第13話 裏切られた者 Betrayed
脚本/Warren Leight
Charlie Rubin
監督/Michael Smith
【ストーリー】
ジムの備品室でキスするエイブリーとウディ。これからは毎晩愛を
交わせるというウディ。二人は逃走用の荷物を用意して車に乗り込む。
ウディのオモチャと書かれたナンバープレートだった。
エイブリーの夫のロイは妻が居なくなったと知り鏡に向かって殴りつ
け、自らの腕を傷つける。
逃避行を続けるウディはエイブリーに対してこれからはウッドリー
夫妻だとして身分証を渡す。エイブリーの元にロイから電話が鳴る
が電話の電源を切る。ウディはエイブリーに持って来たジュエリー
を全て寄越すよう告げ、すぐに戻るとしてサウスブロンクスの治安の
悪そうな場所に止める。エイブリーは一人にしないでと懇願するが、
すぐに売ってくるという。そしてナンバープレートをハズして車を
走らせる。
キャシー・ジャロウはウディに電話する。もう夜中の2時なのに何処に
いるのかとして心配する電話だった。彼女は「殺人アカデミー」と
いうタイトルの本を出版してベストセラーになっていた。
警察学校の盟友の会が開かれてキャシーも出席する。その会には
警察関係者が多数出席し、その中にはロスの姿も有った。
キャシーは著書の中で殺人鬼の本質を見事に描写したとし、警察学校
の溜めに200万ドルの大金を寄付してくれたと紹介される。
キャシーに出席者達は賛辞を惜しまぬ中、彼女はスピーチをする。
「犯罪の謎解きは難しいものです。しかし人間の心の不可思議な・・」
と語る所で彼女は携帯に触れる。すると突然夫が見つからないとして
キャシーはよろけるところ、ロスが彼女を支える。
ロスはエイムズとゴーレンを呼び出す。
帰らない人の捜索に2人共必要かというエイムズ。キャシーは市警と
私の友人だという。彼女の直感は見過ごせないというと彼女自身もと
警察官で我々の仕事を心得ているというロス。キャシーにエイムズと
ゴーレンを紹介するロス。
軽くキャシーに質問する。夫を最後に見たのは?「木曜日の朝」で
いつも通りだったこと。夫のウディ・セージだとして写真を見せる。
夕方の5時に電話でクラスを増やしたから10時に終わると言っていた
という。彼はジムのトレーナーをしていてそこで知り合ったのだとい
う。ゴーレンは年の差が有ると考えると、彼女も察してウディは23歳
だという。ジムはアッパーイーストで、車はレンジローバーだと
いう。プレゼントしたのかと問うと結婚二周年記念に・・という。
ゴーレンはGPSは搭載しているかと問うと、エイムズは最近SUVを
狙った強盗事件が頻発しているのだという。広域手配でGPSを追跡
すると語る。
キャシーはロスに対してあの2人は遺棄が合っていないと指摘する
とゴーレンは最近復帰したばかりだという。あなたが重大捜査班の
警部だなんて・・というキャシー。車の窃盗事件の被害者はどう
なっているのかと問うと、ロスは答えずウディは必ず見つけるとだけ
答える。
ゴーレンはウディからの着信は木曜日の夕方が最後でキャシーの発信
は午前2時から何回もだという。一晩中独りで不安に耐えていたんだ
というロス。車は見つからず解体業者を当たっているという。GPSの軌跡
だというエイムズ。それによると電源は夜10時まで。朝10時に自宅を
出発しジムには7時間滞在。午後5時なホルズキッチンへ行っている
とし、そしてサウスブロンクスへ行っていた。ロスはバニティーズの
縄張りだという。3回停車していること。セント・アンズ通りで2回停車
し、暫く圏外を走り9時すぐに川岸に到着。10時2分に信号が消失して
いた。278号線脇にある産業地帯の跡地だというエイムズ。
GPSが消えた現場を調べる。
テールランプやガラスの破片が落ちていた。解体業者の集積場所だから
ねというエイムズ。ナンバープレートを見つけるゴーレン。犯人が
ナンバーを交換したのねというエイムズ。何処に行ったのか分からない
が逆をたどっていこうというゴーレン。車はサウスブロンクスで停まっ
ていたのだとし、セント・アンズ通りで新車のローバーは目立つハズ
だという。
雑貨店の店主・アマドから話を聞く。
警察への協力を拒む彼に食料品店でネコを飼っているのは違反行為
だとして通報すると脅す。すると白いローバーの白人の運転手の男
は向いの店に入ったという。時々そこは開くんだとし男は相手を置いて
中に入ったという。麻薬の買い物かと問うと品物の換金だという。
車には女性が乗っていたとし、金持ち・白人・モデル風だったとのこと。
微笑んだにビビッてずっとクラクションを鳴らされたという。居た
のは2人だけだったとのこと。
向いの店を調べるが中は空だった。予約制の盗品買い取り店だろう
とし時計の空箱とルーペが落ちているという。宝石商のものだと。
ウディはヘルズキッチンで美女を拾い、宝石を監禁中に強盗に遭った
のか?というエイムズ。ゴーレンはその女性と駆け落ちする為に
強盗を偽装したのかも知れないと語る。ロスに報告するかと問うと
エイムズはまずは証拠固めだという。ゴーレンは君の言う通りだという。
ジムで話を聞く。
スタッフのオーシャンは彼はウディは来週は休みだとしウディは不定期
勤務枠だという。苦情は有ったのかと尋ねると彼は仕事に徹していた
という。エイブリーと仲がよくまだロイとは夫婦だったこと。
エイブリーは会員なのかと尋ねるとマッサージセラピストだという。
去年の夏から二人は付き合っていたこと。ウディが毎晩送っていたが
ロイはつゆ知らずだという。
壁にはスタッフ一覧の写真が貼られていてその中にエイブリー・ヒュ
ーバートの写真も有った。エイブリーはウディと同世代だというゴー
レン。若い女に乗り換えたのか。発見されたナンバープレートは
ウディの指紋だけだったというエイムズ。二人で仕組んだのねと。
ロイはその頃パーティーで酒を飲んでいた。モデルに酒を奢る。
キャシーは自宅を調べると金が消えていると語る。テロの避難用
の金で5千ドルだという。諦めがつく金を持ってエイブリーと逃げた
のねというキャシー。昨年ウディの紹介で彼女のマッサージを受けた
とロスに語る。昨年の夏、様子が変だったこと。話有って子供を作ろう
と言っていたとし、子供部屋も作っていた。金曜日に人工授精をする
予定だったという。何故彼は車強盗を装ったのかと問うと、元警察の
君の目をくらませようとしたんだという。私を恐れていたのか?
あなたの部下にはお詫びをして欲しいとし無駄な仕事をさせたと語る。
私はダメ男ばかりを掴んで良い男を逃がすとキャシーの視線はロスに
熱かった。
■概要
ゴーレンが停職5ヶ月が解けて再びエイムズとの捜査が再開する。
そんな中、元警察署員で現在は引退して連続殺人犯に関する心理を題材
にした本を出版してベストセラーになったシャシー・ジャロウが
警察学校の為に200万ドルの寄付を表明。警察学校の盟友の会でその
事実を発表する中で、突然彼女は夫・ウディが見つからないとして
倒れてしまう。同期で当時恋人として良い感じの関係に有ったロス
としては、そんな彼女を支えるべく、陣頭指揮を執ってこの事件に
関わっていく。ウディの足取りを調べていくウチに、彼と彼女には
相応の年齢差が有り、ウディが若い仕事仲間と付き合っていたことから
見て、強盗を装って逃げた可能性があることが取りざたされていく。
ロスとしては彼女を傷つけたくないとして言いづらそうにしていたが、
それを聞いてキャシーも諦め捜査の継続を断念する。
しかしウディと一緒に逃げたハズの女性エイブリーがATMで金を引き出す
様子が防犯カメラに写っていたが、そこには彼女は怯える様子が
写っていた。ロスはあくまで演技だろうとしていたが・・・
■感想
ようやく普段の形のゴーレン&エイムズの形が戻って来た。
ちょっとゴーレンがエイムズに対して身を引いていた印象もあるけど、
「それはいつもの事だろう」と言われると身も蓋もない(笑)
「ロスに話すべきか?」(ゴーレン)
「先に証拠を固める」(エイムズ)
「君の言う通りだ」(ゴーレン)
まぁこれは二人の関係というよりも、ロスがキャシーを20年来の仲間
として信頼しているところも有って、話をしただけでは聞く耳を持つ
ハズはないことは明らかだったからね。
■恋は盲目
今回は「恋は盲目」というのがテーマだったのか。
ただ恋愛による失恋が彼女の中の殺人者としての一面を引き出したのか、
それとも元々存在している彼女の中のソシオパス/社会病質者的一面が
現れたのかは分からない。
彼女は逃走したウディのことを社会病質者だったとしていたけど、
彼女はそういう人物の心理描写を研究し、それを書籍としたことで
ベストセラーを受けている。
ロスが好意を抱く相手・キャシーが事件の関係者となっていく
為に冷静な判断が取れずに、防波堤となってゴーレンやエイムズのことを
否定し、最後まで彼女に振り回された感じ。
普段の捜査ならば「関係者」とし外されても良さそうだけど、
ロスは警部だし、自分から外れるという選択は出来なかったのだろうな。
そもそもNYPD全体が関係者としての側面が有り、キャシーを疑うのは
難しかっただろう。
■裏切り
タイトルからすれば「裏切られた者」だけど、裏切られたのは
キャシーだけでなく、キャシーに関わった全ての人物が何かしら
「裏切るもの」または「裏切られるもの」との間で分かれることになっ
た。
こうしてみると女性としてのウィークポイントとなってしまう最大の
要因は、30代中盤から40代にかけての年齢だね。
幾ら金銭的、社会的ステータスを持っていたとしても、女性は子供を
産む産めない辺りの年齢で、相当違いが出て来てしまう。
日本のドラマでも「結婚相談所」がテーマになるドラマがあるけど、
やはり適齢期を過ぎた女性にリクエストが入る確率の低さを語る
ドラマは多い。
この問題では女性には負担がかかるものだろうけど、なかなか難しいね。
勿論夫婦で子供を持たないという選択を選んだのであればそれはもう
その範疇ではないが・・
■殺人犯の心理には詳しいが・・
ドラマとしての皮肉に見えるのは、殺人犯と数々と向き合ってその
人間の心理を本に書いてベストセラーになっている程に熟知している
のに実生活に於いては、彼女が選ぶ男性はロクデなしばかりだという
こと。
年上でゲイで小児性愛のフェルド判事が2番目の夫だとしていた。
そして現在結婚していた相手は23歳で倍近く若い年の差のある男性。
こうしてみると1人目の夫は誰だったんだって感じがして怖いものが
有るな。そして今は何をしているのか・・この世に生きているのか。
選ぶ人を間違えたとしていることから、ロスがもしも結婚していたら
彼女はこのような殺人鬼とはならなかったのだろうか?
一度の殺人は感情的な問題で済まされるけど、二度目の殺しとなると
それは最早恋愛に於ける痴情のもつれではなく、彼女自身が殺人者と
しての素質を持っていた為に起きたものだと言える。
■既に前々から若夫が逃避するのは分かっていたのでは?
話を聞くとウディが去年の夏からエイブリーと付き合っていたという
のは回りには知られていることだった。
ウディの紹介で彼女のマッサージを受けたとしていたけど、彼女ほどの
人ならばその時に既に二人が怪しいことは判明していたハズ。
キャシーとしてみれば子供を作る為の道具として彼のことをみて居た
のだろうか?
殺人に於いて警察官ならではの起点の効いた方法論が、逆に徒となって
しまった感じ。逃避行のように見せかけた流れは上手くて終盤までは
エイブリー側にも危険人物がいることを臭わせて、上手いことドラマ
は全容が分かりづらかった。
また逃走したウディ本人にも経歴には怪しいところが有り、二面性を
持っていたところからも最後までキャシーの関与はどの程度まで発生
しているのか分かりづらかった。
■近代的になってきた捜査
捜査が少し近代的になってきた印象も有る。
まぁGPSや携帯の信号を追跡するというものだったけどね。
今回は随分と足跡をたどり、彼らが何をしていたのか行動を逆トレース
する形で追っていったし、逆に捜査が進展した際には、計算された
方法論で逃走していることを見て、いよいよロスも本格的に疑い始めて
いく。
■前夫の事件
キャシーの元夫フェルド判事は男娼とホテルにいるところを死んでいた。
墓を掘って調べるとクエン酸シルデナフィル(バイアグラ)が検出され、
判事は高血圧の薬も常用していたことから、その二つの薬の併用には
危険性が有ったようだ。しかもバイアグラは3倍の量が飲まれていて、
心臓発作が起きるのは必然的だった。
キャシーは判事の性癖を知っていたハズ。
そしてウディの過去の件でも彼女が知らない訳がない。
■詰めは少し甘い
どれも状況証拠って感じ。自白頼みのところがあり、この場所にすんなり
来られたのもGPSのお陰だとしていたりして言い訳していた。
遺体み無ければ凶器や血痕は見つかって居ない。ビニールシートを用意
出来ただろうとして、子供部屋に有ったことを告げるが、肝心のビニール
シートだって見つかって居ない。遺体は沈められたとするが、それも
また見つかって居ない。
あの女は私を「肉食の年増(クーガー)」と呼んだのだとしていたけど、
ロスは彼女に「地獄に行け」と語っていた。
その後のロスの落ち込みようも相当なもので、話しかけたけど、
今は話したくないと語っていた。
・Dirty Laundry by Bitter Sweet
■出演者
ロバート・ゴーレン (Vincent D’Onofrio) 天才刑事
アレクサンドラ・エイムズ (Kathryn Erbe) ゴーレンの右腕
ダニー・ロス (Eric Bogosian) 警部
エリザベス・ロジャース (Leslie Hendrix) 検視局
マイク・ローガン (Chris Noth) 刑事
ミーガン・ウィーラー (Julianne Nicholson) 刑事、ローガンの相棒
— (Steven Zirnkilton) Opening Announcer (voice)
キャシー・ジャロウ (Brenda Strong) 元NYPD、殺人の本のベストセラー
ロイ・ヒューバート (Eric Roberts) 金持ち、遊び人、暴力亭主
トリナ・メルダ (Kate Miller) ロイの前妻
アマド (Adrian Martinez) サウスプロンクスの雑貨店
エイブリー・ヒューバート (Kim Allen) ロイの妻
本人出演 (Chuck Schumer)
ウディ・セージ (Scott Evans) キャシーの夫、ジムのトレーナー
オーシャン (Kate Cullen Roberts) ジムのスタッフ
サリー (Laura Sametz) エイブリーの母
フランク (Bill Massof) エイブリーの父
ケイレブ (Lucas Wotkowski) エイブリーの弟?
フリン (Erin Harrington) 捜査官
— (RJ Konner) 捜査官
— (Debrah Ellen Waller) Clerk
— (Alexandra Manea) Miami Model
— (Kisa Willis) Gym Member