ウェールズ連続少女殺人事件~30年目の真実
(Steeltown Murders 2022年・英国)
監督:マーク・エヴァンス Marc Evans
脚本:エド・ホイットモア Ed Whitmore
プロデューサ:Hannah Thomas
製作総指揮 Jonathan Hill、Ed Talfan
音楽:Sarah Warne
第3話 真犯人の遺伝子
【STORY】
●前回までのあらすじ
南ウェルズ警察署により、法医学の進歩によって
1973年の3名の殺人事件が同一犯によるものと判明したと
マスコミに発表される。我々が追っているのは連続殺人犯です。
1973年に起きた女性3人の殺人事件を捜査している。DNAを
採取させてくれとポールは頼むもウィロビーは断る。
フィルより犯人のDNAの50%は子供に受け継がれてる。
特徴的な遺伝子マーカー(対立遺伝子)も子孫に受け継がれる。
約50人の候補者を見つけたが鑑定しても?
●警察署
署内で寝ているとプリンターが印刷し始める。
それはコリンから送られて来た13名のリスト。
上司の警視ジャッキーにこの13人は犯人ではないということ。
でも犯人の血縁者の可能性は十分ありますとポール。
DNA採取が難航している。
犯人のDNAがデータベースに無いなら血縁者のもので特定
をしましょうというポール。
CSS(CENTRAL SCIENCE SERVICES)からの13名のリストは
Frank M.Jones
Ellis D.Jenkins
Ben Price
Richard M.Phillips
Dyfed R.Rees
Antonio Davies
Harry P.Lloyd
Paul Kappen
Iwan S.Owen
Ian K.Morris
Ali M.Taylor
Evan R.Lewis
Graham James
彼らは犯人特有の遺伝子マーカーを受け継いでいる。(Geraint)
まずウィロビーの家族の関係図を作りました。
このリストに彼の子供はいた? (Vic)
彼の息子2人はDNAのデータベースになく、住まいも遠くです(Geraint)
本人のが取れれば楽だが、違法に採取しても誰も検査できません(Paul)
コリンは?
彼は特にそうです。違法捜査に協力したらDNA鑑定への信頼を
失いますからね(Paul)
それならなぜこんなリストを寄こしたのか?(Vic)
法に触れない方法を考えた。
第一容疑者はウィロビーですがこの13人を重点的に調べます。
家族関係図ね。
年代を遡り犯人の特徴に合う男を見つけます。
捜査員は3名だけど結果を出してね。(Vic)
・ヴィッキーが立ち去る
フィルは3人では十分な捜査が出来ないことを告げる。
ウィロビーを追い詰める策はないのか?
ポールはフィルにとにかく信じてくれと語る。
■スタイルズの家 / ウィロビーの家の隣人
「宝くじを買いに行くのよ」
隣人のジャン・スタイルズがポールにウィロビーの情報を語る。
あれが彼の車。
しかし何故家の前に駐車しないのか?(Paul)
週1回しか乗らないのよ。火曜か水曜の夜よ。
他の日は歩いていく。
■警察署
・1973年
「ランダーシーの殺人事件の捜査にオランダ人霊能者の協力を
仰ぐかが注目されています。レイ・アレン警視正は名言は避けま
したが犯人に繋がる情報は検討すると述べている。犯人は
きっと教師か人を指導する立場の人です。非常に計画性のある
人物だと言えます。すぐに犯行を繰り返すでしょうが次は
全く違う場所です。町の中心部とか」
テレビ報道しているのを警視正は電源を落としてしまう。
マスコミの連中は警察をお幕見ている。こんな霊能者を祭り
上げて殺人事件は見世物じゃない。
その通りだ、警察の力をみせてやりましょうとクリス。
アレンはこれまでの捜査資料の見直しだ。初心に帰ろう。
重要証人から再び話を聞き新証言を引き出せ。
霊能者は?と口にしたクリスだがアレンの顔色が変わったことも
あり初心に戻れと指示。あらゆる記録、供述内容を隅々まで調べ
直せ。
●アンワル家
“トップ・ランク”へ行ったことは?彼女たちと一緒にだ。(Paul)
シータ・アンワルはないという。以前にも答えていると父。
他のクラブへは?
この子は15歳だ。クラブへは行かないし他人の車にも乗らない。
だからパブへ迎えに行った。何を聞きたい?この子はバス停にも
行ってない。二人には心から同情するが娘を巻き込まないで
くれ。
犯人は必ず見つけるよと約束するポール。
■警察署
・現在
ポールはフィルに報告。
ウィロビーの隣人のジャンの話では彼は週1で車を使う。火曜か
水曜だ。なんだか怪しい。女との密会では?(Paul)
奴はそんなにモテないよ(Phil)
他に隠し子がいてリストに載っているかも
また・・決めただろう。今はウィロビーは忘れてこの13人に
集中しろよ。
念の為だ(Paul)
もう振り回すなよ。
●1973
警察がランダーシーの殺人事件の捜査にオランダ人霊能者の
協力を仰ぐかが注目されています。
ポールは白髪のオランダ男クロイセットを連れて現場に行く。
オランダでは有名だよ。私の霊能力で診断や治療をして
医師や患者をおどろかせてきたから。
警察官もでしょ
君は疑っているね。私の運転手などやりたくないだろ?
いいんだ君の自由だよとクロイセット
俺が出世すると予言してたか?それともお前の失敗を?(トニー)
・2人が襲われた現場へ
彼女たちの苦痛がひしひしと伝わってくる。
あなた(アレン)の手の楊枝ぐらいリアルだ
クロイセットは膝まづいて土をかき分ける
「その男の年齢は39歳か40歳だろう。背丈は180cmくらいだ。
体格がよく、口が大きい、茶色の髪で口ひげを生やしている、
その男はメンバーだ。地元のヨットクラブのね。自己顕示欲が
強く車でもスピードを出す。彼の家はここから約25km北にある。
周りに家は無く木々に囲まれた建物で門が見える。
2つの鉄でできた門だ」
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■感想
ウィロビーは警察の要請であるDNAの提出を拒否する中、鑑定ラボ
のコリンからの情報で容疑者13人のリストが送られてくる。
その中にウィロビーの息子2人の名前は入っていない。第一容疑者は
ウィロビーで変わりないが、子供たちが居住しているのは遥かに遠い
事も有り、まずは13人の中からDNA採取を目指して探していく。
その第一候補は当時容疑者だったジョセフ・カッペン。彼は現場で
目撃された車種のオースチン1100を所持していた。そして彼の息子
のポール・カッペンが過去に犯罪を犯して記録が有る事が分かる。
回りくどいやり方で捜査をしているなという感じ。
30年経過した事件ということで、やはり警察の上層部ではこの
捜査を終わりにしたがっている。
一つの捜査に固執することは、同時に捜査官たちの私生活も犠牲
にするからだろう。何よりも行政が捜査に割く資金がないという
事情もある。
1974年代サイドでも捜査の打ち切りのエピソードが有り
並行して2020年代サイドでも捜査の打ち切りはカウントダウン
している状況である。
前回にも書いたが、当時の状況と現在の状況を比較するように
して描かれていく。
ポールとカリーナの関係。
シータとローアンの関係。
ジョセフとクリスティーンの関係。
ダイとパットとポールの関係
ここで興味深いのはこの30年間で起きたそれぞれの心境や状況
の変化だ。
30年経過してようやく本音で話し合う事が出来るようになった
事情がある。
女性は男性からの暴力を恐れて不利な証言が出来ずにいたり、
子供を産んで独り身になることが出来なかったなどの事情が
ある。
心の中にしまい込んでいた抑圧された感情をここで初めて吐き
出すというシーンがそれぞれの人間関係の中で見られる。
当時は話せなかったこと。そこにこそ重要なものが包含されて
いる。
70年代のジェンキンスはずる賢い顔をしているがイケメン顔
だった。やはり時代の流れには逆らえずにお腹が出た何処に
でもいるようなおっさんになっている。
制服警官に当時のジョセフを見張らせていたが、その資料は
なかった。しかしボクシングジムで指導をしていてジョセフ
を疑っていたとする元警官はこの時の警官なのかも知れない。
クリスティーンは当時ジョセフによって暴力でコントロールされ
ていた。離婚できたのは子供たちが大きくなったこともある
のではないか。子供なら母の味方をしそうなもの。ただ用心棒
として人に恨まれる事をしていたのも事実でその辺で殺された
のか。ジョセフに別の女が出来て・・との事だが、その事実
を知り彼を殺したのがクリスティーンだったりはしないのか。
●昔流行した霊能力/サイキック調査
日本のテレビでも90年代?は霊能力(超能力)捜査が結構有った。
元FBI捜査官だとか、FBIからも委託されて捜査をしている探偵
とか、何処かの国で評判のある霊能力者で彷徨う魂と交信して
人探しが出来るとか・・犯人の性格を描くとか、モンタージュ作成
をする人とか・・動物と会話できるとか・・
このドラマの中でも事件が発覚して捜査が難航している時に
オランダ人霊能力が現場を訪れている。
皆どこまで信用しているのか。
テレビ・マスコミによって完全に弄ばれている感じがしてくるが
30年経った今、答え合わせをするようにして当時の彼の発言を
思い返してみるとまたドラマとしての興味の一つとなる。
霊能力者が語る言葉を拾ってみる。
「犯人は教師か人を指導する立場の人」
「非常に計画性のある人物」
「すぐに犯行を繰り返すが、次は全く違う場所」
「その男の年齢は39歳から40歳だろう」
「背丈は180cmくらいだ」
「体格がよく口が大きい」
「茶色の髪で口ひげを生やしている」
「地元ヨットクラブのメンバーだ」
「自己顕示欲が強い」
「車でもスピードを出す」
「彼の家はここから約25km北にある」
「周りに家は無く、木々に囲まれた建物で門(2つの鉄製)が見える」
●上司の能力不足?
当時捜査を担当していたのはレイ・アレン警視正(D.C.S)だ。
次は何をすればいいのかという部下の問いかけにも初心に戻る
としか言いようが無かった。
そして現在の上司であるジャッキーもまた捜査の打ち切りが
近いということを夜のベセル家に話に来る。
■2003年サイド
●いよいよその時が?
ついにコリンのリストの人間と昔の容疑者の血縁者が繋がる。
ポール・カッペン(26歳)。窃盗罪でDNAを採取。
父親はジョセフ。過去の容疑者リスト。
ただ容疑者ジョセフのDNAはない。
●1973年に事情聴取をした形跡がある。
テープ係をしたのがポール・ベセル。
そして聴取したのはジェンキンス巡査部長。
これらが判明した際にポールが忘れていることが意外だった。
ポールのことを「スタンドプレイする人物だ」と非難して
テープ係を命じた人物だからね。
(2002年に会いにいった際には、“君には手を焼いた。だがそういう
奴ほど見込みがある”)と語っている。
そして事情聴取に行ったときに妻のクリスティーンは妊娠していた。
離れで2羽の鳥を飼っていたことも視聴者の脳に記憶として
残るように意図して映像化したはずだ。
車は『オースチン1100』を所持しているがブレーキ故障で修理に出して
いる。
ジョセフの証言何でもクリスティーンが代弁するようにして語ら
せる。当時の証言は家族でも通用したからだ。
『9月15日のアリバイ』も妻が代わりに語る。
自宅にいてテレビを見ていた。ドラマ「刑事コロンボ」。
そしてユナイテッド対エヴァートンの試合。
しかし後にこのアリバイも崩れる。
事件の一週間後に目撃されていること。犯人のタイヤ痕を警察が入手
している。
被害者の親たちは「見知らぬ人の車には乗らない」としていた
がジョセフならば全く知らない人物ではない。
何より彼は非常勤でバスの運転手をしていた。
●2003年にジョセフの家に行くと・・・
クリスティーンだけが家にいた。
1990年6月にジョセフは死亡している
1980年に離婚した。上の子が16歳、ポールが14歳の時のこと。
離れの鳥小屋は草の蔓で覆われている。
以上の事実を突きつけられるとクリスティーナは全てを語る。
しかし彼女はPTSDにかかっているようだ。
■その他
●シータの行動は?
彼女は度々シーバンク・ホテル近くをランニングしている。
当時は進学せずにそこで働きたいと支配人に頼んでいる。
支配人でさえもホテルの仕事で満足できるのかとしている
くらいに優秀だったシータ。
父親の過干渉が有ったからなのか?
友達が亡くなり考えることが嫌になったのか。
その父親も現在はそのホテルで療養/治療しているみたいだ。
エグいのはその時の警察官がこのホテルで祝杯をあげていること。
捜査から解放されたからなのか?それともラグビーの試合の祝勝会??
●75%の確率
決して100%ではない。25%の確率も決して低いものではない。
みんな納得したがって75%を連呼していた。
被害者家族に伝えに行く。
ジョセフが100%犯人だと言えない苦しい展開だった。
まるで納得しろとか妥協しろとばかりの数字が75%に見えて来るし
聞こえて来る。
●ジョセフの家
ジェンキンスが彼から話を聞く際にWinchelseaという銘柄の
タバコの箱を持っていた。
■使用された曲
・No Matter What – Badfinger
・Charmaine – Mantovani
■出演者
D.C.I.ポール・ベセル (Philip Glenister) 警部補 ヒゲ刑事
フィル・リース (Steffan Rhodri) “バッハ” ポールと旧知の仲で相棒刑事
カリーナ・ベセル (Nia Roberts) ポールの妻
D.C.ゲラント・ベール (Gareth John Bale) 新顔の刑事
コリン・ダーク (Richard Harrington) DNA捜査ラボ
ダイ・ウィリアムズ (Keith Allen) 容疑者、サンドラの継父
D.C.S.レイ・アレン (Oliver Ryan) 警視正、70年代
D.I.トニー・ウォレン (Steve Nicolson) 警部 ボス、チリチリパーマ
ジョセフ・カッペン (Aneurin Barnard) ポール・カッペンの父親、車の持ち主
ジェラルディン・ヒューズ (Calista Davies) 工場の女性・犠牲者
ポーリン・フロイド (Jade Croot) 工場の女性・犠牲者、白い靴
D.C.シ・オウェン (Joshua Jenkins) 若手刑事・雑務
D.S.I. ジャッキー・ロバーツ (Karen Paullada) 警視・ブロンド女
ジェーン・マーチャント (Lisa Victoria) セブの妻
D.C.ナイジェル・パーク (Morgan Hopkins) 若手刑事・雑務
D.S.ジャック・グリフィス (Rhys ap William) 刑事巡査部長
D.S.クリス・ウィン (Richard Corgan) 以前ニースに勤務、もみひげ
ウォルター・ワトキンス (Wyn Bowen Harries) 犬を連れて散歩
ジョン・ディルウィン・モーガン (Rhodri Miles) 元サンドラの恋人
Mrs.モーガン (Caroline Berry) ジョンの妻
A.C.C.ティム・ベイリー (Dewi Rhys Williams) 警視監補佐、2002年捜査指揮
フィル・ブラント (Matthew Aubrey) 2002年の事件捜査・DNA検査
セブ (Matthew Gravelle) シータの夫 ハゲ
シータ・アンワル (Priyanga Burford) 学校の校長、被害者の友人
ジャン・スタイルズ (Maxine Evans) 刑事たちの協力者
マヤ (Mia Khan) セブとシータの娘??
トーマス・ウィロービー (Nicholas McGaughey) 容疑者、DNA提出拒否
ロッカー (Russell Gomer) 70年代に被害者と繋がり
パット・ウィリアムズ (Sharon Morgan) ダイの妻、ブロンド
ローアン・アンワル (Kriss Dosanjh) シータの父親
ホッジス (Terema Wainwright) ホテルSEABANK HOTELの支配人
Mr.クロイセット (Walter van Dyk) オランダの霊能力者
デンヴァー・ヒューズ (William Thomas) ジェラルディンの父
ジーン・ヒューズ (Mair Rowlands) ジェラルディンの母
ヴィク・ジェンキンス (Richard Elfyn) 当時の警察
D.C. エルウィン・ウィドン (Phil Howe) ボクシングジム。元警察官
デール () ジョセフと同じアパートの9号室
デニス・ウィロビー
若い頃のDCポール・ベセス (Scott Arthur)
若い頃のカリーナ・ベセス (Elinor Crawley)
若い頃のフィル・リース (Siôn Alun Davies)
若い頃のジェラルディン・ヒューズ (Amy Morgan) デンヴァーの娘、被害者
若い頃のデンヴァー・ヒューズ (Gruffudd Glyn) ジェラルディンの父
若い頃のジョン・ディルウィン・モーガン (Ben McGregor) サンドラの彼、容疑者
若い頃のMrs.モーガン (Rosie Sheehy) ジョンの妻
若い頃のD.S.ヴィック・ジェンキンス (Dyfan Dwyfor) 南ウェールズ警察で上級刑事
若い頃のシータ・アンワル (Natasha Vasandani) ローアンの娘
若い頃のダイ・ウィリアムズ (Rhys Rusbatch) 1973年当時のダイ役
若い頃のクリスティン・カッペン (Remy Beasley)