相棒20 第8話 操り人形

相棒20
(2021年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋下一(1)(2)(3)(4)(6)、守下敏行(5)(7)(8)
脚本:輿水泰弘(1)(2)(3)、神森万里江(4)、池上純哉(5)、
森下直(6)、山本むつみ(7)、瀧本智行(8)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第8話 操り人形

【ストーリー】

●1973年・文東大

・人形劇団サークル

藤島健司、梶原太一、田中美鈴の三人は人形劇・人形遣いの
練習をする。

・文東大総決起集会

11月19日、岡田茂雄(22歳)・経済学科は過激派学生組織・
革命主義者青年同盟(革青同)の幹部。
彼はみんなの前で主張する。
「この闘いには絶対に勝利する事を宣言する。弾圧を撥ね除け
て勝利する。実力と理想」

●2021年・文東大/キャンバス内サークル棟

捜一の三人は現場に行くと既に益子ら鑑識が現場で調査して
いた。サークル棟の建て替え工事中に発見された白骨化された
遺体。芹沢はキャンパス内の学生なのかと問うと、成人男性
であり、頭蓋骨に大きな傷がある事から殺しで間違いないが、
50年近く経っていることから時効は過ぎている遺体だった。
伊丹は今回は自分たちメジャーリーガーはお呼びではないと
語る。

・特命係の右京・冠城が現場入り

右京らがやってくると捜一の手前、少しお邪魔するだけだと
言う。しかし芹沢は特命にはおあつらいの事件ではないかと
語る。それを聞いた伊丹も納得し、特命の二人に気が済む
まで調べるよう告げると現場を立ち去る。

冠城も右京も伊丹の発言をすぐに察する。
時効事件を押しつけられたみたいだとし、冠城もあまり興味
を示さなかった。
しかし右京は逆の意見を持つ。
「人間は誰でも肉と皮をそぎ落とせばこの有様であり、寧ろ
親近感が沸く」
という。

更に彼は被害者の霊がまだこの辺りを彷徨い何かを告げよう
としているのかも知れないと口にする。

●特命係

・角田がやってくる(暇か)

白骨体の身元が分かったのか?と問う角田に対して、1973年に
行方不明になった学生がいるのでDNA鑑定中である事を告げる。
資料を見る角田は革青団/学園紛争があった時代について言及
し、隔世の感が否めないと語る。

そんな状況の中、冠城に電話が鳴ると、遺体のDNA検査の結果
岡田茂樹(当時22歳)のものと一致していた事が分かる。
遺骨を親族に渡せば一件落着。これで成仏されるだろうという
冠城。
しかし右京は気になるところがあった。

敵対するセクトに命を狙われているという噂があったこと。
当時過激派同士の内ゲバにより主導権争いから10人以上の死者
を出した激しい闘争であったこと。今の若い人物には理解出来
ないだろうという角田。
右京は当時活動家は内ゲバの戦果で敵対するセクトの幹部を
殺した場合、自らの力を誇示するような犯行声明を出すもの
だという。しかしそれをわざわざ埋めるというのは不自然だと
いうことだった。

■事件

学園紛争が終焉しかかる1973年当時。
学生組織・革命正義者青年同盟の幹部の一人で行方不明にな
っていた岡田茂雄の遺体が約50年の時を経て白骨体として発見
される。
頭部を殴打された事が死因であることから殺人であることに
ほぼ間違いは無いが、時効が存在していた頃の事件で有り、
捜査一課は捜査はせずに、特命係案件としてすんなり身を引いて
いく。時効だからと言っても人一人が殺されていること。
その思いから右京ら特命係は捜査を行う。

・事件に於けるポイント

人は他人や趣味的なものからの影響を受けて生きている。
影響を受ける事と操られることの違いとは何なのか。

過激派同士の対立が相当数あるとされていたが、どの程度
存在していたのか。
50年も前の事件故にその関係者は既に他界している可能性
も有る中で、果たして本当に内ゲバ/敵対セクトによる主導権
争いに端を発した殺人事件なのか。

■感想

時々相棒や他のドラマでも学園闘争・学生運動時代の事が
シナリオに取り上げられることがあるけど、徐々にその流れを
現代の事件に取り込むのが難しい時代になってきたなという
感じ。

50年も経過すると過激派同士の因縁が残っているとは思えず、
親が殺されて子供や仲間が復讐するには少々歳月が経ちすぎて
いる。
そもそも子供の可能性は22歳という時点で排除されるので、
敵対セクトの息子が殺した相手に復讐するというケースは
ほぼあり得ない。
(右京さんが語るように、敵対セクトが相手の幹部を殺害した
ならば犯行声明を出すという主張もかなり説得力がある)

冒頭で三人の大学生が出てきた。
藤島健司、梶原太一、田中美鈴。そして学生組織の幹部の
岡田茂雄。
前者三人は学生運動と関係しているのか否か。

殺人事件に於ける時効が存在していた頃の時代背景が有り、
かつてのドラマはその時効が25年だという事も有って、そこで
また一つのドラマが生まれたものだ。
(2010年に殺人罪に於ける時効は撤廃された)

犯人の気持ちと共有するのは難しいけれど、内容次第では
追い詰められる人間の心理的状況と閉鎖的な現世と
照らし合わせて、時効と共に開放感を味わわせるという
ものが有るのかも知れないし、逆に人を殺めたものが何の罰も
なく済ませるというのは共感しづらい面も有る。
その点今の世の中は社会的制裁はネットを中心にして
行われるので時効制度が残っていたとしてもそれなりの復讐は
果たせそうだ。

右京も似たように語っているが、人が一人死んでいる
事なので時効という名目で済ませるには少々ばつが悪いものが
あるし、殺されたものが本当はどんな人生を歩んできたのか。
殺されるに値する人物なのかということを迫っていく所に
ドラマの興味は詰まっている。
(コールドケースのように二つの時代を行き来してその人となり
の人生模様を描くのもまた面白いのかも知れない。)

今回のドラマを見ていると過去と現在の殺人に於ける共通する
意識というものが見え隠れする。
人を殺せば、殺されたものの“怨念”や殺したものの“罪悪感”から
“見えないものが見えたりすることがある”という心理的状況が
存在すること。

また今回の出てくる【人形】は誰の目から見てもメッセージ性
の強いキーワードとなっている所である。

■事件関係者

ドラマでは、73年時代の人物に上述した様に、
藤島健司、梶原太一、田中美鈴が登場する。
そしてそれとは一線を画して、学生組織の幹部の岡田茂雄と
いう人物が被害者としての登場だ。

更に当時の幹部の一人・古澤秀介。
この人の語る言葉がまた複雑な人生を感じさせる。
「共産主義」「プロレタリア革命」「ブルジョワジーの打倒」
という名目で国家と対立してきた人物たちが、国の世話になり
生活保護の身となっている現実

野添弘道は喫茶店「マリオネット」を経営していた。

・死亡と共に彷徨い歩く亡霊と言う名の言霊

岡田茂雄がキャンパス内の敷地で遺体として発見された。
22歳だった頃に居なくなった人物。

そして2021年現在(11月28日)になり殺害された梶原太一。
彼は現在、物流大手のカジハラロジスティクスのCEOとなって
いる。

右京が最初にそんな雰囲気を察して口にしたのが亡霊だ。

「アイツの亡霊に見えるんだ」
「アイツの亡霊が見えるんだ」

・当時の写真

これも事件解決には大いに役立ったアイテムの一つ。
関係者が語りたがらない人物構成や当時の情報がその写真の
中に詰まっている。例えそれが色あせたとしても、心の中まで
は色あせない。
しかし時に残酷なことに隠したい真実を映し出す。

・伝聞とショートメール

大抵伝聞的な内容は嘘が多いし、そもそも相手が発した言葉
自体を正確に覚えているものだろうかという疑問も存在する。

今回は事件解決に於ける決定打の一つにその言葉尻の整合性
を確認しながら進めていくので余計に感じるところがある
のかも知れない。
またショートメールに関しても犯人は被害者の行動の癖という
のを無視した流れが有り安易な方法で偽装工作しようとして
しまった。

■投了

2つの殺人事件が発生してしまい、その2つの事件が偶然から
起きたものではない事が挙げられる。

殺人事件なので誰が殺したのかという所に話は集中されるが、
この子の父親は誰なのかという所に一つの解明の為のポイント
が存在していた。

田中美鈴が産んだ子供。
その事に触れたくない為に話題に言及されれば激高する姿まで
ある。

岡田を殺害したのは、当時岡田が田中を暴行した事を知った
梶原だった。もちろんそこには藤島の姿もあった。
頭を殴打する程に怒っていたのは分かるが、狙いを頭では
なく「顔はヤバイ、ボディにしな」的な自制心は働かなかった
のだろうか。

糸使いの人形は人がそれを操ることで本物の動きに近づくが
誰も触れなければ動かない。

感情もまた同様で、一瞬の感情の高ぶり方によっては自分が
普段しないような行動に出てしまうことはあるのだろう。

ところで子供は自分の父親が居ないことでグレてしまって
いたけど、子供が生まれた経緯などは聞かされて育ったのだ
ろうか。少なくとも男親の代わりには大学時代の仲間が居た。
まるで「三銃士」のようにして、一人の女性を守って来た50年
なのだ。

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (警視庁組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (警視庁サイバーセキュリティー)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
衣笠藤治 …… 杉本哲太 (警視庁副総監)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁長官官房付)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警視庁警務部首席監察官)

小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)

藤島健司 …… 下條アトム (人形劇団「糸使い」主宰)
田中美鈴 …… 白川和子 (人形劇団「糸使い」劇団員)
梶原太一 …… ベンガル (カジハラロジスティクス 社長)
田中健太 …… 石母田史朗 (梶原の運転手・美鈴の息子)
吉澤秀介 …… 菅野久夫 (元「革命主義者青年同盟」幹部)
新島敏夫 …… まいど豊 (梶原の秘書/室長)
野添弘道 …… 大川ひろし (喫茶「マリオネット」マスター)
岡田茂雄 …… 名村辰 (過激派「革命主義者青年同盟」幹部・白骨死体で発見される)
青年期の藤島健司 …… 丈太郎
青年期の田中美鈴 …… 村山朋果
青年期の梶原太一 …… 宮森右京
青年期の野添弘道 …… 渡辺賢一

スポンサーリンク
レンダグル大336
レンダグル大336

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レンダグル大336