第8話 フロマージュ Fromage
脚本/Jesse Alexander、Bryan Fuller
監督/Tim Hunter
【前回までのあらすじ】
殺人現場を見ることに犠牲を生じると語るウィル。
私は君の精神科医なのかと問うレクター。アラーナはレクター
とジャックの板挟みになるのは嫌だとして、避けるが緩衝材に
緩衝材になって欲しいと頼まれる。
フランクリンが連れてきたトバイアスをレクターに会わせる。
フランクリンはレクターの患者になり神経症は辛いとするが
考え方次第だという。そんな中切り裂き魔の作戦は成功だと
ジャックは語る。
【ストーリー】
ウィルは自宅にいると外で物音が聞こえる。音を頼って外へ
と出て行く中、何もなかった。
弦楽器店ではトバイアスはチェロ奏者の少年に弾かせる。
いつもよりも堅いという少年にトバイアスはガット弦だと
して本物の感覚を覚えて欲しいという。弦は羊の腸を使って
いるのかと問われるがそうとは限らないと語る。弦は人の
腸を使ってトバイアスが地下室で製造していた。
ウィルの元にアラーナが呼ばれる。
ウィルが聞こえたという音につきあわされる彼女。コヨーテ
の群れに襲われたのかもしれないとすると、生きているとは
思わないのかと問われる。動物の死骸を拾うために呼んだのか
と言われると、万が一の時に生きていたら僕一人では対処
出来ないからだと語る。それともデートだと思ったか?と問う
と、あなたがデートするのかと逆に驚かれるウィル。僕が
壊れていてデートしないというのかと問う中、アラーナが
デートしない理由はと問うといつかはするが今は考えられない
と答える。ウィルは何の痕跡もないとして気のせいだろうと
語る。
フランクリンはレクターの診察を受けに行く。
フランクリンはレクター医師を尊敬しているのに我々が友達
になれないと思われているのが残念だという。僕は友達を見て
あなたならどう診断するか想像していることがあるという。
精神科医になるのかと問うと、フランクリンはあなたになる
と語る。ところで誰の診察をしているのかと問うと、トバイ
アスだという。ネットでサイコパスの診断テストをしたら
トバイアスには当てはまる項目があまりに多いのだという。
彼の話が陰湿で彼はジョークというが、イカレたヤツに見えて
来たという。サイコパスは行動を自覚しているというレクター
に対してトバイアスもそうだと思うかと問う。僕に飽きて
いるのかというフランクリンに対して、君の時間だから好きに
時間を使ってもらって良いという。トバイアスの分析を手伝っ
て欲しいとすると、君の認識を分析すれば君自身が分かる
という。欠点を彼に投影させているのかもしれないと。僕が
サイコパスだというのかと問うと、そうではないが彼に惹か
れていると語る。
そんな中、劇場で遺体が発見される。
被害者はボルティモア管弦楽団のダグラス・ウィルソン。
トロンボーン奏者で演奏後に後頭部を殴られているという
ジャック。犯人は遺体を運び見せ物にしたのだという。
そんなウィルにジャックは見るのは楽になったのかと問うと
頭の体操だと思うことにしたという。科学捜査とはそういう
ものだというジャック。楽ではないとすると、考えずに仕事
をしろと語ると、済んだら呼ぶよう告げる。
ウィルは遺体のある現場で一人で世界観に入り込む。
客席で見ている光景。遺体に近づくと彼の喉を切り裂き、
刃が気管に達したら生体を露わにすること。次にチェロのの
ネックを口から突き刺す。傷口には粉末があり松ヤニだろう
こと。彼を弾いたのか。音を作り出したかったのか。自分の
音を・・・「これが僕の見立てだ」。そんな見立てを見ている
ものがいた。
レクターはベテリアの元にいくと、フランクリンかが心配だと
語る。私に友情を求めていること。私への執着心が治療の妨げ
になっていること。別の医者を紹介するという。ベテリアは
それは難しそうだとすると、あなたに別の医者を紹介して
拒否されたことがあるという彼女。私か頑なだとするレクター
は全ては君を守るためだという。あらゆる意味で君は私の友人
だから・・と。私も君を支えたいという。患者に襲われた医者
は私だけではないというベテリア。レクターは執着する患者の
話はしたくなかったとし君のトラウマだからだと語る。患者は
私ではなくあなたでしょと語る。
鑑識では、人間チェロにされたことを語る。
松ヤニ、炭酸ナトリウム、二酸化硫黄、オリーブ油が検出され
ていた。
感想・考察
■新たな遺体が発見
被害者はボルティモア管弦楽団のトロンボーン奏者のダグラ
ス・ウィルソン。遺体はチェロの部位が喉に突き刺さっていて
人間そのものがチェロにされて音を奏でる道具として利用され
ていた様な癖のあるものだった。
芸術性とか音色というものが、今回殺人鬼に於ける個性を示す
ような主張として描かれていて、普段その音色は自分のために
開発しているものだろうけど、今回は何かに向けたメッセージ
性あるもののようだった。レクターはウィルとの会話の中で
「恋人への曲(セレナーデ)」かとしていた。危険を冒して
でも聞かせたかった相手が居る。殺しが上い゛だと誰かに
見せたいのだというウィル主張もまた正しいものだった。
■ウィルが少しずつ壊れていく
ウィルだけでなく同時にレクターも壊れていく感じがしてくる
のは、ドラマが中盤から終盤へと向かっていることも関係して
いるのだろうけど(笑)、事件と関わっていく内に、ウィルは
平静を装っているがホッブスの陰が見え始めたり、幻聴が
聞こえ始める。
レクターの中には幻覚・幻聴などの症状はないけれど、人を
殺すシーンが再び見られていく。
唯一彼らが彼らの中にある何かを封じ込めていられるのは、
女性の存在のようで、ウィルにはアラーナがいるし、レクター
にはベテリアの存在がいることが有る。
逆にジャックもまたベラの存在が居ることによって助けられて
いるところが有るので、これらの人物が大切な人を失った
時の恐怖は存在するね。
ウィルはアラーナとキスしたことに喜びを覚えて思わずレクター
に話に言っていたのは憎めないところか。
■友達関係になるのは難しい
フランクリンにしてもトバイアスにしても孤独のレクターに
とっては友達になり得る要素は存在しているが、レクターは
トバイアスに対して友達にはなれないことを語る。
トバイアスはディナーに招待されたのでてっきり友達になれる
かと思ったことを口にしていたり、実はレクターのことを細身で
長身なので良い弦が作れるということで殺そうとしたことを
口にするが、尾行した際に人気のないバス操車場で殺しを目に
して、同じ世界観を知る人物だと感じて、友人になれそうだと
感じた様子。
しかしレクターにとっては友達になりたいと感じるのはウィル
の様で、この二人とは友達にはなれそうもないみたい。
ただレクターはウィルのことを友達だというよりも、利用できる
相手としてみている感じで「世界観も違うが私の視点になれる」
としていた。
■一気に興ざめする格闘シーン
どうもレクターが格闘するシーンって彼のキャラにはない
ところが有り、絶賛している人もいれば、私のように何で
こんなシーンを入れるのかって感じにも思えるところもある。
精神的なやりとりの中で残忍な殺人は静かに行って欲しいところ
なんだけど、たまにはレクターにも死の恐怖というものを
感じて欲しいところも有るかな。
またトバイアスのことをウィルに密告するシーンを見ると、
なんだか違和感を感じる。
そんな彼のことを同業者だとしていたところが笑えるね。
■ベテリアの存在はどう見れば良いのか?
彼女はかつて患者に襲われたことがあるようで、精神科医に
とっては精神を病んでいる人を診ている限りはそういうリスクも
否定できないけれど、その患者ってレクターじゃないの?
彼は彼女を守るためにいることを口にしている。
ただベテリア自身はレクターから離れたがっているとしか
思えないし、レクターの中に必要なものが「信頼」「友情」
「壁を越える」ことを望んでいるけど、ソシオパスな人には
いくら治療しても難しいというところなんだろう。
■使用された曲
・Hannibal Theme by Brian Reitzell
・Minuet in G Minor by Zachary Bloch
・Goldberg Variations, BWV 988: Aria
Written by Johann Sebastian Bach
Performed by Demore Barnes
・A Midsummer Night’s Dream’: Intermezzo, Op.61 No. 2
Written by Felix Mendelssohn-Bartholdy
■出演者
ウィル・グレアム (Hugh Dancy) 犯罪プロファイラー
Dr.ハンニバル・レクター (Mads Mikkelsen) 天才法医学精神科医
Dr.アラーナ・ブルーム (Caroline Dhavernas) 元心理学教授のFBIコンサルタント
ビバリー・カッツ (Hettienne Park) FBI行動科学課の一人でジャックの部下
ジャック・クロフォード (Laurence Fishburne) FBI行動科学課のヘッド
ジミー・プライス (Scott Thompson) 鑑識
プライアン・ゼラー (Aaron Abrams) 鑑識
Dr.ベテリア・デュ・モーリア (Gillian Anderson) 精神科医
アビゲイル・ホッブズ (Kacey Rohl) 生き残り
ギャレット・ジェイコブ・ホッブス (Vladimir Jon Cubrt)
ミリアム・ラス (Anna Chlumsky) 新人FBI捜査官、成績上位5%
スチュワート (Darren Josephs) 捜査官
ドーモウ (Kevan Kase) 捜査官
— (Zachary Bloch) Pre-Teen Cello Player
ダグラス・ウィルソン (Carter Siddall) チェロ奏者
トバイアス・バッジ (Demore Barnes) 弦楽器店、殺人鬼
フランクリン (Dan Fogler) レクターの患者
— (Daniel von Diergardt) Dead Man