May 6, 2007
第12話 ジョン・ヘンリー Sabotage
脚本/Greg Plageman
監督/Nicole Kassell
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1999年12月26日。
家電量販店・ビッグ・ボックスではクリスマスが過ぎた後にも
客で溢れていた。従業員のカートはレジでクレーム処理をして
いるジーナに声を掛ける。クリスマスが過ぎたのにまだクリス
マスソングが流れているとしてジーナは呟く。
カートは彼女に中国に返品するものは有るかと問うと、”中国
ゲーム”というものを知っているかと問う。量販店の中で中国製
ではないものを先に見つけるというゲームだという。二人は
互いに商品を見ていくと殆ど全てが中国製で溢れていた。
ジーナは全てが中国製だなんて気が付かなかったとして、
アメリカ製が全くない現状が悲しい事を告げる。しかしカートは
アメリカ製ならばあると告げ、僕たち自身であり、そして僕
たちの子供もそうなるという。しかしジーナは私には彼氏が居る
んだと告げると、時間は有るのでいつまでも待つというカート。
しかしそんな彼は返品された中国製商品を商品カートに乗せて
倉庫に持っていくとその直後に爆発するのだった。
テレビではクリスマスの翌日に死亡者1名、負傷者6名を出した
事件として報道し、カート・フィッツパトリックの死を伝える。
警察は犯人に繋がる情報の提供を求める。
2007年、ヴェラとリリーとスティルマンは事件の有った現場へと
向かう。フィリースポーツクラブで今朝7時30分にロッカー内
に仕掛けられたパイプ爆弾が爆発して6名が軽傷、1名が重傷者
を出したものだった。重傷者はロッカーを開けた人物で、
ジョン・ヴォイチェホフスキー。吹き飛んだ左手が空軍アカデミー
の指輪をハメていたので分かったというもの。
爆発捜査班のルイは、スティルマンたちに対して、爆弾は箱に
入って居たIED(即席の爆破装置)でトラップのパイプ爆弾が木の箱
の中に仕掛けられていたという。破壊力を増すため、ネジ、クギ、
りゅう散弾の破片も一緒に入って居たとのこと。
しかしリリーは何故私たちが捜査をするのかと問うと、似たような
爆発事件が過去2、3回フィラデルフィア市内で発生しているの
だという。1999年の家電量販店、2001年のキネティック・コア・
エンジニアリング社、2003年に郡立病院で爆破され、手口が
同じだという。5年ぶりに発生した事件だった。
もう犯人は現れないと思われていたとし、大抵この手の爆弾を
扱うものたちは怪我することが多いのだという。FBIも手を引いた
こと。犯人は州を跨いでいないし、郵便物も使われていないから
だという。共通するのは公共の場所というくらいで、一見すると
無差別事件だという。
スコッティは目覚めると地方検事補のトマスと一晩を共にしていた。
スコッティのシャツを着ているトマス。トマスはいつも夜だけ
着て朝には居ないスコッティのことを吸血鬼のようだとし、
今日は珍しく朝までいることを指摘する。スコッティはみんなが
自分たちの関係を噂している事を告げると、いつまでその関係を
隠せるか分からないという。トマスは女性はイメージが大事なので
関係を知られたくないことを語るが、スコッティは君のことを気取ら
ない女性に変えたいと語る。ディナーを一緒にするのはどうか?
と問うが、私たちはこっそりと夜に遭う関係が合っているという。
それに私たちの間に共通する話題は有るのかと問うと、今が良い感じ
の関係なのにそれを台無しにして後悔したくないと語る。
ミラーは今回の事件も過去の爆破事件と同じ部品が使われていたと
報告する。ジェフリーズは9年間に死者2名、重傷者2名が出ている
事を告げる。この事件でもFBIの助けは期待出来ない事を告げ、
情報提供なども一切ないという。
99年の家電量販店では、21歳の売り場の主任・カートが無くなり、
2001年のエンジニアリング社では42歳のジーン・シュミットが
会社の中庭に有った爆弾によって右目を失明したこと。
2003年の郡立病院では無いか助手のロデリック・プール(30歳)が
死亡しているという。そして今回は民間航空会社のパイロットの
ジョンの左手を失っていた。被害者に共通することはないが、
人が多数いる場所で起きていることから大量殺戮を狙った可能性
も否定出来ないという。爆弾の構造はトリガー式で、肥料とアンモ
ニアを混ぜて作るような簡単な仕掛けではないというヴェラ。
スポーツジムから事情を聞きたいが、マネージャーが従業員名簿を
出さないというミラー。恐らく不法雇用を恐れているのだろうと
すると、ミラーは協力しないと移民局に送るとして脅して置いた
という。そんな中、ジョンの意識が回復したとのことだった。
リリーは病院に搬送されたジョンから話を聞く。
一瞬のことだったので何がなんなのか分からないとのこと。
結婚指輪を選んだばかりだったというジョン。リリーは不審者を
見たことはないかと尋ねると、爆発の後、非常ベルの間から
口笛が聞こえてきたという。キャップを被っていたので顔も
分からず口笛のメロディも分からないとのことだった。成功を
確かめる為に見ていたものなのか。
従業員名簿からメキシコ不法移民のエンジェル・ペレスが夜間
清掃員として働いていることが判明する。サックスパークにいた
ところを捕まえたとしてヴェラとスコッティは話をする。
ヴェラは英語が通じないみたいだとすると、スコッティはスペイ
ン語で語りかける。移民局に知り合いがいるので10秒以内に
見た事を話さないと電話すると告げる。するとペレスは見た
ことではなく聞いたことだとして語り始める。
ロッカーにオルゴールが入って居たこと。その後にジョンが
入って来たのでロッカーにオルゴールをしまって出てきたこと。
その直後に爆発が起きた事を告げ、自分のせいかと思ったという。
古いオルゴールが使われていたことが分かり、真鍮のシリンダー
が回ってメロディを鳴らすタイプだという。20世紀初頭は全て
そのタイプのものだという。ヴェラによるとバーモントには今で
もシリンダー型のものを作っているという。名曲ナンバーの
刻まれたシリンダーで、フィラデルフィアの客から”ジョン・ヘ
ンリー”という曲のシリンダーを何本も注文されているとの
ことだった。
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フィラデルフィア市で爆発事件が発生する。
調べて見ると犠牲者は思った程に少ないものの、過去には類似
する手口での犯行が行われていることが判明する。
犠牲者たちに共通性が見られないことから、いずれも公共の場
で発生している事からして無差別犯を疑う。当日スポーツジム
で働いていた従業員から話を聞くと、ロッカーにはアンティーク
のオルゴールが有ったこと。オルゴールを奏でる真鍮製シリンダー
が今でも作られており、フィラデルフィアから何本も注文されて
いることが分かる。そのオルゴールの曲名はジョン・ヘンリーだ
と分かり、何かを象徴しているのではないかとして疑っていく。
今回は演出的には過去と未来という形式こそ取られたもの、
現在進行している事件として描かれた為に、クレジットでも
俳優の住み分けが行われることはなかった。
ドラマとして重要な役割を果たすことになる”ジョン・ヘンリー”と
して真っ先に思い浮かぶのは
「Terminator: The Sarah Connor Chronicles」でT-888型の中
に組み込まれたプログラム・人物名として描かれたものだ。
ドラマの中でもジョン・ヘンリーと聞いてそれぞれの反応を示す。
スティルマンは”鋼鉄の男か”と呟いていたし、スコッティも幼少期
に父親から聞いたとする「線路作りの作業員の話」を例に挙げ、
ヴェラもまた「蒸気ハンマーと対決した」人物だと語っていた。
人間対機械の象徴なのか、それとも反政府派の不毛分子や
イカれた民間軍なのか・・・。
20世紀の象徴としての手製のオルゴール。
21世紀の象徴として機械のオートメーション化、使い捨ての時代、
アウトソーシングの問題として取り上げられ、切り捨てられる
側の人間の悲惨さを通して、人に対して無関心を貫くものたちに
対する主張するものとして存在した。
勿論今回の犯行が許される訳ではない。被害者たちも所詮は
社会の歯車であり、自分の仕事を全うしただけのことなんだけど、
無機質な対応によって人は知らぬ間に傷つけていて、怨みを買ったり
買われたりする時代の構図があるとなると、近代に於ける人間関係の
希薄化への世知辛さと同時に、近代化に於ける資本主義の欠点というのが
表れていたようにも思う。
興味深い流れとしては、やはりFBI捜査官・検事局の身勝手な
振る舞いをこの事件の容疑者の流れと同じくして、無機質で都合の
良い存在として描かれていることか。
スコッティとトマスの関係がその象徴のようにして描かれ、
トマスは自分の仕事を全うしたにも関わらずスコッティには冷たい
視線が投げかけられた。
「LAW & ORDER」の中でも時々刑事と検事局が意見が対峙する
場面は有るけど、ここまで反発と不審に感じている関係というのは
ちょっと捜査に支障を来すほどのものが有りそうだ。検事補という
とアレックスという名前がつけられてしまうのは、やはり
「LAW & ORDER」の印象が強い為なのだろうか。
トマス検事補が初めて登場したS4-7から数えて、6回目のエピソード
(S4-7、S4-19、S4-22、S4-24、S5-5、S5-12)
にして、冒頭ではスコッティとの関係の発展を臭わすところも
有ったけど、やはりチーム・スティルマンたちの私生活が上手く
行くことは稀ということで、彼らの幸せはコールドケース化して
しまった感じだ。因みにトマスの登場も今回がラストである。
スコッティはトマス検事補がターゲットとされる人物の情報を流した
が故に被害を出せば君たちの責任だとしていたけど、冒頭で
犯人は現場で被害者の姿を確認していることを考えれば、その可能性は
少ない。
最後に兄弟の絆を完全に断とうとする爆弾の流れを通して、
現場にいたヴェラとミラーの消息がどうなったのか分からないよう
に上手くコーティングされていたところは結末は想定出来たけど
緊迫感が有って面白く出来てて居た。どういうシチョエーションで
助かったのかまるで分からないけど、恰幅が良い割に俊敏な動きを
見せるヴェラさんの頭脳に機動力に活躍してしまう姿は、恋人が
いることが影響しているのか。
冒頭から大好きな曲の一つ、Wham!のLast Christmasが流れていた
のが印象的だったけど、中国ゲームと称して量販店に氾濫する中国
製品のことを指摘している辺りは興味深い流れだったね。
■使用された曲
・Last Christmas by Wham!
・Snow ((Hey Oh)) by Red Hot Chili Peppers
・Turn My Head by Live
・Crestfallen by The Smashing Pumpkins
・Apologize by OneRepublic
リリー・ラッシュ (Kathryn Morris) 殺人課の刑事
スコッティ・ヴァレンズ (Danny Pino) 殺人課
ジョン・スティルマン (John Finn) リリーの上司
ニック・ヴェラ (Jeremy Ratchford) リリーの同僚刑事
ウィル・ジェフリーズ (Thom Barry) リリーの同僚刑事
キャット・ミラー (Tracie Thoms) 麻薬課刑事 s3#8から
2007年
アレッサンドロ・ロッシリーニ (Kim Coates) 犯人、長男
ロデリック・プール (Chris Butler) 30歳、郡立病院・内科助手
ベス・ロス (Kate Jennings Grant) 母
ルーク・ロス (Timothy Omundson) 夫
ミア・ロス (Kelly Gould) 娘
カート・フィッツパトリック (Ryan Kelley) 99年当時、家電量販店勤務、21歳
カール・バクスター (Bob Koherr) フラックデイル刑務所・囚人
ヘレン・ウェインライト / ロッシリーニ (Stephanie Venditto) 犯人の元妻
ユージーン・シュミット (John Hillner) キネティックコア社、42歳、ジーン
セシリア (Judyann Elder) フィラデルフィア市立図書館司書
ジーナ・カステロ (Alexis Krause) 99年当時、家電量販店勤務
エンジェル・ペレス (Roberto Montesinos) メキシコ不法移民、スポーツクラブ
ルイ・アマンテ (Doug Spinuzza) 爆発物捜査班
アレンサンドラ・トマス (Bonnie Root) 地方検事補、スコッティと付き合い
ジョン・ヴェイチェホフスキー (James Ferris) 民間航空会社パイロット