コールドケース 迷宮事件簿 Cold Case シーズン6 第20話 ホームスチール Stealing Home

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第20話 ホームスチール Stealing Home

脚本/Danny Pino、Elwood Reid 監督/Kevin Bray

【ストーリー】

1998年4月6日・フロリダ州マイアミビーチ。
イカダに乗ってキューバからの亡命者はアメリカにやってくる。
沿岸警備隊はそれに気がつくと逮捕しようとして近づく。
キューバからの亡命希望者は鮫の居る海を何日も何週間もかけ
てやってくる。陸にたどり着く前に捕まえればただちに強制送
還されるが、捕まらずに上陸することが出来れば亡命は許される
というものだった。海岸では常に移民局の捜査官と亡命者の
にらめっこがあり、入国を阻止する中で、ゴンサロ・ルケも
亡命を企む一人として存在していた。みんなが捕まる中ゴンサロ
も海の中から動かない為に諦めたものかに思われたが、突然
彼はスピードを出して陸に向かって走る。捜査官に手を逃れて
砂浜に上陸すると、それを傍観していたものたちから拍手喝采
が起きる。
ゴンサロはエージェントのハイミー・レイエスと共にマスコミ
の前に会見する。エージェントは彼はキューバの野球界では
知らない人はいないというキューバ界のミッキー・マントル
だという。フィラデルフィア・フィリーズ球団と契約したと
して来週2Aレディングフィリーズからスタートすると語る。
ゴンサロはアメリカのみんなに頑張ると宣言する。
しかし彼は野球のグランドに倒れて死亡する。1999年10月21日
のことだった。

2009年。
スティルマンはスコッティとリリーに対して移民税関捜査局の
スカーセッリ捜査官からエディという不法入国者が取引した
いことがあるとして連れてきているという。情報は1999年10月
の未解決事件についてだという。その時期の未解決事件はギャ
ングの撃ち合いが二件と強盗致死だという。エディはこのたび
窃盗と大麻所持で捕まったとし、彼は大麻は祈る為の道具だ
と告げる。ハイチへの強制送還よりもアメリカで一ヶ月服役し
たいと言ってきていること。スコッティたちは彼から話を聞く
中で、ラリッている割に何故10月だと覚えているのかと問うと
ハロウィーンのカボチャのことを覚えているからだという。
場所は何処なのかと問うと、ランカスター通り傍の野球グラウ
ンドの件だという。スコッティはそんな事件はないとして、
取引は終了だとするとエディは焦って殺されたのは有名な野球
選手でフィリーズに入団した選手だと語る。しかし見つかった
のはそこから8km先のバッドランドの路地だというリリー。
写真を見せると俺が見たのはこんなものじゃないという。

1999年。
エディはグラウンドに倒れるゴンサロに近づくと死んでいる
のを知り彼が首からぶら下げていた十字架のネックレスを
奪おうとする。しかしその時、車のライトが見えて誰か来た
ので近くに落ちていたバットを持ち帰ったという。車が居なく
なった後にまた戻ったら遺体はなくなっていたとし、持ち帰っ
たバットは甥のパトリックにあげたとのことだった。
そのバットを見せてくれというリリー。

2009年。
倉庫からゴンサロ・ルケ(23歳)の捜査調書を見る。
1999年10月22日の朝、バッドランズのエルクハートの路地で
遺体は発見され、死因は鈍器で胸を殴打されたことによる心停
止だという。治安の悪い場所なので、ドラッグ・銃・女を
買いに行ったと当時推理されているというスコッティ。
彼はマイナーリーグだが有望なバッターだったこと。生きて居
れば去年優勝だったのに・・というスティルマン。ジェフリーズ
は遺体の傍に有ったバットが届いたとして持ってくる。バット
にはイニシャルが掘られていて、「S.T」と書かれていた。
もらったときから書かれていたものだとされているもの。当時
事情聴取にはエージェントのハイミー・レイエスと従兄弟の
フアン・デ・ラ・クルスが尋ねられており、ゴンサロの妻・
ピエダードと息子のアンドレスは事件の翌日にキーウェストに
着いているとのことだった。スティルマンは改めて話を聞いて
来いと語る。ジェフリーズはエージェントと話をしてくるとする中、
亡命されて殺されるとは・・とつぶやくスコッティ。それを
見たジェフリーズはキューバ人としての血が騒ぐかと告げる。
俺は半分プエルトリコだからと語るスコッティ。

ヴェラは署内で今年も消防署とソフトボールをやるので、我と
思われるヤツは名乗り出てくれと声をかける。去年みたいな
惨敗を避けるべくピッチャーは警邏課から凄い助っ人が来る
とのこと。今年からルールが変わり男女混合チームなったという。
ミラーはそれならば出場すると語ると、ボールを取れるのかと
問い女投げだろうと問うと、性差別だと激怒する。リリーも
女投げだとすると、キャッチャーだという。
ミラーはヴェラに対してユニオンシティまでは後ろの席に
座らせるとし、これからピエダードに会いに行くことを語る。
——————————————————–

■事件は1999年10月に発生

今回の事件は殺される1年半前にキューバからにイカダで100km
の道のりを渡り亡命してきた野球選手・ゴンサロ・ルケが被害者。
事件そのものは既に10年前とものとなっていて、夢のある若者
が殺された事件だけど、人々の記憶の中からも忘れ去られてし
まっているものだった。何と言っても刑事課の面々も覚えてお
らず、亡命した野球選手という下りでようやく思い出したくらい
だからね。
その要因となったのは治安の悪いスラム街で遺体が発見された
ことだろうけど、キューバから来た人にとってみると、そういう
リスクは感じられないところも有ったのだろうか。

結論から言うと皮肉にも助けようとして運んだからこそ遺体は
動かされていたのだけど、動かされたことで不名誉な死の様に
扱われてしまうというところが何ともいえなかった。

■家族を捨ててアメリカに一人で亡命

ドラマでは全くゴンサロ自身に非がない訳ではない。
妻子がいるにも関わらず野球の道を求めるがあまり、置き去り
にするようにしてアメリカに出国してしまったこと。
その後アメリカでのゴンサロの暮らしぶりとキューバに残され
たものや、強制送還されたものたちとの温度差を考えると、
当然ながらその違いによって怒りというものは発生する。
血を分けた家族ならばまだ耐えられる部分はあるかも知れない
けどね。

■社会主義国家と資本主義国家の悪い面を描いた物語

社会主義・独裁主義国家からやってくる人たちにとって最も
驚くべき事は自由であると同時に物が豊富に溢れているという
ことだと思う。そして何よりも努力次第で、その豊かさを
甘受できる可能性が高いということ。可能性が高いというだけ
で必ずしも努力が報われないということもまた、住んでいくウチ
に分かっていくことだとは思う。

エージェントにしても密輸入代行者の中には悪気がない一面も
有り、資本主義の論理に飲まれつつも、次の亡命者のため、
チャンスを与える為、家族と引き合わせる為に行動を起こして
いる部分が有る。金を搾取するゲスな野郎たちと見えなくも
無いけど、少しずつ彼らが移民を見つめる姿を見ていると決して
憎めないこともないところは有る。

■主義や国境を隔てる僅かな違い

アメリカのドラマを見ていると時々アメリカで法を犯す人の
中にはその抜け道として、沿岸に航海している中で、不法カジノ
に興じたり、麻薬や違法な葉巻を吸って満喫するものたちが
居る。陸地にいると法律で縛られているが、沖に出てしまえば
アメリカ法が及ばないことを意味している訳だけど、
今回は逆の形でアメリカの法が侵入者に辛い思いをさせる
形となった。陸に上がれば亡命者で、海で捕らえられれば
強制送還。北朝鮮から中国に脱出する市民に対して、アメリカ
の人権団体などが北朝鮮に強制送還させれば、身の危険だと
して阻止しようとさせる働きかけがあるけど、ここで起きている
こともまた同時にそれを意味していることなんだけどね。

スタートラインとか境遇が似ているものに取って、僅かな運命
の掛け違いによって発生するその後の人生の待遇の違いという
ものは、相当怒りの感情としては強く残るものだと思う。

■ヴェラとミラー

今回この組み合わせが多かった。
ヴェラの相棒のジェフリーズが先日撃たれたということも
有るのだろうけど、この二人当初から折り合いが悪いのに最近
意外と良い雰囲気が有ったりするんだよな。
情報提供者から事情を聞こうとした際に、逃走した彼を追いか
けるシーンがあり、ヴェラじゃ流石に追いつかないだろうと
小一時間なところをミラーが上手くカバーした格好だったね。

ヴェラは取調室に於いて、ショータイムというあだ名の男に
ムショタイムに改名するか?として迫っている姿が有ったり
して、意外と良い感じの役柄だった。

■2015年に見るこのドラマの意味

キューバから亡命してきた人物の中には政権が倒れた際に
祝おうとしてシャンパンを用意しているものたちがいた。
2015年になってアメリカとキューバが電撃的に国交を回復し、
何処まで自由度が高くなったのかは分からないけど、
コールドケースが2015年現在でも放送しているとするならば
どんな視線が有るのかなと思うとまた興味深いものがあるな
と感じる。

■キューバ系・プエルトリコ系・アメリカ人

今回はスコッティ演じるDanny Pinoが脚本として加わり
キューバの血の入った彼ならではの視点が盛り込まれたのでは
無かろうか。
彼の祖父とその祖父の兄が、今回の事件の関係者と境遇が
似ていることも有って、感情的には理解出来るところも有った
のだろうけどし、キューバ人にしか分からないジョーク
なんかも飛び出していた。(混血故に「惜しかったな」と語る
シーンや、キューバリブレ(メンティリータ)というカクテルが
意味する二つの違いなど。)
興味深いのはDanny Pinoで検索してみると、配偶者がリリー
という女性で、2人の子、ジュリアンとルカが居ることか。

「心臓が止まったのではなく張り裂けたんだ」というスコッティ
の主張によって全容を引き出すことが出来た。

■野球

やはりキューバと言えば野球。カストロが野球を宝にしていた
分だけ、母国から逃げてアメリカの野球選手として活躍する
ものたちへの敵意は相当なものだったハズ。
キューバは素晴らしい選手が多いけど、サウジアラビアの
サッカー選手と同様に外国での活動が制限されている為に、
なかなか辛い事情も有るけれど、今はその制限も政府が許可
する限りでは活動出来るみたいですけどね。

■殺人課エピソード

どの地区でもアメリカのドラマだと消防士vs警察官の何らか
の戦いがある。このドラマではソフトボール大会のようで
ヴェラが妙に張り切っていたのが印象的だった。
スティルマンは俺は秘密兵器だと語っていたり、これからは
女性も混成チームとして加わることになるという際には、
差別の多い土地柄に於いても、それが融解されつつあるのかな
ということを感じさせる。ただヴェラは相変わらずミラーとか
リリーに対して”女投げ?”としていたけど、それってどういう
投げ方なんだろうか。

■使用された曲

・Vida Mas Simple by Nil Lara
・Que Bueno Baila Usted by Beny More
・537 C.U.B.A. by Orishas
・How Do U Want It by 2Pac, JoJo & K-Ci

■出演者

リリー・ラッシュ (Kathryn Morris) 殺人課の刑事
スコッティ・ヴァレンズ (Danny Pino) 殺人課
ジョン・スティルマン (John Finn) リリーの上司
ニック・ヴェラ (Jeremy Ratchford) リリーの同僚刑事
ウィル・ジェフリーズ (Thom Barry) リリーの同僚刑事
キャット・ミラー (Tracie Thoms) 麻薬課刑事 s3#8から

2009年
ゴンサロ・ルケ (Shalim Ortiz) キューバから亡命
ピエダード・ルケ (Silvana Arias) ゴカサロの妻
オズマニー・レオン (Steven Bauer) “オズ”、
エリック・ハインズ (Darius McCrary) “ショータイム”、野球選手
ハイミー・レイエス (Nestor Serrano) エージェント
フアン・デラクルーズ (Oscar Torre) ゴンサロの従兄弟
マリソル・チコスタ (Valery M. Ortiz) バーで野球選手をナンパ
エディ・St.ジョン (Bambadjan Bamba) 99年、09年、ゴンサロ目撃
— (Marcus DeAnda) Reporter
アンドレス (Robert C. Lopez) ゴンサロの息子
クリフォード (Grant Monohon) ミラーの情報屋
スティーブ・スカセッリ (Dominic Pace) ICE Agent
— (Richard Schimmelpfenneg) F.D. 2nd Baseman
— (Ty Williams) Pitcher
— (Greg Cool) Shopping Cart Bum
— (Michael J. Kraycik) Homeless Veteran
— (Darin Mangan) Photographer
— (Monyque Thompson Scott) Little League Parent

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