May 6, 2007
第7話 火星人襲来 World’s End
脚本/Gavin Harris 監督/Roxann Dawson
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1938年10月30日、メッツ家は子供一人で暖炉のある家に住む
一見すると幸せな家庭だった。妻のオードリー(33歳)は
8歳の息子のロバート(ドバー)に対して、ハロウィンの為の
お面作りをする。今年のハロウィンはフランケンシュタインに
しようという母は明日はみんなが驚くはずだとして息子に語る。
父親のフェルトンが帰宅すると、妻は仕事は?と問うと順調だ
と語る夫。ロバートは”エドガーバーゲンショウ”が始まると
してラジオを付ける。すると突然ラジオからは”臨時ニュース”
だとして、中部標準時の8時20分前にイリノイ州のシカゴの
ジェニングス天文台のファレル教授が火星の表面でガス爆発
が起きた事を確認したと発表したと語る。更にラジオでは、
リポーターが得体の知れない生き物が現在6人の警察を含む
40人の亡骸が地面に横たわっていると告げる。信じがたいこと
だがこのように推定せざるを得ないというリポーターは
今夜ニュージャージー州の農場に降り立ったのは火星からの
侵略軍だという。
そんな中フェルトンの元に電話が鳴る。隣人のブラウンからの
もので火星人がもうそこまで来ているのだという。みんなで
逃げようというが息子は犬のロキも連れて行きたいという。
父は連れて行けないというが、妻のオードリーは私が裏庭に
行って連れて来るので逃げる用意をしてくれと語る。
そんな中オードリーはその日以来居なくなってしまう。
新聞では「オードリー・メッツが火星人に誘拐された」として
掲載される事態になる。
2007年。
リリーとスコッティは現場に呼び出される。リリーはジミー・フォ
ッファでも見つかったのかとしてスティルマンに問うと、女性の
遺体が発見されたという。舌骨が折れているというもので井戸
の中で発見されたもの。舌骨が折れているということは、絞殺なの
か。少なくとも50年間は井戸の中に入っており、被害者が所持して
いたであろうサイフの中には30年代の小銭だけが入っているという。
AWMと書かれたハンカチが入って居た。30年代の行方不明者
リストと照合した事を告げ、オードリー・W・メッツだろうという。
30年代と言えば”火星人”、”世界最後の日”だというスティルマン
に対してリリーは8歳だった祖母が夢で魘されたということを
利いたという。1938年10月30日にオーソン・ウェルズが「火星人襲来」
というラジオドラマを放送したが、ニュース風の演出をした為に
国中がパニックに陥ったのだという。オードリーはその日に消えた
こと。その後、”火星人にさらわれた”、”ドイツ人にさらわれた”
“ジャマイカで見た”などの話が20年間絶えず噂として流れていた
という。ベルリンでスパイ活動をしているという話もあり
世界中で目撃情報が有ったが、実際にはこんなに近くにいたの
だというリリー。
ヴェラは火星人だということを信じること自体が信じられないこ
とを告げると、スティルマンは当時はラジオが唯一のニュース
ソースだったのだので影響力が凄かったのだという。国中の
教会で世界最後の祈祷会が行われたという。
「こういう時にこそ何が一番大切なのかが分かる」とし、
「最後の瞬間を誰と過ごしたいのか。」とみんなに問う。
オードリーは当時避難準備中に犬を探しに外に出て戻らなかった
という。ジェフリーズはバッグから映画の半券が入って居た
という。犯人は”もぎり”なのか。リリーは裏にまた手書きで文字
が書かれているとし”AYS”と見えるという。それが意味するもの
は何なのか。スティルマンはヴェラとミラーでセントルーク
病院に行って欲しいとし、エルマー・ギビンズという患者が
犯人を知っていると語っているのだという。
市内にいる遺族からも話を聞こうと告げる。
スコッティとリリーはロバートから話を聞く。
小さい頃は母に関する全ての噂を信じたという。
失踪前に何か変わったことはなかったかと尋ねると、母は
とても明るい人だったとして、失踪の一週間前に撮った家族
写真を見せる。スコッティはクラシックカーのハドソンが
写っていることに感動する。ロバートによると1930年型の
車だという。先日クラシックカーの見本市で見たが4万ドルで
販売していたとのこと。お父さんは3年前から失業していたの
で誰かと逃げたということはないのかと問うと、ロバートは
母が私を捨てていく筈は無いと語る。
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井戸の中から女性の遺体が発見される。
遺体の所持品や状態から見て、相当古い遺体であり30年代の
ものだろうことを推察。30年当時に失踪した人物を照会して
いると世界大恐慌の時代の1938年に起きた、オーソン・ウェルズ
のラジオドラマ「火星人襲来」の日に失踪していたオードリー
メッツだと判明する。当時生きていた人の多くが他界している
中、果たしてその真相を探り当てることが出来るのか。
ネタとしてはまた古い事件を扱いましたね。
こういう古いネタを扱う時には、当時の生きた証人が限定されて
くるという事情が有るので、どう捜査を展開していくのかが
一番興味が有るな。
勿論時代背景自体も興味深い時代であり、自分の知らない時代の
全く価値感の違う時に起きた事件ということも有るので、色々と
理解の及ばない一面は有るにしても、時代を超える中でも共通する
ものとしての「愛すること」とは何かということを問う流れは
興味深いし、「終末期を誰と過ごしたいのか」などのテーマについて
はジェネレーションの差というのは差ほどないのだろう。
「MAD MEN」などに描かれる時代よりも更に古いネタで、
マンハッタンのウォール街とイリノイ州シカゴではまた違った
感覚があると思うので、その辺の違いというのも興味深かった。
オーソン・ウェールズの「火星人襲来」も一見すると、ヴェラが
バカにしていたように、信じる方が不自然なのだろうけど、
時代背景として恐慌時代の中に生きる人々の誰もがこの先の生活に
不安感を感じて居る状況の中で、第二次世界大戦が勃発する直前の年
ということや情報ソース自体の入手方法にも限定したことが有ることを
勘案すると、ある意味なるべくして起きたこととも言えるのかも。
ここの所、このドラマの事件解決後にクローズアップされる
殺人課刑事たちの光景がより興味深いものとして描かれている感じ
がするね。
事件捜査を通して触発されていくヴェラがトニと再会することによって、
改めて「運命」と「人生」を考えては、普段のヴェラにはない
行動を起こすところなど、ヴェラの態度が30年代の女性の様に
自らの手で人生を切り開いていこうとするところも有って、なかなか
良い感じの雰囲気だった。ただヴェラの詰めの甘いところは、
初デートはシナトラの曲だったとしていたけど、実際には3度目だった
こと。思わず今回の事件にのめり込みすぎて、そう思い込んでしまった
のだろうか? 因みに初デートに聞いた曲は2Pacだったとのことで、
2Pacと言えば、ヒップホップの全盛期時代に抗争に巻き込まれて
殺されてしまったよな。ヒップホップというと黒人音楽故のこと
なのか、当時はライバルをディスって最終的には銃弾が飛び交うみた
いなことが多かったけど、最近はあまりそういうこと聞かないね。
トニはシーズン4の17を最後に別れていたので久しぶりの再会って
感じだけど、トニの出演がこのエピソードを最後だというところ
がまた気になるけど・・・
そしてミラーから1曲10セントで踊らないか?とちょっとした会話
の流れを通して、最後にスティルマンがチケットを作成して
ミラーとの踊りのシーンでクローズしていくところも悪くは無かった
かな。
さて事件では、思った以上に当時の関係者が生きていたなという
感じ。50年前ならば今の時代、生きている人ってのは多いのかな。
当時の価値感ではなかなか離婚は出来なかったのだろうし、家族として
の体裁を整える為に自分を押し殺して生活しなければならないし、
今以上に周り近所の視線を気にする事情が存在している。
時代を特定するアイテムであり、家族を象徴するアイテムとしての
車が事件解決の決め手となってしまうことが皮肉だし、何よりも
ラジオに拘ったところも良かった。
当時の人たちが50年ブリに事件捜査を通して再会するシーンが
描かれることが多いけど、そういう再会から見える当事者間のリアク
ション性がなかったのは残念。
アルツハイマーの人も時々記憶を取り戻す時が有り、特には最も
印象に残っている時代のことを覚えて居るものなのだろう。
リリーにちょっぴり似た容姿の被害者・オードリーを起用した
ことで、認知症である夫のフェルトンに当時の細部の事情を引き出す
ところなど、「クローザー」のブレンダバリのテクニシャンだった。
怪しい噂の立っているウィルの人殺しの件は、当時双極性に有った
妻をロボトミーに頼った治療を行っていたようだ。
■使用された曲
・Always
Performed by Frank Sinatra
・Begin the Beguine
Performed by Artie Shaw and His Orchestra
・Jumpin’ at the Woodside
Performed by Count Basie and His Orchestra
・Moonlight Serenade
Performed by Glenn Miller and His Orchestra
リリー・ラッシュ (Kathryn Morris) 殺人課の刑事
スコッティ・ヴァレンズ (Danny Pino) 殺人課
ジョン・スティルマン (John Finn) リリーの上司
ニック・ヴェラ (Jeremy Ratchford) リリーの同僚刑事
ウィル・ジェフリーズ (Thom Barry) リリーの同僚刑事
キャット・ミラー (Tracie Thoms) 麻薬課刑事 s3#8から
2007年
ウィル・ペイジ (Peter Haskell)
エルマー・ギビンズ (Len Lesser)
ペニー・センターボ (Julianna McCarthy)
ロバート・メッツ (Lawrence Pressman) “Dobber”、かつての子供が・・
フェルトン・メッツ (Ralph Waite) 認知症
トニ・ホルステッド (Sonja Sohn) 看護師、ヴェラの元彼女
1938年
オードリー・メッツ (Bellamy Young) 妻、
ウィル・ペイジ (Jonathan Scarfe) パロマ舞踏場の常連、発明家
ロバート・メッツ (Chip Hormess) “ドバー”、息子、8歳
フェルトン・メッツ (Tuc Watkins) 夫、大恐慌で失業
ペニー・センターボ (Serah D’Laine) パロマ舞踏場のダンサー
— (Brian F. Durkin) Sailor / オードリーに絡む水兵
— (Michael O’Dwyer) Bartender
— (Stephanie Renz) Dancer
バズ・モラン (James Sharpe) パロマ舞踏場経営者
エルマー・ギビンズ (Ari Zagaris) オードリーと一緒に並んでいた