6人の女 ワケアリなわたしたち
(Les Randonneuses) 2022 , FRANCE
脚本/
シルヴィ・オドクール Sylvie Audcoeur
アンナ・フルゴネーズ Anna Fregonese
監督/Corinne Bergas
演出/フレデリック・ベルトゥ (Frédéric Berthe1)
プロデュース/Fanny Riedberger
音楽/Maxime Lebidois
制作/Habanita Federation
https://www.nhk.jp/g/blog/u9yq7znhp2/
第1話 サラ Sara
【STORY】
■夫の尾行
サラ(Alix Poisson)は急いで車を走らせると
男性(夫のマルク(Bruno Wolkowitch))を轢いてしまう。
パニクっている彼女は彼を救助することもなく
車を走らせると、みんなが待つ駅へ向かい、駐車場に
車を停める。
車には明らかに人を轢いた痕跡が残っていた。何より
もフロントガラスは割れていたのである。
■パリ・リヨン駅へ Gare de Lyon
旅を約束したメンバー6人がそれぞれ駅に集まって来る。
モルガン(Tiphaine Daviot)はイドニス
(Mhamed Arezki)のバイクに乗せてもらい駅に到着。
パティ(Camille Chamoux)は薄着で駅を歩くと駅員も
客も彼女の姿に振り返る。
ヴァレリー (Claire Borotra)はタクシーで駅まで
やってくる。
ノエミは駅員に聞くと指定席へと乗り込む。
列車の中にはこの計画の発案者であるカレン
(Joséphine de Meaux)の姿が有り、独りずつ彼女
と一緒に旅行(登山)する人たちが集まってくる。
カレンは仲間たちが隣り合って座るように予約して
いたはずが一部バラバラになっていた。そこで
客と直接交渉して移ってもらおうとする。ヴァレリー
は全員は無理だろうとするが、カレンは一緒でない
と駄目だとして必死に交渉する。
サラだけがまだ駅のホームに来ていない。
彼女と最も親しいパティが彼女に電話する。
「そろそろ電車が出るので急いで。13号車ではなく
4号車よ」
ノエミは13号車では縁起が悪いし良かったのかも知れ
ないという。カレンは譲ってくれない男性乗客に
対して『彼女たちはガンなの。優しくして欲しい』
と語る。
パティは荷物を車内の上の棚に載せようとすると
すると薄着の彼女のことを通りかかる男性乗客が
凝視する。そんなパティに対してヴァレリーは
「救急医の出番よ、後ろの人が息が止まりそうだ」と
語る。
列車がいよいよ出発する時、サラは滑り込みで乗車
する。パティは心配していたとして揃ったことを
語る。
■電車で目的地へ向かう
座席を巡りカレンは神経質になっていた。
窓側が良いと言ったかと思えば、進行方向側でない
と駄目だという。
一方参加した中でモルガンはこのメンバーでは
唯一の新顔・新人だった。
このグループはカレンが率いたものだったが、
実際に彼女はみんなのことを知らなかった。
みんなと友達だったのはカレンの姉のエヴ
(Elsa Lunghini)だった。その姉はよく言っていた
ことがある。
『抗がん剤仲間』
エヴとの旅は色々と有ったがこの登山が実現して
良かったという。
しかしサラは元気がなく涙する姿が有った。
みんなは感慨に耽けていると思っていたが、彼女は
夫を車で轢いてきたことを思い出していた。
サラは乳がんの再建手術のことを心配しているのかと
考えたものたち。
ノエミは再建したくなければしなくて良いのではない
かと語る。
■山小屋
その頃山小屋では、登山客を山頂に連れていく
山岳ガイドの二人、パヴロ(Gérémy Crédeville)と
トム(Lucien Jean-Baptiste)が会話する。
今回は2組のパーティ(2人の客と6人の客)が予約して
いるがどちらのガイドをするかをトムに問う。
トムはどちらでも良いという。するとパヴロはそれなら
自分が2人の方を率いる担当するという。
15日後にトレイルランがあるので準備を万全にして
おきたいとの事。
「トレーニングを兼ねて6人にしたらどうか?」
「これ以上小娘を相手する余裕がない」
「6人は全員が女だぞ」
それを聞いたトムに対してパブロは、
「ビビるなよ」
「違う、慣れていないだけだ」
「女が怖いんだろ。女も男も同じだと自分に言い聞か
せろ。違いは女ってだけだ。」
・6人が山の入口へ到着。
景色を見た感想をそれぞれが述べる。
「雄大」「綺麗」「凄い眺め」
カレンは遺灰の入った壺を荷物から取り出すと、
「みんな揃った。姉さんと一緒に頂上を目指すから」
と呟く。
そこに二人のガイドが来る。
互いに挨拶を交わすと6人の登山にはトムがガイド
に付く事を語る。もう一つの登山グループがいて、
そちらはパブロが率いて我々よりも先にいくとの
こと。パブロは6人の女性に、『独身最後
の旅か何かなのか』と皮肉るような発言をする。
トムは“か弱き性”の底力を甘く見るなとして
彼もまた女性蔑視の発言をする。
トムは女性陣に事前のトレーニングはしてきてくれた
のかと問う。
「毎朝腕立て200回、ランニング10km」
「私は毎日水泳2kmだ」
トムは懐疑的な見ると発言したノエミとパティは
嘘だと語る。
・ジョナタンとジュリアンが来る。
パヴロがガイドする2人がやってくる。
パヴロはエベレストに登頂したことがあるという
武勇伝を語るが、ジョナタンは、
「エベレストに何をしに行った?」
「ヤッホーを言いに行ったのか?」
と語る。パヴロはそれを聞いてムッとなるが・・
・登山、出発の時・・
いよいよ登山に出発しようとする。
トイレと着替えはここでしなければ山でする
ことになると告げる。
スタッフの一人サラ・ペレズ・ルビーノさんは
いますかと問われる。IDの確認がまだだとされると
何処かホッとする。
そんなサラに対してジュリアンが声をかけてくる。
「ルソー研究所のマルク・ペレズ・ルビーノと
同じ名字であるので家族の人なのか」
「一応ね」
ジュリアンはジョナタンから『忘れる旅』一日目
に行こうと後押しされる。落ち込んでいたジョナタン。
忘れる人とはリュシーだという。
【感想】
NHK枠でフランスのドラマが始まる。
全6話で構成されたドラマで、1話につき6人のウチの
1人の人生を描いていくもののようだ。
6人が旅・登山をする。
旅行する事への期待と不安。
6人の女声がアルペン3500mを登るというのだから驚きだ。
登山と言えば深読みすれば人生を象徴している様な
ものといった印象ある。山頂までに訪れる数々の困難
だったり日常を忘れて楽しむものだが、楽しさや
苦しさを覚えることは人生ではよくあること。
全てを忘れたいものの登山のちょっとした時間や
物事を目にした時には、日常のことが思い出される。
この6人のキャラクター、5人は少なくともガンを
患いサバイバーとしての生活を送っている。
冒頭の列車でのシーンでガンであることを利用して
席順を操作しようとしていたことを見て、当初は
嘘なのかと思っていたけれど、どうやら本当の
様だ。
一人だけ違うのではないかと思うのはカレンと
いう女性だ。彼女の姉・イヴはガンで亡くなった
ことも有って、精神的には不安感を覚えるものの
姉が仲間たちとやろうとしていたことを代理に叶え
ようとしている感じに見える。
モルガンという新人が仲間として加わった時にも
「姉が仲が良かったが自分は彼女たちのことを
あまり知らない」と語っている。
このドラマの初回を見て感じるのは男性と女性が
互いに意識し牽制し有っているところが目に付く。
結婚していれば互いに異性のことを意識して
愚痴や悪口を語り合いストレス発散でもするものだ
ろうけど、欧州の場合、何でも男女差について
言及したり皮肉な対象として描かれる事が多く
それが意外と鼻につく。
近年SNSを通して見ると性別の違いで争いになったり
ジェネレーションの違いによって争いに発展する
ことが多いのも欧米からのバカでかい声が。遠く
アジアの土地にも聞こえて来るからだろうが、
自分の性別やら世代やらが不利で不遇なことをされて
いるように思えて、その不満のはけ口を自分の価値観
以外のところで発散しようとしているみたいだが
それぞれの世代にそれぞれの問題を抱えているのだか
らそこまで言及するべきなのかということを時々感じ
る。
彼女たちはアルプスの山頂を目指している。
生前のイヴが語っていたのか、その妹が語りだしたのか。
『ドーム・ドゥ・ラ・ローズ計画』
山を巨大なオッパイに見立てて征服するというもの
だ。実際には山頂でイヴの遺灰を蒔くのが目的なんだ
ろうね。
登山するのにトレーニングは必要だろうが、それを
した形跡もなく、登山ガイドにがんである事実を
話さず現場に来て初めて語ることへのリスクある
行動。服装にしても登山するようにも見えないものも
一部居たりして、なんだかなぁという印象も有る。
またガンサバイバーにとっては「今度」という
時間の概念での縛りは誰よりも、その言葉の重みは
感じるところである。
ところでドラマではBlondieの「Heart Of Glass」
(1979年)が使用されているところが懐かしい。
恋は幻想、恋は盲目って感じの曲だけど、まさに
今の彼女たちの状況に有っている。
■初回はサラ
ステージ2の乳がんの患者のようで回想シーンを見る
と抗がん剤治療、放射性治療、手術をしており、
二度目のガン(再発)のようだ。
夫が居てジュリアンという登山者からは
ルソー研究者のマルクは家族なのかと尋ねられていた
ことから見ても研究員としてはかなり知名度の高い
方の様だ。
その旦那の仕事を手伝おうとしているが、旦那は
妻の治療の方が先ではないかと考え、論文の提出は
先延ばしにすることが語られている。
二人の間には子供がいる。
ジュリー (Anna Stanic)という学生/受験生。
夫婦としての関係は冷めているようで、共通して
いた「論文」と「子供」と「夜の生活」は二人の
間からは除外されて行っている。
因みに彼女が乗っていた車は “シトロエンDS3”。
時間がある時に動画やDSシリーズの進化の歴史を
見ていたのだけど、
●ガンサバイバーの二重苦
サラと夫マルクは一見すると関係は良好に見える。
しかし二度目のガン発覚時には夫にその事実を
知らせずにいたようだ。
「”以前”ならば話してくれただろう」
「もう”以前”は存在しない。以前の私とは違うの、
分からない?」
こんな会話が聞こえる時には、サラのストレスから
来ているものなのかと考える。
マルクは浮気して他に家庭を持っているようだが
果たして見て目通りのものなのか。
●ガンサバイバーの三重苦
興味深いのはサラが登山に出かける日に夫は
浮気した相手の元にいく。家を留守にするとして
もしかすると妻が夫に仕掛けた罠なのかも知れない。
夫を尾行していたサラは相手が妻子といることを
知り車を走らせるがタイミング悪く車道に出てきた
マルクを車で轢いてしまう。サラはそのまま駅に
向かい友達と共に登山旅行に出かけてしまう。
サラはそれ以降、自らのガンの容体だけでなく、
夫がどういう状態でいるのか分からない。
生きているのか死んでいるのか。
車を見れば嫌でも轢いた跡がある。
ただ後ろを振り返った時にはまだ動いていたという
ような発言をしていた。
今回新たに仲間に加わったモルガンは警察官だ。
普段ならば心強い存在に思えるが、車で旦那を轢いて
きたサラにとっては警察官と聞けば心臓に悪い。
また登山口で名前を呼ばれた時には警察からの
連絡かと思いヒヤヒヤする。
そして何よりも電話の電源を切っている為に
電源を入れたらどんなメッセージが入っている
のか分からない状況であるところは視聴者の興味を
くすぐることになる。
■それぞれが抱えるガンは?
カレンとサラは乳がんみたいだよね。
それともみんなが乳がんなのかな。
リンパ節全体に及んでいるとして乳房は残せなかった
というのが外科医からの説明だけど、そうなると
簡単には治らないのでは?
ドーム・ドゥ・ラ・ローズとかなんとか言って
いたしね。
ただ会話の中でヴァレリーとモーガンは寛解に
向かっている感じ。
カレンとサラがシャワーを浴びる際に抗がん剤の
影響から髪の毛が抜け落ちている。それを誰かが
見ていたよね。
■男性登山者
ジュナタンとジュリアンという男性が登山に来る。
『忘れる旅』と称してリュシーという女性との間で
大失恋に終わったジョナタンの為に従兄弟のジュリアン
が企画した感じ。ジュリアンは正気ではあるが相当
口が悪く相手をイラっとさせる。
■登山ガイド
二人のガイドがいる。
一人はスキンヘッドのトム。
一人はエベレストに登頂した経験のある、ちょっぴり
自慢気の。しかしそんな彼にも15日後にトレイルランが
あるとのこと。
また会話の中でパヴロは意味深なことを語る。
「エベレストの時に荷物が増えた」
「あそこに俺の一部を置いてきた」
背負ってきた重荷を置いてくるというのはあるけれど
もしかすると大事な人を置いてきたのではないかと
推察される。
ただ彼は「足の指だ」と語っていたね。
■サラ以外のメンバー
○カレンとノエルの会話。
カレンはノエルが担当した弁護の中に殺人やレイプ
は有ったのかを尋ねるシーンがある。しかし彼女は
企業専門の弁護士であることを語る。
息子の留学先はオーストラリアのシドニーだと聞いて
カレンは、そこでやりたいことを述べる。
・野生のカンガルーに会いたい
・先住民アボリジニの金管楽器ディジュリドラ
・ブーメラン
ただノエルはカレンのお喋りにはうんざり気味で
途中で退散していた。
○モルガンとヴァレリーの会話
ヴァレリーが滞在しているのがインドだったのかな。
フランスに戻ってきたが、病気だから戻ってきたの
か、それ以外のことなのかを問う。
ヴァレリーが20歳でインドに行った事実にモルガンは
称賛していた。
家族も友達も居ない異国にいく勇気。
■幾つもの違法な行為・行動
・遺灰をまこうとしている事実を聞いて前もって
許可が居ると指摘される。
・サラが夫を車で轢いてきた事実
サラは今朝起きたことを語るシーンがある。
カレンが知った時にはパニクっていた。
不安症なので分からないでもない。
ただ告げ口したことによって、不審がられる。
今後彼女への情報の流れはないかも知れない。
警察官のモーガンはみんなにそんな彼女の密告を
忠告していた。
興味深いリアクションを取ったのは弁護士のノエミ。
「よくやった。アンタは偉いよ。ブラボー。旦那さん
はいい気味だ」
「妻が苦しんでいるのを見て辛かったんだもん。
当然よね」
「あっちも寝たきりになればあいこだから」
相当ノエミも私生活でストレス抱えているね。
「それがインドの知恵?」
「道徳の授業は受けるのはうんざりよ。」
・人を轢いた事実を知ったものの罪
カレンは話を聞いて知ってしまった以上は同罪だと
考えてモーガンに全てを話した。
●サラの携帯の留守電メッセージ
・病院看護師から電話メッセージ。
「ジョルジュ・ポンピトゥ病院の救急外来に電話して
くれますか?」
・夫マルクから出発前のメッセージ
「サラ、最高の登山になるように祈っている」
・娘・ジュリーからの電話
「ママ、ジュリーだけどもう山に入ってるよね。
パパが事故に有って入院したの。けど大丈夫。何箇所
か骨折しただけ。今一緒にいる。電話は私の携帯番号
にかけて」
■その他
・登山でのルール1
山で生き残るための第一のルールはシンプル。
「勝手に先に行かない」
「歩幅は小さくを心がけてほしい」
「一定のリズムを刻むこと」
このメンバーが団体行動を取れるのか。
現在はまだそれほど過酷な状況ではないからね。
・ドーム・ドゥ・ラ・ローズ
・エリニョス
ギリシャ神話に出てくる翼を持つ女性。それは罪人を
追い詰める復習の女神。
・チーズフォンデュ
「チーズを食べると腹の中で固まり夜に眠気なくなる。
酒を飲めば大丈夫」
そんなトムに対して警察官のモーガンが
「飲酒運転で捕まえた人から何度も聞いた。」
・ラクレット raclette
チーズフォンデュの流れの中、モルガンがラクレット
を取ってくれという。
>ヴァレー州を中心とするスイスおよびフランス
サヴォア地方のチーズ断面を熱で溶かして削ぐ料理
※google先生より引用
【SOUNDTRACKS】
・Heart of Glass (Re-Recorded 2021 ver.)
・Late Night Jazz
【出演】
サラ・ペレズ・ルビーノ (Alix Poisson) 大学教授、マルクの妻
ノエミ (Clémentine Célarié) 企業弁護士
パティ (Camille Chamoux) 救急医、レズビアン
カレン (Joséphine de Meaux) 花屋、エヴの妹
モルガン (Tiphaine Daviot) 警察官
ヴァレリー (Claire Borotra) インド帰り
エヴ (Elsa Lunghini) カレンの姉
トム (Lucien Jean-Baptiste) 山岳ガイド
ジュリアン (Maxence Danet-Fauvel) ジャナタンの従兄弟
ジョナタン (Baptiste Lecaplain) 失恋
パヴロ (Gérémy Crédeville) 山岳ガイド・エベレスト
マルク・ペレズ・ルビーノ (Bruno Wolkowitch) ルソー研究所
イドニス (Mhamed Arezki) モルガンの??
ジュリー (Anna Stanic) サラとマルクの娘
(Eric Massot) サラの外科医
ヴァイオレット () カレンの姪っ子、イヴの娘