第8話 誕生日 Happy Birthday, Cancer
脚本/Darlene Hunt 監督/Tricia Brock
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キャシーはマーリーンを自宅に招くと一緒にケーキを用意して
食べる。今日は私の43回目の誕生日。誰かがケーキを買って来て
くれるのを期待するよりも自分で買ってしまおうと思ったと
いう。私の好きなケーキはウェンディングケーキのような白くて
バタークリームのやつだという。今回はサマンサかジョンが
キャンセルで取りに来なかったので、このケーキが買えたという。
マーリーンは18kgのケーキを食べる以外に何か誕生日を祝う
ことはないのかと問う。私に取って最後の誕生日から知れない
というキャシーは何するのか決めるのはストレスだという。
死んじゃいそうか?とすると、キャシーはマーリーンに年を取る
ってどんな気持ちかと問う。皮膚がセーターみたいにダブつく
というマーリーン。
そこにアダムが裏口に塗るペンキを持って入ってくる。
アダムは何でウェディングケーキを食べているのかと問う。
キャシーはアダムに対して、ドアを塗る際にはガラスにペンキ
が付かないようにテープを貼り、ハケにペンキをつけすぎない
でくれと語る。仕上げが汚くなるし、ペンキが床に落ちるの
を防げと。
キャシーはマーリーンに対して、あの子は良い子かと問うと、
気性さか良ければ大丈夫だが・・という。しかしマーリーンは
問題はキャリーの方だと語る。
レニーは学校でキャシーに対して誕生日のプレゼントに
緑色のスカーフをプレゼントする。その服の色を見た時にピッタリ
だと思ったという。気持ちが沈んだ時でも生命力を感じる色
だと語る。レニーは友達がアートの個展をやるのでバハマに行く
ことになったとし、夜の便で行くので今日一日一緒に過ごさないか
という。するとキャシーは一緒にバハマに行きたいことを語る。
43年生きて来たけど、満足する程旅行をしていないし、行きたい
と思うだけでいかなかったこと。水場だって見るだけで買わないで
いること。これこそ私が誕生日にしたいことだという。
レニーは喜び一緒に行こうと告げ、2時間後に迎えに行くという。
誕生日おめでとう、良く似合っているよと告げ出て行くレニー。
帰宅するとポールは知り合いを集めてキャシーのサプライズの
誕生日パーティーを用意していた。キャシーは嬉しい反面、レニー
と旅行に行こうとしていたので微妙だった。ビックリしたこと
を告げ今日で私も43歳だと語る。それにしてもこんなに来て
くれたのかという。スーザン、ビル、マーリーンなど来てくれた
人にお礼を言う。私の為に集まってくれて嬉しいとし、なんと
言って良いのか分からないという。そんな中ポールが変わりに
コメントを言う。キャシーに対してお礼を言うのは俺の方だと
し、生まれて来てくれてありがとうという。キャシーは7月
生まれで星座はキャンサー・つまりカニ座。だから、たまに
ハサミを振りかざすこと。寝起きとか俺が何か食べている時とか
それを使うが、でも実際には堅い甲羅の下には柔らかくて温かい
素晴らしい女性がいるという。でもデカイ牡牛座のウシが
幸運にも射止めたのだとして、この先も死ぬまでずっとカニ・ウシ
夫婦でいようと語る。おめでとう俺のカニさんと。
ポールは最近ちゃんとしたパーティーをしていなかった事を告げ、
確かに今は全部がokとはいかないが誕生日だけはスルーできない
ので理解して欲しいと語る。サプライズはみんなが好きなこと
だと。
そんな中キャシーに対してここにはトイレットペーパーがない
ので紙ナプキンは有るかという女性が声をかけてくる。
キャシーは信じられないという顔を見せる。彼女はレベッカ。
大学時代のルームメイトだという。トイレットペーパーを買う変わ
りに近所のアイスクリーム店で紙ナプキンをよくくすねてきた
わねと語り合う。まだシカゴに居るのかというと、そうだという
レベッカ。ポールは彼女が誕生日のプレゼントだという。俺は
アンジェラ(カウンセラー)と何時間も喋っているから、キャシー
もレベッカと相当喋りたいだろうと思ったとし、沢山喋ってくれ
と語る。
レベッカは連絡しなくてゴメンというと、何で連絡しなくなった
のかも覚えて居ないのだという。私がきっと何かをやらかした
のよねというレベッカに対して、あなたは私の結婚式に来なかった
のだという。結婚式の3日前にあなたは誰が男性と出会い、キャンプ
に行ってしまったのだという。あなたは花嫁の付き添い人だったの
だと語る。私が友情よりも男を取ってしまったのねというと
キャシーに謝罪する。しかしキャシーもう15年前のことだから
良いとし何とも思っていないと語る。
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キャシーは43回目の誕生日を迎える。余命に関して医師から明確
な答えは無かったけれど、1年は有るであるのではないかとされる
中、この年の誕生日がキャシーにとって最後となる可能性が有り、
誕生日のプレゼントに対して本当に自分が欲しいものとは何かを
考える。今まで思っていただけで出来なかったことは何かという
ことを考えた結果、旅行だと考えて、不倫しているレニーと一緒
にバハマに行こうと考える。しかしそんな状況の中、今まで大して
祝ってくれなかった夫のポールが、妻のご機嫌取りの為に、最高
のサプライズの誕生日パーティーを用意してくれる。この日に
旅行に行こうとしていたキャシーにとっては、後ろ髪を引かれる
思いでどうすべきかを考えていくことになる。
なんか今回のNHKの吹き替えの翻訳がイマイチだったなぁ。
スラングも多いし微妙な表現も多いので翻訳って難しいと思う
のだけど、少し翻訳が神経質に懲りすぎて意味が伝わらないという
ジレンマに繋がった感じ。字幕版の方がこれはシンプルでよく
伝わってくる。
今回のゲスト/キャリーのルームメイト役・レベッカを演じたのは
はなんとCynthia Nixonだった。ゲストというよりも今後付き合い
が再び始める役柄なので準レギュラー化していくようだ。
「Sex and the City」で最後まで結婚せず、キャリアを選んだ
ミランダ役を演じている彼女。SATCの時には弁護士役だったけど、
その時の印象が強いのか、ショーンから赤いブーツの件で
「その靴の為に皮が剥がされるウシのことを考えているのか」
と問われ、「クソ野郎!」と反論した後にキャシーの兄のショーンだ
と知って会話する流れが有る。その際レベッカの現在を尋ねた時
に「何処の弁護士事務所か?」と問うシーンに繋がって居る。
実際には製薬会社の営業をしているとのことだったけどね。
「剥がされるウシの皮」は牡牛座のポールとカニ座(キャンサー)の
キャシーのやりとりの皮肉にも繋がって居るのだろう。
Cancerは映画でいうところのガンなので、折角ポールがキャシーに
対して良い事を語るスピーチのシーンだったけど、そんな事実を知って
いるマーリーンにとってはあまり良い言葉ではないと考え、
“これはキツイ”と呟くシーンがある。「永遠に・・」なんてセリフ
も相当厳しいワードだろうしね。
またこのスピーチの中でポールはキャシーに色々と不満に思っている
ことを、カニとウシの例えとして語ったところは、上述した皮肉にも
繋がって居るのだろうけど、相変わらず、彼は、お礼を述べつつも
皮肉で話をして、良い話を無効化してしまうところに繋がって居る。
勿論ガンの事実を知らないが故に残酷さを振りまいている部分に
関しては彼に責任はないと思うけどね。
今回のドラマのテーマは、誕生日だった。
誕生日といえば象徴するのがプレゼントでありケーキであり。
しかし誕生日とは裏を返すと、また一年、年を重ねたということ
が有り、今回は誕生日を通じて人が老いることの意味に言及する
物語だった。
年を重ねれば自分が手にした大事なものが少なからず有るハズなのに、
レベッカと再会して近況を語り合う際、
「あなたま人生で一番大きな出来事は?」と聞かれて凍り付く
キャシーの姿が何とも言えない。普通ならば家庭を持ったとか、
子供が出来たとか言えるんでしょうけどね。
翻訳上見過ごされがちだったけど、年齢を重ねたことで、それに
抗う女性たちに対する皮肉も至る所で描かれていた。
レニーのセリフの中で、どうせ年寄りばかりなのでパーティー
はすぐにお開きになるだろうとしていたし、アリソン叔母さんは
整形で若作り、そしてレベッカはショーンから今でも20代が
着るような服云々だとして指摘されている姿が有る。
そんなショーンがレベッカに惹かれてしまうというのだからこれ
また皮肉だね。
結果として見るとキャシーは「老いは宝だ」と語っていたけど、
(吹き替え版だと「年を取るのは良いことですよ」と)
当然そこには長生きすることへの羨望なまなざしがあることは
言うまでもない。
しかし旧友が再会すると、途端に当時のことに戻ってしまうところ
が有るんだよね。大学・高校時代の友達と逢えば、一種にしてその
モードに入って行く。今回キャリーとレベッカが再会した際には、
示し合わせたようにキャンパス内で楽しんだことを語り合っていたし、
カラオケでも盛り上がる姿が有る。
一緒に「Heart」のコンサートに行ったわねとして会話していた。
そして二人はそんなHeartのWhat About Loveをカラオケで歌うこと。
また二人は当時「クレイジーコンビ」というタトゥーを入れようと
していたことを語る。
しかしこの流れでは結果としてレベッカだけがタトゥーを入れる
格好となっており、キャシーが裏切った形になっている。
結婚式とは比較できないけど、結婚式ドタキャンした背景には、
無意識のウチでの報復的な意思も働いたのかな。
実は冒頭でその事実を聞かされた時には、キャシーも単純に誕生日
を抜けだして、レニーと楽しむ為にレベッカが結婚式には来なかった
事を語って罪悪感や後腐れのないことになるのかなと思っていたん
だけどね。
しかし今回はポールに同情出来ない訳では無い。
キャシーは悪い意味で言った訳では無いのだろうけど、自分は
20年間今回の様な100%ハッピーな出来事だと思えることはなかった
という。ポールの人生を全て否定している感じがして、キャシー
が傷つくだけでなく、アダムの存在とかポールの存在自身を全否定
しているようで、あんまり共感が出来ないところも有る。
それに大抵最も楽しい時って責任のなかった頃の高校とか大学生
の頃って事も多いので、それを引き合いに出されるのもちょっと
辛い。
大学というと何故かシャツを脱ぎたくなるというキャシー。
現在シャツを着ているというのは、それだけ責任とか纏うべき
ものが出来たということの証しなんじゃないですかね。
それが年を重ねるということになるのかな。
あとどうでも良いけど、”ぶっかけ”というスラングのお菓子を
アダムが配っては楽しんでいた。こういうところを見ると子供
なんだよね。先日のエピソードで、キャシーが”クソっ”って
いうことに喜びを覚えていた彼だけど、そんな子供な反面、
やはりアルツハイマーを患っているであろうマーリーンの面倒
を見るという優しさも持ち始めたことでアダムのことは気になり
ますね。
因みにぶっかけは日本のAVが生んだ言葉で、世界中のAVサイトで
BUKKAKEなんて言葉がそのまんま単語で通用する。日本のポルノ系
マンガのことがHENTAIというジャンルになっているように、
AVでの日本は先進国ですね。
■使用された曲
・What About Love by Laura Linney and Cynthia Nixon
・Swell by Hollywood Drunks
キャシー・ジェミソン (Laura Linney) 43歳、妻、高校の教師
ポール・ジェミソン (Oliver Platt) キャシーの夫
アダム・ジェミソン (Gabriel Basso) 高校生
ショーン・トルキー (John Benjamin Hickey) キャシーの兄
アンドレア・ジャクソン (Gabourey Sidibe) 生徒、デブ
マーリーン (Phyllis Somerville) キャシーの隣人、夫が他界
レベッカ (Cynthia Nixon) キャシーの大学のルームメイト、製薬会社営業
レニー (Idris Elba) キャシーの浮気相手
アリソン叔父さん (Willi Burke) ポールの叔母さん、若作り
ブレント (Nathan Eswine) アダムの友達
スーザン (Ann Arvia) 友達
ビル (Mike Larose) 友達