6人の女 ワケアリなわたしたち
(Les Randonneuses) 2022 , FRANCE
脚本/Hélène Le Gal / エレーヌ・ル・ガル
Mélanie Rode / メラニー・ロード
Sylvie Audcoeur / シルヴィ・オドクール
Anna Fregonese (HEAD) / アンナ・フルゴネース
演出/Frédéric Berthe / フレデリック・ベルトゥ
制作/Habanita Federation
第2話 ノエミ Noémie
【STORY】
○回想シーン
・病院
看護師 (Elodie Godart) はノエミに対して体調を
尋ねる。「薬を変更してから何か不調があるか?」
ノエミは何の問題もなくこの新しい薬が今持てる
力を最大限発揮してくれるかと思うとワクワクして
いることを語る。
しかし彼女の左手が震える。
息子のアダン(Oscar Berthe)からどうしてなのかと
して責められると彼女はただただ許して欲しいこと
を語る。
ノエミは夢から目覚める。
■朝の山荘
登山中のノエミは外の景色を眺める。
近くにいたヴァレリーに対してその光景を見て絵葉書
みたいだと語ると彼女も同感だと語る。
しかしノエミはそれも度が過ぎるとムカムカすると
いう。ヴァレリーは彼女に検査結果が出たのか尋ねる。
乳がんで治療した後、今度はしこりが出来ていた。
ノエミはこれはガンの再発以外にはないと語る。
そんな彼女にヴァレリーも怖ければ怖がれば良いの
だと告げる。しかしノエミは語る。
「怖いのは未知のもので、ガンはもう知っているから
怖くはない」
・パティとサラ
ショックで失った記憶は一生戻らないこともあれば
何年かして戻ることもある。それを気にしてもしょう
がない。サラは今の気持ちを上手く言えないが胸騒ぎ
がすることを語る。
「突然夫が思い出してジュリーに(車で轢かれた事実
を)言ったらどうすれば良いのか」
しかしパティは二重生活は旦那の方であなたが心配
することがあるのか?弱気は駄目だと語る。
サラは夫を轢いたことは不倫よりもずっと深刻であり
明日には帰らないといけないことを口にする。
パティは帰りたいから帰るのか、それとも義務感
からなのか。自分がどうしたいのかが一番大事であり
旦那は良くなるので信じて欲しいと語る。
「一度くらい自分の事を第一に考えたらどうか?
それは最高だと思うよ」
・食堂
ノエミはトムが机で何かをしているのを見て声を
かける。トムは今日の登山ルートを考えていること
を告げ、2つの選択肢があるので困っていることを
語る。
1)のルートは近くなるが道が険しく途中で切り立った
崖の上を歩く必要がある
2)のルートは勾配がきつくてちょっと遠回りになる。
「1)はそんなに危険なのか?」
「滅茶苦茶危険だ。落ちても崖の下は死体でゴロ
ゴロしているので跳ね返るだろうけどな」
「真面目な話、友達にはどっちが合っていると思うか?」
「崖ルートよ、近いのでしょ」
5分後に出発するから集合してくれ。
○回想シーン
ノエミは銀行員(Zazou de Crécy)から借り入れ額が
大きすぎるとし、支援を頼める人はいないのかと問わ
れる。生活保護だけに頼っていらっしゃる状況なので
これ以上お子様の教育資金をお貸しは出来ないという
行員。ノエミはそれに反論する。
「4年前にそちらの勧めで総合保険に入ったのだ」
「もし私が死んだら息子に保険金が下りるハズ」
「6万4千ユーロ」
「支払いの対象は事故死のみであり病死は違います」
「今の私に役立つ保険を紹介して」
「病気を保証の保険に入るには健康診断が必要。
免責期間もある。加入時にかかっている病気は
対象外」
「病気になった時の保険が欲しければ実際に病気に
なってはいけないということなのか?」
「保険の加入条件を審査するのは私ではないです」
「要するに私が保険金で6万ユーロを残したければ
ここから飛び出して車に轢かれれば良いというのか?」
「そういう事です」
「バカにしているのか?」
「力になりたいのはやまやまですが・・」
・ジュリアンとサラ
彼はサラに声を掛ける。
「マルクとはどういう関係なのか?」
しかしサラは今はその話はしたくないという。
ジョナタンはスマホで元カノのリュシーにメッセージ
を送ろうとしていた。
それを目にしたジュリアンは彼に言う。
「忘れる為に来たのだろう。それだけは忘れるな」
しかしジョナタンは彼女にメッセージを送信してしま
う。
■いよよい出発
出発前にトムは6人に話す。
今日のルートがかなり厳しく昨日とは比べ物には
ならないこと。更に予報では雨がある。
レインウェアはリュックの上の方に入れて置く事。
カレンは骨壺が入らないと嘆く。
更に体中が痛くて全身が筋肉痛。顎まで痛くて
話をするだけでズキズキするという。
モルガンはそれなら黙っていれば良いという。
ノエミのリュックに入れたらどうか?とすると、
彼女は喜んで入れてと語る。
ノエミは一人先頭を歩いていく。
現在は険しくはないがあの岩壁の向こうはちょっと
した難所が待っている。
ノエミがどんどん先に進んでしまうので止めよう
と声をかける。
彼女はガッツが有り抗がん剤にも負けないというサラ。
トムはもう治っているのだろう?と尋ねると、パティ
はがんの場合は”治るは無い”と語る。
サラはそれに反論し、”有るわよ”と語る。
しかしトムは治るかどうかはともかく治療は終わる
だろうと語る。いい形で終わるとは限らないと
いうパティ。自虐ギャクは辞めてねとサラ。
笑うのが一番の治療なのよとパティ。
ノエミは一人崖の上に経っていた。
○回想シーン
ノエミは予約している病院にいく。
そこでエヴ(Elsa Lunghini)との出会いがある。
ノエミは抗がん剤治療の初日。体調はどうか?と
声を掛けるエヴ。ノエミは元気であるとし、辛いのは
抗がん剤と仕事のスケジューリングくらい。
がん患者としてはマシな方で一番の問題は顧客サー
ビスだろうと語る。エヴは彼女が仕事を続けている
ことに驚くが、弁護士だから働かないと収入がない
と語る。
【感想】
登山開始から2日目。
本日はノエミが登山に至るまでに起きた内情が
何かが描かれる。
彼女が弁護士であることは初回にも触れられていた
し、彼女の言葉の語気の強さは目立っていた事も
有って、精神的な強さと社会への不満らしきものを
感じていた。それが弁護士からくるものなのか、
社会のあらゆるものに対して反発心を抱いたものなのか
分からなかった。
ただ想像出来る部分も有る。
がんのような病を患うものが抱える問題の中には
資金面・生活面で問題を生じることが有り、仕事を
含めて人間関係はがらりと変わることがある。
そして今まで当然のようにして有ったものが失うこと
になり、より健康だった時には見えなかった光景を
目にすることになる。
そもそもの疑問として山登りの目的が本当にエヴの
散骨にあるのか。みんなの意見が一致しての行動・
行為なのかはよく分からない。
がんを患い治療で戦った体で登山にチャレンジしよう
と考えるだろうか?これがもし登山仲間だったというの
であればある程度合点がいくこともあるが、現実から
離れて見るには少々厳しいもののように思う。
一話でのサラもそうだったけれど、言いたいことを
吐き出したいが、私生活上の問題はなかなか他人に
言い出すことが出来ずに居る。
ガンと闘う同士と言える人物たちにも言えない事
が有り、なかなか自分の心のウチを明かせないでいる。
一話ずつそれぞれが抱える問題が語られていくと
しても、登山することによって何か変わるものが
あるのかどうかは分からない。意識の変化が私生活
において必ずしも役に立つとは限らないところが
辛い。
そして物語の最後は標高2000mまで登頂してきたこと。
先に行くも後に戻るもだいぶ辛い。
ドラマの主張は女性目線のものが多く、全て男性側
が悪いと聞こえるところもあるが、今回のエピソード
を見ると結局どっちもどっちというところに落ち着く
のではないかと思うところもある。
ノエミは事故死を装う死ぬことについて、他人のこと
を考えたか?
ビルからの飛び降りでは落下した先には巻き込みで
歩いている人が死ぬこともあるが、ここでは今回の
ラストでトムを巻き込んでしまった可能性がある。
またモーガンのエピソードを見ても、彼女は自分
一人の考えで一つの命を犠牲にしようとしている。
マルクの問題にしても本当に彼は女性と子供と会って
いるが、彼の二股相手なのかも分かっていない。
アダンは母親の辛さを理解していない。
彼は「留学よりも母親の方が大事」だと思っては
いないのか。
もしも事故ではなく自死だとシたら保険金は当然
出ないし、登山仲間に秘密を抱えさせることになる。
人は意外と自分のことしか考えていないんだよね。
ただ「私がここでガンを殺す」と言ったセリフは
少し刺さる言葉だったかな。
・そういえば・・
今回のエピソードは全体的に見て「クソっ」と
セリフで吐き捨てるシーンが多いよね。
英語なら「シッと!」ってなるのかな。
フランス語でこの文字を検索してみると
「Bon sang」ってある。
■ノエミの私生活
彼女を見ていれば誰もが思うが、死に場所を探して
いるようにしか見えない。
そんな彼女の回想シーンを通して彼女の私生活が
徐々に剥がされていき、何故死のうとしるのか分か
る寸法だ。
仕事の面では一見するとバリバリのキャリアウーマン
に思えたが、ガンの事実は彼女からそれを奪うこと
に繋がる。がん治療をして仕事をすれば誰だってミス
することは多くなるだろう。弁護士ともなれば
一つのミスが顧客へ大きな不利益に繋がることも
ある。唯一の大型の顧客だった会社からも見放されて
しまうのは時間の問題だったのかも知れない。
そして何よりも銀行員/保険会社の存在だ。
行員も保険員も自分の仕事をしているのだろうが、
意外とエグさはある。立場が変わればなんとやらで
あるが弁護士も十分にエグい一面があることも否定
出来ない。
彼女はがん治療の為に金の工面に困っている。
自分の生活・治療費だけでなく、息子がオーストラリア
に留学しているから。。
弁護士だった頃にはその資金も有ったのだろうか?
場当たり的に月々の生活費を送っていたのか。
息子に心配かけまいとして、抗がん剤治療で抜けた
髪の毛を覆うためのウィッグでさえも盗んで
しまう。
●保険は前もって入れ
学資保険にしても治療費にしてもいざその時になって
保険に入れるとは思えない。
そういうのは働き始めてから給料をもらうと共に
少しずつ地道に支払っていくものではないのか。
最近はがん治療をしたもので有っても、80歳を過ぎた
人物だとしても保険に加入出来るものもあるが、
結局掛け金は高いし、どれだけ支えになるかは
分からない。条件的にはかなり厳しい筈だ。
驚くべきことにナオミは仕事を失い、そして家も
失いガレージで暮らしている。
息子のアダンはクリスマスに帰るとするが、ナオミは
忙しいとしてその申し出を断ってしまった。
ただ大学生なら親の窮地を知れば自分で支払うこと
を考えるべき年齢じゃないだろうか。
●繰り返される自殺とその防止
ノエミの恐ろしいところは登山ルートを決める際に
仲間と相談せずに厳しいルートを選んだことだ。
トムから相談を受けて、彼女は危険なルートを選んだ。
全ては自分の為としか思えない。
ノエミは何度か死を意識するようにして崖の上に
立ったり、橋の上に立ったりシている。
そして彼女は単独で道を進んでしまう。
その都度電話が鳴ったり、仲間が声をかけて防止する
ことになる。
■その他のメンバーの動向
●モルガン
今回はどの人物も興味深い流れがある。
モルガンもその一人。
彼女はパティとの絡みが多かったが、パティは医者だ、
モルガンに起きていることの一つを現在の体調を見て
確信していた。
「モルガンは妊娠している」
はじめは認めなかった彼女も二度目の突っ込みに
よってそれを認めた。
彼女はあと二週間で産むかどうかの決断をしなければ
ならないこと。父親となる人物には話していないが
子供を欲しがっていたとのこと。
それでも出産に否定的なのは、
・母親になりたいかどうかが自分でも分かっていない
・堕ろしたら二度と産めなくなるかもしれない
・産んだら責任を放棄するかも知れない酷い母になる
かもしれない
全部自分一人で決めようとしていて男性側には
まるで決定権はない。
※日本では母体保護法により22週までは人工妊娠中絶
が認められているそうだが、妊娠初期の頃は流産に
なる可能性が高い。どのくらいまでが初期に当たる
のか分からないが、妊娠させた相手との話し合いも
せず、しかもその状態で登山など厳しい環境に身を
置く所は少々理解しがたい。
●ジョナタン
なかなかジュリーとは熱愛だったのだろうか。
ジョナタンの悲しみは癒えることはなく、寧ろ山に
来たことで不安になる。自分が居ない間に新しい
彼氏を作ったのではないか・・と。
実際下の世界に戻れば彼はストーカーになったり
しないか?
パヴロはそんな彼の行動を見て、下山するように
誘導していた。ジュリアンはとどまることを望んで
いたのにパヴロの言い方が面白かった。
●サラ
サラに興味を持つのはジュリアンという男性。
サラに興味があるのか、それともマルクに興味が
あるのかはわからないけど、彼の研究や言葉に
興味を持っている様子。
サラとマルクの関係はサラの主張によれば、元々
彼に影響を与えたのは彼女の方で、
『ルソーと女性』というテーマで修士論文を書いた
という。
更に彼女は『ルソーと時間』『孤独な散歩者の夢想』
に関する考察は全部サラが調べて書いたもの。
共著としなかったところにサラの落ち度がある。
電話でその事にも言及していた。
サラは病院に電話するとマルクの無事は確認出来た。
それどころか最後ハサプライズ的に彼は事故に於いて
サラが自分が轢いたことも覚えている。
マルクは自分の保険証が何処にあるのか分からない。
典型的な亭主関白。そして妻は夫の功績の為に
一歩退いている。
サラは夫に対して不満を述べる。
「あなたをパパって呼ぶ女の個の話はないのか?」
「僕を轢いただろ」
ただマルクの場合、自分が何故妻の車に轢かれたの
かを聞かれた場合、不倫のことは少なくとも娘に
知られることになる。そして別に家庭を持っている
ということも・・
そして案の定、彼からのメッセでは
「今はジュリーには言わないでくれ」
「二人共バカをしたけど乗り越えられる」
■山イベントの一つ
・雷雨
山の天気は変わりやすい。
ただこの雷雨は出発前から予想されていたものだ。
素人の登山者が好き勝手いる為にガイドのトムも
危険にさせされた。
・ロープウェイ
なかなか稼働せず。そもそも人が居なさそうで怖い。
・山小屋にて
酒を飲んで踊りを踊る。
■終盤
■その他
●こころの家族はインドに居る
これはヴァレリーのセリフ。ヴァレリーは未婚なの
かな?
・自然のチカラ
巨木を目にしたヴァレリーは真っ先に”ツリーハグ”
と称して抱きついた。
「こうすると元気が出る。エネルギーがチャージされ
る感じ」
カレンもそれに同調して、
「直感で自分の木を見つける」
・ジャン・ジャック・ルソーの言葉
「教育において最も偉大で重要で有効な指針は、
時間は節約するより無駄にしろ」
・ノエミの言葉
『「分かる」って人ほど何も分かっていない。
「君とは違う」って言いながら結局同じ立場で語ろう
とする』
【SOUNDTRACKS】
・Get A Move on
・Tonight WE Dance
・I Want Your Love
・Baby Tell Me Why
・Star Of The Dancefloor
・Daydream (Wallace Collection)
・Frence Touch
・Colorful Life
・Fation Day
【出演】
サラ・ペレズ・ルビーノ (Alix Poisson) 大学教授、マルクの妻
ノエミ・ルフォール (Clémentine Célarié) 企業弁護士
パティ (Camille Chamoux) 救急医、レズビアン
カレン (Joséphine de Meaux) 花屋、エヴの妹
モルガン (Tiphaine Daviot) 警察官
ヴァレリー (Claire Borotra) インド帰り
エヴ (Elsa Lunghini) カレンの姉
トム (Lucien Jean-Baptiste) 山岳ガイド
ジュリアン (Maxence Danet-Fauvel) ジャナタンの従兄弟
ジョナタン (Baptiste Lecaplain) 失恋
パヴロ (Gérémy Crédeville) 山岳ガイド・エベレスト
マルク・ペレズ・ルビーノ (Bruno Wolkowitch) ルソー研究所
イドニス (Mhamed Arezki) モルガンの??
ジュリー (Anna Stanic) サラとマルクの娘
アダン (Oscar Berthe) ノエミの息子、大学生
(Marie Cuter) ウィッグ販売者
(Elodie Godart) 化学療法看護師
(Zazou de Crécy) ノエミの銀行員
エドゥアール・レイナー (Jacques Bondoux) ノエミの顧客