アガサ・クリスティー 殺人は容易だ
Murder Is Easy (2023 England)
原作/AGATHA CHRISTIE
制作総指揮/ Cheyenne Conway
第2話 殺人は容易だ「後編」
脚本/シアン・エジウンミ・ル・ベール Sian Martin
監督/ミーヌ・ガウル Meenu Gaur
制作/
・BBC
・ALBERT Sustainable Production
・AGATHA CHRISTIE PRODUCTIONS LIMITED MMXXIII
・Mammoth Screen
【STORY】
●前回は・・
・ピンカートンはそれだったらご存じかしら?
ロンドン警視庁は何時までか・・必ず知らせないと・・殺人を。
◆衝突音が聞こえピンカートンを道に倒れる。
・ルークは村で立て続けに殺人が起きていると言っていた。
そしてまたあるとも・・で 本人が死んだ
◆ウィッチウッド・アンダー・アッシュ駅へ行くルーク。
・ブリジットはウィッチウッドに居たら洞察力を試す機会は少ない
けれどふなたが現れた。
◆ホイットフィールド団地の看板を見る。
・リバースは場所をお間違えです。閣下とお客様は屋敷の中です。
◆ホイットフィールド卿に招待され屋敷の食事会へ
・ホイットフィールド団地は私の名前だぞ
・何であんな男と結婚するの?
・在庫が多い。
・ただのコデインだ。欲しいのか?
・テニス会でハンブルビー牧師が倒れる。
・夫人はアーサーの名前を呼び続ける。
●森の中
民族の武器が落ちる。ルークはその音で振り向く。
彼の目に映る炎。
■トマス診療所
ルンブルビー夫人とローズの元を訪ねるルーク。
ルークは少し話がしたい事を言うと、これからトマス医師の診療所
で解剖の相談をするので一緒に行こうという。
・ウィッチウッドでの事故死の多さとトマス先生がその全ての
疑わしい事故の被害者を診ていることに気が付いた。
彼を愛しているんだろローズ。きっと両想いなんだろうけど
お父さんは結婚を許さなかったハズ。その理由がもし彼の思想
のせいだとしたら?(Luke)
ルークは医師から渡された「民族衛生 RACE HYGIENE」の本を
見せる。
・何処に有ったのか?
・ここで保管してます。こっそりと(Luke)
・全て殺人だったというならばその考えはどこから?(Mrs. Humbleby)
・ラビニア・ピンカートンさんと殺される前に会ったのです
夫人にご主人が薬が細工をされた可能性はないですか?(Luke)
・一体誰に?細工だなんて有り得る訳が無いと荒げる(Rose)
◆トマス医師が部屋に入ってくる
・彼はあなたがお父さんを毒殺したと思っている(Rose)
・毒殺?ペニシリンでか?
・薬は関係ない。夫はトマス先生のことを信用してなかった
から一度も飲まなかった(Mrs. Humbleby)
・この本の事もデタラメよね?(Rose)
否定しなかったトマスに対してローズは室内の本棚を調べようと
する。
「優生学」の本が有った。
トマスはルークに激怒する。
・良家の純粋な女性たちに近づいて惑わせ思考をゆがめることが
目的なのか?
◆外に出るとハンブルビー夫人から薬の細工以外にも人を殺す方法
はあると言われ、ラビニアがおかしいと感じてたなら調べ続けて
と頼まれる。
■集会所
街の人々が集まる。
・牧師の死因に疑わしい点は一切ないと証言する(Reed)
・ピアス夫人は疑わしくない!?元気にテニスしてたのに急に泡
吹いて倒れたのに?毒でしょ。
・リード巡査は大丈夫だとし全て適切に操作を進めています。
・それなら他は?ハリー・カーターとトミー・ピアスも
ちゃんと調べたのか?(Rivers)
・死因審問で事故死と判断された。法は法だろ(Dr. Thomas)
・じゃあエイミーの解剖はなんでしないの? (カーター夫人)
・税金の無駄遣いになる。彼女の死因は明らかだ
・明らかだと!?死んだのが一般人ならすぐに「事故」。
だがお偉いさんは違う。念入りに調べる。それが暗黙の決まりってこと。そうだろ先生。これは暴言じゃない。俺は言うべきことを
言ってるんだ。閣下に言いつけるなら伝言も頼む。儲けた
金でまずはアッシュボトムを住みやすくしろってな。自分の
使用人たちの為に。国の為に闘った者には平等に生きる権利
がある。だがどうだ?ここは腐りきってる(Rivers)
◆集会が終わる
・謝罪させてほしい。個人的な感情であんな事をいうべき
じゃなかった(Luke)
・私たちの熱意は犯人捜しに注がないと。もっと集中しましょう。
ゴードンと私は今日午後からパーティーを開くの。
婚約パーティーよ。だから急ぎましょう(Bridget)
・薬じゃなかったけど他に誰が牧師を殺す?
ピンカートンさんの話だと犯人は「目的のある立派な男」
だけどあの医者が立派か?ハンブルビー親子もそう思わないだろう(Luke)
・たとえ殺人鬼の青髭並みの評判でもこの村では立派といわれる。(Bridget)
・ここでの力関係がよく分かってきた。自分の無力さも
6人も死んでいる。
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■感想
「アガサ・クリスティー 殺人は容易だ」の後編。
ウイッチウッドの人々が次々と殺害される。
その事実に気が付いたラビニアは村の警察官に殺人事件が
起きていることを伝えるがまるで取り合ってもらえず、決心して
ロンドン警視庁に直接頼みに行く事にする。
彼女は道中の汽車の中で知り合ったナイジェリア人のルーク
に一部始終 村で起きていることを話すが、その彼女もロンドン
の路上で何者かによって車で轢かれて殺されてしまう。
調べていく内に村では戦争の混乱に乗じて大金持ちになった
ゴードン・ホイットフィールド卿が自らの冠の付く帝国を作ろ
うとしていることを知る。
「ホイットフィールド団地」。
彼を誹謗したり計画を邪魔するものたちが亡くなっていること
が分かるが、ただ一つ疑問と同時に共通するのは
殺された人物はみんな隣町のアッシュボトムの人物であること。
いきなりネタバレのように書いてしまうが犯人は女性である。
男性が犯人の殺害は暴力的なものであり、女性が殺人犯の場合は
薬物による事が多いとされる。
「殺人は容易だ」と言われるように他人を殺すのは感情を抜きに
すれば簡単な事だなと思わせるが、人を人とは思わず殺害を
続けることはよほどの精神を崩壊させない限り相当難しいように
思える。人はそこまで残酷に生きられるものなのか。
時代が起こさせた殺人なのだろう。
そもそも精神に異常を来すに至る犯人の存在は自分が計画して
いる通りの人生を行っていればまずは起きなかったことだろう。
犯人はケンブリジット大に受かっていた。
そこに通って新時代の女性の活躍の先頭を導いていきたかった
のかも知れない。しかし彼女のしている事を父に勘ぐられて
ゴードンが吐かせられてしまい、彼女は幽閉されてしまった。
また女性や弱者を信用せず、階級の高いものを優先する。
この時代のイギリスの悲劇的社会の一端をみた気がするが、
日本は今でも、国会議員は幾らでも横領し放題で逮捕も起訴も
されず、辞職すれば議員報酬も働いた分だけ律儀に支払われると
いう無敵の人たちなので驚きもしない。政治献金の問題は未だに
解決せず、調べようともしていない。その内人々の記憶から失わ
れていくのだろう。
■ドラマが不味かった点は?
あまりこのドラマは評判がよくない。
「迷信・神学」「女性・民族差別」「階級制度」「閉鎖性」
「出生地」
など様々な要素を取り上げようとした。
ルーク(アフリカ系)がこんな閉鎖的な村を訪ねた際には、何が
起こるのだろうかと思わせたが、実際には殆ど何もなく自由に行動
が出来た感じもする。もっとも恐怖に陥れたのは、1話で
ドアの下から手紙が入って来たシーンとアッシュ館にいった
際に猛禽類が彼をめがけて飛んできたことである。
ルークは繰り返し回想シーンを目にする。
そしてそこに描かれるのは「森の中で焦りの表情を見せるルーク」
と「ラビニアが語っていたセリフ」の反復である。
この中で出て来るナイフが意味するものは一体何なのかは
最後までよく分からず、言葉だけで説明があったままだった。
ラビニアとの最初の出会いの会話は上手く描かれた。
犯人は「紳士的な人物」だとされるが、男性とも女性とも
言わなかった。
それに元々の設定で有った捜査をするハズのものが捜査官とは
かけ離れた素人であり、殺された人数から見れば一つの村で
起きた事件とはいえ全国新聞に載ってもおかしくない程の
事件だ。これだけの数の人が殺されていようと警視庁が
動くことは無かった。
因みに事件が起きている際にゴードンが読んでいた新聞の一面
には、
「有罪判決を受けた殺人犯ヘルムート・ヘンデル、長い法廷闘争
の末、自由の身に」
(Convicted Murderer Helmut Hendel Walks Away A Free Man
After Long Court Battle)
■ドラマが良かった点は?
少々強引だが、人間不信の村でどれだけ相手のことを信用できる
のかルークや視聴者の立場ではどれ程のものだっただろうか?
犯人像については幾つかの可能性は残してあった。
正直ゴードンもトマスも頭が悪いのか演技力なのか、ひ弱で
とても連続殺人を行えるような人じゃない。
ただ彼のシンパはいるだろうし、彼自身は「神に守られている」
と連呼していたので、彼が犯罪を犯しているというよりも
背後でフィクサーみたいなものが彼の為に動いていると思って
いた。
・ホートン少佐は車(Morris Garage、TD? TF?)を貸してくれたが
「こいつは2速が入りづらい」
と語っている。どこかでギアが入らなくなってルークが事故死
するシナリオが用意されている?
・トマス医師の相手としてローズが浮上する。
このドラマを見ていれば薬物が人の死を引き起こしていること
が多い。医師と容易に接することが出来て薬を盗み出せる人は
かなり容疑の視線も鋭くなる。
ローズと母のハンブルビーは殺人に関わりがないのか?
■その他
●フロイトの夢判断
ルークが回想シーンをよく見るので、ブリジットからはフロイト
の夢診断をしようかと尋ねられる。
その時、ルークは森の中にいる話になり、手にしていたナイフ
は「イケンガ」と呼ばれるもの。
彼によるとそのナイフは、
「成人した時 父にもらった。成功へと導き、運命を切り開く力
を持つ。でも力は僕個人のものじゃなく礼を失すれば失うことに
なる」
さて彼は最後にナイフはどうなったのか?
成功とか運命を切り開く力になったのか?
●列王記
旧約聖書におさめられた古代ユダヤの歴史書の1つ。
預言者エリシャとクマの物語をゴードンはルークに語る。
「神を信じたアブラハムたちが栄え敵が滅びたように彼も
神の逆鱗に触れた。知ってるか?預言者エリシャを馬鹿にして
熊に殺された子供の話。エリシャは偉大な男だ。神はエリシャを
嘲る者を許さない。決してな」
ゴードンは自分は神に守られている存在だと思っているらしい。
ある意味では精神的に異常過ぎないか?
貴族ともなれば貧民が何人死のうと神の力となってしまうもの
なのか。
●卵とキドニーステーキ
キドニーとは牛や豚などの腎臓の事らしい。
ゴードンの朝食だった。
ただ普通は「キドニーパイ」として出されることが多いみたいだ。
■使用された曲
・
■出演者
ルーク・フィッツウィリアム (David Jonsson) 政府職員
ラビニア・ピンカートン (Penelope Wilton) 殺人事件を訴える、”Pinky”
ブリジット・コンウェイ (Morfydd Clark) ホイットフィールド卿秘書、婚約者
Dr.C.トマス (Mathew Baynton) ウイッチウッドの医師、殺される。
アーサー・ハンブルビー (Mark Bonnar) 牧師・白髪・黒ぶち眼鏡、殺される
Mrs.ハンブルビー (Nimra Bucha) 牧師の妻
ローズ・ハンブルビー (Phoebe Licorish) 牧師の娘
(Ron Donachie) 検視官
ホートン (Douglas Henshall) 少佐
Mrs.カーター (Kathryn Howden) 故ハリーの夫人、バーの店員
エイミー・ギブス (Holly Howden Gilchrist) オノリアのメイド、殺される
オノリア・ウェインフリート (Sinead Matthews) ホテル近くに住む。元富豪娘
Mrs.ピアース (Tamzin Outhwaite) 夫人、夫を殺される。
リバース (Jon Pointing) 屋敷の警備
リード (Kevin Mains) 巡査
ゴードン・ホイットフィールド卿 (Tom Riley) ヒゲ
(Christopher McPhillips) 給仕人
(Joe Fagan) 執事
リディア・ホートン (Carol Scougall) 少佐の妻?
ブル刑事 (Brian McCardie) 刑事、黒人嫌い
トミー・ピアス・・転落死
ハリー・カーター ・・溺死
エイミー・・毒殺
ハンブルビー牧師・・毒殺
トマス医師・・毒殺
ウィリアム・オシントン卿・・ルークの能力を買う
アルジャノン・・ラビニアの飼い猫
オーガスタス(犬)・・少佐の飼い犬
ネリ(犬)・・少佐の飼い犬
(Jason Alan Staines) ロンドンの通行人、パーティー客