ドライブ in ウクライナ IN HER CAR
彼女は「告白」を乗せて走る
(原題:Pereviznytsya / Перевізниця)
監督 : Eugene Tunik、Arkadii Nepytaliuk
脚本 : Eugene Tunik
プロデューサー : Andreas Friendrich Bareiss
製作総指揮 : Sabine de Mardt、Sidonie Dumas
Rainer Marquass、Christophe Riandee
(c)Starlight Media/Gaumont/Roman Lisovsky
https://www.nhk.jp/p/ts/XK4RXQY54G/movie/
第1話 姉妹 Zwei Schwestern
【STORY】
■現在
ロシア軍によって爆破された実家の前でオリガは
妹のヴィカの名前を叫ぶ。
「何処なのか、私の妹」
午前5時、ロシアがウクライナへの攻撃を開始。
キーウ、ドニプロ、ハルキウにミサイル攻撃が有り
戒厳令が布告される。
隠れた妹の耳には届かない姉の叫び声。
・ナレーション
「ある父親に二人の娘が居た。姉は働き者、妹は
怠け者。ある日父親が市場に出かけて行く前に
娘たちに仕事を命じる。働き者の姉はすぐに仕事を
始めたが、妹は手伝いを頼まれないように身を隠した」
■キーウ・ロシ全面進行前夜 KYIV
(The night before the Russian full-scale
invasion)
ロシアの軍事侵攻に際し、唯一の頼みは自国軍。
外国の支援には限りが有る。
リディアは売店で水を買う。
『どう不安と向き合おうか』
「居の誰もが抱く疑問です」
リディアはインターネットのフォロワーー向けに
情報を発信する。
私はハルキウに行きます。明日あちらからこのテーマ
でライブ配信をします。
スマホの時計は21時35分になっていて、リスナーに
お休みの挨拶をして、旅の無事を祈ってくれるよう
求める。
リディアは車に乗ろうとしていたが、オリガは
コリャと電話で会話していて、乗り遅れたことを
報告。ポルタワで乗り換えていくと語る。
そのオリガにリディアは声を掛ける。
「ハルキウに行くのか?」
「ゾーロチウへいく」
リディアは自分はハルキウに行くので途中まで乗せて
いくと彼女に声を掛ける。
●M03号線 ハルキウへの道
(M03 The road to Kharkiv)
リディアによって車に乗せてもらえたオリガだが
色々と彼女は質問をしてくる。
リディアはそれを察して私が犯罪者かどうか心配
なのかと問う。オリガは単なる好奇心であり、
知らない人の車に乗っているからねと語る。
運転しているのはリディア・テナスティルスカ。
それを聞いたオリガはネットを調べると3万人の
ファロワーを抱える人だと知る。
「ケジュタルト療法」って書かれている。一体
何をしている人なのかを問う。リディアはカウンセ
ラーであることを語る。心理学に興味があるという
オリガだが、今は殆どの人が心理学者だと語る。
「自分と他人を理解しなければ行きていけない」
逆にリディアも彼女の仕事について尋ねる。
オリガは爪を見せて来たので、
「王族なの?キスするべき?」
という。
オリガはそれを否定すると、ネイルだとしてネット
に掲載されているネイル画像を見せる。
私はまだキーウに引っ越したばかりで、この仕事は
天職だと思っていること。
「好きな仕事を選べば苦労を感じない」
というけれど実際はどう思うか?とリディアに尋ねる。
確かに一般的にはそう言われているそうねという
リディア。
・オリガの元に電話が鳴る。
コリヤという人物からのもの電話で、彼女は事実婚
の夫だという。結婚する予定だが結婚式には金が
かかる。思い出に残る結婚式にしたいのだという。
リディアの元にもダシャという人物から電話が鳴る。
ダシャはリディアの母でドイツに住んでいた。
時差を忘れて電話してきたことを謝罪する。ドイツ
でも現在緊張した状態とのこと。
母親はリディアがハルキウに行こうとしていること
を知っていかないでと語る。現在ロシア国境近くへ
行くなんてあの国の大統領はイカれている。
そんな会話をしていると同乗者のオリガはCDを見つ
ける。
「物語(kazka)」と書かれたものでバンドなのか?と
問う。すると勝手にプレイヤーに入れてCDの内容を
確かめようとする。そこには朗読のような日記の
ようなものが声で吹き込まれていた。
【impressions】
NHKの海外ドラマ枠でウクライナ製作のドラマが
始まった。全10話構成で今回は製作が終わった5話分
を駆け足で放送するようだけど、残りの5話の
製作自体は終わっていると思う。
(1話辺り30分なので見やすく、NHKでは毎週2話ずつ
放送され3週間で終わる)
ドラマはロードムービー風の内容で、カウンセラーの
女性がウクライナの首都キーフからロシアから侵攻
(又は親ロシア派の占領地)を受けている東ウクライナ
のルハンシク州に向かうまでの道のりで出会う人たち
の問題を取り扱う。
今回は都市ハルキウまでの内容だった。
時は軍事侵攻の始まった2022年2月23日の夜から24日。
主人公のリディアは危険を顧みず激戦地へと車で
向かいそこでストリーミング放送をしようとしている。
自分に課せられたものとして、必要としているところ
に赴いて、車で救出に行くようなことを語っている。
テーマは「どう不安と向き合うか」だ。
このテーマは恐らく一貫して描かれていく。
しかしこれが土地や人民の命を襲う悲劇的な攻撃の
ことを指すのか、それとも人生の中で抱える個々の
問題のことを指すのか分からない。
人が抱える不安の種はあらゆるところにあり、
その種は激戦地での凄惨な現実を目の当たりにして
育って行ってしまうのだろう。
■主人公リディア
主人公の女性はカウンセラーで、スマホを操作
しながら、SNSを通して人生相談的なことを行って
いるようだ。フォロワーは3万人。
携帯を見てもLYDIA PSYCHOLOGISTという表記が見て
取れる。
彼女の車には「物語(kazka)」と書かれたCDが有り、
人の声でその名の通り物語が語られる。
そしてそのCDには、2013年にルハンシクで撮影した
二人が写る写真が入っている。
今回同乗したオリガがそのCDを勝手に再生し、
リディアの気分を害する。
道中ダシャという女性から電話が鳴る。
ドイツに住んでいる母親と思われる。
ドラマで気になるものは、道中でCDを再生する
が、この中にリディアが抱える心の闇が吹き込ま
れているものなのかということ。
CDは自分で吹き込んだ音声ではなく、彼女の妹が吹き
込んだもので、今回のドラマの主人公オリガとは
逆の立場の人物像としての過去がリディアに存在する
のではないか。
リディアが怠惰な人物だったようには見えないが
姉妹の葛藤を通して、妹を傷つけて失い、その罪
滅ぼしの為に今の彼女が有るのではないか。
妹の事を語る際にリディアは過去形で語るので、
この世には居ないのかも知れない。
最後に彼女のSNSで放送を聞いている男は彼女の
夫なのか? リディアは最後に述べているが、
子連れ女性、高齢者、障害者を優先して車で
安全なところまで運ぶことを発言している。
見ている男はベッドの中に居たのでそれが誰なのか。
※
彼女が乗る車を見るとチェコの自動車メーカーである
Skoda社製のOctaviaに乗っている。
■一話目に出会った人は?
1話目は姉妹としての葛藤を描いた物語。
今回のメインはオリガという女性だ。
リディアが同乗させたオリガにはヴィカという妹が
居る。ヴィカは勝利(ヴィクトリア)の意味がある。
妹は要領よく立ち回って生きていると姉には
写って見える。
楽をしたり、優遇を受けたり、姉の功績を自分のもの
として吸収したりする。
自分と比較してみて、妹はみんなに愛され、オリガは
両親らも含めて不遇な待遇を受けている思いが強い。
実際に愛していた彼氏のコリャを妹に奪われた過去
がある。2021年ゾーロチウというハルキウの近く
に住んでいたときのことだ。
(ZOLOCHIV (near KHARKIV) year 2021)
妹のヴィカと元彼のコリャとの結婚式。
そこで姉は辛い目に合うが、本当に愛していたのは
ヴィカではなくオリガであったというありがちな
シチュエーションがある。そして納屋で二人が愛し
合うところを父は車の中で見てていたことが発端で
倒れて、その1ヶ月後、亡くなってしまう。
タバコを吸っていて体も悪くしていそうな父親。
その父親は姉妹に最後の言葉のようなものを残す。
「娘たちに言いたいことがある。二人を等しく愛して
いる。お前たちも労り合いなさい。喧嘩はするな。
天国のママもそれを望んでいる」
オリガはそんな環境・家庭に居るのを嫌って首都
キーウへと出て居るという前提があり、このドラマ
は構成される。
「諦めるばかりの人生は嫌だ。」
彼女が故郷に戻るのは父の命日なのか、それとも
父が残した言葉を履行する為に故郷に足を踏み込む
ことになったのか。
●姉妹としての葛藤
姉妹、兄弟が居る人ならば誰もが大なり小なり
それを経験したり意識したことがあるのではないか。
親もそうするつもりは無かったとしても、年長の
子供には長男・長女としての立場を求め、次男・次女
には足かせはなく、優しく振る舞うであろうところ
がある。
しかしこれは逆に負の側面も有り、一人目は可愛が
られて二人目は子育ての大変さ故に意外と放任され
る傾向が有ったりする。その為に幼い頃の写真など
を見ると長男・長女の方が色濃く残されていたりする
ものだ。
要領に関しては長男の行動を次男は見ている。
ある意味では長男の失敗を次男は見て生きている為に
自然と身についたりするものだ。
帰宅する頃には実家は爆撃で崩れ落ちていた。
冒頭で叫ぶ光景やナレーションベースで語られる
シーンには二種類有る。
家が壊れて妹・ヴィカの名前を叫ぶオリガの光景。
そしてナレーションとして語られるのは、リディア
が持っているCDの内容である。
結果として戦争が姉妹の和解に向かわせるという
皮肉なところがある。
隣人ディマの家の地下室に逃げ込んでいたので
妹は助かるが、このディマのシーンで映画
「ひまわり」を思い出した人は何人居るのだろうか。
最後に父親が乗っていたオレンジ色の車で激戦地を
後にする。
ソビエト連邦時代のZhiguli社製、VAZのLADAに
乗っている。
一瞬しか映らないので間違っているかもしれない。
フロントのバンパー部が見えると良いのだが・・
■その他
・スパイ扱いされる
途中でガソリンスタンドに立ち寄り給油しようと
するが、店員は給油を禁止する。
裏切り者の扱いをされたのかも知れないし、本当に
戒厳令が出て軍事車両優先の燃料の給油になった
ものなのかも知れない。
・映画「ひまわり」(I girasoli . 1970 ,italy)
女優のソフィア・ローレン主演の映画。
戦争によって引き裂かれた男女の愛を描いた作品だ。
ポルタワ州を通る際にタバコで一服するのだが、
この場所で撮影された可能性を示唆する。
畑のひまわりは暗がりでよく見えなかったが
全て枯れているようだった。
この映画の興味深いところは映画の舞台がウクライナ
ではなくロシアだとされる議論が起きたことがある。
しかし原住民はウクライナ語を話していることも
有り、ウクライナ説が有名になった。
【SOUNDTRACKS】
・
【出演】
リディア・モナスティルスカ (Anastasiya Karpenko) 心理学者
ドミトロ・マズール(ディマ) (Igor Koltovskyy) リディアの夫
ダシャ (Kateryna Hryhorenko) リディアの母
ナタリヤ (Nadiya Levchenko) リディアの妹
オリガ (Khrystyna Fedorak) 妹、ネイリスト
ヴィカ (Dana Kuz) オルガの妹
インガ (Olena Oleynikova)
ガリヤ (Nina Naboka) 隣人、ヴィカを助ける
リア (Karina Beuthe Orr)
サイモン (Adrien Rob) AFP通信フランス特派員
クリスチャン (Antoine Herbez)
Mykyta (Mykhailo Dzyuba)
Tetyana (Plena Hal Savalska)
Solya (Anna Lagodna)
タラス (Oleksander Yatsentyuk) オルガとオルガの父
Anatoly (Viktor Zhdanov)
Glib (Mykhailo Korzhenivskyi)
タマラ (Lesia Ostrovska)
ナディア (Oksana Cherkashyna)
(Volodymyr Hurin) 軍人
※クレジットは顔と名前が一致せずよくわかりません。
参考までに。