May 6, 2007
第13話 悪魔 Spiders
脚本/Liz W. Garcia
監督/John Peters
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1998年5月12日、裁判所で時間が来るまでの間、タミラは一人
席に座って本を読む。そこにトルイットが声を掛けてくる。
トルイットは今の君にアドバイスしたいとして、相手の裸を
想像するんだという。証言台で凄く緊張する時にそれを思えば
良いという。私の場合パパの件だからと告げる。トルイットは
自らのことをスパイダーというアダナだと告げると、蜘蛛が
居ないとこの世の中は蚊と蝿だらけになるだろうと語る。
会話している中で、スパイダーはタミラの手に煙草の火を
押し当てたようなヤケド痕があることに気が付く。それは君の
パパがやったことなのかと問う。遭ったばかりだけど君の父
を蹴飛ばしたいという彼。オレは身に覚えのないことで訴えられ
ていると告げる。晴れて自由になったらデートしないか?と告げる
と、タミラは本を手渡し、表紙の内側に名前と住所が書いてある
事を告げ、デートの誘いはOKだと語る。弁護士のカーリーが
やってくる中、タミラはやっと私にも運が回ってきたみたいだと
語る。
しかしタミラは1998年8月、殺害されて発見される。
タミラ・ボーデン・・・コールドケースの箱に資料が入れられる。
2008年、リリーとミラーは裁判所に証言の為に来ると、その
帰りに当然ケイト・カーリーという女性に引き留められる。
自分は福祉局弁護士をしているという彼女は、二人の刑事を見て
コールドケースを担当している刑事でしょと問う。1998年に
私が新人弁護士だった頃に担当していた人物がいて、その人は
殺害されたが未だに犯人が見つかっていない事を語る。タミラは
最悪な父からの自立を求めて訴えを起こしていた事を告げ、夫の
ステイ・ボーデンは飲んだくれで娘に殴る・蹴る・煙草の火を
押しつけるなどを行ったという。しかしクソ検事のせいで訴えが
通らず、虐待の証拠が不十分だと言われたという。その三ヶ月後に
頭蓋骨陥没でタミラは殺された事を語る。
そしてその父親は里子に対して危害を加えて捕まった事を告げ、
3歳児は今昏睡状態だという。タミラ宛ての社会保障小切手が
使われていたこと。母を亡くしてから遺族保険に出てきたが
タミラの死後は半年も父親が受け取っていたのだという。当時
は新米だったので解決出来ず、心残りとなっているとのこと。
署に戻りタミラの件を資料庫から引っ張り出して調べる。
タミラ・ボーデン(17歳)、1998年8月、ケンジントン高架下で
遺体として発見。鈍器による頭蓋骨損傷。検死官は凶器はハンマー
であると推測しているというリリー。見つかった場所からして
当時はドラッグか売春絡みの事件として捜査していたこと。
当日の行動は誰も把握していないということだった。
彼女の母は1992年にラスベガスで亡くなったがその時には既に
夫のだったスライ・ボーデンとは離婚していたという。
スライは公衆酩酊罪で3度逮捕され、2001年に飲酒運転で2度逮捕
されたというもの。タミラとは彼女が亡くなる一週間前に遭った
のが最後だと供述しているとのことだった。スティルマンは
小切手の件で突けと語る。
ヴェラとジェフリーズは刑務所に収監されるスライから話を聞く。
今回は三歳児の娘の殺害で来たのではなくタミラの件で来た
のだという。アリバイを尋ねると、あの日は何もかもツイていなく
て、夜はふて寝していたという。娘の軽蔑の目に耐えられずに
殺したのではないかと問う。スライは娘に最後に遭ったのは
殺される一週間前だという。殺された途端にアイツを天使みたい
に言っているがアイツは身持ちの悪いところは母親似だという。
オレのせいではないとし男好きが災いしたのだろうという。
— 1998年 —
ソファーで座ってテレビを見ているスライに娘のタミラは食事
を持っていく。パパが子供の頃、お爺ちゃんがデパートを経営
していた場所って何処だったのかと問うと、ダウンタウンの何処か
だと告げ、オレが大人になった時には店が潰れていたという。
街を歩けばボーデンさんと言われてたが、気が付くと近所のメキシコ
人と一緒に炊き出しの列に並んだのだという。お前はやたらと
そういう話を持ち出すなというスライは、どうせ負け犬だと
思っているのだろうとして激高する。お前だって家で何もして
いないネズミみたいなものだとして暴行を加えようとすると、
突然部屋からスパイダーが出てくる。今度彼女に近づいたら
階段から落とすと脅していくと、車に乗って出て行ったという。
— 2008年 —
それがタミラに遭った最後だという。
タミラはどこかの刑務所の囚人と文通していたし、2、3ヶ月したら
突然アイツが来たのだという。何処のムショと連絡を取っていた
のかと聞くが知らないという。乗っていった車について分かること
はないかと尋ねると、日産のアルティマだという。娘の彼氏の車
が日本車とは・・・ヴェラはここから出してやれそうな情報じゃ
ないが協力してくれたことにお礼をする。
ミラーの元にジャレッドという男性が来ていた。
ミラーは彼を追い出す中、ヴェラは誰なんだと問う。麻薬課時代
の知り合いの売人のチンピラだという。出所したばかりだという。
ヴェラはまたデートしようと誘われたのかと問うとミラーは
激怒し、あんたま彼女は我慢強いだけだという。トニは大人の
女なんだよと。リリーは陸運局からリストが届いた事を告げ、
当時94年型の日産アルティマを持っていた人間だと語る。
リリーとスコッティがその所有者と話しているとのこと。
所有者はエリオットという経済学の大学の講師だった。
スパイダーのことを尋ねると、トルイット・リーランドのことだ
ろうという。以前僕はよく彼に車を貸していたこと。連んでいた
が、”怒れる若者”の頃であり、卒業したら連むのを辞めたのだという。
タミラのことを知っているのかと問うと、スパイダーの実家に
2、3週間滞在していた人物だろうという。エリオットはもう
スパイダーとは関わりたくない事を告げるが、
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福祉局の弁護士をしているカーリーは裁判所でフィラデルフィア
市警殺人課のコールドケースを扱う部署で働くリリーとミラー刑事
を見かけて声をかける。
10年前の1998年に当時新人弁護士としてキャリアを始めた頃に、
クライアントとして担当したタミラの事件が未解決だというので
有る。当時タミラは父親・スライからの虐待を受けて、18歳目前に
して親からの自立を求めて裁判を起こそうとしていたこと。
当時は虐待の証拠が不十分だとして判事から却下されたが、
今回その父親が里子として預かった3歳児の子供を昏睡状態に陥れた
為にかかわることになった結果、彼はタミラ宛の社会保障小切手
が見つかり、タミラの死後半年も父親が受け取っていたのを見つけた
のだという。今尚心残りとして存在していることを告げ、再捜査を
して欲しいと頼む。
人種の坩堝と化しているアメリカでの人種差別的エピソードのネタ
はここ数話連続して色んな形として描かれており、その都度アメリカ
国民とは何かということを問いかける内容となっている。
今回はその中でも極論化したような、白人至上主義やネオナチなど
の思想を主として、彼らの立場から見た被害者意識的妄想と共に
現実とを織り交ぜて描いた内容だった。
アメリカに於ける職業や生活などを通して次々とその地位を不法移民
によって奪われている現実。前回のエピソードでは中国製に押される
アメリカ製品の流れが加味されていたし、前々回のエピソードでは
アメリカ内に於ける日系アメリカ人への差別と共にアメリカ国民
とは一体何なのかということを興味深い形で問いかけていた。
外国製品によって立場を奪われてしまったボーデン家は、祖父の
代までデパートで財を成していた人物のようで、気が付くと
潰れてしまったという。父親が自分は負け犬だとしてヤケになる
状況の中、暴力を奮われても尚、この娘は父親との中には蜘蛛の糸
程度のものだが絆が有り、立ち直って欲しいと願う娘の姿が有る。
人間はつくづく出会う人によって人生を左右されるものだなと
思わせるもので、タミラもまたトルイットという人物と出会ったこと
が運の尽きだった。人生の過程で出会った人物ならば自分の
選択・決断によって出会いという流れがあるものの、子供は親を
選べないとばかりに、人生最初の出会いである親自身が最悪の人間
だったとしたら、その人には逃げ道はなく、今回の様な状況にも
なってしまうものが有るのだろうなという感じの内容だった。
そんな状況の中、今回殺人課刑事の中で取り上げられたのはミラー
刑事だった。ミラーの子・ヴェロニカの父親について今まで
殆ど語られることは無かったけど、今回いよいよその相手だと
思われるジャロッドが表れた。
ジャロッド役を演じているDondre Whitfieldは、イギリスドラマ
のアメリカリメイク版の「溺れる女たち ~ミストレス~」の中で
妻子を捨てて消えてしまったポール役に出演している。
“若気の至り”ということがキーワードになっていた今回のエピソード
の中でも、ミラーとジャロッドの関係はそれに該当するものなのか
どうか。麻薬捜査官時代に知り合ったような感じで、元ギャング
だった彼によるとミラーも当時は似たようなものだったという主張が
有る中で、それが潜入捜査官としての職務の一貫なのか、それとも
それ以前からの知り合いなのか気になるものとして存在している。
ヴェラが事情を知らずにミラーをからかう中、ケンカし合うところ
は最近の定番。元々この二人は犬猿の仲で、ヴェラがミラーを
受け入れるまでに時間がかかったように、人種の違いや立場の違い
を乗り越えるというのは相当難しいものだなという所に繋がって
いる。
また世代的なジェネレーションのギャップに揺れる内情というもの
もドラマの中では加味されており、トルイットは自ら教祖の様な
形で仲間を鼓舞する際に
「子供の頃、大切だと教わったことは意味が無くなっている。勉強
をしたくても大学に行く金はない。働きたくても不法移民に仕事を
盗られる。教会に救いを求めても牧師の説教は嘘ばかりで、政府も
本当のことを言わない。」と語る姿が有るのに対して、
タミラは「昔の方が良かった訳でも楽だった訳でもない。親の世代
でも苦しんでいた」と反論していた。
しかし「オレの爺さんは第二次世界大戦から帰還後好きな大学に
入れたが、オレがクウェートから戻っても何も無い」として
トルイットは主張していた。
タミラをアーリア系女神としてトルイットが崇めている中には、
囚人に手紙を出していたことが有り、それがあの裁判所で出会った
流れから派生したものだろうけど、当時の刑事はなぜそういった
繋がりを見つけ出せなかったのだろうか。
色々と象徴的メッセージが込められている案件であり、
「カギ十字」は力のシンボルであり、古代から太陽と幸運の印だと
していたり、「蜘蛛の巣のタトゥー」は黒人殺人の意味では
ないのか?としてミラーが疑っていた。
結果として犯人はエリオットだった。
どの人物も狂信的だったので、誰が犯人でもおかしくなかった。
登場した際に顔があまりに白かったのでちょっと怪しさを感じ
ていたけど、エリオットが髪の毛を剃る辺りの流れを見ると
映画「タクシードライバー」に於けるデニーロ演じたトラヴィス
を思い出す。アイリス演じるジョディ・フォスターを助けようと
してモヒカンにしていたけど、恐いものが有ったね。
犯人が経済学の中に人種問題を加味して生徒たちに教えている
現実が有るところをみると人は知らぬ間に差別的意識なり優越感・
劣等感を植え付けられているところがあるのかな。
全ての争いは「金」が関係しているとして陰謀説を唱える中、
スコッティがそんな彼に対して「エイリアンのProbesも信じて
いるのか?」と問う姿が有った。
アメリカの移民政策については、アメリカの政治的ドラマを
見ていると必ず取り上げられるね。
エリオットは最後に、
「僕らの時代が来た。ネットのお陰で組織は盤石。政治家も味方
し、今こそ国境を厳重にして安全を守らないといけない。」
「僕をあざ笑い、見捨てたヤツラは人種戦争が始まった時に気が
付く。アイツらは前から知っていたんだと」
と語る姿が有った。
不法移民の子に国籍を与えるかどうかということで現在のアメリカ
は揺れているけど、益々こうなるとアメリカ内部での争いが
激しくなりそうだね。
■使用された曲
・Someday by Sugar Ray
・Greedy Fly by Bush
・Dumb Fun by Versus
・Moby Octopad by Yo La Tengo
・Sleep To Dream by Fiona Apple
・I’m Gonna Change by Starboard Green
・Tonight, Tonight by The Smashing Pumpkins
■検索用キーワード
・稲妻と太陽 北欧神話 ベン・クラッセン、光明会(イルミナテイ)
の歴史、我が闘争
リリー・ラッシュ (Kathryn Morris) 殺人課の刑事
スコッティ・ヴァレンズ (Danny Pino) 殺人課
ジョン・スティルマン (John Finn) リリーの上司
ニック・ヴェラ (Jeremy Ratchford) リリーの同僚刑事
ウィル・ジェフリーズ (Thom Barry) リリーの同僚刑事
キャット・ミラー (Tracie Thoms) 麻薬課刑事 s3#8から
2008年
スライ・ボーデン (Jeffrey Combs) タミラの父、アル中、暴力
リンゼイ・ポート(Jamie Denbo) 子供の母
エリオット・レオポルド (Jacob Fishel) 経済学教師
ケイト・カーリー (Mandy Freund) 福祉局の弁護士
トルイット・リーランド (Jilon VanOver) ‘Spider’、自由連合の集会
ジャロッド・ジョーンズ (Dondre Whitfield) ミラーの元彼、元ギャング
レイアン・リーランド (Diana Scarwid) トルイットの母
— (Michael G. Canaan) Burly Guy
エデュアルド・マリポサ (Javier Estrella) ミゲルの父
— (Ilya Jonathan Zaydenberg) Nazi Guy
— (D.M. Atlas) Pedestrian
1998年
トルイット・リーランド (Johnny Lewis) ‘Spider’、スパイダー
リンゼイ・ポート (Brianne Davis) トルイットの仲間
タミラ・ボーデン (Emilee Wallace) 17歳、父からの自立を求める裁判
ノラ・マリポサ (Sonia Maria Martin) ホンジュラス人、98年8/17失踪
ミゲル・マリポサ (Bobby Soto) 息子