6人の女 ワケアリなわたしたち
(Les Randonneuses) 2022 , FRANCE
脚本/Xavier Daugreilh / グザヴィエ・ドグレイユ
Camille Pouzol / カミーユ・プゾル
Sylvie Audcoeur / シルヴィ・オドクール
Anna Fregonese (HEAD) / アンナ・フルゴネース
演出/Frédéric Berthe / フレデリック・ベルトゥ
制作/Habanita Federation
第3話 パティ Patty
【STORY】
・前回より・・
ノエミが崖から事故を装い飛び降りようとしている所
を説得して助けようとしたトムだが、二人共崖から転落
してしまう。パブロを含めた全員が崖下を覗き込み
声をかけて反応があるかを確かめる。
パブロはパティに一緒に下に降りるよう求める。
「医者に一緒に来てもらいたい」
カレンは動かないので既に死んでいることを告げるが
ヴァレリーはそれを否定する。パブロは枝がうまく
クッションになり助かっている可能性を示唆するが
カレンは助かったとしても寝たきりになるとネガティブ
発言をする。
二人はロープをつたって降りていく。
早速パティは二人の脈を調べると生きていることが分かる。
消毒をしたら上に引き上げるというパティ。
■山小屋
トムもノエミも意識を取り戻していた。
パティはトムの手当をする。
「全身打撲傷祭り」だけど骨は何処も折れてはいない。
痛み止めをあげるが大人しくしていれば寝る前には
もう少し効くものをあげると二人に告げる。
「2人とも奇跡の人ね」
・当然の疑問
「何故二人は谷底に落ちたのか」(モーガン)
「地滑りが有った」(トム)
「二人居たのでその分重くてバランスが乱れたのでは
ないか」(ヴァレリー)
モーガンはそれを聞くとより疑問が深まる。
しかしノエミは”事故ではなかった”と自ら告白する。
・登山は続ける?
パティには幸いにして二人共軽症であることを語る。
パブロはこのまま登山を続けて脳震盪や脳出血がおきた
らどうするのかを問う。意識はハッキリしているし、
引き上げてから2時間経つから何かあれば症状が出ている
ハズ。病院であってもそれは断言は出来ないことで
見落としの可能性はいつでもあるが大丈夫だと思うと
語るパティ。パブロは自分にはリスクは負えないので
救助の電話する事を語る。
・ノエミの事情
サラはノエミに対して行動を起こす前に相談して欲しい
とし、知恵を絞ればなんとかなったかも知れない事を語る。
しかしノエミは話しても息子の学費を払える訳はない
というと、カレンがノエミに噛みつく。
「だからこう思ったのか?みんなで登山している時に
やっちゃえ。エヴと一緒に眠れてちょうど良い」
その発言にノエミは確かにエヴと一緒も良かったが
私はただ独りで死ねれば良かったのだという。
しかし登山は独りで行うものではない。
二人が感情的になりすぎる前にサラは今はノエミのこと
を責めても仕方がないことを語る。ヴァレリーもまた
「今日人生はあなたに素晴らしいサインを送った」という。
しかしノエミは私の人生がくれたものは、。
「冴えない運命」
「借金」
「ガレージ」
「胸のしこり」
くらいだという。
ヴァレリーは友達は絶対に見捨てないことを語る。
そこにパティがノエミらの元に来るとパヴロが救助ヘリ
を呼んだとし、検査を受けさせると言っていること
を語る。二人無しでは登山は出来ないので下山するとの
こと。
しかしカレンはそれに異議を唱える。
ここまで来て頂上に立てなかったら意味がいこと。
「パヴロが8人を連れて登山を続けることは出来ないのか」
しかしそれは出来ないとし保険が効かないからだという。
トムは歩けるのか?と尋ねるとパティはそう簡単じゃない
ことを語る。ノエミは病院に逆戻りするのは嫌だとし
それならずっとあの谷底に居たかったと言う。
こうなったら何が何でも登らないか?
目指すゴールまではあと少しだというノエミ。
するとカレンはその言葉に反応し、
「あんたのゴールは山頂なのか、谷底なのか」
と皮肉る。そのぴりぴりした雰囲気を和らげようとする
が、カレンは馬鹿をやって登山をぶち壊す方が悪い
という。
・出発は可能なのか?
パヴロはパティに対して医者同士で話したいと救助隊の
人が言っていると語る。
「本来すぐに迎えに来る事案だ」
「しかしあなたは救急医である」
「ご自身の医療判断に責任を負う覚悟はありますか?」
そのように医師から言われたパティはグリムボー医師
(Benjamin Boyer) とのやりとりを思い出す。
【感想】
少し前のエピソードになりますが、クラウド内に
アップせずに残っていたのでアップします。
崖から墜落して登山を継続するという行為自体、流石に
有りえないことになってしまった。
落下したとしても草とか枝がクッションになって怪我
が最小限に抑えられたとしても、それでもこのケースには
該当しないような気がしないでもない。
ドラマを見ていて感情的に難しくさせるのは、あまり
好きなキャラクターが居ないところもある。
ドラマの中では自分の要求ばかりで相手のことを考えて
いる人が居ないのは致命的だ。
「運命共同体」で有るならば互いに譲り合いの精神では
ないものなのか。
例えばノエミの場合、団体行動が必須の状況に置かれる
事が分かって、敢えて自分の問題の解決ばかりを優先
させる行動に出る。
ノエミのした事は全員を危険にさらす行為だし、そも
そもそれを防ごうとした山岳ガイドのトムを傷つけた。
その後にトムとノエミの間に何かが生まれようとして
いたとしても前提として嫌悪感が残る。そもそもノエミ
の場合はまだガンの再発だという結果は出ていない。
そして彼女に激しく反応しているのはエヴの妹のカレン。
亡くなったものを神聖化したいのは分かるしそれを守る
ために厳しい言葉を投げかける。ただし彼女はガンの
苦しみを知らない。更に彼女はエヴとがん患者の仲間と
のことをどれだけ理解していているというのか?
山頂での散骨は目標なのかも知れない。
姉が望んでいたならば叶えたいと思うだろう。
しかし本当にそれが彼女が求めていたものなのかという
事は過去の回想シーンの中では一度も描かれていない。
そして今回は回想シーンでの登場だが、エヴも自分勝手
な行動を取る一人である。
カレンではなくパティに延命拒否の申請書にサインを
するように求める。その中にはがん患者同士という以上
の愛情が有ったようだが、血縁関係がある家族に何も
言わずに、愛するパティにばかりに重責を負わせる
格好となった。
■がん患者が抱える問題の一つ
どの国でもそうだけど、がんになれば仕事から離れて
時には辞める選択をしなければならない。
前回のノエミも弁護士としての仕事が出来なくなり
辞めざるを得なくなったことで生活が成り立たなくなる。
「借金とガレージが残ったくらい」というノエミの
セリフがすべてを物語る。
今回の主人公はパティだ。
彼女の場合、仕事は医者だが上司のグリムボー医師から
は長期の休暇を勧められた。病気の宣告に続き、連続して
自分の人生から奪われたもので、その後は最後になって
発覚するエヴとの特別な愛情も奪われてしまう。
ただパティはまだ医師としてのスキルを持つので
随所でそのスキルが活用され、人の役に立つ充足感は
得られる。特にはエヴの娘ヴィオレットの陣痛を
遠隔地から助ける流れがあり、それが今回の対立的
関係を和らげる役目を果たす。
●死と誕生
エヴの流れは自らの死と共に自分の娘が妊娠して新たな
子供の誕生の流れが対として存在している。
パティとの出会いの際に、彼女が抗がん剤治療によって
髪の毛を失う際に、語ったセリフ。
「私はレストランをしている。出産を控えた娘と
シャム猫が宝物」
エヴは性的には同性を愛しているのかと思っていたが
娘がいるという事はどういうことだろうか。
その娘が登山している間に出産しようとしている。
パティはエヴの延命措置の件とは逆に、遠隔地から
妊婦であるエヴの娘のヴィオレットに的確な指示を
与える。まだ妊娠後期の前駆陣痛だった。
しかし上述したようにヴィオレットが産もうとして
いる場所はエヴが死んだ病院と同じ医師によるもの。
その流れから延命措置に関する流れが発覚していく。
第三者的な判断をする材料として問題を難しくさせて
いるのが延命措置をすることによってもしかすれば
娘の出産、孫を見られたかも知れないということだ。
■男性キャラクターのつまらなさ
ジョナタンとジュリアン。
トムとパヴロ。
男女関係で人生が狂ったり、また登山を通して新たな
可能性についても言及されている。
ただジョナタンの失恋で奇妙な行動に出る姿はたとえ
共感出来たとしても野暮ったく感じる。
何度も同じことを口にしている。
それだけ愛していたということを示すものだが、共感
出来たのは最初の一分くらいでその後はずっとつまら
ない。
■主人公パティの回想シーン構成
1) 決断
崖から落下したノエミの事で救命隊との会話シーン。
パティから見て彼女は搬送するべきなのかの「決断」
が求められている。そこが回想シーンの入口。
グリムボー医師との会話。
彼はなにかの決断をパティに求めている。
蘇生チームを呼ぶかどうか。
直接会いにいって決めたらどうか。
2) 出会い
カレンから遺灰の入った遺骨を渡されるシーンから
突入する回想シーン。
パティがエヴと出会う。
パティは抗がん剤治療を始めたことによって髪の毛が
抜け始めてショックを受けている。
先にそれを経験しているエヴから色々とアドバイスを
受けることになる。
エヴはこの時三度目の抗がん剤治療だと言っていた。
また二人は病院内の洗面所で知り合うが、互いに病院
のコーヒーの不味さもまた共に知っている。
3) 胃潰瘍
精神的ストレスによって発病するし、普通に生活して
いても胃潰瘍にはなる。
カレンとジョナタンとの会話の中で胃潰瘍についての
話になり。ジョナタンは心因性、そして回想シーンの
中に出てくるニヴェール(Vincent Nemeth)は胃潰瘍の
検査で来る。
「ここは救命救急です。病気不安症の人のたまり場で
はありません。みんな重症の患者」
因みにこの時点でイヴは亡くなっている。
4) トゲのある茂み
なぜトゲのある茂みの所で回想シーンが挿入されたの
だろうか。大抵のフラッシュバックは何かのキーワード
と連動している。しかし一度現実に戻った後にその
仕組みが分かる。パティがエヴにプレゼントしたスカーフ
を使うシーンがその引き金となっている。
過去のパティは明るい服を購入する。
個性的であり個人的には相当目立つ。
元々パティは開放的な性格だったのか。
エヴにも肩が出ているような服を着せようとする。
5) 蘇生措置 / 医療代理人
エヴの延命措置の拒否をパティが行っていたことを
知ったカレンが彼女を殴る。そこが回想シーンへの
入口だ。
エヴは旦那にもカレンにも娘にも頼めないことを語る。
『我らは運命共同体、黙って署名して』
しかしパティは今でもその決断が良かったのかどうか
で悩んでいる。
『おもすぎる十字架』
そして最後の晩、新しい抗癌剤を使うがエヴには
合わなかった。逆にパティはうまくいった。
パティが治療に成功したことを話そうとした事とは
対照的だった。
■その他
●コズミック・ツインズ
宇宙の双子って意味。
トムがノエミに。一緒に死を乗り越えた事で絆が生まれ
たとして二人はコズミック・ツインズであることを
語る。
登山中に余裕がある時には二人は会話する。
●サラ
相変わらず車で轢いて病院に運ばれた旦那と電話での
会話が続く。
「決心は変わっていない。お互い時間が必要」
興味深いのはこの流れにカレンが関わってくる。
カレンはこのエピソードの中では腫れ物のように扱われ
る。言葉がとにかく厳しい。
サラと夫の関係がぎくしゃくしていることを知って
互いに許し合うことの必要性を語る。
驚くのはサラはまだ夫を愛しているのだということ。
気持ちが有っても無理。
自分の身体が自分ではないみたいで鏡を直視できずに
いる。
●熊出没情報
トムによると出くわした際の対処法
1) 走らない。熊のほうが早いから。
2) 木に登らない。熊のほうが木登りが上手いから
3) 湖や川には飛び込まない。熊のほうが泳ぎが上手いから。
●恋愛関係
・ノエミとトムはいい感じの雰囲気が漂っていた。
ただノエミの言葉は痛いほど相手に突き刺さる。
「がんになるのは戦争なの。毎日が戦い。愛にかかずら
っては居られない。そんな余裕はない」
「どの道私は女ではなく戦士」
「君は女だ」
・サラとジュリアン
いい感じの関係で特にジュリアンからサラへの
好意は伝わってくる。こういう時自身を失っているもの
はなかなか男女関係でも踏み出せないよね。
年上だし、ガンだし、旦那が居る。
・エヴとパティ
カレンはエヴを死なせたのがパティだと考えている。
最後に互いに言いたいことを語る。
「あなたがこの役目を引き受けたかったか?」
「エヴから死なせてと懇願されるの」
「世界一好きな人を死なきゃいけない気持ちが分かる?」
二人は愛し合っていたのか。
エヴの家庭は同性愛を隠す世間的なカモフラージュの
元で出来たものだったのか。
「真実を隠す」ということは最後に来てハッキリと
今回のテーマであることが分かる作りとなっている。
【SOUNDTRACKS】
・Heart of Glass (Re-Recording 2021 version)
・City
・Get Up And Funk
【出演】
サラ・ペレズ・ルビーノ (Alix Poisson) 大学教授、マルクの妻
ノエミ・ルフォール (Clémentine Célarié) 企業弁護士
パティ・デサム (Camille Chamoux) 救急医、レズビアン
カレン (Joséphine de Meaux) 花屋、エヴの妹
モルガン (Tiphaine Daviot) 警察官
ヴァレリー (Claire Borotra) インド帰り
エヴ・ドラットル (Elsa Lunghini) カレンの姉
トム (Lucien Jean-Baptiste) 山岳ガイド
ジュリアン (Maxence Danet-Fauvel) ジャナタンの従兄弟
ジョナタン (Baptiste Lecaplain) 失恋
パヴロ (Gérémy Crédeville) 山岳ガイド・エベレスト
マルク・ペレズ・ルビーノ (Bruno Wolkowitch) ルソー研究所
ジュリー (Anna Stanic) サラとマルクの娘
アダン (Oscar Berthe) ノエミの息子、大学生
ヴィオレット (Rebecca Benhamour) エヴの娘、妊婦
Dr.グリムボー (Benjamin Boyer) パティの元上司・医師
Mr.ニヴェール (Vincent Nemeth) 病院で検査待ちの患者
(Laure Sagols) 衣料品店の販売員
ローズ () ヴィオレットの子供