ドライブ in ウクライナ IN HER CAR
彼女は「告白」を乗せて走る
(原題:Pereviznytsya)
脚本 : Eugene Tunik (イエヴヘン・トゥニク)
演出 : アルカディー・ネプタリュク
プロデューサー : Andreas Bareiß
製作総指揮 : Sabine de Mardt、Sidonie Dumas
Rainer Marquass、Christophe Riandee
(c)Starlight Media/Gaumont/Roman Lisovsky
第4話 ずる賢いキツネ Der listige Fuchs
【STORY】
・イントロ
『ニキータというずる賢いキツネが居た。誰も彼を
捕まえられない。ある日、犬から逃げる途中、彼は
青い染料の樽に落ちた。外に出ると見た目がすっかり
変わっていた。動物たちは青い怪物ほ恐れて王と
崇めた。でも嘘はすぐに露見した』
『森の王国の建国記念日にキツネは祝宴を命じた。
熊たちは低い声で歌った。狼は高らかに吠えた。
キツネたちは楽しげな声で鳴いた。王はついつられて
・・キツネの本性を現して鳴いた。偽の王は八つ裂き
にされた。』
■ビラ・ツェルクバ
街ではサイレンが鳴り響く。
朝から5回目の音だ。
そんな会話をしている二人の老人。
リディアはスタスからの電話を受ける。
「久しぶりね。連絡ありがとう」
「私は現在ビラ・ツェルクバに居るので5時間で
フメリニツキーに付く」
スタスから会う場所/カフェの場所を送るという。
■依頼人
リディアは連絡してきたフォローと会う。
妊婦のイラ(Daryna Fedyna)が連絡して来たもので
一緒に家から出てきたのは父親のダニーロ
(Yakov Tkachenko)とイラの夫であるニキータ
(Mykhailo Dzyuba)だった。
リディアはダニーロの薬を取りに行くという連絡
を受けていたが、車椅子の彼と妊婦の娘イラ
ではなく夫のニキータを車に同乗させたいという。
「もうすぐ召集令状が来るが逃げるなよ」
「この国家の非常時に男ならば戦うべき」
という義父。
「小包を受け取りに行くだけだ」というニキータ。
リディアはイラから事情を詳しく説明を受ける。
父には薬が必要だが配達が滞っている。だから
ニキータが国境穂受け取りに行く。その為の往復
を頼みたい。リディアはそれを了承する。
イラはニキータにキスをする。
「きっと大丈夫さ」
●M21号線 モルドバ国境への道
車を走らせながら二人は会話する。
「お義父さんの薬の名前は?」
「メタンクロステノロン。関節の薬だ」
助手席でニキータは弁当を食べ始める。
出来れば休憩の時に外で食べて欲しいとするが
仕方なく了承する。
「スポーツをしている?」
「ボクサーだ。スポーツマスター候補でウクライナ
選手権3位」
凄いわねというリディアに対して彼はメダルなんて
役に立たないお飾りだという。妻が質店に持って
いくだけだというニキータ。“生きるのが難しい時代
ね”という彼女に”控えめな表現だ”と語る。
戦災の中で建設の仕事は有り金が稼げたが、この手
ではもう他の仕事が出来ないとし、マッサージ師
としての講習を受けたという。その言葉に対して、
彼は彼女に、
「今何を思ったのか?」
「邪推はしていない」
「俺はカタギだ。妻が居て息子も生まれる」
「性別は?」
「エコーに大きなアレが・・オヤジ似だ」
「待ち望んだ妊娠か?」
「そうだ。苦労した。検査、民間療法、やれること
は全てやった。そうしたら昨年の独立記念に
嬉しいサプライズが有った」
「おめでとう」
「命以上に大切な子供だ。毎晩ベッドで妻のお腹に
向けて俺の声を聞かせている。そうすると赤ちゃん
が蹴って来る」
「分かるわ。娘の時にも蹴ってきた。サッカー選手
になるかというくらいに・・」
「今は何をしているのか?」
「映画監督を目指してドイツで勉強中」
「外国へ送ったのは正解だ・俺もそうするつもりだ」
「子供は戦争を見るべきではない」
「大人もそうよ」
【impressions】
今回のドラマも二つの流れがある。
一つはこのドラマの主人公が引きずっている妹・
ナタリアの死に関するもの。
“2014年のルハンシクでのバス爆破事件は意図して
起こされたものなのか”
そしてその流れには夫も関与していたのか。
もう一つは毎度単独で描かれていくエピソード。
車を乗せていく人たちの生活状況と共に人生模様を
描いたもので、彼らと関わる内に流れは2014年の
流れにうまくつながっていく。
見ていて怖いのは本来ならば戦争なのだけど、
ドラマを見ていると寧ろ身近にある恐怖というものを
感じる。今回で例えるならば、知らない人を同乗させる
ことであったり、また親が子供を屈強な戦士にして
無理やり戦地に送ろうとすることだ。
同乗させたニッキーという人物が信用できる人物
なのか。そして彼は本当は何をしにモルドバ国境
付近にまで行こうとしているのか。
こういうご時世であるので、女性が全く見知らぬ人
を車に乗せることに抵抗感を感じるけれど、それ
以上のことがウクライナ各地で起きていると思うと
本当に気の毒なことだと思う。
彼の妻だと思われるイラの姿や彼が道中で語る
子供に対する気持ちを聞いていく内にその不安感が
少しずつ和らいでいくところは興味深い。
しかしその言葉も実は嘘なのではないかという思い
も出てくる。妻子を捨て、そして義父の言葉に
反して国境を越えて逃げ出そうとしているのでは
ないか。
このドラマの本題に入るアバンの中で監視されている
ような映像があるだけにその思いは強くなる。
■ラジオから流れて来る戦況
『ブコビナにおいて国境警備隊が不安に出国しよう
とした徴兵忌避者20名を拘束』
・ポロシェンコ大統領/2017年大晦日の演説
『ウクライナの戦士たちが東武防衛を支えています。
我々は引き続き軍を強化します。軍こそ国の誇りです。
人工的な停戦ラインを越え挨拶を送ります。
クリミア、セバストポリ、ドネツク、ルハンシクに。
皆さんの家はウクライナです。我々の家を略奪した
者は報いを受けるでしょう。協力関係にある国々に
新年の喜びを』
■スタスの証言
フメリニツキーに居たスタス。
スタスは劇場での監督をしている。
彼は以前のエピソードの中の過去の回想シーンの
中でもバスの件でディマと会話しているシーンが
有った。
そしてルハンシクではなく何故ここにいるのか。
侵攻直前にここの劇場で公演が始まった。
・リディアとナタリアのツーショット写真
2013年に撮影されたものでスタスが写真を取った人物。
当時劇場では「アントニーとクレオパトラ」が上演
され、スタスは自ら最高の演出作だと語る。
・赤十字のバス
2014年にルハンシクにやってきてそのバスは無事に
そこから人を運んでいった。しかしその3日前に
バスに人々を乗せて行った者たちがいてそこで爆撃を
受けてしまう。
・2014年当時のディマ
彼(ディマ)は州政府の文化局長だった。
教育者、文化人の避難の責任者。
その彼が出発の手はずを整えた。
女と子供が先に乗って男性は後から乗れることは
スタスから彼に話している。
避難の調達はディマの部下であるアンドリーが行った
とのこと。リディアの娘の代父だ。
彼は当時ディマの右腕だった。
「避難を急ぐ必要が有ったんだ」
「分離派に望まれない人々(が乗っていた)」
■ニッキーとはどんな人物?
彼がモルドバに行く目的は義父の関節の薬を取りに
いく事だとされている。
途中、リディアの用事でフメリニツキーに立ち寄った
ことで兵士に質問される。
・戒厳令下に外国に行くのか
・許可証は?
・IDを見せろ
兵士たちに召喚状をその場で発行され、明日に
徴兵検査を受けろという。
しかし車に乗る際には兵士たちが書いた召喚状を
破いて捨てる。
○過去(2004年)のニッキー
現在の彼は動員される事は確実だった。
軍事教練では少尉になり、体も頑強。
しかし幼少期は必ずしも今のようではない。
母親からは息子を鍛えてほしいとしてボクシング
ジムに連れて行かれる。
そこでトレーナーをしていたのが義父であり、
そしてその娘のイラも度々ジムを訪れている。
コーチから言われボクシングで使うサンドバッグを
殴る訓練の日々。
・お前をいじめたやつを殴れ。
・男になりたいか
・ママの陰に隠れるか
・スカートを履くか
まるで前期・昭和時代みたいな価値観。
スポーツ界では今でもありそう・・
○2018年のニッキー
イラと同棲して一緒のベッドで眠ている。
父親が泥酔しているのか、夜中にも叫び散らして
いる。イラから父のようにはならないでと言われる。
約束ができないならば出ていってくれという。
どうやら父親は戦地で怪我をして車椅子の状態。
イラは恋人が戦争にいくことに反対している。
父親の世話だけで十分だという。
■その他
○出てくる地名
・ビラ・ツェルクバ/BILA TSERKVA・・ニキータを
乗せた場所
・フメリニツキー/KHMELNYTSKY・・主人公がスタスと
落ち合う喫茶店”Khmel Cafe”がある所。
○ポロシェンコ大統領
>ウクライナの実業家、政治家。第5代大統領
任期は、2014年6月7日 – 2019年5月20日。
現在ゼレンスキー大統領が就任している。
○宗教
ウクライナ正教会はロシア正教会から独立を。
モルドバの国境8kmのところでそんなメッセージ
が書かれている。その違いが私には分からないけど
ロシア正教会はよく耳にするけどウクライナ正教会
というのはあまり見ないですね。
【SOUNDTRACKS】
・
【出演】
リディア・モナスティルスカ (Anastasiya Karpenko) 心理学者
ドミトロ・マズール(ディマ) (Igor Koltovskyy) リディアの夫
ダシャ (Kateryna Hryhorenko) リディアの娘
ナタリア (Nadiya Levchenko) リディアの妹
オリガ (Khrystyna Fedorak) 妹、ネイリスト(1話)
ヴィカ (Dana Kuz) オリガの妹(1話)
ガリヤ (Nina Naboka) 隣人、ヴィカを助ける(1話)
インガ・スヴィストゥン (Olena Oleynikova) ディマの浮気相手、ミス農科大学(2話)
マルコ () ダシャと共にベルリンから・・(2話)
ゾリャナ・レクス () ミス協同組合大学
(Rusnak Larysa) インガの母 (2話)
スタス (Maksym Maksymiuk) 元ナタリ劇場芸術監督 (2話-)
レア (Karina Beuthe Orr) シモンの母 (3話)
シモン (Adrien Rob) AFP通信フランス特派員(3話)
クリスチャン (Antoine Herbez) 赤十字・シモンの夫(3話)
オクサナ (Kateryna Shenfeld) リディアの旧友・元女優(3話)
ニキータ (Mykhailo Dzyuba) ボクサー (4話)
イラ (Daryna Fedyna) ダニーロの娘(4話)
ダニーロ (Yakov Tkachenko) イラの父(4話)
詐欺師 () 国境で偽造IDを売る
ニキータの母 ()
テティアナ (Plena Hal Savalska)
ソーリャ(ソロミア) (Anna Lagodna) 兵士ハリナの娘(6話)
ヴォロディミル ()
ゾリヤナ・イグナテンコ () ルーツクの前市長の娘、検察官(6話)
タラス (Oleksander Yatsentyuk) 兵士
アナトリー (Viktor Zhdanov) 元副官、ディマの側近(5話)
Glib (Mykhailo Korzhenivskyi)
タマラ (Lesia Ostrovska) スタスの妻
ナディア (Oksana Cherkashyna) 弁護士(3話)(7話)
フレブ () (8話)
アルトゥール・ミコラヨヴィチ () 小児腫瘍学者(8話)
(Volodymyr Hurin) 軍人