるとし、湊健雄(若槻正隆)を自宅に
返したいのだという。昨晩遅くに牧師と相談して泊まって
もらったが、彼はここに来た際に怪我をしていたので病院に
連れて行った結果、脳震盪の衝撃による逆行性健忘症/記憶
喪失の状態であること。覚えている事は「湊健雄」と名乗った
ことだという。行方不明届けは出ていないのか?と問うと、
そこに福田浩介がやってくる。一緒にこの教会でボランティア
をしている男。彼は交番に行ってきたが届けは出ていない
との事だったという。湊はやたらと態度が大きくて、自分を
重要人物だと思い込んでいること。服、メガネは教会で与えた
ものだとし、着ていた服は汚れていたとのこと。ツイードの
上質のもの。靴は最初から履いていたものだという。

湊に話しかける。

「名前以外に覚えていることは無いのか?」

すると「デイリーハピネス」と語るのだった。

ここに彼は来た経緯は子供・新が知らせに来たのだという。

■事件

年の瀬の当番勤務の際に、特命係の二人は冠城の姉・由梨
からある依頼が入る。ボランティアで働いて居る教会で
預かっている記憶喪失の男性の身元を突き止めて欲しいと
いうもの。二人は少ない情報から身元を突き止めていくが
やがて一介の議員にたどり着く。

■感想

とてもシンプルな導入部から始まり、少しずつ本題の事件に
入っていく優しい作りのシナリオでした。
犯人はその都度分かってしまい、視聴者に犯人像を想像
させるという作りではなく、その人物に特命係が到達するまで
の過程を想像させていくもので、最後は如何にして犯罪を犯した
黒幕を正当に裁くまでの道筋が付けられるのかどうかという
所にありました。

今回キーワードとなるのはなんと言っても「過去の記憶」だ。
またそれとは対となる「現代の記録」と言っても過言では
ない。(ICレコーダー、スマホ位置情報・動画撮影、防犯カメラ等)

被害者は記憶が無いが「湊健雄」「デイリーハピネス」と
いう言葉は何故か覚えている。
角田は「湊健雄」という人物を何処かで聞いたことがある
が覚えていない。最後に思い出すであろう事は明らかだけど。
そして冠城は今回の新と聡の関係を見て、幼少期の親友
との関係を思い出す。自分には出来なかったこと。自分が今
後悔している事を目の前にいる子供たちに経験させたくなく
て、彼は行動する。

また今回のドラマの根底には「個人情報」の是非が存在して
いる。その辺は別項に記載する。

シナリオのフォーマットはこれまでの相棒を踏襲している。

冒頭からフレンチ店で食事をする特命二人と甲斐。
“こてまり”での恒例の年末の食事が出来ずに甲斐はご立腹
で食事の席でもその雰囲気が影響し影を落としていたが、
女将さんが人数が空いたとの連絡が来ると現金なまでに
元気になる。私はここで右京に電話が鳴ったことに甲斐が
嫉妬で怒るかと思ったが、予約の電話をしたのは元々右京な
ので流石に怒ることは無かったのかな。

■社会情勢

ドラマでは今回の黒幕である議員の袴田は、

「子供の貧困を無くす会」

を超党派で立ち上げた人物だった。

しかし自分が有罪だと認めるような発言をした後には議員は
本音をぶちまける。

企業に正規雇用労働者と非正規労働者の差を埋めるべくして
同一労働、同一賃金を求める法律が2020年4月に

「パートタイム・有期雇用労働法」として生まれる。

勿論日本企業にとっては低賃金での労働を求めるがあまり
ぎりぎりの所で踏ん張っている企業には相当厳しいものかも
知れない。ただ現在の貧富の差を考慮し、世界的にも最低賃金
を引き上げるような政策をとっていることを考えれば日本も
形だけでも法で確立しなければならないと思って居るようだ。
議員は「経済には低賃金で働く人が必要」として国民を
人では無く物として扱う。
それはこの議員が祖父時代から三代に渡る議員であり、
国民のリアルな生活に触れていないこともあるのだろう。
これだけ抜き取ると民主党政権時代の鳩山さんが印象に残って
いるが、二世・三世の議員多し、議員の世界では誰もがこんな
ものなのかも知れない。
そしてそれを決めているのもまた国民である。

・子供が主張する自己責任

この言葉は余程インパクトが有った。
恐らくこの言葉で思い出されるのが、シリアで武装勢力に
よって捕らえられた二人の日本人フリージャーナリストの方の
時の日本国民の反応では無いか。
あの頃よりジャーナリストの報道も何処か歪で国内向けの報道
が増えたようにも受けるが、それ以前から自己責任論というの
は存在していた。

右京が語る
「12歳の子が助けを求めるのが恥ずかしいと思わ
れている国が幸せかどうか。公正な社会と言えるのか」

という問いかけもある。

恥ずかしいかどうかは今に始まったことではなく、何処の
時代から始まったものでもないが、古くから日本人自身が持って
いる価値観なような気もする。なかなか日本人の気質を変える
のは難しいが、助けられる余裕のある人はそういう人たちに
協力し、助けが必要な人は遠慮無く助けを求めるべきだ。
そして助けの必要がなくなり自分が助けられるようになったら
今度は逆の立場になって社会に奉仕する。言葉で言うのは簡単
だけど少しずつでも一人一人の心に持ち続けて欲しい。
自分はパニック障害を持ち始めてからこれに関しては重々感じ
ていることなので、可能な限り手伝えることがあれば手伝う
ことにしている。

■色々と捜査の過程で重要なこと

・時系列の整理

いくつかの事件が関係した。
実はこの事件は死傷者を出さなくても解決出来るものであり
エゴによるそれぞれの事情がぶつかり有った結果、死亡事件
に繋がってしまった。

・若槻正隆の事故が発生
・遠藤佑人のエゴ (遠藤の欲)
・福田康介のエゴ (過去の自分の功績)
・聡の母の偏見 (貧富の差による偏見・差別)

・個人の特定

下の項目にも書こうとしたが、ここでも重要なので記載して
おく。
意外と身分証の無い人を特定することが難しいなと感じさせる
流れが多かった。それを探していくのが刑事ドラマとしても
一つの面白さではあるが、今後高齢化・孤独な独り者が多い
社会的事情を考慮すると、こういう身分特定には時間がかかる
案件が多くなるのかな。

・遠藤には手に無限大(∞)のタトゥーが掘られていた。
彼は頭頂部を棒状のもので殴打されたが、∞のタトゥーの
ことを冒頭で少年たちから聞いていたので右京はすぐに
誰だか分かった。

・若槻正隆は最高裁判事である。
しかしこれだけの地位を得ていても高級な服を剥ぎ取って
しまえばただのおっさんである。
これは袴田という議員にも言えることでは無いのか。
政治家ということを除けばこの人は罪人である。

■個人情報

個人を特定するというのはどういう事なのか。
今回捜査上で色々と難しいものがあるなと感じるものが有った
のは事実。
しかし人間にはDNAという最強の個人を特定するものがあるし、
何よりも周りの人物が自分の事を周知している事こそが
自分自身を証明することへのカギにもなる。

・デイリーハピネスの本社に行った際に種村栄一からは
「個人情報は話せない」として警視庁の人間にも語る。

・新は唯一の肉親である祖母の君枝が検査したことを受けて
何か重大な病気を隠していないかを心配するが、医者が身内で
あれ子供に話すハズはない。そこで若槻を上手く利用して
医師から事情を聞くことになる。

・携帯電話の中身は個人情報の宝庫だ。
どんなにセキュリティを施しても開示されたら不都合な事が
あるかも知れない。

■Q.E.D

なんと言っても今回の楽しさは若槻正隆という人物への特定
にあった。もちろんこういうシナリオは意外と多くて、
今回のシナリオで難を言えば彼が記憶を取り戻した際に、
爽快感を得られるような存在感を見せて欲しかった。

しかし彼が身につけていた、靴、服、シャツ、時計、財布など
がそれぞれによって利用され、それらの使い分けを見抜いてい
く流れは良かった。

彼が唯一「言葉」以外に持っていたのは「ツイードの服」。

昭和の人なら杉山清貴さんの曲「君のハートはマリンブルー」
の歌詞を思い出すかも知れない。

それを見た右京は彼が身につけている現在の姿に違和感を
覚える。

最後は自供によって議員に自分が殺人を示唆するような事を
発言させる作戦だった。議員の立場を上手く利用して警視庁
に呼び寄せて上手く誘導し、自供させた。

■その他

・マルクスの金言

・国家公務員法96条

「すべて職員は国民全体の奉仕者として公共の利益のために
勤務し、且つ職務の遂行に当っては全力を挙げてこれに専念
すること」

・冠城の姉・由梨の登場

・出雲の尾行劇

・美彌子の登場の仕方がスクリーンからの顔出し。
政界にも将来は念頭に入れているかのような情報通。

・こてまりの名言
「知らない内に誰かの役に立ち、知らない内に誰かに助けられ
る」

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (警視庁組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (警視庁サイバーセキュリティー)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁長官官房付)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警視庁警務部首席監察官)

小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)
石川大輔 …… 林泰文 (美彌子の秘書)
土師太 …… 松嶋亮太 (警視庁サイバーセキュリティー)
冠城由梨 …… 飯島直子 (冠城の姉、ピアノ教師、聖マティス教会)
社美彌子 …… 仲間由紀恵 (警視庁総務部広報課長)

若槻正隆 …… イッセー尾形 (最高裁判所判事、記憶喪失)
早瀬新 …… 西山蓮都 (小学6年生、祖母と生活、スマホ落とす)
結城宏 …… 弓削智久 (40歳、袴田の秘書)
福田浩介 …… 千葉哲也 (聖マティス教会ボランティア)
遠藤佑人 …… 尾上寛之 (聖マティス教会ボランティア・システムエンジニア)
早瀬君枝 …… 高林由紀子 (新の祖母)
峰岸瑛子 …… 町田マリー (聡の母・新と息子が連むのを拒む)
高田久志 …… 津村知与支 (文江警察署・北小塚交番巡回警備員)
峰岸聡 …… 川口和空 (新の友人)
浦野芳子 …… 氏家恵 (キャピタル鉄道駅構内売店「デイリーハピネス」店員)
医師 …… 加藤満 ()
デモ隊の女性 …… 信川清順 ()
種村栄一 …… 木川淳一 (「デイリーハピネス」役員)
店長 …… 岸田研二 (「泥棒市場」)
デモ隊の男性 …… 川崎勇人 ()
袴田事務所事務員 …… 高田衿奈 ()
アナウンサー …… 井上貴美 ()
藤原信宏 …… 春園幸宏 (経友連事務総長)
和也 …… 市原匠悟 (亘の少年時代の友人)
和也の母 …… 深澤しほ ()
少年期の亘 …… 榎本司 ()
早瀬 …… いろさわえみ (新の母・故人)
袴田茂昭 …… 片岡孝太郎 (衆議院議員、自生党政務調査会長)

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