May 6, 2007
第11話 封筒 Family 8108
脚本/Kellye Garrett、Elizabeth Randall Arredondo
監督/Jeannot Szwarc
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1942年4月5日、カリフォルニア州サニーデール。
ビリー・タカハシは大好きな絵を描く中、幼なじみのスキップ
が遊びに来ていた。ビリーの母・イヴリンはスキップが来たことを
歓迎する。
そんな中、ラジオでは日本軍によるサミット山攻撃が続いて
いるとし、アメリカ軍のフィリピン師団は甚大な被害を受けて
いるという。日系人であるタカハシ家にとっては居心地の悪い
報道だった為にラジオを消してしまう。
ビリーの父・レイは帰宅すると、新店舗2軒のローンが下りた
としてこれでフランチャイズ化が出来る事を語る。ビリーは
父親が購入してきた車・パッカード製の車を購入してくる。
レイはビリーの腕にあざがあるのを知りどうしたのかと問うと
「真珠湾の仕返しだ」として殴られたのだという。レイは私たち
もアメリカ人だとして、やり返したのかと問うと、ビリーは
普段から父がケンカはいけないと言っているので辞めたことを
語ると、自分の為に立ち上がることでのケンカは別であること
を語る。
そんな中タカハシ家の前には、「全ての日系人は外国人、
被外国人問わず退去のこと」として退去期限は1942年4月7日と
する貼り紙がはってあるのを目にする。
1945年12月1日、ペンシルベニア州フィラデルフィア。
「陸軍対海軍のフットボールの試合を大統領が観戦」という
新聞の見出しで掲載される中、階段の下にはレイが転落して
亡くなる光景があった。
2007年。
スコッティはリリーを見ると相変わらず疲れた顔をしている
ことを指摘する。裁判所のコーヒーはここのコーヒーよりも
不味かったとして話題を誤魔化すリリー。リリーはスティルマン
のオフィスを目にすると今日で停職は終わるのでしょと問う。
しかしスコッティは退職願を出したみたいだという。後任には
ジェフリーズではなく西分署のお荷物で6度も転属になっている
ヤツだという。リリーは刑事の仕事を辞めても私にはやること
がないと語る。スコッティは縁が切れることで良い事もあるぞ
と語ると、「法廷」とか「むかつく検事補」のこととかねと
語るリリー。刑事と検事って水と油よねと語るが、スコッティは
検事補と付き合っている手前返事がしづらかった。
そんな殺人課に日系人のバーバラがやってくる。
すると突然私の父・ケイは1945年に殺害されたことを語り、
未だに犯人が捕まっていないことを語る。60年以上前の事件ね
というリリー。バーバラは政府から母・イヴリン宛ての2万ドル
の小切手を見つけたとし、1990年に発行されていること。還付金
ではないのかと問うスコッティに対してバーバラは賠償金だと語る。
私の家族はマンザナーの「戦時私住所」にいたのだという。
マンザナーとは何なのかというスコッティに対して、第二次世界大戦
中に日系人が入れられていたカリフォルニアの強制収容所だという。
私はその中で生まれたのだという。しかしそれが父の死となんの
関係が有るのかと問うと、父は収容所を出てからこちらに来て
すぐに殺されたのだという。警察は調べる方角を間違っていると
語る。バーバラは両親と兄・ビリーの写真を見せると、兄は戦死
した事を語る。この写真で写るような母の笑顔を見た事がない
のだという。リリーは改めて調べて見るというが・・
強制収容所ではなく「兄弟愛の町」で殺された事件だった。
捜査資料によるとレイの死体はミュニシパルスタジアム近くで
発見されたこと。ジェフリーズによると当時陸軍・海軍のフット
ボールの試合が有った夜だという。殴られて階段から落ちて
骨を折っていること。当時の捜査官は酔っぱらいのケンカだとして
処理していることが分かる。資料にはポスターとして
「A JAP IS A JAP」と書かれているものが有った。カリフォルニア
に住んでいたタカハシは1942年にルーズベルトの日系人隔離政策
で収容所に入れられたこと。米国国籍を持っている日系人を含めて
10万人以上が強制収容所に入れられていた。
ビリーは1944年に戦死しているが、レイが亡くなった時に手にして
いた手紙の差出人はAPO513と書かれていた。ジェフリーズによる
と陸軍郵便局のことだという。1944年11月27日の消印。
封筒には何か抜き取られた手紙があるようだという。
ジェフリーズは60年前の封筒から指紋が採れないかとするが難しそう
だという。ボスはこの手のことに詳しいので相談したら良いと語る。
リリーはスティルマンがランチを取る店にいく。
仕事で来た事を告げ現在1945年に殺害された事件を担当している
事を語る。資料に目を通すスティルマンはこの日はオヤジが
試合を見に行っていたとし、陸軍を応援していたという。
スティルマンは海軍に入隊していた。被害者が封筒に握っていた
事を告げ、手紙が亡くなっていること。息子は第442連隊で戦死
しているという。第442連隊は日系人だけの連隊で一番多くの
殊勲を挙げているという。リリーはこの件をスティルマンも
調べて欲しい事を告げる。「尻を蹴飛ばす人がいない場合どうした
ら良いのか」と問う。リリーはさりげなく資料を置いていくのだった。
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第二次世界大戦時のアメリカに於いて、日系アメリカ人のタカハシ
家を初めとして外国人たちはルーズベルト政権の元、隔離された
生活を送る。10万人をも越える不当な財産の没収と同時に強制収容
所での生活を送ることになるタカハシ家は、アメリカの為に生き
アメリカによって殺されてしまう。アメリカ人による人種差別の
結果、人間は中身が大事だとしていた価値感を揺るがす大きな事態
に奔走される姿。1945年12月1日にフィラデルフィアで殺害された
タカハシ家の主・レイは何故亡くなったのか。
アメリカでは、日本人=自殺というイメージが根付いている為に、
殺人かと思わせて父親の自殺ということで落としどころをつけるの
かなと思って見ていたけど、この手のデリケートな問題を取り上げる
に辺り、それを使うとやはり責任の所在なり、訴えかけるものと
しては曖昧なものとして写るのでこの形のエンディングが一番
見ている人に多くのものを投げかけるのかなと思わせる。
ドキュメンタリーっぽく回想シーンに於けるドラマも随分と長い尺
で描かれていた感じだ。
他民族がひしめき合うアメリカの土地の中、不運にも日本が起こした
戦争という悲劇によって引き起こされたものということも有るので
見ている方としては複雑なものを喚起させられるものがある。
外国に於ける日系人としてのアイデンティティの問題を取り上げた
もので、外国に生きるということはどういうことなのか。
戦争という広義の意味でこの件を捉える流れと、一つの殺人事件と
して捉える一面が存在しており、それぞれの立場から見て、
都合の良い方向で捉えるところが人間の持つエゴなのだろう。
最終的には一民族の枠として捉えるのではなく、広義の意味でそれを
取り上げられるところに繋がって居るけど、やはりそれらを
構成するのは一人の人間としての問題で有ったり、戦うことの意味
を家族の為であり、ケンカしていた父の夢を守る為のものだと
する辺りは上手く構成されていた。
連ドラとして見ている身としては、スティルマンの去就の問題が一番
気になるものとして描かれている。
謹慎期間が過ぎても尚オフィスに戻ろうとせず辞職を考えている
スティルマンに対して、どのような形で彼の心を揺り動かしていく
のか。ちょっぴりネタばれになってしまうけど、クレジットを
見る限りではスティルマンが辞めるということは無いので
安心して見ていられるものは有ったのだけど、リリーが語っている
ように、「仕事を辞めたらやることがない」というのはリリー
だけでなくスティルマンにも該当するのかも。
やはりリリーは女性らしく、宿泊した男性の部屋にイヤリングを
忘れていき、再び遭う口実を作るかの如く、捜査資料をデイナーに
置いていくところは古典的テクニックでは有るが姑息である(笑)
戦争時代を知る人物という事でフレームに写ることこそ少ない
もののスティルマンの知識による捜査が円滑に進んでいく展開が
数多くの場面で見られるものが有った。
「検閲印が押されていない。将校クラスからの手紙だ」
昭和の日系人移民や日系人人種差別、戦争時の強制収容所、そして
第442連隊のエピソードなどは橋田壽賀子さんが脚本を担当した
「99年の愛~JAPANESE AMERICANS~」の中でも色濃く描かれている。
http://itawind.web.fc2.com/drama/99nennoai_01.htm
http://itawind.web.fc2.com/drama/99nennoai_02.htm
http://itawind.web.fc2.com/drama/99nennoai_03.htm
http://itawind.web.fc2.com/drama/99nennoai_04.htm
http://itawind.web.fc2.com/drama/99nennoai_05.htm
戦争時の問題を日本側からではなく、アメリカ側から捉える物語
としてはとても興味深いし、ヴェラやユージーンが語る様に、
逆の立場で有れば、同様の扱いをされていただろうということで、
この手の問題は責任の所在が複雑になりがちだ。
「何でお前たちみたいなものを国に入国させるのか。お前の従兄弟
たちは天皇の為に戦っているのだろう」
「ショルツとはドイツ系で従兄弟はヒトラーの手下だろ」
収容所に於けるレイとショルツの対決は何とも泥仕合のようになって
いた。
「忠誠の誓い」に2度ノーと答えただけで、強制収用が延長になった。
「オレはあんたらと同じアメリカ生まれ。でも政府から見れば
オレはタダのJAPだ」(シンジ談)
「息子は国の為に命を捧げても無意味だと思っている。共感して
る僕は非国民なのか?」
「人間は中身で評価されると思っていた。肌の色ではないと。」
(レイ談)
「忠誠心を説く男が自分の妻を裏切っている」
「アンタは911の後、飛行機で隣にアラブ系が座っても兵器だった
のか?」(ラリー談)
「世界はそう単純ではない」と父親が息子に語っていたけど、まさに
言葉通りの物語だった。
最後に真相を説いたのはスティルマンだった。
ただし何の証拠もなく、ただの状況証拠から導き出した経験からくる
結論である。
私のベトナム戦争での相棒はマニー・イソイというフィリピン人
だった。ベトナムで戦っている時に姿は、ベトナム人とそっくりの
顔で、マニーが仲間を助ける為に少し部隊から離れた後、合流する
際にはもう少しで敵兵と間違えて殺そうとするところだったという
スティルマン。
ビリーからの手紙の内容は・・
「問題は戦う相手ではない。戦う目的だ。パパの為で有り、パパの
夢見るアメリカを実現する為。戦地では戦友たちの肌の色は一つ
じゃない。それが僕が知っているアメリカだ。いつかそこで遭おうと。」
レイという人物像はホント素晴らしいものが有ったな。
そしてリリーがボスに対して自分達が働く目的の意味を説いていく
辺りもよく出来ていたと思う。
■その他
■使用された曲
・Boogie Woogie Bugle Boy by The Andrews Sisters
・I’m Making Believe by Ella Fitzgerald & The Ink Spots
・White Cliffs of Dover by Vera Lynn
・Praise the Lord and Pass the Ammunition! by Kay Kyser
・Whispering Grass (Don’t Tell The Trees) by The Ink Spots
・When the Lights Go On Again (All Over the World) by Vaughn Monroe
・This Is No Laughing Matter by Glenn Miller & His Orchestra feat. Ray Eberle
リリー・ラッシュ (Kathryn Morris) 殺人課の刑事
スコッティ・ヴァレンズ (Danny Pino) 殺人課
ジョン・スティルマン (John Finn) リリーの上司
ニック・ヴェラ (Jeremy Ratchford) リリーの同僚刑事
ウィル・ジェフリーズ (Thom Barry) リリーの同僚刑事
キャット・ミラー (Tracie Thoms) 麻薬課刑事 s3#8から
2007年
ユージーン・ロバートソン (Jerry Douglas) “スキップ”
イヴリン・タカハシ (Kim Miyori)
バーバラ・タカハシ (Patti Yasutake)
メアリー・アン・クレイトン (Mary Margaret Lewis)
ラリー・スコルズ (Jonathan Terry)
シンジ・ナカムラ (Keone Young)
— (Sokhan Sar) Japanese Boy
— (Ryan Smith) Guard
1942-1945年
レイ・タカハシ (Ian Anthony Dale) 父親、フランチャイズを目論む
ビリー・タカハシ (David Huynh) レイの息子
イヴリン・タカハシ (Mia Korf) 妻
メアリー・アン・クレイトン (Erin Cottrell) 美術教師
ユージーン・ロバートソン (Sean Davis) “スキップ”、ビリーの幼なじみ
ラリー・スコルズ (Toby Meuli) 兵士、監視役
1944年-1945年
シンジ・ナカムラ (Ron Yuan) 収容所、レイと対立