September 13, 1990
第3話 死神の使い The Reaper’s Helper
監督/Vern Gillum 脚本/Thomas Francis McElroy
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住民から悪臭との通報が有り、38分署殺人課刑事の二人の
マックスとローガンが呼び出される。階段を昇るが足取りの
重いマックス。現場にはトニー・プロファツィ捜査官も居た。
被害者はボビー・ホランド、26歳か27歳だという。
後頭部を一発撃たれて死んだ後2日が経過しているというもの。
犯人はドラッグの売人なのか、それとも強盗なのか。しかし
サイフは盗まれていないことが判明する。
このアパートは玄関のドアもボロくて壁ははげているという
階下の住人。ボビーの部屋からはよく悲しげなピアノ曲が
聞こえてきたという。朝から晩まで出ていたようで、土曜日の
深夜1時半に掛け去る男とすれ違ったという女性。
不審者の顔を見れば危険だと思ったので顔を伏せたという。
検死官からの情報によると室内の指紋は十数人分が出たが
何れも部分指紋で前科のあるものはいないという。
普通強盗ならば被害者の体にも争った跡があるハズなのにそれ
がないという。38口径の銃弾を受けただけだという。打たれた
距離は12~18インチだろうと。火薬のヤケドの跡があるが、
被害者の手には硝煙反応はなく、現場からも銃は見つかって
いなかった。
4月15日(水)・被害者の両親の家。
ボビーの両親である父・アンソニーと母・パトリシアから話を
聞く。息子は生まれた時から大柄だったという。大柄の人は
襲われないと雑誌に書いてあったと。交友関係を尋ねると、
息子は一人が好きな子で友達はあまりいなかったという。兄妹
はいるのかと問うと、パトリシアは難産だったことも有り、
それ以降産むことはなかったという。アンソニーは彼が家を
出た時にはもう息子を失ったも同じだったのだと語る。
アンソニーに署に来てもらい遺留品を受け取ってもらう。
するとオメガの時計がないという父。卒業記念に買ってやった
もので毎日身につけていたハズだという。バンドはスチール製
の鎖状のもの。また護身用に38口径の銃を持たせていたと語る。
クレイゲンも含めて今回の事件を話合う。
部屋は荒らされていたのに何故被害者には傷一つ付いていない
のか。しかも被害者はかなりの大柄の男であり誰がそんな男を
襲うのかと問うと、クレイゲンはもっと大柄の男だろうと語る。
侵入経路は無さそうだとして、やはり知り合いの線が高く、
交友関係を調べろとクレイゲンは指示する。
職場にいくと、ボビーの上司は彼はいい奴だったという。
ガールフレンドはいなかったようで、ギャンブルをしていた
ということも聞いていないという。同僚とは付き合いもなかった
が、エンジェル・スアレスと時々ランチを共にしていたとの事。
エンジェルから話を聞くと、ボビーは知人だという。土曜日の
アリバイを聞くと自分はサンフアンの実家に行っていたとの事。
あの晩彼は友人と飲みに行くと言っていたとし、サンドイッチ
屋のロイス・リヴェラが知っているだろうとのこと。
ロイスから話を聞くと、確かに土曜日に姉に逢う前に彼と飲んだ
という。しかし彼はボーイフレンドではなく友達だと語る。
彼はそもそもゲイだったのだと。
4月21日(火)・パラダイスロスト・バー。
バーテンダーの男性によると、ボビーはよく店に来ていたが、
土曜日はシルクジャケットの格好付けた男と一緒に居たという。
男は男娼っぽかったと。
署に戻りゲイの前科者を探すがそのような特徴の人物は見つから
なかった。するとクレイゲンがやってきて犯人が自首してきた
と語る。凶器が空き地で発見されたが、指紋が一切ないという。
銃の登録はボビー本人のものだと。
マックスが買ったドーナツを奪い去るクレイゲン。
再びボビーの両親に話を聞きに行く。
息子はフットボールのスター選手で学生自治委員などに入り、
友達も女性も多く集まって来ていたという。ベッドの下には
プレイボーイ誌なども隠して有ったと。高校時代にはガールフレンド
もいたが全てを捨てて行ったという。時々父親は都会まで息子に
逢いに行ったが、外見も話し方も普通なのに何故ゲイなのかと
思ったという。そんな彼に変態には気をつけろと言って銃を手渡した
のだという。ボーイフレンドは一人いたとし、エンジェルと名乗って
いた人物だという。
エンジェルの元に話を聞きに行くと、ヤツはゲイだということを
主任に隠していたという。オレはゲイが嫌でわざとゲイのジョーク
などを話していたが、それをボビーは怒ったという。二ヶ月前に
彼はジムで出会ったという男性とつきあう事になり、オレとは
別れたという。イーストサイドのジャックという人物とのこと。
そんな中マックスは頭を一発で撃たれる事件というのを何処かの
雑誌で見かけたという。するとその雑誌をオフィスで見つける。
そこにはサンフランシスコとロサンゼルスで同様の事件が発生して
いる事を知る。どの現場にも凶器指紋が見つかっていないという。
マックスはサンフランシスコの刑事に事件の調書を取り寄せる。
ローガンはロサンゼルスの事件担当者に電話するが、ロスは非協力
的だという。日射病でイカれているんだろうというマックス。
7月9日(木)・エイズと闘うゲイの会事務所
8月22日(水)・高位裁判所
8月27日(月)・刑事裁判所
8月28日(火)・高位裁判所
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アパートの一室で男性が銃で頭を撃ち抜かれて死亡する。
部屋は荒らされているが被害者本人にはまるで体に争った形跡
がないという違和感が有った。被害者は学生時代にフット
ボールのスター選手だったということも有り、人一番大柄の体格
であることからどんな人物が彼を襲ったのか。
彼の交友関係を調べていくが、彼は一人で居ることが多く、
同僚のスアレスとサンドイッチ店のロイスという女性と飲みに行く
ことが有ったことを知り話を聞いていく。
被害者の交友関係、性格を調べていくウチに、彼はゲイであり、
更にはエイズだったことが判明する。息子がゲイだと知る両親とは
疎遠な関係であり、親も失望を隠せないでいる中で、彼の当日の足取り
を追って行くと、シルクジャケットの男と飲んで居たことが分かる。
被害者がHIVだったということが分かるのがタイミング的にかなり
遅い気がするけど、ネタ的には「尊厳死」というタイムリーなネタ
が盛り込まれていた。ドラマの中で証言する医者は、末期のがん患者
に対して尊厳死に対して手を貸すことはないとしながらも、それが
認められているイギリスに行くということを示唆することはあると
語っていた。
今日騒がれているアメリカでの尊厳死の29歳の女性は、サンフランシ
スコから尊厳死法が認められているオレゴン州に移り住んだという
事も有るが、このドラマに於いては尊厳死ではなく、他人が手を
貸して”他殺”という形で”自殺”するという「慈悲殺」の是非を問う
物語だったので多少ニュアンス的には変わってくる。
問題が複雑化してしまったのは、被害者が「エイズ」であり、
「ゲイ」であるということ。
ドラマを見ていると法廷のやりとりに関しては、そんな雑音が多すぎて
まともに機能しているのか怪しい部分も有った。
■捜査部では、
被害者が他にも存在していることが判明し、その共通性を見出す中
で、謎の男性シルクジャケットの”ジャック”を探していくというもの。
クレイゲンの行動に意外と滑稽なシーンが多く、
マックスのドーナツを奪い取ったり、ローガンがロス市警に被害者の
現場の捜査報告書を回してもらおうとする際に、相手が「捜査中の
事件なので情報開示は不可能」という警察が警察に秘密保持で足蹴に
される中、クレイゲン自らが先方のお偉いさんに電話して、
「ウチのローガンが無礼なことをした」として情報を回してもらう
ところなど笑えるところ。
冒頭では2話と同様にマックスを階段で現場まで走って昇らせるという
酷な状況を作るところまで有った。
ローガンはゲイであることを見抜くためには、「左目を先にウインクし
たらゲイです」と訳の分からない論理を語っていたけど、そういう
世界ではそういう暗黙の取り決めがあるのだろうか。
マンハッタンだけでなく、サンフランシスコとロサンゼルスでも
同様の事件が有ることをマックスが気が付き、被害者たちのアドレス
帳から共通する人物を捜して黒幕である男性を探り出した。
被害者に共通するのは、過去にある程度華やかな成功が有ったこと
が上げられるのかな。
被害者のフォレストはUCLAで言語学の博士号を取っていたとし、
被害者のドッジはソウル五輪で銀メダリストだったという。
疑問として残るのは、
ボビーは「エイズと闘うゲイの会」に手紙を書いて治療法に関して
予約を入れていること。
また父親は元々ゲイということを知っていたり、エイズになったと
するボビーが彼の元を尋ねて「殺して欲しい」と頼んでいる中、
父のアンソニーがどの時点で「銃を持つこと」を語っていたのかが
興味深い点なのかも。
■法廷部では・・・
毎回ババを引いているのはストーン検事補だ。
これは自殺ではなく他殺であり、自殺の意思が有ったかどうかは
最後の最後まで本人にしか分からないことだとして、最後まで
ジャック・カリーを有罪に導こうとしていた。
検事補に対してカリーの代理人を務めるのは、市民権弁護士だと
いうジュリア・デベイキーというちょっと珍しい名字の女性。
今回の事件を見ていると、まず問題点はカリー自身が取調室では
供述にウソを付いていて、「自分は銃を持っていただけで、ボビー
が引き金を引いていた」と語っていること。これだけで捜査妨害
の罪に問われる気がするんだけどね。
「慈悲殺」を求めたものたちはカポジ肉芽腫やニューモシスティス・
カリニ肺炎だとして、その苦しみが分かるのかと主張していたけど
殺したカリーだってそれが分かるハズもない。
ストーン検事補は「慈悲殺」ではなく「謀殺」として起訴する
ことを考え、最終的には罪状認否の際に罪状を述べる時には、
第二級謀殺、第一級共同謀議、第一級故殺、過失致死、自殺幇助、
第二級無謀危険行為の罪を着せていた。
しかしドラマでは何故か被害者がゲイであることを知り、世間では
同情論も浮上するとしてシフは臆する姿が有る。
世論がゲイやエイズに対してバッシングだと騒いでいたけど、何が
バッシングに当たるのかイマイチ謎だった。ゲイをバカにするな
と殴ってきた男に至っては狂っているとしか思えない。
更に「慈悲殺」だと主張するカリーという男は、殺した男から
思い出の時計を受け取っているけど、ネーム入りのそういうのを
もらうという神経自体もよく分からなかった。
法廷では「死ぬ権利」についても言及されたが複雑なものだとして
結論が出るハズもない。
ホスピスカウンセラーは自殺幇助は違法なので自分ではしないと
語り、エイズ電話ボランティアのゴードンはエイズの死が苦しい
事を告げ、死ぬ権利はあることを主張。
そんな状況の中で、模倣犯が発生し、知的障害児を射殺する事件
まで発生。
ボビーが死のうとしていたという意思を主張する為に弁護士側は
バーテンダーに証言させる「ツケの金を精算していた」と。
父親にも証言台に立ってもらい「自分の元にも殺してくれと言いに
来た」と証言させていた。
複雑なのはボビー本人が「死ぬのは恐い」と発言していること。
ドラマでは模倣犯が発生したことで、益々「慈悲殺」に対して
厳しく言及していくべきじゃないのかなと思っていたけど、
ストーンは何故か起訴を取り下げようとする意図をもって刑事
たちに再捜査を行わせていたりもする。
結局裁判では第二級の無謀危険行為だけが有罪で、それ以外は無罪
だった。その後にカリーがストーンの元にやってきて、「慈悲殺」
の警告に利用するのに僕を利用したなと憤怒していったけど、
あなたにそれを言う権利があるのかと小一時間なエピだった。
***
細かい突っ込みだけど、両親の行く際に、いつもの「ダッダーン」
というBGMの元で、「4月15日に両親の家」とテロップが出るけど
言語表記を見ると4月14日って書いて有るのになんで日本だと
15日に変えてしまったのか気になる(笑)
マックス・グリービー (George Dzundza) 38分署殺人課・巡査部長
マイク・ローガン (Chris Noth) 38分署殺人課・マックスの相棒
ドナルド・クレイゲン (Dann Florek) 38分署殺人課・警部
ベン・ストーン (Michael Moriarty) 検事補
ポール・ロビネット (Richard Brooks) 検事補
アダル・シフ (Steven Hill) 検事
— (Steven Zirnkilton) Narrator (voice)
ジョン・R・カリー (Peter Frechette) “ジャック”、エイズ、自殺幇助
アンソニー・ホランド (Tom Signorelli) ボビーの父親
パトリシア・ホランド (Barbara Andres) ボビーの母
エンジェル・スアレス (Jesse Corti) ボビーの元パートナー
ジュリア・デベイキー (Charlotte Moore) 最強の市民権弁護士
Mr.ゴードン (Neal Benari) エイズ電話相談のボランティア
テリー・ローランド (Richard Steinmetz)
ロイス・リヴェラ (Millie Tirelli) サンドイッチ店
マートン (Steven Gilborn) Trial Judge
ジェド・コールズ (Francis Guinan)
アリソン・マクギル (Susan Knight)
バイオレット・ソーヤー (Suzanne Shepherd) Arraignment Judge
(Jack Laufer) Wellman
マサッシオ (Frank Girardeau) ボビーの職場の上司
トニー・プロファツィ (John Fiore) 捜査官
ハリー・ピンチャー (Thomas Mikal Ford)
ハーリー (Jack Merrill)
シオラン (Josh Pais)
— (Roger Rignack) Irate Man
— (Matthew Locricchio) Court Officer
— (Olinda Turturro) Jury Forewoman
— (Christopher Rubin) Reporter
ブラッドリー (Daniel Kenney)