相棒20 第14話 ディアボロス

相棒20
(2021年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

監督:橋下一(1)(2)(3)(4)(6)、守下敏行(5)(7)(8)(14)
蔵方政俊(9)(10)、権野元(11)(12)(13)
脚本:輿水泰弘(1)(2)(3)、神森万里江(4)、池上純哉(5)、
森下直(6)、山本むつみ(7)、瀧本智行(8)、川﨑龍太(9)(13)
根本ノンジ(10)、太田愛(11)、斉藤陽子(12)、岩下悠子(14)
エグゼクティブプロデューサー – 桑田潔
チーフプロデューサー – 佐藤凉一
プロデューサー – 高野渉、西平敦郎、土田真通
編集 – 只野信也
音楽 – 池頼広

https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

第14話 ディアボロス

【ストーリー】

●いけばな有明流 家元・尾崎家

・6年前

家元の尾崎孝月は集まる人たちの前で語る。

「潰すべきだと思う。品位に欠けて悪趣味、あんなもの芸術
として海外に紹介してしまっては関係者一同の恥。ひいては
日本の恥だ。そして君たちの見識も疑われる。あの男(氷室聖
矢)を潰すべきだ」

●渋谷センターギャラリー、個展 Life is Flower

・2021年12月1日から14日。

右京は家庭料理店”こてまり”の女将・小出と共にフラワー
アーティストの氷室聖矢の個展に来ていた。生け花の手法
にも使われるもので、

「真に長短、副に一種、緑で膨らみを持たせる」

作品をべた褒めしている小出に対して右京は華道の素養がある
ことに驚く。これでも元売れっ子の芸者ですと彼女。

・そこに氷室がやってくる。小出とは顔見知りだった。

氷室は自分のフィアンセである内田絵里奈を紹介すると
小出は右京のことを紹介する。
氷室はラウンジには現在今回の個展をテーマにしたティーセッ
トが用意されているので、是非そちらにも立ち寄って欲しい
と語る。

・そこに氷室のアトリエのスタッフ・竹内むつみがやって
くる
と、彼にそろそろ会見に来て欲しいことを語る。

・氷室へのインタビュー

アートは前衛的かつ冒険的な作風だが、今回は趣が違うことに
言及される。氷室はそれを認めると、これからの「テーマは
心地よさ」だと語る。「日常を彩るアート」。その為に
暫く充電して世界の庭園をフィアンセと回ることを語る。

ウィスリーガーデン(英国)、プロムナード・プランテ
(フランス)、ジヴェルニー庭園(フランス) etc…

それをティールームで見ていた小出は右京に対して幸せそうだ
と語り、“今度こそ”ホントに幸せになって欲しいという。
その言葉に右京は引っかかるものを感じる。

■生花「Florist Atelier」

捜一の三人がやってくる。
店内で女性・内田が殺害され倒れていた。鑑識の益子による
と草の蔓で首を絞められていること。蔓がよく切れなかった
として不思議がる出雲。

・特命の二人がやってくる。
出雲の疑問に対して、右京が語る。
テッセン/鉄線(クレマチスの一種)は名前の通り針金のように
硬いことで有名で、園芸品種としては古くから楽しまれている
という。

捜一は嫌そうな顔をする。
しかし右京は被害者を知っていることを告げ知人の友人の
婚約者であることを語る。第一発見者は氷室だった。しかし
まだ婚約者の死に話ができないほどのショックを受けている
とのことだった。

・氷室の話

氷室から最低限の話を聞く。
犯行時刻は昨夜の21時から23時。その際にどこに居たのかと
アリバイを尋ねるが彼は過呼吸を起こしてしまう。

そこに一ノ瀬春臣がやってくるとハーブ/ラベンダーの匂いを
嗅がせて落ちつかせて外気に触れさせようと外に連れていく。
右京は一ノ瀬の服に花粉がついているのを目にする。
ラベンダーの花粉は微々たるものなのでそれには該当しない。
花卉市場でついたものではないかと尋ねると、彼は自分は
生花仲卸業者「白金フラワー」の社員であり、
競りが終わったところに事件の連絡をもらったので慌てて
飛んで来たのだという。彼とは10年来の付き合いがあり、
彼の今回の個展の作品の仕入れも担当していたことを語る。
私生活のパートナーを二度失っていることについて右京は
それとなく確認する。

すると氷室が気分を切り替えてやってくる。
一ノ瀬に対して、カサブランカ、コンカドール、イザベラ
を大量に仕入れるよう命じる。こんな時にも生け花に興じる
彼に伊丹たちは呆れるが・・

■事件

フラワーアーティストとして活動する氷室聖矢のフィアンセ
である内田絵里奈が彼の職場である”Florist Atelier氷室”内
で殺害され発見される。凶器は草の蔓で首を絞められたもの。
氷室を調べていく内に、3年前にも彼の婚約者の深川日菜子が
失踪していることが分かる。

■感想

ドラマは冒頭からミスリードを誘うような怪しげな会合が
あると共に芸術界にもパワハラ的なものがあってそれが
事件のメインになるのかなと思わせる流れ。

何かを失っている人、病んでいる人は別の角度から物事を
捉えたり、人とは違う景色が見えたりするものなのか分から
ないけれど、失っているものを補う代わりに別の才能を与えら
れることがある気がする。

厳しい環境に置かれるほどに果実や野菜などの中にうま味が
出ることがあるけれど、今回はそんな所に身を置かれた芸術家
の才能とその原動力というものを見た気がする。

才能の開花は同時に別の人の嫉妬心を煽り、知らないところで
恨の種を育てている。

才能によって代わりに埋もれてしまう芸術家の存在が抽出され、
それに該当する人物が殺害したのではないかという視線を
もってドラマを見守ることになる。

興味深いものとしては、才能の引き出しというのは、ニトロ
のようなカンフル剤が無いと生まれないこともあるのかどうか。
厳しいことを押し付けてまで意図して辛い状況を作ったとして
もそれが才能とか新しいイマジュネーションにつながるのか
どうか。
芸術としての才能は生まれもったセンスに通じるものがあると
思うのだけど途中で開花したりもするのだろうか。

また主人公は別のテーマで芸術を描こうとし始める。
すると今まで抱いていたその才能は全く意味を成さないもの
に繋がってはいかないのか。
彼の才能はこれまで不幸によって刺激を受けてきた。
幸せはこのアーティストには不要なもので、不幸こそその才能
を引き出す役割を果たして来た彼は今後のテーマを
「心地よさ。日常を彩るアート」
にしている。それでも才能を発揮できるのかは誰にも分からな
い。

気になるのはその才能を欲しているのが、彼の才能に可能性
を見出した人物なのか、それとも本人なのか、その辺は意外と
解釈次第で変わってくるところだ。

■事件の概要、そして容疑者

被害者は氷室のフィアンセの内田絵里奈。

殺害方法は草の蔓を首に巻いて窒息死させた。
死亡推定時刻は発見された前日の午後21時から23時の間。

前提として3年前に氷室のフィアンセの栗原玲子が失踪して
いる。

・氷室聖矢

第一発見者で上述したように2人の女性を失っている人物。

可能性として浮上するのは連続殺人事件で、この二人を知る
共通人物に加えて二人の行動を把握していて、何よりも第一
発見者である。
一人目の失踪の際にはパリで個展が開催されるところだった。
「amour perdu (失われた愛)」
また彼が容疑者になる要因として、被害者は夜のアトリエに
来ていることから親しい相手とみるのが妥当だとされる。

・尾崎孝月

七代目の生け花の家元で現在は芸術大の教授。

冒頭で「潰せ」と語っていたが、主語は氷室で目的は彼の
存在・才能である。絵里奈を返せと彼の元に乗り込んだ
氷室。
氷室の個展に対しての評論として、

「作品は悪趣味で独善的、芸術を装った自己満足に過ぎない」

と批評していて論理的考察家の普段の彼とは違うと疑われる。

・一之瀬春臣

色々と氷室のパートナーとして芸術のサポートをしていた。
しかし調べていく内に赤坂時代のことが掘り出され、
料亭での飾り花を担当していたことがあるも、その仕事を
氷室によって奪われたことがある。
更に彼は名簿から有明流の会員だということが判明する。

■いくつかの疑問

・一枚の画像

氷室と一人目の恋人の栗原が会話しているシーンに於いて
不自然な態勢を取っていると疑われる。
指は「フィンガークロス」と呼ばれる十字架を表すジェスチ
ャー。欧米ではポピュラーなもの。彼女は外国暮らしの経験
があり帰国子女だった。

クラブ・バイリンGALに出演していた

・不自然な入出金

二人が婚約した時期に300万円が二度入金されている。
誰が入金し、誰が出金しているのか。

・有明流の特徴

「精神性を大事にする。小手先のテクニックを良しとしない。
大切なのは紋切り型の技術じゃない。心だ。花と共鳴する
瑞々しい感性。」

それを保つ為に・・

■Q.E.D

三国志でのエピソードだったか。
敵対する相手に勝利した側は、負けた方を無条件に逃がす。
逃がされた相手は屈辱を糧に再度戦いを挑むが、それでも負け
てしまう。何度もそれを繰り返している内に、自分が勝てる
ような相手ではなく、むしろ自分を罰し・殺して欲しいと願う
ようになる。
しかしそれでも勝利者は広い心で相手を許し、負けた方は
相手の偉大さを感じて、一生その人物に忠誠を誓うようになる。
漫画「傷追い人」でも主人公・バラキが使った戦法だった。

このドラマに於いて氷室という相手にそれを使っているのは
一之瀬だった。

「完成されたものを破壊し新しい世界を再構築する。」
「花から本来の命を奪うことで芸術としての新たな命を吹き
込む。美しく育てる為に痛みつけることもある。」
「切り口を焼いて力づくで水を吸わせる」

今回のエピソードは少々回りくどい展開でシナリオとしても
凝りすぎて逆にマイナスに映る。

一之瀬が師範の尾崎が犯罪を犯していることを利用し
金を脅し取る。その金を仮想通貨に手を出して借金を作った
深川日菜子/栗原玲子に渡して美人局のような格好で氷室を
その気にさせて精神を破壊しようとした。
その一方で彼は生涯をかけて才能を引き出し一凛の花を
咲かせようとした。

二人目の内田絵里奈は金よりも愛が勝り、一之瀬の指示を無視
した。

「ディアボロス」はギリシャ語で悪魔の意味。
天使と悪魔は心の中に常に同居している。

誰にも他人の心というのは分からないものだね。

犯罪解決への道しるべとして残されたのは花粉だった。

■出演者

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (警視庁捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (警視庁組織犯罪対策五課)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (警視庁組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視庁警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視庁警視正・参事官)
青木年男 …… 浅利陽介 (警視庁サイバーセキュリティー)
益子桑栄 …… 田中隆三 (警視庁鑑識課員)
小出茉梨 …… 森口瑤子 (家庭料理店”こてまり”の女将)
出雲麗音 …… 篠原ゆき子 (警視庁 交通機動隊から捜査一課)

氷室聖矢 …… 渡部豪太 (フラワーアーティスト)
一之瀬春臣 …… 冨田佳輔 (生花仲卸業者「白金フラワー」社員)
尾崎孝月 …… 栗田芳宏 (「いけばな有明流」家元・美術評論家)
内田絵里奈 …… 小池唯 (氷室の婚約者)
深川日菜子 …… 新実芹菜 (氷室の最初の婚約者・偽名「栗原玲子」)
尾崎敏子 …… 小宮久美子 (尾崎の妻)
竹内むつみ …… 松宮なつ (「Florist Atelier氷室」スタッフ)

高橋光宏、加門良、河野紗千

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